第8節 児童虐待の防止

 児童虐待の防止については,平成12年5月に「児童虐待の防止等に関する法律」(12年11月施行)が成立して以来,国民一般の理解の向上や関係者の意識の高まりが見られる中で,様々な施策の推進が図られてきました。しかしながら,近年,子どもの尊い生命が奪われるなどの痛ましい児童虐待事件は後を絶たず,児童相談所への虐待に関する相談対応件数も17年度には3万4,472件となるなど,児童虐待問題は依然として早急に取り組むべき社会全体の課題となっています。
 このような状況の中,平成16年4月には,「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し,16年10月より施行されました。主な改正点は,児童虐待の定義の拡大・明確化や早期発見を図るための通告義務の範囲の拡大などです。文部科学省としては,改正法の趣旨などについて,通知を出すなど学校教育関係者等に周知徹底を図っています。
 また,こうした児童虐待の深刻な状況や,児童虐待防止法や児童福祉法の改正を踏まえ,文部科学省では平成17年度から「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を実施しています。具体的には,学校・教育委員会における全国的な児童虐待防止に関する実践事例の収集・分析や,海外の児童虐待防止に向けた先進的取組に関する調査・分析を行い,18年6月にその成果を取りまとめました(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06060513.htm(※生徒指導等についてへリンク))。さらに,この成果をもとに児童虐待防止に向けた学校等における取組を促進するよう,18年度には教員等向けのモデル的な研修プログラムの開発を進めています。
 このほかにも,「子どもと親の相談員」やスクールカウンセラーを学校に配置し,児童虐待の早期発見・早期対応などに努めています。
 また,子育てヒント集としての「家庭教育手帳」の作成・配付や子育てに関する学習機会や情報の提供など,子育てについて無関心な親や,子育てに不安や悩みを持ちながら孤立しがちな親を含めたすべての親に対するきめ細かな家庭教育の支援を行っています(参照:本章第2節)。
 各都道府県教育委員会においても,これらを受けて,教員向け指導資料の作成・配付,研修などを通じて,各学校に対して児童虐待の防止に関する啓発・指導を行っています。さらに,平成16年度から11月が「児童虐待防止推進月間」と定められたことを受け,18年度においても厚生労働省をはじめとした関係機関と協力し,集中的な広報・啓発活動を実施しました。今後とも関係機関等と緊密な連携を図り,児童虐待の防止,早期発見・早期対応などに向けた具体的な取組を一層推進していくよう努めていきます。

前のページへ

次のページへ