第3節 科学技術振興のための基盤の強化

3.研究情報基盤の整備

 情報通信技術の急速な進展に対応して,研究情報基盤の整備を進めることは,我が国の研究開発の国際競争力を確保する上で重要な要素です。第3期科学技術基本計画でも,研究情報基盤は研究活動に不可欠ないわば生命線としての性格を有するとされ,その重要性が強調されています。また,我が国の研究開発活動をより効果的・効率的なものとするためには研究開発情報の収集,発信力の強化も重要です。文部科学省は,大学と各種研究機関の連携を図りつつ,ネットワークやデータベースなどの研究情報基盤の整備を進めています。

(1)ネットワークの整備・充実と計算資源の確保

 文部科学省では,大学や研究機関における研究情報の流通の基盤となるネットワークを整備・充実することにより,研究開発の情報化を推進しています。

1学術情報ネットワーク(SINET及びスーパーSINET)の構築

 学術情報ネットワーク(SINET)は,大学などの研究者が必要とする学術情報を流通させるための基幹的ネットワークです。情報・システム研究機構国立情報学研究所を中心に全国の国公私立大学などとともに,海外の研究ネットワークや民間のネットワークとも接続し,研究情報の流通を図っています。さらに,平成14年1月から,先端的研究機関を最速10Gbps(ギガビットパーセカンド)の回線で接続する世界最速レベルの研究ネットワーク「スーパーSINET」を構築しました。スーパーコンピュータの遠隔利用,超高速ネットワークを活用した分散型共同研究,大容量データの共有・活用などが可能となるなど,学術研究の飛躍的発展に貢献しています。18年度は,800を超える大学・研究機関等が接続しています。

2大学等における学内LAN及び計算資源の整備の支援

 我が国の大学等が常に最先端の教育研究活動を行えるよう,七つの大学(北海道大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,京都大学,大阪大学,九州大学)の全国共同利用施設である情報基盤センターでは,高速の計算能力を有する計算機を設置しています。また,大学にあるコンピュータや情報機器を通信回線で接続するネットワーク(学内LAN)の整備を支援することにより,教育研究の一層の情報化・高度化を図っています。

(2)研究情報流通の促進

 文部科学省では,研究者が必要な研究情報を迅速かつ的確に入手するために不可欠なデータベースの整備や,研究情報の発信・流通を促進するシステムの開発を推進しています。

1研究情報データベースの整備

(ア)文献情報

 科学技術振興機構では,国内外の科学技術文献を収集して,その2次情報(抄録・索引等)を検索・閲覧できる文献情報検索サービス(JDream2)を提供しています。また,情報・システム研究機構国立情報学研究所では,大学図書館などが所蔵する学術図書・雑誌の総合目録データベースを構築するシステム(NACSIS-CAT)で作成されたデータベースをWWW検索サービス(Webcat/Webcat Plus)を通じて提供しています(参照:http://webcatplus.nii.ac.jp/(※Webcat Plusホームページへリンク))。

(イ)研究資源情報,研究者情報等

 科学技術振興機構では,公的研究機関に蓄積されている知的資産をデータベース化し,ネットワーク上で広く流通させる研究情報データベース化事業を実施しています。また,我が国の大学・公的研究機関等における研究成果の発信を促進するために,研究者,研究機関,研究課題などに関する総合的なデータベース(ReaD)を作成し,研究者情報等をインターネットで提供しています(参照:http://read.jst.go.jp/(※ReaD研究開発支援総合ディレクトリホームページへリンク))。

2研究情報の発信・流通の促進(デジタルコンテンツの整備)

 科学技術振興機構では,我が国からの研究成果の情報発信機能を強化するために,学協会の学会誌・論文誌における論文の投稿から査読,審査,公開までの工程を電子化して行う科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)を整備しています(参照:http://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja(※J-STAGE[科学技術情報発信・流通総合システム]電子ジャーナルホームページへリンク))。また,科学技術分野の重要な学協会誌の電子アーカイブ化(注)を行い,インターネットを通じて広く世界に発信・流通させています(参照:http://www.journalarchive.jst.go.jp/japanese/(※Journal@rchiveホームページへリンク))。
 情報・システム研究機構国立情報学研究所では,大学などから発信される多種多様な情報から研究者が必要とする研究情報を統合的に利用することを可能とする「学術コンテンツ・ポータル(GeNii)」を運用しています(参照:http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp(※GeNii(NII学術コンテンツ・ポータル)ホームページへリンク))。
 さらに,日本発の電子的な有力学術雑誌の育成を目的とする「国際学術情報流通基盤整備事業」により,国際競争力が期待できる日本発の英文学術雑誌を公募により選定し,国内大学図書館,海外関係団体などとの連携により,国際流通を促進しています。

  • (注)電子アーカイブ化
     電子的な保存記録とすること。

前のページへ

次のページへ