令和7年6月6日(金曜日)
教育、科学技術・学術
東京科学大学の視察、特別支援学校・学級の教員に支給される教職調整額の在り方、米国大学に在籍する留学生に対する日本の大学の支援策、国際卓越大学である東北大学による国際的な研究者受け入れ計画、学校における性的少数者に対する理解等の促進、高校の授業料無償化を巡る3党の実務者協議の合意、筑波大学人文系組織が統合再編するという報道
令和7年6月6日(金曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。
令和7年6月6日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
大臣)
冒頭、私からは1件でございます。6月4日に東京科学大学のすずかけ台キャンパスを視察してまいりました。田中学長から研究力強化に向けました大学の取組を伺いますとともに、また米国政権の動向を踏まえた海外の研究者の受け入れについての意見交換も行わせていただきました。また、共用機器を中心といたしました研究環境の構築、高い技術力を持つ技術職員の育成、若手研究者が独創的・萌芽的な研究課題に取り組める場の確保などの取組を視察させていただきまして、関係者との意見交換を通じましてこのような研究環境の重要性を感じました。海外研究者の受け入れにつきましては、文部科学省としてこれまでも大学ファンドを通じた国際卓越研究大学への支援等を進めてきているところでございますが、6月4日に石破総理から国際頭脳循環の取組強化につきまして検討指示がございまして、各大学の取組も踏まえ、更なる取組の検討を早急に進めるよう事務方に指示をしたところでございます。今回の視察を通じて得られたことを踏まえまして、引き続き関連施策充実にしっかりと取り組んでまいります。以上です。
記者)
特別支援学校や学級の教員に支給される給与の調整額が引き下げられることについて、特別支援学校や特別支援学級に通う子どもの保護者らが先日、反対の署名を2万2,000筆以上、文科省に提出されました。そもそも特別支援の教員になるには免許状が必要ですし、医療的ケアや手話など専門的なスキルも必要になるということで、今後、全ての教師が特別支援教育に関わる必要性があるという理由で専門職の教員の手当てを半減するということは専門性を否定する行為だというふうに主張されています。この保護者たちの署名とか意見についてどうお考えでしょうか。また、調整額が半減されることで特別支援の教員のなり手が減るのではないかと懸念されてますが、これについてのお考えをお願いします。
大臣)
特別支援教育に関しましては、障害のある子どもの自立と社会参加を見据えまして、一人一人の教育的ニーズに応えるための指導、また支援を行うものでございまして、その重要性は言うまでもございません。特別支援教育に関わる教師に支給されている給与の調整額につきましては見直すことにしておりますが、これは給与の調整額の性質を踏まえ、全ての教師が特別支援教育に関わることが必要でございまして、学校全体での組織的な対応が求められていることから一般の教師との特殊性の差が相対的に縮まったことを勘案したものでございまして、特別支援教育の重要性が低下しているからということではございません。そうした中で、特別支援教育関係の教師の処遇につきましては、教職調整額の引き上げなどの改善と合わせますと毎年度上がることになりまして、また一般の教師よりも高い処遇が保たれることになります。教師の処遇改善に当たりましては、引き続きその趣旨、内容も含めまして丁寧にしっかりと周知を図ってまいりたいというふうに思います。
記者)
なり手が減るのではないかという懸念について、どうお考えですか。
大臣)
先ほど申し上げましたように、趣旨や内容を含めまして丁寧に周知を図っていきたいというふうに思っております。
記者)
東北大が国際卓越研究大の枠組みや大学ファンドからの資金を活用して、今後5年間で300億円を投じて研究者約500人を招聘する計画だという報道があったと思うのですけれども、まずこの件の事実関係についてと、あとJSTを通じて助成金を支給している文科省として東北大の取組というのをどのように評価されるか、事実関係と評価の部分というのを教えていただければと思います。
大臣)
東北大学は本年度より開始をしています国際卓越研究大学としまして、体制強化計画におきましての国際競争力のある雇用条件、またテニュア基準などの整備をして世界から優秀な研究者を戦略的に獲得することを計画しているところでございました。この報道に関しましては、この計画をより具体的に示したものと私ども承知をしておりまして、また国際的に優秀な研究者を招聘する具体的な取組について、本日11時から東北大学が記者会見を行うというふうに聞いているところでございます。東北大学には、国際的に卓越した研究者の獲得方策を含めまして、我が国の学術研究ネットワークを牽引いたしまして諸外国のトップレベルの研究大学に伍する研究大学となるための活動を強力に推進していただきたいと大いに期待しているところでございます。
記者)
アメリカのハーバード大などをめぐるトランプ政権の対応についてお伺いします。先日、アメリカの大学に在籍する留学生の支援策について、日本国内の各大学に検討を求める通知を出されました。既に自主的に支援策、方針を示されている大学もありますけれども、現在どのぐらいの大学が支援する方針なのか、取りまとめの状況を現時点であればお伺いしたいと思います。また、取りまとめられた情報についてはいつ頃どういった形で公表されるのかも合わせて伺いたいと思います。
大臣)
各大学の回答によりますと、6月5日の時点でございますが約90大学から正規生、また非正規生としての留学生の受け入れや宿舎の提供等の支援策をお答えいただいております。現在、回答内容を整理しているところでございまして、本日中には日本学生支援機構のWebサイトの方に掲載を考えているところでございます。また、大学名とか取組の詳細につきましては、現在整理中のため追って公表資料を御覧いただきたいというふうに思っております。以上です。
記者)
先日、民間のNPOの団体がLGBTQなど性的少数者の子どもや若者についての調査結果を公表しました。これによると、9割の中高生が学校で何らかの困難を経験していて、6割が困難な要因に教員というのを挙げています。また、9割以上が担任に安心して相談できないとの回答をしています。2023年成立のLGBTQの理解増進法では、学校での理解増進、相談体制の構築などが努力義務となっていますけれども、十分ではない実態が浮き彫りになったと言えます。これについて、大臣の受け止めをお聞かせください。また、次期学習指導要領の議論では多様性の包摂の必要性が言われていますが、不登校や日本語あまり話さない子どもなどと並んでLGBTQの児童生徒もそちらに含まれるという理解でよろしかったでしょうか。お答えをお願いします。
大臣)
御指摘のNPO法人が実施いたしました調査につきましては、サンプル数、調査方法など、その詳細を実は把握をしておらず、個別の見解を申し上げることは差し控えたいというふうに思いますが、一般論として申し上げますと性的少数者の方々含めまして、個々人が持つ多様な背景に関わらず全ての人がお互いを尊重し、誰もが生き生きとし、人生を享受することができる共生社会、これを目指した取組を進めることは重要であるというふうに考えております。文部科学省におきましては、これまで学校教育、また社会教育における人権教育を通しまして多様性に対する理解、また自他の人権の尊重などの態度を育む取組を進めていくとともに、教育委員会等に向けた通知会議などを通じまして、いわゆる「LGBT理解促進法」などの関係法令の周知、また教職員の理解促進のためのパンフレット、研修動画の作成・周知、スクールカウンセラーの配置の充実などの相談体制の構築の取組を進めてきたところでございまして、引き続き教育委員会や学校等において適切な対応がとられるよう、取組の充実を進めてまいります。また、次期の学習指導要領の議論についての御質問でございますが、次期の学習指導要領の検討を今中教審に求めた諮問文におきましては、「多様性を包摂し、一人一人の意欲を高め、可能性を開花させる教育の実現」を喫緊の課題と述べましたが、これはそれぞれ多様な背景を有する全ての子どもたちの可能性を開花させる教育のあり方を検討する趣旨を示したものでございまして、いわゆる性的少数者の子どもも含むものというふうに考えているところでございます。また、現行の学習指導要領については「児童生徒の発達を支える指導の充実」といたしまして、「個々の児童生徒の多様な実態を踏まえて一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行う」ことを明記をしておりまして、この対象にも当然、「性的少数者」が含まれるというふうに考えているところでございます。以上です。
記者)
今出ました質問に関連してお尋ねをさせていただきます。LGBTQや性の多様性に関しまして、2017年、前回の学習指導要領の改訂では保健体育科で思春期になると異性への関心が芽生えるという、異性愛を前提とした記述の見直しを当事者団体の方が求めるということもございましたが、当時、文科省は保護者や国民の理解などを考慮すると難しいとして見直しを見送った経緯があります。先ほど大臣もおっしゃったLGBT理解増進法が施行されたことも踏まえまして、今回議論中の学習指導要領改定では性の多様性についての記載の必要性をどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
大臣)
児童生徒の発達を支える指導に関してでございますが、学習指導要領に基づきまして「個々の児童生徒の多様な実態を踏まえ、一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行う」こととされておりまして、「性の多様性」に関する指導については児童生徒の実態に応じた個別の指導などを通じて行うこととしております。学習指導要領の改訂につきましては、現在、中教審において専門的かつ総合的な議論をいただいているところでございまして、こうした議論を踏まえつつ検討してまいりたいというふうに思います。
記者)
ハーバード大学の受け入れに関してですけれども、既に受け入れを表明している大学の中には全額学費免除など、様々な支援策を打ち出している国内の大学がありますが、学費となれば払っている学生との公平性とかいろいろな問題が出てくると思うのですが、この点、文科省としては大学の支援体制のあり方についてどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
大臣)
今回の支援策でございますが、米国の大学に在籍または留学予定の学生からの不安の声を踏まえまして、意欲と才能ある若者たちの学びの継続を保障していく観点から各大学における検討をお願いしたものでございます。文部科学省といたしましては、各大学における(注)今般の依頼の趣旨を踏まえつつ、それぞれの学生の実情、また大学の方針に応じた適切な取組を御検討いただきたいというふうに考えているところでございます。
(注)「各大学における」は、正しくは「各大学において」です。
記者)
先日の高校無償化をめぐる3党の実務者協議の合意の中で、国の「高校教育改革に関するグランドデザイン」を作った上で都道府県が実行計画を作成するということが盛り込まれました。グランドデザインという表現は中教審の高等教育をめぐる議論でよく用いられていて、あまり高校に対しては使われたことはなかったかとは思うのですが、まだ各党の党内手続きでお答えしにくい面はあるかと思うのですが、少子化や人口減少が続く状況の中で国やグランドデザインを高校教育においても作ることの必要性についてどうお考えかをお聞かせいただけますでしょうか。
大臣)
現在、3党の実務者協議が進められている状況でございまして、そこで議論されている内容についてコメントすることは差し控えさせていただきたいとは思いますが、高校無償化にあたりまして高校教育改革と高校教育の質の向上につながらなければ意味がないというのは思いを同じにするところでございます。いずれにいたしましても、引き続き3党の枠組みにおきまして公立高校などへの支援の拡充を含む教育の質の確保の論点につきまして検討が行われていくものと承知をしているところでございます。文部科学省といたしましては、この3党における検討状況を踏まえつつ、高校教育全体にとって意義のあるものとなるよう対応を検討してまいりたいというふうに思います。
記者)
筑波大が2029年度にも人文系学部の統合を再現する方針を示していることについて2点お尋ねします。このことについては、教員による審議を経ずに決定したとして人文教育の縮小、質の低下につながりかねないと反発する声が上がっています。これらについて、大臣の受け止めをお聞かせください。また、筑波大の内部資料では統合の理由として少子化を見据えた高等教育の将来像をまとめた中教審の答申を挙げた上で、人文学を取り巻く問題として専門分野の細分化、科学や工学のリテラシー低さ、社会や産業界との断絶が指摘されるとしています。2015年には、文科省の通知が人文社会科学系学部の廃止を求めているように読めるとして学者らから反発の声も上がりました。今後、文科省は大学の規模の適正化を図っていくと思いますが、人文社会科学系学部のあり方について、現在文科省としてどのようにお考えか合わせてお聞かせください。
大臣)
お尋ねの件につきましては、報道は見させていただきましたが、具体的に筑波大学から御相談を受けておりませんので内容は承知しておりません。また、今後、大学より具体的な御相談があった場合には内容に応じて適切に対応してまいりたいというふうに思います。また、人文社会科学系学部の統廃合につきましてでございますが、一概にいわゆる適否を申し上げることは難しいものと私は考えておりまして、各大学が学内外の構成員を巻き込みながらどういう理念、目的を持って統廃合を行うのかということが重要になりますので、今回の筑波大学の件につきましてまず大学における検討を待ちたいというふうに思います。
(了)
大臣官房総務課広報室