令和7年5月27日(火曜日)
教育、スポーツ
大学の教職課程や免許制度等の在り方、ハーバード大学に留学している学生への文部科学省の対応、教員による不適切指導に対する学校現場の認識、自民党の調査会による高校授業料無償化に関する提言、学校部活動の外部コーチによる不適切指導
令和7年5月27日(火曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。
令和7年5月27日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
記者)
文科省が教職課程の必要単位数を減らす方向で検討を始めたという報道があったのですけれども、この事実関係や大臣の御見解や検討に向けたスケジュールなどを教えていただけますでしょうか。
大臣)
教師不足の現状、また実社会と結びついた探究的な学び、教育課題の多様化に対応していくために、多様で質の高い教師人材を確保することがまさに重要でございます。こうした背景のもとに昨年末、中央教育審議会に諮問を行いまして、より多くの学生が教員免許の取得を目指したり、また教職生涯を通じまして能力向上へ意欲を喚起したりできるような大学における教職課程や免許制度の在り方、さらには質保証の仕組みなどにつきまして御議論いただいているところでございます。現在、まさに御審議いただいているところでございまして、何かが決定されている段階ではございませんが、今後、夏頃までに主な論点等の整理を行った上で、具体的な制度設計につきまして議論を進めて、また令和8年度中めどに答申をいただけないかと考えているところでございまして、文部科学省といたしましてはこうした議論も踏まえまして必要な改革を進めてまいります。
記者)
ハーバード大学の件でお尋ねします。アメリカのトランプ政権によるハーバード大学への留学生受け入れ停止措置については、司法判断によって一時差し止めの状況になりました。ただ、学生にとっては不安定な状況が続くことが想定されます。改めて、文科省としての受け止めと対応状況を教えてください。
大臣)
現在、ハーバード大学でございますが110名の日本人留学生と150名の日本人研究者がいわゆる学修や研究活動に取り組んでいるものというふうに私ども承知をしているところでございます。文部科学省といたしましては、これらの方々に不利益を生じさせないようにする観点から外務省とも連携させていただきながら留学生や研究者の具体的な影響、また大学側の対応につきまして米国政府等に対して情報提供を求めているところでございます。引き続き、関係機関と連携しながらしっかり対応を進めてまいります。また、ハーバード大学に限らず、米国は、日本人学生の留学先として最も多い受入れ先でございまして、現地で在学中、また渡航予定の方からも不安の声も上がっているというふうに承知をしているところでございます。こうした声を踏まえまして、文部科学省におきましても今般、日本学生支援機構に米国留学に関する相談窓口を設置するとともに、日本学生支援機構の制度で現在支援中の学生に不利益が生じないよう、渡米中の学生の留学計画の変更、また奨学金の継続といった対応を取ることを検討しているところでございます。また、既に東京大学による取組が報道されているところでございますが、米国の大学に在籍する留学生が学びを継続できるよう、日本の大学への受入れ等の可能な支援策につきましても大学に検討を依頼しておりまして、必要な情報の収集・整理に加え、公表することを今検討しているところでございます。当面の取組といたしましては以上となりますが、引き続き状況を注視しながら意欲と才能のある若者たちが(注)学びの継続の保障に向けて、関係機関と連携しながら全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。以上でございます。
(注)「若者たちが」は、正しくは「若者たちの」です。
記者)
教員の不適切な指導によって亡くなった子どもの遺族らでつくる安全な生徒指導を考える会が5月21日に開いた集会で、22年改定の生徒指導提要に不適切な指導が明記されても未だ学校現場では認識不足があるとして独自の大規模調査を行う方針を示しています。不適切指導に対し学校の認識が不足しているという指摘について、大臣はどのように思われますでしょうか。また、人事行政状況調査では不適切な指導を行った教員の懲戒処分件数を公表していますが、具体的な指導内容、経緯と、さらに詳細に実態を調査する必要があるのではないでしょうか。文科省の考えを教えてください。
大臣)
まずは、教員による不適切な指導でございますが、不登校や自殺のきっかけになる場合もございますのでいかなる場合であっても決して許されないものであります。依然として一部の教員が不適切な指導による処分を受けている実態があることは大変遺憾でございます。令和4年に改正(注1)いたしました生徒指導提要におきましては、不適切な指導と考えられ得る具体例を新たに示すとともに、いたずらに注意や過度な叱責を繰り返すことは児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねないこと、また指導の後には児童生徒を1人にせず心身の状況を観察するなど、指導後のフォローが重要であることなどを明記いたしまして、生徒指導担当者向けの研修会などを通じまして内容の周知徹底に努めているところでございます。文科省といたしましては、引き続きこうした取組に加えまして文部科学省職員を教育委員会の研修会に派遣するなどいたしまして、学校現場における不適切な指導に対する理解促進に努めてまいります。
もう一つのさらに詳細な実態調査の必要性でございますが、不適切な指導者の実態把握につきましては昨年12月に公表いたしました令和6年度(注2)調査から教職員の懲戒処分件数に加えまして、不適切な指導がなされた場面と場所、不適切な指導の対応、さらには事案の把握のきっかけ、どのように事実関係を把握したのかなど、調査項目の充実を図ったところでございまして、今年度も引き続き本調査を実施いたしましてその結果をまずは注視してまいりたいというふうに考えています。令和6年度調査ということで、5年度調査です。ごめんなさい。私が6と言いました。ごめんなさい。
(注1)「改正」は、正しくは「改訂」です。
(注2)「令和6年度」は、正しくは「令和5年度」です
記者)
自民党が23日に開いた党の調査会の中で、公明党、日本維新の会の3党で合意した高校授業料無償化に関する当初方針を提示しました。この中では、超富裕層まで支援の対象とすることの妥当性を今後検討するといったことに加えて、質の高い取組の実現に向けた高校教育改革を推進する必要があるとの見解が示されていました。無償化をめぐっては現在、世間からも賛否様々な声があるかと思います。3党合意の関係もある中で、与党である自民党から今こうした提案がなされたことについて大臣の受け止めをお願いします。
大臣)
議論の詳細は把握をしておりませんが、先週の23日金曜日に自民党教育・人材力強化調査会が開催されまして、いわゆる高校無償化に関しての3党協議における主な課題への対応等について様々な御意見が出され、議論が行われたということは聞いているところでございます。これらの議論は、3党における充実した議論にも資するなどの観点から行われたものと承知をしているところでございますが、高校無償化にあたりましては高校教育改革と高校教育の質の向上につながらなければ意味がないというところは思いを同じにするところでございます。いずれにいたしましても、引き続き3党の枠組みにおきまして公立高校などへの支援の拡充を含む教育の質の確保、また支援対象者の範囲の考え方などの論点につきまして検討が行われているものと承知をしているところでございまして、文部科学省としては3党における検討状況を踏まえつつ対応を検討してまいります。以上です。
記者)
葛飾区立の中学校のソフトボール部の外部コーチが生徒に暴言を浴びせた問題についてお伺いします。外部コーチだった女性が部員だった女子生徒に対して「バカ」だったり、「3歳の頭しかない」と繰り返し暴言を浴びせ、女子生徒はソフトボールの継続を断念していたことが明らかになりました。外部コーチのこの言動に対する受け止めと、また生徒への暴言は通常、教員であれば処分の対象になり得ますが、外部コーチや地域クラブ指導者による不適切指導には処分規定がないことも多く課題となっています。これらについて、部活動の地域移行を進める中で教員ではない指導者の不適切指導への処分について規定を明確化すべきとの指摘もありますが、文科省として今後どのように対処していくか、大臣のお考えをお聞かせください。
大臣)
お尋ねの報道があることは承知をしております。外部コーチも含めました部活動の指導者による体罰・ハラスメントは決して許されることではなく、御指摘のような指導が行われたのであれば適当ではございません。また、文部科学省におきましては部活動における体罰ハラスメントの根絶に向けまして、令和4年12月に策定いたしました部活動に関するガイドラインの中におきまして、校長、部活動顧問等に対して部活動での体罰・ハラスメントを根絶すること、学校の設置者に対してその徹底に向けた支援及び指導・是正を行うことを求めるとともに、毎年、都道府県教育委員会や中学校体育連盟等に対しまして体罰・ハラスメントの根絶に向けた取組を要請いたしまして、それを徹底して求めています。また、文部科省として引き続き関係団体と連携しながら部活動における体罰・ハラスメントの根絶に取り組んでいきたいというふうに思います。また、規定を明文化すべきではないかということの御質問でございますが、部活動の地域展開を進める中におきましても暴力・暴言・ハラスメント等の不適切行為の防止等を徹底をいたしまして、生徒が安全・安心に活動に取り組める環境を構築することが不可欠でございます。文科省としては、先ほどのガイドラインに基づきまして既に地域クラブ活動につきましても体罰ハラスメントの根絶を求めているところでございます。また、今般の有識者会議の「最終とりまとめ」を受けて、今後、制度を具体化する中におきまして不適切な行為を行ったものを指導に携わらせないことを徹底するための仕組み作りも行ってまいります。以上です。
(了)
大臣官房総務課広報室