地域住民にとって最も身近な学習拠点であり,地域の教育力活性化の拠点として重要な役割を果たすことが期待される公民館や図書館などの社会教育施設には,より豊かで質の高いサービスを提供することが求められています。
公民館は地域住民にとって最も身近な学習拠点というだけでなく,交流の場として重要な役割を果たしており,平成17年10月現在,全国の公民館数は1万7,143館となっています(図表2-1-8)。
公民館においては,住民の学習ニーズや地域の実情に応じた多様な学習機会の提供が行われています。さらに,今後は,社会の要請に的確に対応した取組や,子どもや若者,働き盛りの世代も含めて,地域住民全体が気軽に集える,人間力の向上などを中心としたコミュニティー(地域社会)のためのサービスを総合的に提供する拠点となることが期待されています。
しかしながら,現在,公民館における学級・講座の内容は,学習内容や対象者が偏る傾向があると指摘されています。例えば,趣味やけいこ事,教養に関する内容が多数を占めているほか(図表2-1-9),利用者も,昼間に社会教育施設を利用しやすいと考えられる60代以上の層が特に多くなっている(図表2-1-10)状況にあります。
このため,文部科学省では,防犯・防災などの公共的な課題についての学習内容の充実や課題解決に向けた活動支援を進めるため,関係省庁等と連携するなどして,学習活動の機会の充実のため講師派遣などの支援を行っています。
法務省及び最高裁判所と連携して,社会教育施設等を活用した司法制度・裁判員制度などに関する教育・啓発活動の推進について支援しています。
「安全・安心なまちづくり全国展開プラン(平成17年6月・犯罪対策閣僚会議決定)」において推進が明記され,警察庁と連携して,地域における防犯教育・防犯活動及び防犯ボランティア活動の推進について支援しています。
内閣府及び国土交通省と連携して,公民館などの社会教育施設等を活用した防災教育の普及啓発を支援しています。
経済産業省,電気事業連合会及び社団法人日本ガス協会,石油連盟,全国石油商業組合連合会及び石炭エネルギーセンターなどの加盟企業等と連携して,公民館などの社会教育施設等を活用した地域におけるエネルギー教育活動を支援しています。
図書館は,住民の身近にあって人々の学習に必要な図書や資料情報を収集・整理・提供する社会教育施設です。平成17年10月現在の図書館数は,公立図書館が2,955館,私立図書館が24館となっています。なお,図書館数,図書の貸出冊数及び利用者数は,着実な伸びを示しています(図表2-1-11)。
文部科学省では平成18年3月に,これからの図書館の在り方検討協力者会議報告「これからの図書館像−地域を支える情報拠点を目指して−」を取りまとめ,地域や住民の課題解決を支援する機能の強化など,これからの図書館サービスに求められる新たな視点とその方策について,具体的な取組事例を盛り込みつつ提言を行いました。同協力者会議では,引き続き18年9月から,司書の養成・研修の在り方について検討を進めています(参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/(※図書館の振興へリンク))。
そのほか,新任図書館長を対象とした研修や中堅の司書を対象とした地区別研修を引き続き実施するなど,図書館振興施策に取り組んでいます。
博物館は,資料収集・保存,調査研究,展示,教育普及といった活動を一体的に行う施設であり,実物資料を通じて人々の学習活動を支援する施設としても,重要な役割を果たしています。また,博物館は,歴史や科学博物館をはじめ,美術館,動物園,水族館などを含む多種多様な施設であり,平成17年10月現在,登録博物館が865館,博物館相当施設が331館,博物館と類似の事業を行う施設が4,418館あります(図表2-1-12)。
文部科学省は,調査研究やモデル事業などを通じて各博物館の諸活動を支援するとともに,従来の基準について大綱化・弾力化を図り,博物館に期待される新たな役割に的確に対応できるよう,平成15年6月に新たな基準として「公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準」を告示しました。一方,私立博物館に関しては,「私立博物館における青少年に対する学習機会の充実に関する基準」を定め,週一日以上児童・生徒の入場を無料にするなどの取組を行っている私立博物館に対して,青少年の学習や体験活動等の場として積極的な活用が図られるように,認定を行っているほか,一定の条件下での税制上の優遇措置制度を行うなど,その振興が図られるよう支援を行っています。
また,全国博物館長会議を開催するなど様々な研修や会議を実施しています。さらに,平成16年度からは,観光立国政策とあいまって増え続ける海外からの旅行者をはじめ,すべての人々にとって博物館が利用しやすい施設となるよう「誰にもやさしい博物館づくり」をテーマに調査研究を行っています。調査研究においては,例えば,博物館における展示資料等を的確な外国語で表現した用語集を作成配付し,全国の博物館での普及を図っています。
国立科学博物館では,我が国唯一の国立の総合科学博物館として,自然科学などに関する資料を収集・保管し,調査研究を行うとともに,展示活動や学習支援活動を積極的に行っています。平成16年11月にグランドオープンした新館は,「地球生命史と人類―自然との共存をめざして―」をテーマとして最新の研究成果を基に,地球・生命・科学技術の過去と現在,人類とのかかわり合いについて展示しています。また,青少年や一般成人を対象とした多様な講座や観察会,博物館職員等を対象とした研修などの実施,教育ボランティア(注1)による学習支援活動や入館者に対するガイドツアーも行っています。さらに,18年度からは,17年度に開始した大学パートナーシップ事業(注2)の一環として,学生の常設展無料入館に加え,「国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講座」や「大学生のための自然史講座『日本列島の自然史』」を開設し,学生の科学リテラシー(科学技術に関する基礎的な知識や能力)やサイエンスコミュニケーション(科学技術と一般社会との双方向的な対話)能力の更なる向上に努めています。