あべ俊子文部科学大臣記者会見録(令和7年5月30日)

令和7年5月30日(金曜日)
教育、科学技術・学術

キーワード

公立学校の施設整備の補助金について,米国の新規留学生ビザの受付停止と今後の対応,大学が収集、保管する遺骨の取扱い,教員の勤務・休憩時間に関して賠償責任を認めた地裁判決

あべ俊子文部科学大臣記者会見映像版

令和7年5月30日(金曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和7年5月30日あべ俊子文部科学大臣記者会見

令和7年5月30日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

あべ俊子文部科学大臣記者会見テキスト版

記者)
 公立学校の改修を補助する国の学校施設環境改善交付金について、今年度の予算が昨年度から減額となり、自治体の交付申請が認められない事例が相次いでいます。学校の改築や空調の整備が計画通りに進まないとの声が各地の自治体から上がっていますが、この件について大臣の見解や今後の対応を教えてください。
 
大臣)
 御指摘の学校施設環境改善交付金につきましてでございますが、令和7年度当初におきましては各地方自治体からの需要の高まりも受けまして、耐震化などの建物の安全性に直結する事業、また小中学校の新増築などの基本的な教育の場の確保を図るための事業などにつきまして、その実施時期なども鑑みまして優先すべきところを判断した事業から予算の範囲内で採択をしたところでございます。文部科学省といたしましては、各自治体の御要望、また実情も踏まえ、今後あらゆる機会を捉えまして必要な予算総額の確保、しっかり目指していきたいというふうに思います。
 
記者)
 先ほどの質問に関連して、5月27日に全国都道府県教育長協議会がこの交付金事業に関する緊急要望を出しております。この中で、今回は文部科学省から事前に十分な説明もなく多くの事業が採択保留となったことは遺憾ですというようなことが書かれております。自治体への影響を考えると、事前に文部科学省と教育委員会のほうでコミュニケーションをとっておくべきだったのではないか、この点についてはちょっと落ち度があったのではないかというふうにも思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
 
大臣)
 本交付金の採択にあたりましては、あらかじめ事業募集の際に各自治体に対しまして予算の範囲で優先的に採択する事業の方針を示したとともに、また各種の説明会におきましても厳しい予算状況について説明をしているところではございますが、この度いただきました御意見につきましては文部科学省として真摯に受け止めるべきと私も認識しているところでございまして、文部科学省として今後の採択に当たりましてこれまで以上に地方自治体に寄り添った対応にしっかり努めてまいりたいというふうに思います。
 
記者)
 アメリカのトランプ政権が学生ビザの面接の新規受付を一時停止したことによって、アメリカへの留学を希望する学生さんなどに不安感が広がっています。このことについての大臣の受け止めをお聞きしたいのと、また昨日、自民党の国際ゲートウェイ推進議員連盟がハーバード大学の留学生受け入れ停止方針を受けて更なる対応を求めて大臣に提言を施行しました。これを受けての今後の対応方針を改めて教えてください。
 
大臣)
 ご指摘の留学生ビザの件につきましては、政府としても高い関心を持って対応してきておりまして、米国政府に対しまして情報提供を申し入れているところでございますが、一方で現地で在学中、また渡航予定の方々から不安の声が上がっているというふうに認識をしております。昨日、ハーバード大学などに進学予定の学生の皆様から直接お話を伺いまして、ビザなど留学に関する正確な情報の提供、またその他の相談ができる窓口の設置についてご要望をいただきました。このような学生の学びを継続させること、これは大変重要でございまして、要望を受ける以前からも実は27日に日本学生支援機構に設置をした相談窓口がございまして、さらには昨日29日でございますが、文部科学省のSNSアカウントにおきましてこの周知を図ったところでございます。また、日本の大学への受入れの可能な支援策につきまして、今、大学に検討を依頼しているところでございまして、既にいくつかの大学が具体的な検討を始めているところでございます。文部科学省といたしましては、引き続き関係機関と密接に連携をとっていきながら、不安を抱えておられる方々に寄り添い、個別の事情に応じた丁寧な相談対応、また必要な情報の収集、整理、発信など、できる限りのことを全力で取り組んでまいりたいと思います。また、お尋ねの昨日の上川陽子衆議院議員が会長を務めます「未来創造人材のための国際ゲートウェイ推進議員連盟」によりまして、日本人留学生の不安解消、また留学継続のための進路確保支援、さらには留学制度の安定的な発展に向けた検討に対する要請をいただいたところでございます。先ほど申し上げましたが、この秋からハーバード大学などへ進学する学生の皆様からも既に留学の準備を、中には御家族で進めている方々もいらっしゃいまして、奨学金も引き続き受給できるかどうかということ、またビザが発給されるか、そもそも進学が可能かなど、様々な不安な思いをされているということを直接伺ったところでございます。今般の議員連盟からの要請、また学生の皆様の不安の声をしっかり受け止めさせていただきながら、外務省や大学等と連携をしながら意欲と才能のある若者たちの学びの保障の観点からもオールジャパンで取り組んでまいります。以上です。
 
記者)
 研究目的で収集された人骨問題についてお聞きします。アイヌの遺骨返還では、文科省が大学博物館に所蔵状況を報告させ調査結果を報告し、地域返還までのプロセスが決まっています。人類医学研究で遺骨1,300体を保管していた京都大が今月22日に沖縄の墓地で収集した遺骨26体を沖縄県今帰仁村に移管しました。しかし調査報告されず、地域住民や墓の祭祀継承者に連絡はありませんでした。アイヌ民族遺骨以外の民族地域で全国の大学博物館が遺骨を保管してきたのはこの現状、明らかです。まずは文科省が大学に人骨や副葬品の保管状況を報告させ公表すべきではないでしょうか。国際的な潮流に従い、公開に基づく遺骨、副葬品の返還ルールを設けるべきではないでしょうか。見解をお伺いします。
 
大臣)
 京都大学が沖縄の墓地で収集した御遺骨を沖縄今帰仁村に返還したこと等につきましては報道において承知をしているところでございます。大学に保管されている御遺骨等につきましては、その入手経緯、また権利関係はそれぞれ異なっておりまして、基本的には各大学において個別に検討をし対応していただくものというふうに私ども考えております。文部科学省におきましては、個別の状況に応じて各大学等が適切に対応できるよう協力をしてまいります。
 
記者)
 関連してもう1件お伺いします。一部報道によると、今帰仁村教委と京大は協議を重ね、昨年12月に返還協議書を交わしたとあります。遺骨が保存状態が良好で貴重で重要な文化財とした上で、埋葬処理しないことや人類の貴重な学術資料として持続的に保存することなどを返還の条件としたとあります。この条件は国の指示で設定したのでしょうか。そもそも国や京大が埋葬しないと縛る権利や法的根拠があるのでしょうか。見解をお伺いします。
 
大臣)
 お尋ねの返還協議書の内容につきましては、法令に基づくものではございませんでして、沖縄県今帰仁村と京都大学の間の協議で定められたものというふうに私ども認識をしております。
 
記者)
 ある裁判の判決についてお伺いします。3月に高松地裁で元教員の方が時間外で働いた分について学校の適切な対応がなかったということで損害賠償を求めていた裁判など、その判決で労働基準法違反を認定して損害賠償を認める、そういった判決がありました。地裁判決ではありますけれども、専門家の中ではこういったいわゆる残業について労働基準法を適用したというのは勝手な判断ではないかという専門家の指摘もあります。この判決について3点お伺いしたいと思います。1点目はこの判決についての受け止めです。もう1点が、今回のケースでは合宿中に休憩を与えなかったという学校の対応について違反と認定されました。こうした対応は各学校でもあるかと思いますけれども、文科省として今後の対応が何らか必要とお考えになっているかどうか、最後のもう1点が今、国会で給特法の改正が議論されておりますけれども、この審議に今回の判決は何らか影響を与えるとお考えになっているか、以上3点をお願いいたします。
 
大臣)
 報道があったことは承知をしているところでございます。当該訴訟につきましては、現在も係争中と承知しておりますのでコメントは差し控えさせていただきます。また、いずれにいたしましても教師の業務量を適切に把握・管理し、教師の休憩時間を確実に確保できる環境の整備を含めまして学校における働き方改革を進めていくことはまさに重要でございまして、文部科学省といたしましては今回の法案で構築する仕組みを通じまして、この働き方改革の一層の推進、また指導・管理運営体制の構築の充実等、様々な施策を通じて教師を取り巻く環境整備をしっかりと進めてまいりたいというふうに思います。また、お尋ねの影響のことでございますが、やはり繰り返しになりますが当該訴訟については現在も係争中と承知しておりますのでコメントは差し控えさせていただきますが、こうした訴え自体が生まれないようにするためにもいわゆる教師の勤務環境を改善していくことが重要でございまして、今回の法案も含めまして教師を取り巻く環境整備、しっかりと進めてまいりたいというふうに思います。
 
(了)

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大臣官房総務課広報室