コラム

15.海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律

 現在,世界各地には,武力紛争,自然災害等により破壊・劣化等の被害を受けた人類共通の文化遺産が数多く見られます。このような危機に瀕した遺産を守るため,我が国は,これまで蓄積してきた高度な保存修復技術を活用し,国際的な貢献を行ってきました。代表的なものとしてカンボジアのアンコールワット遺跡やアフガニスタンのバーミヤン遺跡などがあります。
 これまでこれらの文化遺産の国際協力は,各教育研究機関等の関心や能力の範囲内で活動し,それぞれの目的に従って,独自に情報を収集し活動を行ってきました。また,情報の共有化や横の連携が十分でないことなどにより,その効果を対外的にアピールすることが弱いなどの課題が見られました。
 このような状況を背景に,平成18年6月に衆・参両院の全会一致で可決された「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」には,文化遺産国際協力について,国や教育研究機関の果たすべき責務,関係機関の連携の強化等が定められており,また,文部科学大臣と外務大臣が基本方針を策定することも定められています。今後,国は,教育研究機関及び民間団体の支援,国内外の専門的人材の確保,国の内外の情報の収集,整理及び活用などの必要な施策をより一層推進していくこととなります。
 これにより,我が国の積極的な文化的国際貢献を発信すると共に,国内の文化遺産国際協力体制の構築や関係機関の連携の集約・統合化による効果的な協力の実施が,国の意思として推進されることとなります。
 この法律の成立と動きを一にして,平成18年6月20日に「文化遺産国際協力コンソーシアム」が,日本画家の平山郁夫氏を代表として,関係省庁,独立行政法人,教育研究機関,民間団体などにより設立され,国内のネットワークづくりが始まりました。

▲アフガニスタン バーミヤンにおける協力

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