第2節 高等教育の更なる発展に向けて

1.社会に開かれた高等教育

(1)社会人受入れへの対応

 社会,経済が高度化・多様化する中で,個人が豊かで充実した生活を送るためには,社会人となった後でも,高度で先端的な知識や技術を学びたいときに学ぶことができる環境を整備することが必要です。文部科学省は,このような観点で,社会人の受入れを一層促進できるように制度の弾力化に取り組んできました(図表2-3-12)。

図表●2-3-12 社会人特別選抜実施校

1長期履修学生制度の導入

 従来,個人の事情により修業年限を超えて履修を行うことを希望する場合(例:4年制大学で6年間学ぶ場合など)も,留年や休学として取り扱われていました。
 平成14年3月から,個人の事情に応じて,大学の修業年限を超えて計画的かつ柔軟に教育課程を履修して卒業することができることを内容とする,長期履修学生制度を導入しました。これにより,職業などに従事しながら大学で学ぶことを希望する人々の学習機会が拡大しています(16年度現在,122大学において導入)。

2通信制の大学院の制度化

 大学院における社会人の多様な学習需要にこたえるため,社会人特別選抜制度の導入や夜間大学院の設置,科目等履修生(注)制度の活用など様々な取組が行われてきています。
 平成10年3月には,大学院における教育研究の一層の弾力化のため,通信制の大学院(修士課程)を設置することができるようになりました。通信制の大学院は,大学院レベルの教育を受けたいと思いながら,自宅や職場から通学できる範囲に受けたい分野の教育を提供する大学院がないことや,職場環境によって通学可能な時間帯が限られることなどの,地理的・時間的制約などから,通学が困難な社会人などのニーズにこたえることを目的とするものです。18年5月1日現在で,通信制の研究科を置く大学院は19校(放送大学を含む。)あります。
 また,平成14年4月からは,博士課程についても通信制の大学院を設置することができるようになり,18年5月1日現在で,前述の19校中,7校となっています。

  • (注)科目等履修生
     正規の学生と異なり,大学で開設されている授業科目のうち必要な授業科目や興味関心のある授業科目だけを選んで履修する学生。正規の学生と同様,履修した授業科目について試験の上で単位が与えられる。

3学部でのサテライトキャンパス

 近年,社会人など時間的・地理的制約などにより大学の本校に継続的に通うことが困難な人が,サテライトキャンパスと呼ばれるような,大学の校舎以外の場所において大学教育を受けることについてのニーズが高まっています。このため,平成15年3月にこのような校舎外の教育施設が備えるべき要件などを明確化し,各大学での取組が行われやすいようにしました。今後は社会人のほかにも,例えば,単位互換による授業を受ける者で,単位互換先の校舎に通うことが困難な者などもサテライトキャンパスを活用することが期待されます。

(2)地域社会・産業界との連携

 近年,社会,経済が高度化,複雑化し,グローバル化が一層進展する中で,今後も我が国が活力ある社会を築き,国際社会での競争力を維持・強化していくためには,多様な社会の要請に対応できる人材や,新たな産業を創出する創造性豊かな人材の養成が不可欠となっています。また,地域づくりの核として,地元大学を積極的に活用した各種の取組が注目されています。加えて,大学の果たすべき機能として,教育・研究と並んで社会への貢献も重要なものと認識されています。
 このため,文部科学省は,高等教育機関における地域社会と連携した教育の推進,インターンシップ(就業体験)の推進,産学連携による教育プログラムの開発・実施といった,大学等と地域社会・産業界との連携・協力による教育の充実を図るための支援を行っています。
 具体的には,「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」の公募テーマの一つとして,「地域活性化への貢献」に関するテーマを設定し,大学等がその人的・物的資源を活用しながら,地域社会と組織的に連携して行う学生教育の優れた取組を選定・支援するとともに,フォーラムの開催などにより広く社会に情報提供しています。
 さらに,インターンシップを推進するため,大学や企業関係者が情報交換や意見交換などを行う全国フォーラムの開催をはじめ,大学等で行うインターンシップを支援しています。
 また,高度専門人材の育成として,平成17年度から,大学院生を対象とする産学協同の企業現場などの実践的環境を活用した質の高い長期(おおむね3か月以上)インターンシップの開発等を大学に委託する「派遣型高度人材育成協同プラン」などを実施しています(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/sangaku/index.htm(※派遣型高度人材育成共同プランへリンク))。
 このように高等教育段階における地域社会・産業界との連携が,社会の要請を的確に反映し,多様性と質を高めながら一層推進されることにより,これからの知識基盤社会を支える高度で有為な人材を育成していくことが期待されています。

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