第2節 新しい時代にふさわしい教育基本法について

2.教育基本法改正の経緯

 教育基本法の見直しに関する議論はこれまでも様々な機会になされてきましたが,平成12年3月に内閣総理大臣の下に設けられた教育改革国民会議は,改めて国民的な議論を提起しました。同会議は,12年12月,「教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−」をまとめ,15の具体的な政策と並んで,教育振興基本計画の策定と教育基本法の見直しの必要性を提言しました。
 この提言を受け,平成13年11月には,文部科学大臣から中央教育審議会に対して,新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について諮問がなされました。約1年4か月にわたる審議を経て,中央教育審議会は,15年3月,「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(答申)を文部科学大臣に提出しました。
 答申では,これまでの教育基本法に書かれている「個人の尊厳」,「人格の完成」などの普遍的な理念は今後とも大切にする一方で,21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から,今日極めて重要と考えられる教育の理念や原則を明確にするため,教育基本法を改正することが必要であると提言されました。
 具体的には,教育の目標として,公共の精神,道徳心,自律心の涵養や伝統・文化の尊重,郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養などを新たに盛り込むほか,これまでの教育基本法では触れられていない,生涯学習の理念,大学や私立学校,家庭教育の役割,学校・家庭・地域社会の連携・協力などについて,新たに規定するよう提言されました。
 また,与党においては,平成15年5月以降「与党教育基本法改正に関する協議会」及び「検討会」が設けられ,約3年にわたって精力的な議論が行われ,18年4月に「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」が取りまとめられました。
 これらの中教審答申や与党の最終報告などを踏まえ,政府において教育基本法案を作成し,平成18年4月28日に閣議決定し,国会に提出しました。
 国会では,第164回通常国会から第165回臨時国会にかけて,衆議院と参議院にそれぞれ「教育基本法に関する特別委員会」が設置され,合計190時間近い審議を経て新しい教育基本法が平成18年12月15日に成立し,12月22日,公布・施行される運びとなりました(法律の内容については参考資料「新しい教育基本法について」(PDF:3,760KB)参照)。

▲平成18年12月15日に改正教育基本法が成立し,あいさつをする伊吹文部科学大臣
(参議院本会議場にて)

教育基本法改正法成立を受けての内閣総理大臣の談話(平成18年12月15日)

 本日,教育基本法改正法が成立いたしました。
 教育基本法の改正については,平成十二年の教育改革国民会議の報告以来,国民的な重要課題として取り組んでまいりましたが,今般この法律が成立したことは,誠に意義深いものがあり,ここに至るまでの関係者の御努力,国会の御審議に感謝申し上げます。
 昭和二十二年に制定された教育基本法のもとで,戦後の教育は,国民の教育水準を向上させ,戦後の社会経済の発展を支えてまいりました。一方で,制定以来既に半世紀以上が経過し,我が国をめぐる状況は大きく変化し,教育においても,様々な問題が生じております。このため,この度の教育基本法改正法では,これまでの教育基本法の普遍的な理念は大切にしながら,道徳心,自律心,公共の精神など,まさに今求められている教育の理念などについて規定しています。
 この改正は,将来に向かって,新しい時代の教育の基本理念を明示する歴史的意義を有するものであります。本日成立した教育基本法の精神にのっとり,個人の多様な可能性を開花させ,志ある国民が育ち,品格ある美しい国・日本をつくることができるよう,教育再生を推し進めます。学校,家庭,地域社会における幅広い取組を通じ,国民各層の御意見を伺いながら,全力で進めてまいる決意です。
 国民各位におかれましても,今回の改正の意義について御理解を深めていただき,引き続き,御協力賜りますようお願いする次第であります。

教育基本法改正法成立を受けての文部科学大臣談話(平成18年12月15日)

 本日,教育基本法改正法が成立し,我が国の教育改革は新たな第一歩を踏み出しました。関係各位のこれまでのご尽力に対し感謝します。
 個人の価値を尊重しつつ,その能力を伸ばし,志ある国民を育て,品性ある国民による品格ある国家・社会をつくるために,教育が重要であることはいつの時代も変わりありません。
 昭和22年に制定された前教育基本法のもとで我が国の教育は充実発展し,豊かな経済社会や安心な生活を実現する原動力となるなど,多くの成果をあげてきました。しかし,制定から半世紀以上が経過し,科学技術の進歩,情報化,国際化,少子高齢化,家族のあり方など,我が国教育をめぐる状況が大きく変化し,様々な課題が生じています。
 このため,今回の改正法は,これまでの教育基本法が掲げてきた普遍的な理念を継承しつつ,公共の精神等,日本人が持っていた「規範意識」を大切に,それらを醸成してきた伝統と文化の尊重など,教育の目標として今日特に重要と考えられる事柄を新たに定めています。
 私は,教育基本法改正法の成立を受けて,国民の皆様や教育関係者に,その趣旨についての理解を深めて頂くとともに,教育基本法改正法の精神を様々な教育上の課題の解決に結びつけていくため,関係法令の改正や教育振興基本計画の策定などの具体的な取り組みを着実に進めてまいりたいと考えております。
 これらの取り組みを通じて,国民の皆様の共通の理解を得ながら,学校・家庭・地域社会が一体となって教育改革を推進していくためにも,教育関係者,保護者の皆様をはじめ,国民各界各層の皆様のご協力を切にお願いします。

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