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従来の著作隣接権では、放送「行為」に着目して保護を行ってきた。放送で送られるコンテンツに対する保護を求めているのであれば、著作隣接権ではなく著作権の観点からアプローチすべきではないか。
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WIPOにおいては、新条約で保護すべきはシグナルであって、コンテンツではない旨、議長からも明言されている。現在の法制では、放送前信号の傍受であれば、放送の秘密を守るという観点から、違法として取り締まることが可能であるが、差止請求が担保されていない。「放送前信号」ではなく、「放送前送信行為」という形であってもいいが、さらなる保護が必要だと考える。
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コンテンツに対する著作権侵害として取り扱えれば、差止請求は担保されているはずである。また、本来著作隣接権については、その公共性の観点から保護が与えられていたわけであり、公共に直接放送されないステーション間の信号が対象となるなら、個人間の信号についても議論が及ぶことになってしまう。
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問題は信号を受け取る側をどう保護するかである。ワールドカップのサッカーの放映を例にあげると、テレビの配信画像はFIFAの下請け会社がつくり、その著作権はFIFAが所有するという契約になっている。配信された画像は、各国が独自に加工して、各家庭に送られる。その際、各国の放送局が多額の契約金を払ってFIFA画像の放映権を獲得するわけだが、放送前信号を傍受されて、勝手に放送されるという事態が起こっており、各国放送局のインセンティブを削いでいる。このケースにおいては、著作権を持っているFIFAにとっては既にロイヤリティーが入ってきているのでそれほど問題ではないが、著作権がなく単に放送を受け持っている各国放送局は適切に保護されていない。
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WIPOにおいても信号の保護については条件を付すべきである、との意見が出ている。 |
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米国は、送信と同時に同時録画・録音するものであれば、著作物とみなして保護するという法制になっている。しかし、例えば大リーグであれば、そういった場合に著作権を持つのはリーグ側であり、放送局側は権利を持たないので、放送前信号の傍受に対して対応できない。リーグ側は放送局からすでに放映権に関して契約を結んでお金が入っているので、傍受に対してはそれほど真剣になれないのが現状である。従来著作隣接権においては、放送機関の社会的な通信媒体としての価値を鑑みて保護すべきである、としており、WIPOの議論においても必ずしも放送前信号を著作権・著作隣接権の枠組で保護すべき、とはしていない。本条約が他の条約と違うのは、放送機関がプラスの利益を得る、というよりは、海賊行為に対抗する武器を与える、という意味合いが強い点である。
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著作隣接権は著作物の流通を保護するために付与された権利であるはずなのに、著作物でないものの放送行為についても保護している。したがって、ローマ条約策定時、放送機関の経済的投資の大きさから保護してもいいのでは、という議論があったはずである。放送しない信号にまで保護を与えると保護が広がりすぎるが、これも同様の観点から議論すべきではないか。放送された番組と同一の信号のみ保護されればいいのではないか。
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放送された番組と同一の信号は最低限保護してほしいが、放送しなかった信号についても保護されないと企業としては苦しい。当然、法律で保護することとなると社会的に認められる必要があるが、できる限り広く保護してほしい。また、保護の対象として求めているのは、あくまで放送目的で行った信号であり、インターネット送信まで求めていない。
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放送目的で送信されたが、結果として放送されなかった放送前信号まで保護することにより、インターネット送信など他の媒体にこのような信号を活用することで放送機関が利益を得ることはあってはならない。
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放送前信号を傍受されたというのを立証することは可能なのか。 |
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場合による。画像にスーパーを入れるか入れないか、またどの地点で入れたか等によって立証できるケースとできないケースがある。しかし、デジタル放送の時代に入ると、アイデンティファイ信号が放送に組み込まれているので、立証はより容易になるはずである。
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