第1節 快適で豊かな文教施設づくり

2.地域と連携した文教施設づくり

(1)地域の拠点としての学校施設の充実

 学校は,児童生徒の学習の場であるとともに,生涯学習活動や,高齢者をはじめとする地域住民お交流など多様な活動の拠点ともなっています。文部科学省では,地域社会や家庭,学校が連携協力することの重要性を考慮し,子どもたちの安全確保にも十分配慮ながら地域のコミュニティの拠点としての学校施設の充実に取り組んでいます。
 平成11年6月に取りまとめた「高齢者との連携を進める学校施設の整備について―世代を超えたコミュニティの拠点づくりを目指して―」などでは,コミュニティの拠点としての学校施設整備を進めるための方策を提示しています。
 また,平成12年度から14年度まで,具体的な学校整備構想を持つ地方公共団体などに「コミュニティの拠点としての学校施設整備に関するパイロットモデル研究」の委嘱を行い,地域のコミュニティの拠点としての学校施設の実証的検討を実施しました。また,それに加えて,15年9月に関係省庁が連携して,「学校を核とした住宅市街地整備の推進に関する調査」を行い,「地域に開かれた安全・安心な学校づくりガイドブック」を取りまとめました(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/syuppan/03103101.htm(※公立学校の施設整備へリンク))。
 さらに,公立学校施設の整備を行うための「安全・安心な学校づくり交付金」においては,他の文教施設(社会教育施設,社会体育施設など)や福祉施設(高齢者福祉施設,児童福祉施設等)などと連携した複合化促進型施設の整備を国庫補助対象としています。
 このような施設整備により,地域住民との交流・連携が活性化し,そこでの多様な体験などを通じて児童生徒の「生きる力」がはぐくまれることが期待されます。

▲高齢者と園児がふれあうホール
(千葉県大多喜町立老川小学校)

(2)文教施設のバリアフリー(注1)化の推進

 学校施設は,障害の有無にかかわらず,児童生徒が支障なく学校生活を送ることができるよう配慮することが必要です。それとともに,地域コミュニティの拠点,災害時の地域住民の応急的な避難場所としての役割も果たす上でも,バリアフリー化を進めることは重要です。
 平成14年12月に「障害者基本計画」(閣議決定)が策定され,学校施設等のバリアフリー化の推進が示されました。また,15年4月に「高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律」が施行され,学校施設が新たにバリアフリー化の努力義務の対象となりました。
 このため,文部科学省では,平成16年3月に学校施設におけるバリアフリー化などの推進に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定しました。この指針では,既存施設のバリアフリー化に関する整備計画を策定し,計画的に整備を実施することが重要であると示されています(参照:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/009/toushin/04031903.htm(※学校施設のバリアフリー化等に関する調査研究協力者会議 答申へリンク))。
 また,平成16年6月に「障害者基本法」が改正され,障害者の教育に関する学校施設整備の促進が明記されました。それととともに,同年6月に策定された「バリアフリー化推進要綱」(バリアフリー化に関する関係閣僚会議決定)では,政府が一体となって社会のバリアフリー化のための施策を推進することとなっています。
 文部科学省では,平成17年3月,学校施設のバリアフリー化の具体的な計画・設計手法などに関する事例集を作成し,各教育委員会などに配付することで,学校施設のバリアフリー化を促しています。
 さらに,障害のある子どもたちがいない学校についても,地域コミュニティの拠点としての機能を十分に果たすことができるよう,スロープや障害者用トイレ,エレベータなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行うなど,各地方公共団体などによるバリアフリー化の取組を支援しています。
 平成18年6月には,建築物や公共交通機関などの一体的・連続的なバリアフリー化を促進しバリアフリー施策を総合的に展開するため,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が成立しました。このことによって,学校施設ばかりでなく,社会教育施設や社会体育施設なども含めた,文教施設のバリアフリー化を一層推進することが求められています。

  • (注1)バリアフリー
     障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で,もともと住宅建築用語として使われ始めた。段差などの物理的障壁の除去をいうことが多いが,より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的,制度的,心理的なすべての障壁という意味でも用いられる。
▲昇降口の段差を解消するため設置したスロープ
(秋田県秋田市立勝平小学校)

(3)余裕教室・廃校施設の活用

 近年,少子化による児童生徒数の減少などに伴い,余裕教室(注2)や廃校施設が増えてきています。学校施設は地域住民の多様な活動の拠点であることから,余裕教室や廃校施設については,各学校・地域の実情やニーズに応じて有効に活用することが重要です。現在,これらは,特別教室やカウンセリングルームなどとして,また,地域への開放という形で活用されているほか,公民館などの社会教育施設や児童福祉施設など学校教育以外の用途でも活用されています。
 文部科学省では,余裕教室や廃校施設が有効に活用されるよう,活用指針の作成や,学校以外の施設に転用する場合の財産処分手続の簡素化・弾力化,活用事例を紹介したパンフレットの作成・配付など,地方公共団体の創意工夫を促す支援に努めています(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu.htm(※公立学校の施設整備へリンク))。

  • (注2)余裕教室
     児童生徒数の減少等により,既存の教室数と比較して学級数が減少し,将来とも恒久的に余裕となると見込まれる普通教室のこと。
▲子育て支援施設としての活用
(千葉県船橋市高根台子育て支援センター)

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