研究者・教員等の雇用に係る適切な対応について(依頼)

5文科科第326号 
令和5年9月12日 

 
各国公立大学法人の長
大学を設置する各地方公共団体の長
各文部科学大臣所轄学校法人理事長
大学を設置する各学校設置会社の代表取締役 殿
各大学共同利用機関法人機構長
文部科学省所管各研究開発法人の長   

  
文部科学省 科学技術・学術政策局長   
柿田  恭良  
初等中等教育局長   
 矢野  和彦  
高等教育局長   
池田  貴城  
研究振興局長   
 塩見  みづ枝  
研究開発局長   
千原  由幸  
文化庁次長   
合田  哲雄  
 
 
研究者・教員等の雇用に係る適切な対応について(依頼)
 
 

 大学、大学共同利用機関法人及び研究開発法人におかれては、有期労働契約を締結した研究者・教員等について無期転換申込権発生までの期間を10年とする労働契約法の特例(以下、「10年特例」という。)につき、従前より運用に御対応いただき、厚く御礼申し上げます。
 今般実施した「研究者・教員等の雇用状況に関する調査」について、(参考1)のとおり結果を取りまとめましたので、お知らせいたします。
 本調査結果を踏まえ、各機関におかれては、下記の点につき御留意、御協力いただくようお願いいたします。

 
 

 
1.無期転換の申込み等に係る適切な対応
 今般の機関への調査では、回答機関における10年特例の対象者(以下「特例対象者」という。)のうち、令和4年度末前後に労働契約を更新していれば労働契約法の無期転換ルールにもとづく無期転換申込権が発生していた者について、新たに無期労働契約を締結した者が4.1%、有期労働契約を継続した者(研究者・教員等に無期転換申込権が発生し、研究者・教員等からの申込みがあれば無期労働契約に転換される者)が76.4%、労働契約を終了した者が16.1%(定年退職の者を除く)という結果になりました。
 有期労働契約を継続し、無期転換申込権が発生した研究者・教員等から無期転換の申込みがあった場合、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日から、無期労働契約となります。こうした特例対象者に対して無期転換の手続きについて確実に周知したり、無期転換の申込みを書面で行うこととしたりするなど、無期転換に係る適切な対応をとっていただくようお願いいたします。(参考2参照)
 なお、従前からお伝えしているとおり、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前に雇止めや契約期間中の解雇等を行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありませんので、引き続き御留意ください。
 また、回答機関のうち35.5%の機関において、「一定の雇用期間を経過した後の審査により無期転換を行う(テニュアトラック制度等)」取組が実施されているなど、一定数の機関において有期労働契約を締結する者を無期転換する独自の仕組みが導入されているという結果になりました。当該調査結果及び別添の「研究者・教員等の雇用・育成に関する取組例等」等も参照いただき、特例対象者の適切な雇用の確保に向けて引き続き取り組んでいただくようお願いいたします。
 
2.特例対象者への10年特例の制度等に関する適切な説明
 今般の機関への調査では、特例対象者が在籍する機関のうち、労働契約締結時等に、研究者・教員等に対し、特例対象者となるか否かということや、10年特例に関する制度概要や無期転換申込手順について伝えていない機関がありました(「今後早期に伝えるよう対応を予定」等の回答)。一方、個人への調査においては、無期転換ルールの特例に関し、雇用契約時等の通知により周知してほしい等の希望が示されたところです。
 こうした状況を踏まえ、従前通知しているとおり、特例対象者と有期労働契約を締結する場合には、相手方が特例対象者となる旨等を書面により明示し、10年特例の制度の概要を説明すること等により、相手方が特例対象者であることをあらかじめ了知できるようにするなど、適切な対応をとっていただくようお願いいたします。
 なお、無期転換ルールについては、制度改正により、令和6年4月から、特例対象者も含め、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時に、無期転換申込機会及び無期転換後の労働条件について明示することが必要となりますので、御留意ください。(参考3参照)
 
3.特例対象者に対するキャリアサポートの実施
 今般の機関への調査では、労働契約を終了した者(定年退職の者を除く)1,995人のうち、令和5年4月1日現在での就職・求職状況を機関として把握していない者が1,398人となりました。
 また、特例対象者に対する「キャリアサポートの取組は行っていない」と回答した機関が全体の74.2%となった一方で、個人への調査では、一定割合の研究者・教員等が、「キャリア相談のための面談の実施」「他機関の公募情報のホームページ等における周知」をはじめとした、何らかのキャリアサポートの取組を希望している結果となりました。
 このことを踏まえ、各機関におかれては、契約期間の満了に伴い雇用関係を終了する場合を含め、研究者・教員等の雇用の終了に当たっては、雇用終了に関する説明や雇用終了後の状況把握に努めていただくとともに、別添の「研究者・教員等の雇用・育成に関する取組例等」の【研究者のキャリアパス支援に関する取組例】も参照しつつ、各機関の特例対象者の実情に応じ、特例対象者に対するキャリアサポートの取組を行っていただくなど、特例対象者のキャリアパスへの配慮に努めていただくようお願いいたします。
 
4.次回の調査を見据えた対応
 来年度においても、特例対象者に係る雇用状況の調査を予定しております。調査結果に基づき、各機関への対応依頼も含め、必要な措置を検討することとなりますので、各機関におかれては、特例対象者の雇用状況を可能な限り正確に把握することができるよう、令和5年度中に契約更新すれば通算契約期間が10年を越すこととなる特例対象者数及びそのうち契約更新をして無期転換申込権が発生した者の数、無期転換申込権を行使して無期転換した又はする予定の特例対象者数、契約期間の満了に伴い雇用関係を終了した特例対象者のその後の職業選択に係る情報等をあらかじめ把握いただくなど、次回の調査も見据えた御対応をいただくようお願いいたします。

 

(参考1)「研究者・教員等の雇用状況に関する調査結果」調査結果(令和5年9月12日公表予定)
 
(参考2)無期転換ルールの適切な運用に関する通知等
「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律の公布について」の一部改正について(平成31年3月29日付30文科科第755号科学技術・学術政策局長等通知)
貴法人における無期転換ルールの適切な運用について(依頼)(令和5年2月7日付4文科科第664号科学技術・学術政策局長等通知)
厚生労働省「適切な労務管理のポイント」(PDF:1.4MB)
 
(参考3)厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます―令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)―」
 
(参考4)ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドライン(令和2年12月3日科学技術・学術審議会人材委員会)(PDF:1.4MB)

 
(別添)研究者、教員等の雇用・育成に関する取組例等

 

 

 



 

(別添)

研究者・教員等の雇用・育成に関する取組例等

 
【無期転換ルールの運用に係る取組例】
・被雇用者への無期転換ルールの説明に加え、労働条件通知書自体でも無期転換ルールを説明、特例対象者適用の有無も個別に明記
・無期転換ルールに関するe-ラーニングの受講を雇用責任者全員に義務付け
・特例対象者の一部または全部の職種において通算契約期間5年で法定の10年よりも早期に無期転換可能とする運用
・全有期労働契約者の無期転換権の発生日、発生状況及び無期転換権の申し込み状況を一元的に管理
 
【研究者・教員等のポストの運用に関する取組例】
・ポストの都合で「教授」への採用等が見送られることがないよう部局の「准教授」ポストを一定期間「教授」にアップシフトして人件費の差額分を大学本部が負担し、一定期間終了後は、当該部局における本来の「教授」の採用可能数に切り替える等の運用を実施
・雇用財源に外部資金(競争的研究費、共同研究費、寄附金等)を活用することで捻出された学内財源を若手ポスト増設や研究支援体制の整備などに充当
・クロスアポイントメント制度、助教の任期制等を通じて流動性を確保し、テニュアトラック制度、若手の助教ポスト創設、研究環境整備等を通じて安定性を確保
・大学独自の卓越研究員制度により若手研究者の自立・育成に向けて、スタートアップ経費を支援
・有期雇用の若手研究者の雇用安定化及び人材育成等に取り組む部局に対して支援金を配分
 
【研究者のキャリアパス支援に関する取組例】
・雇用契約を終了する場合、今後のキャリアについて面談を実施
・適性適職診断の実施
・転出支援セミナーや個別転職相談会の開催
・機関内のホームページにおいて他機関の公募情報を掲載
 
【研究人材のキャリア支援ポータルサイト「JREC-IN Portal」について】
JREC-IN Portal(国立研究開発法人科学技術振興機構ホームページへリンク)
JREC-IN Portalパンフレット「研究人材のキャリア支援ポータルサイト~求人・求職、能力開発、情報収集~JREC-IN Portal」(PDF:3.2MB)(国立研究開発法人科学技術振興機構ホームページへリンク)

お問合せ先

 TEL:代表03-5253-4111
 ※ 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律第15条の2に関すること
   科学技術・学術政策局人材政策課(内線4198)
   E-mail:kiban@mext.go.jp
 ※ 大学の教員等の任期に関する法律第7条に関すること
   高等教育局大学教育・入試課(内線2493)
   E-mail:daigakuc@mext.go.jp

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