第2節 相互理解を進める国際交流

1.留学生交流の推進

(1)留学生受入れの現状

 留学生交流は,人材の育成を通じた知的国際貢献として位置付けられるとともに,我が国が目指す国際的に開かれた社会の実現にも大きく寄与しています。また,我が国と諸外国との間の人的ネットワークの形成や,相互理解と友好関係の強化を促すことにより,世界の安定と平和に資するものです。さらに,我が国の大学などに強く求められている一層の国際化や,国際競争力の強化のためには,諸外国との知的交流の深化にもつながる留学生交流の拡大が極めて重要です。これまで文部科学省では,昭和58年に策定された,21世紀初頭における10万人の留学生受入れを目指す「留学生受入れ10万人計画」に基づき,渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進してきました。
 我が国の大学などで学ぶ外国人留学生の数は,平成18年5月1日現在で11万7,927人に上り,目標とされた10万人を超えています。これらの留学生は,その約9割がアジア地域より渡日した留学生であり,中でも中国,韓国,台湾の3か国(地域)で全体の約80パーセントを占めています(図表2-10-3図表2-10-5)。
 また,我が国の日本語教育機関で学ぶ学生は,平成18年7月1日現在で3万608人となっています(図表2-10-6)。
 なお,留学生受入れの現状の詳細は,文部科学省ホームページを参照して下さい(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/main4_a3.htm(※留学生交流の推進へリンク))。

図表●2-10-3 主要国における留学生受入れの状況

図表●2-10-4 留学生数の推移(各年5月1日)

図表●2-10-5 出身国・地域別留学生数

図表●2-10-6 日本語教育機関の在籍者数(各年7月1日現在)

(2)留学生受入れ支援体制の充実

1留学情報提供体制の整備

 日本学生支援機構は,国内外に留学情報センター(東京,兵庫,マレーシア,タイ,インドネシア,韓国)を開設し,留学に関する内外からの様々な照会に対応するとともに,海外において,日本の大学等の参加を得て,「日本留学説明会(日本留学フェア)」を実施し,現地の高校生,大学生,進学指導担当者などに対して日本への留学に関する情報の提供を行っています。平成18年度は,台湾,韓国,タイ,ベトナム,マレーシア,インドネシアなどで開催しました。
 また,同機構は日本語以外に,英語,中国語,韓国語などによるホームページ(参照:http://www.jasso.go.jp/(※独立行政法人日本学生支援機構ホームページへリンク))を開設し,日本留学に関する基本情報をはじめ,大学情報や奨学金など留学生の入学や生活を支援する情報の提供を行っています。

▲日本留学説明会(日本留学フェア)

2日本留学試験の実施

 従来,我が国の大学への留学生の入学選抜においては,受験のために渡日する必要があるなど,欧米諸国の大学への留学に比べて手続が煩雑で,留学希望者にとって負担が大きいと指摘されてきました。このため,文部科学省では,日本学生支援機構と協力して,海外で広く実施され,渡日前に入学許可を得ることを可能とし,留学希望者にとって利用しやすい試験として「日本留学試験」を開発し,平成14年度から実施しています。
 本試験は年2回(6月と11月の第3日曜日),国内では15都市,海外ではアジア地域を中心に16都市で実施しています。
 平成17年度の受験者数の合計は,国内2万5,526人,海外4,594人の計3万120人でした。
 また,本試験の利用大学は398大学(国立83校,公立47校,私立268校),84短期大学(国立0校,公立8校,私立76校)となっています(平成18年8月15日現在)。さらに,本試験を利用した渡日前入学許可制度を導入している大学は62大学(国立15校,公立1校,私立46校),10短期大学(すべて私立)となっています(平成18年5月30日現在)。今後,本試験がより多くの大学で利用され,渡日前入学許可が実施されることが望まれます。

3留学生に対する支援措置

(ア)国費外国人留学生の受入れ

 国費外国人留学生制度は,文部科学省(当時の文部省)が,諸外国の次代を担う優れた若者を我が国の高等教育機関に招へいし,教育・研究を行わせる制度として昭和29年に創設されました。現在,研究留学生(大学院レベル)や学部留学生,ヤング・リーダーズ・プログラムなど7種類のプログラムにより実施されており,これまでに約6万9,000人の国費外国人留学生を支援してきました。

(イ)私費外国人留学生などへの援助

 文部科学省では,私費外国人留学生に対して,従来から,優れた私費外国人留学生の国費外国人留学生への採用,授業料減免措置を講じた学校法人への助成などの施策を実施することにより,私費外国人留学生が安定した生活の中で勉学に専念できる環境の整備に努めています。
 また,日本学生支援機構では,私費外国人留学生や大学進学を目指して日本語教育機関で学ぶ就学生に対する学習奨励費(奨学金)の給付,医療費(自己負担額)の一部補助などを実施しています。

(ウ)宿舎の安定的確保

 日本学生支援機構では,留学生宿舎の建設などを行う地方公共団体などに対する「留学生宿舎建設奨励金」の交付や,留学生専用宿舎として賃貸を行う家主に対して協力金(指定契約金)を交付する「指定宿舎事業」を実施しています。
 財団法人留学生支援企業協力推進協会では,保有する社員寮に留学生を受け入れる民間企業に対する助成を,財団法人日本国際教育支援協会では,入居の際の保証人の負担の軽減及び入居者の損害賠償を目的とした「留学生住宅総合補償制度」などの施策をそれぞれ実施しています。

4大学などにおける受入れ体制の整備

 文部科学省では,指導援助体制の整備のため,外国人留学生を受け入れている私立大学などに対しては,当該大学などの受入れ留学生数などを考慮した私立大学等経常費補助金の特別補助を行っています。

5留学生のための教育プログラムの充実

 我が国への留学形態が多様化する中,留学生の需要に応じた魅力ある教育プログラムを提供する大学が増えています。学部レベルでは,28の国立大学と31の私立大学において,短期留学生のために英語によるプログラムや特別コースを開設し,英語による授業を実施しています。また,大学院レベルでの国費外国人留学生について,平成18年度から「国費外国人留学生(研究留学生)の優先配置を行う特別プログラム」の公募を開始しました。

▲「書道」を体験する留学生

6地域における留学生支援

 留学生と地域住民との交流,留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進するため,全都道府県に,大学,地方公共団体,経済団体,民間団体などによって構成される地域留学生交流推進会議が設置されています。

7帰国留学生に対する援助の充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め,母国において活躍できるように,文部科学省では,日本学生支援機構を通じて,専門誌・学会誌の送付,短期研究のための帰国留学生招へい事業,研究支援のための指導教官の派遣など援助を行っています。

(3)日本人学生に対する海外留学の支援

1海外留学の現状

 近年,我が国において,海外の大学などに留学する学生が増加してきています。各国などの統計によれば,平成15年に海外に留学した日本人は,主要37か国において約7万5,000人です。留学先別に見ると,その約7割が欧米諸国となっています(図表2-10-7)。

図表●2-10-7 日本人の主な留学先・留学生数(2003年)

2海外留学に関する施策

 文部科学省では,国費による日本人学生の海外派遣制度を設けています。
 平成16年度からは,日本人の学生等を海外の大学院等に派遣し,学位取得や専門分野の研究をさせることにより,国際化する社会に対応できる優秀な人材の養成を支援する留学生派遣事業を実施しています。
 また,外国政府などの奨学金により,平成17年度は39か国に約500人の日本人学生などが留学しており,文部科学省では,その募集・選考に協力しています。
 さらに,海外留学の大半を占める私費留学について,日本学生支援機構の留学情報センターを通じて,留学情報の収集・整理を行い,また,「海外留学説明会」を開催するなど,留学希望者に対する情報提供を行うとともに,留学に関する相談に応じています。

(4)留学生相互交流(受入れ・派遣)の推進

 大学間交流協定などに基づき,母国の大学に在籍したまま,他国の大学で1年間程度,教育を受けて単位を修得したり,研究指導を受けたりする短期留学は,異文化体験を通じて国際的な感覚の涵養が可能となるなど,非常に有意義なものです。日本学生支援機構では,こうした短期留学を推進するために,大学間交流協定などに基づき,諸外国の大学へ派遣される日本人学生や諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生を支援する奨学金制度として「短期留学推進制度」を設けています。この制度により,平成17年度には,1,734人の留学生を受け入れ,623人の日本人学生を派遣しました。また,我が国の複数の大学が連合体(コンソーシアム)を形成し,同じくコンソーシアムを形成した外国の大学との間で取り交わした協定などに基づき,海外の大学に派遣される日本人学生に奨学金を支給する「先導的留学生交流プログラム支援制度」も実施しています。

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