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資料   1

文化審議会著作権分科会(第10回)議事要旨


1    日   時    平成15年10月15日(水)午前10時30分〜午後1時

場   所 霞ヶ関東京會舘「シルバースタールーム」

出席者 (委員)
石田,市川,入江,岡田,小熊,角川,國分,後藤,齊藤,迫本,里中,瀬尾,関根,大楽,常世田,土肥,永井,中山,野村,松田,三田,紋谷,山口,依田の各委員
(文化庁)
河合長官,素川次長,森口長官官房審議官,吉川著作権課長,吉尾国際課長ほか関係者

配付資料
1      文化審議会著作権分科会(第9回)議事要旨
2−1   文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会」の検討状況について
−2   文化審議会著作権分科会「契約・流通小委員会」の検討状況について
−3   文化審議会著作権分科会「国際小委員会」の検討状況について
−4   文化審議会著作権分科会「著作権教育小委員会」の検討状況について
−5   文化審議会著作権分科会「司法救済制度小委員会」の検討状況について

(参考資料)
   「知的財産の創造,保護及び活用に関する推進計画」(平成15年7月8日)

5 概   要
(1)    各小委員会主査・主査代理から検討状況が報告された。
(2)

   その後,次のような意見交換が行われた。


(以下委員○,事務局△)

   1    「法制問題小委員会」の検討状況について
○: 障害者・高齢者の著作物の利用に関する利用制限規定の新設のところで,この資料では,権利者側が一方的に反対したというような感じを受けられるかもしれませんが,何が何でも権利制限の拡大に反対しているわけではない。視覚障害者が本を読む権利というのは,基本的人権であり,尊重されなければならないことで,現在,点字図書館や福祉施設においては,権利制限により録音図書を作成することができる。この録音図書をインターネット等によって利用するということは,視覚障害者の立場を考えれば検討しなければならないことと考えているが,障害者・高齢者という枠組みでは簡単には応じられないということ。

○: 資料に書かれているのは,障害者・高齢者に対する一般的な権利制限規定を設けることの賛同が得られなかったということだけであり,ある特定の分野についての権利の制限については,まだ,議論をしていない。

2    「契約・流通小委員会」の検討状況について
○: 著作権に限らず,知的財産権の契約,流通について,経済界からも文化的側面からも,これを活性化しようという動きになっているので,単に著作権法に関して契約に係る条文を検討するだけではなく,知的財産全般の契約法という観点で時間をかけて検討する必要があるのではないか。

3    「国際小委員会」の検討状況について
○: 最近,アメリカにおいて無断で電波を傍受した番組をCATVで流されていた。また,番組そのものがDVDなどで販売されるケースがだんだん増えている。放送事業者としてのお願いですが,新しい条約による国際的な調和,放送番組にかかる権利者の保護が必要になってきている。様々な問題を解決してこの条約の成立と,日本が条約に加盟することが,日本の放送文化の発展ということからも必要と考えるので,そういう目的を掲げていただいてこれからも議論していただきたい。

4    「著作権教育小委員会」の検討状況について
○: 著作権問題についての啓発は,前からいろいろな形でなされてきているが,成果が見えてこない。これは著作権教育だけでなく,道徳教育と抱き合わせでやっていかなければならないと思うが,この小委員会でそのような意見はでたのか。

○: 検討事項として4つの側面から検討を進めて,この検討の視点だけでなく,広範な観点からやっていかなければいけないとの議論はでているが,道徳教育との絡み合いというような具体的な意見はでていない。

○: 現状の問題点の把握が正確になされていない点が問題である。また,施策を打ってもその効果を評価するというプロセスが組み込まれていない点も問題である。このテーマは,少し中期的というか,3年から5年計画で施策をしてその効果を検証していくべきと思う。また,先ほどの道徳教育の件については,検討事項の設定の関係で道徳教育について議論しなかっただけであり,各委員が道徳教育のことを何も認識していなかったというわけではない。

△: 現状把握については,まず小・中・高等学校の教員の意識がどうか,学校運営上,何が著作権に関連して問題になっているのかということ等から調査をしてまいりたい。また,今年度,研究協力校を小・中・高等学校,2校ずつ選び,具体的に学校でどのような著作権教育を行えば効果があるかという研究に着手したところである。なお,今年度は,まだ,手のついていない大学や企業等における教育に焦点をあてて議論していただいたものである。小・中・高等学校については,昨年度の段階でかなりご指摘を頂いており,それらを踏まえて,予定している施策を着実に行って,成果を見ていただきたいと思っている。

○: レコード店等で,公然と店員のいる前でCDをリュックサックに詰め込んで逃げる子どもがいる。追いかけると危害を加えるという,もう万引きでなくて窃盗行為が店員の前で行われている。この国が倫理的に崩壊する一歩手前にいるのではないかという危機感をもっている。著作物が全くただで手に入るという風潮をどう改善していくかということを考えると,小学校・中学校レベルの教育から考えていかないといけないと思う。業界としてもキャンペーンを張るなどできるだけのことをやっているが,官民あわせて重大な問題であるという認識で検討事項に入れていただきたい。

○: 子どものうちから著作権の意識をしっかり身につけることが大事なことなので,今後,教育小委員会の検討事項の中に,初等教育における著作権の問題を検討事項として加えていただきたい。

○: 先生が著作権についてよく分かっていないという問題があるので,まず教育者の教育をやっていただきたい。私どもは教育現場における著作物の利用についてのガイドラインを作成中ですので,そうゆうものとあわせて教育者の教育というものをお願いしたい。

5    「司法救済制度小委員会」の検討状況について
○: 損害賠償制度について,3倍賠償制度等は極めて大きな問題であって,仮にこれを導入すると独占禁止法や製造物責任法(PL法)などに波及するのは必定である。民事と刑事の区別も崩す,国民の裁判に対する意識も変えるという大きな問題で,法律・司法の世界に激震の走る事柄である。我が国の法制度に相容れるかどうかとか,アメリカの懲罰賠償は公序に反するとした最高裁の判決もある。日本政府もアメリカに懲罰賠償はけしからんと言っているわけで,そういうことを広く考えた上で議論すべきと思うが,果たしてどの程度の議論があったのか。

○: 3倍賠償制度については,刑罰ないしは司法的な手続の改正を議論するときに必ずでてくる要望で,ご指摘のような心配な点はあると思う。この点については,審議会外からも意見を伺いたいと思っている。

○: 損害賠償額は高ければいいというものではなく,理論的にしっかりと説明できなければならない。民法の損害論が基礎になっているわけで,著作権侵害の特殊性を考慮する必要性は認めるが,民事・刑事の区別をしてきて賠償額は実際の損害額を超えないというのが民事の損害である。著作権を実施していれば一定の利益が得られたときにそれが失われたということが損害ではないかと思う。それを金銭化することの難しさで,損害を決めておきながらその3倍の損害額という論理は難しいと思う。

○: 賠償額を上げるための手段としては,「損害賠償額の認定」の改善による対応も可能だと思う。情報財の侵害額とは一体何かということははっきりしていないので,そちらのテクニックによって,賠償額を上げることができるかもしれない。そういうこともあわせて検討してもらいたい。

○: 著作権法は権利を守る観点と,供給の必要があるという観点と非常に相矛盾する要素を持っていると思うが,リナックスのように財産権を放棄し,共有して技術の進歩に貢献するという考え方も出てきている。文化の成熟の観点から,著作権とはどうゆうふうに考えるかということを一度整理して理念的に考える必要があるのではないか。インターネットが普及している時代に改めて整理する。非常に難しい問題ですが,そういう課題もあると思う。


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