令和7年6月20日(金曜日)
教育、科学技術・学術、その他
研究者・教員の無期転換ルールの運用状況、私立大学の研究力の強化に向けた支援の在り方、性に関する指導の在り方、学校の新年度の始業日や人事異動の内示時期の工夫事例、会期末を迎える第217回国会に関する所感、日本学生支援機構の奨学金支給遅れ
令和7年6月20日(金曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。
令和7年6月20日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
記者)
研究者の有期労働契約が10年を超えれば無期雇用に転換できるルールについて、毎日新聞が全国の国立大にアンケートしたところ、日本の研究力低下の要因になっていると半数近くの大学が答えました。さらに、定年以外の理由で10年直前で労働契約を終了した教員と研究者が全国の国立大学で701人に上ったことも判明しましたが、これらに対する大臣の受け止めと、財源となる運営費交付金の拡充や無期転換ルールの見直しなどを求める声も上がっておりますが、こちらについての文科省としての見解をお答えください。
大臣)
そのような報道がありましたことについては、承知をしているところでございます。研究者・教員の無期転換ルールの適用を免れる意図を持ってしていわゆる「雇い止め」を行うことは労働契約法の趣旨に照らしまして望ましくないというふうに考えておりまして、文部科学省といたしましては適切な対応をとっていただくよう、大学・研究機関等にお願いをしているところでございます。科学技術・イノベーションを推進するためには、やはり研究者が腰を据えて研究に打ち込めるようにするとともに、多様な研究経験を積み、能力の向上を図ることができるような環境整備を行うことも重要でございます。文部科学省といたしましては、引き続き研究者の流動性と安定的な研究環境の確保の両立、ここがまさに重要でございまして、それを図ることによって我が国の研究力の向上にしっかり努めてまいります。
もう一つお尋ねの件でございますが、運営費交付金の拡充なども含めてでございますが、国立大学法人運営費交付金などの基盤的経費でございますが、教職員の雇用を含めまして大学や研究機関が安定的・継続的な教育研究活動を実施するための重要な経費でございます。それを私ども認識しているところでございます。また、無期転換ルールの10年特例につきましては、2024年に文部科学省の審議会におきまして検討した結果でございますが、「特例が開始されたばかりの現段階におきましては本制度の運用の結果、研究者・教員等の雇用の安定性の確保に一定の役割を果たしている」とされたところでございます。文部科学省といたしましては、引き続き物価の動向なども踏まえつつ、大学・研究機関の基盤的経費の確保に全力で取り組んで努めてまいるとともに、今後とも無期転換ルールの運用状況を把握しながら必要に応じて見直しを図ってまいりたいというふうに思います。以上です。
記者)
18日に開催された私立大学のあり方に関する検討会議についてお尋ねします。私立大学の研究力の強化に向けた支援のあり方に関する議論がされたかと思います。今後、研究力の高さや理工農系人材育成を新たな基準にして重点配分される見通しとの報道がありましたが、大臣の所見についてお伺いさせいただきたいです。
大臣)
一昨日18日でございますが、開催されました「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学のあり方検討会議」、こちらにおきまして国際競争力の向上に向けた私立大学の研究力の強化、また日本の産業を支える理工農系分野の人材育成などの観点から議論が行われたということを承知しているところでございます。文部科学省といたしましても、こうした議論を踏まえた上でイノベーションの創出、さらには産業人材の育成などにおきまして重要な役割を果たす私立大学に対しまして、その機能、取組に着目いたしまして支援の重点化を図るなど、今後の支援のあり方について検討をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えています。以上です。
記者)
性教育の関連でお伺いします。仙台市内の市立中学校で外部講師が性教育として「性的同意」という言葉が書かれたスライドなどを作って準備していましたが、仙台市教育委員会から性的同意という言葉は使わず「自分と相手を守る距離感」などというふうに教えるように学校を通じて実質的な指導があったそうです。仙台市教委は、「学習指導要領を踏まえて教科書に準じた内容でやってほしい」ということとして釈明をしています。この仙台市教委の対応について適切だというふうにお考えでしょうか。また、性犯罪を巡っては強制性交罪とか準強制性交罪が2023年の刑法改正によりまして性的同意に主眼を置いた「不同意性交罪」というふうになっております。こういった社会的な変化、情勢がある中で子供たちに性的同意ということについて教えることというのは大変重要だという指摘も多くあります。このことについて、大臣はどのように、性的同意というものを教えることについてどのようにお考えか、お考えをお聞かせください。
大臣)
この仙台市内の市立中学の件でございますが、詳細をちょっと承知をしておりませんので個別の事案に関してはコメントすることは控えさせていただきたいというふうに思います。ただ、一般論として申し上げれば性に関する指導を授業で扱う場合におきましては、児童生徒が性に関して正しく理解をし、また適切な行動がとれるよう取り組むことがまさに重要であると私ども考えております。その観点から、学校の設置者である教育委員会が各学校に指導助言を行うこともあり得るとは考えております。その上で、報道にあります「性的同意」といった用語を始めまして、特定の用語の適否につきましては一概に申し上げることはできませんが、いずれにしても学校における性に関する指導にあたりましては発達の段階を踏まえながら学校全体での共通理解を図り、さらには保護者の理解を得ながら実施するようにすることが重要となります。文部科学省としては、こうした趣旨等について関係者の理解が深まるよう、引き続き周知に努めてまいりたいというふうに思います。
さらには、子供たちに性的同意に関して教えることに関してでございますが、加害者にも被害者にもならないために重要という指摘もある中でございまして、御指摘のとおり、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないことはまさに重要でございまして、文部科学省といたしましては性的同意の趣旨につきまして関係省庁との取組ともしっかり連携をしていきながら理解促進に取り組んでまいりたいというふうに思います。
記者)
16日に開かれました中教審の教育課程企画特別部会の中で、余白の創出を通じた教育の質の向上というテーマでこれまでの議論を踏まえた教育課程の課題と対応案の整理が行われているのですけれども、その中で時間マネジメントの好事例として年度始めの始業日を後ろ倒しにするということでとか、その前に人事異動の内時期を早めたりすることというのが言及されています。こうしたものが学習指導要領の改定を待たずに自治体判断できるものも多いと思うのですけれども、こうしたちょっとした工夫みたいなところをどのように広めていくのかというところについてお伺いしたいと思います。また、それと似たような話として教員採用試験に合格した人ですとか、初任者の方なんかに話を聞くと4月に着任する学校がどこになるかといった情報をなかなか教えてもらえないと。それ故にどこの学校になるか分からないので部屋を借りるのにすごく苦労するといったような話も聞きます。人事異動の内時期を早めるということができるのであればこうした点も改善できるのではないかなというふうに思うのですけれども、そのあたりの見解も合わせてお願いします。
大臣)
先日の部会におきまして、教育課程の実施に伴う過度な負担が生じにくい在り方を追求しつつ、教師と子供の双方が余白を創出していきながら教育の質の向上につなげていく方策について包括的な検討が行われたところでございます。この中におきまして、現行の教育課程の下におきましても、年度初めの始業日を例えば後ろ倒しにしたり、人事異動の内示時期を早めるといった取組によりまして、教師の余白を創出している事例があることを踏まえまして、今後、文部科学省として事例の提供をする旨を提案をさせていただきました。今後、秋までに行うこととしております企画特別部会の論点整理に向けまして事例等の整理を行いまして、来年度の教育課程編成の検討に間に合うように私ども情報提供してまいりたいというふうに思っております。
また、新規採用の教師の件でございますが、どの学校に配置するかを含めまして、教師の配置につきましては任命権者である各教育委員会の権限と責任において判断されるものではございます。そういう中で、新規採用の教師の具体の学校配置に当たりましては地域の実情、また学級数の変動、また現職教師の配置状況なども考慮した上で検討を行う必要があるというふうに私ども認識をしているところでございまして、結果として3月中旬頃に内示が行われている例もあるものと私ども承知をしているところでございます。いずれにいたしましても、各教育委員会におきまして地域の実情等に応じながら、新規採用の教師の新たな門出でございますので、そこに配慮した適切な人事管理を行っていただくことを期待するところでございます。
記者)
国会の会期末までわずかとなりました。この間、給特法など文科省所管の2本の法律が成立した他に、教育の無償化についても議論が前進したかと思います。このことについて、今国会を振り返ってどう思われるか、大臣の所感をお願いします。
大臣)
まだ22日の会期末まで会期は残っているところでございますが、今国会、御指摘のように文部科学行政におきまして大変重要なテーマを扱うものになったところでございまして、与野党の先生方と様々な議論ができたというふうに考えています。特に文部科学省が提出いたしました2本の法案でございますが、我が国が直面する特に喫緊の課題の一つであります少子化への対策といたしまして、子育て世帯の教育費の負担軽減を図る「大学等修学支援法」、また50年ぶりとなる教職調整額の引き上げをはじめ、教師を取り巻く環境の抜本的な改善を図る「給特法等」の改正法案については、国会における充実した審議を経まして成立させることができました。また、教育無償化につきましてでございますが3党協議、また予算案の修正による先行措置の実施を始めといたしまして様々な進展がございまして、先週13日でございますが、閣議決定いたしました「骨太の方針」におきましても「各般の議論に基づき具体化を行い、また令和8年度予算の編成過程において成案を得て実現する」ことが盛り込まれたところでございます。国会は閉会となりますけれども、先生方からいただきました様々な御指摘も踏まえつつ、改正法の円滑な実施、また施行のための取組を進めていくとともに、教育無償化をはじめとする「骨太の方針」に掲げられました重要事項をまさに実行に移すべく、引き続き検討を重ねた上で必要な要求をしっかりと行いながら、政策の推進に必要な予算の確保に向けて全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。
記者)
日本学生支援機構が支給する奨学金の関係なのですけれども、4月末までに申し込みをした学生の一部で6月分の支給の遅れが出ているという話があるようです。今年度から始まったいわゆる多子世帯を対象にした授業料の減免の制度で申請件数が大きく増えたことが要因の一つとも考えられておりますけれども、その関係でお伺いできればと思います。一つは、現時点でもし分かればですけれども、どのぐらいの学生が影響を受けているかという点、また今後の支給の見通し、または原因についての御見解、もしくは文科省としての今後の対応についてお伺いできればと思います。
大臣)
日本学生支援機構の奨学金に関しまして、約4.4万人の方に対する支給が本来の6月11日から遅れている状況でございます。このうち、本日までに約2.7万人の方に関しましては振込が完了をいたしまして、残りの方についても遅くとも6月25日、来週水曜日までに支給される見込みと承知をしているところでございます。同機構の奨学金でございますが、学生が経済的な理由により進学や修学を諦めることがないように支援をするものでございまして、その支援が遅れるという事態はあってはならないことであるというふうに私ども考えております。文科省といたしましては、日本学生支援機構に対しまして可能な限り速やかに支給をすること、また当面の生活費等の工面が難しい方などについては個別の御事情にしっかりと寄り添った対応をすることなどを求めておりまして、対応させているところでございます。文科省としても、学生等にしっかりと支援を届けることができるよう、引き続き同機構に対応を求めてまいります。
(了)
大臣官房総務課広報室