令和7年5月16日(金曜日)
教育
熊本県教育委員会が実施したいじめに関する調査結果、衆議院を通過した給特法等の改正案、デジタル技術を活用した公立高校入試の併願制の検討、公立幼稚園教諭に対する教職調整額の支給状況、戦後の沖縄における教育について
令和7年5月16日(金曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。
令和7年5月16日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
記者)
今週火曜日に熊本県教育委員会が公表したいじめに関する調査結果についてお伺いします。去年12月に行われた調査で、「今の学年でいじめられたことがあるか」という質問に小学校1年生、2年生で25%の生徒が「いじめられたことがある」と回答しています。また、「いじめはいけないことだと思うか」という質問では、「理由によってはいけないと思わない」、「理由にかかわらずいけないこととは思わない」と回答した人が小学生で18%、中学生で17%と高い割合で出ています。このことに関する文科省としての見解と、今後のいじめ対策やいじめに関する教育をどうしていくかなどをお伺いしたいです。
大臣)
いじめとは、行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものを指します。文部科学省が定める「いじめの防止等のための基本方針」におきましては、学校の教育活動全体を通じ、全ての児童生徒に「いじめは決して許されない」ことの理解を促し、自分の存在と他人の存在を等しく認め、お互いの人格を尊重し合える態度など、心の通う人間関係を構築する能力の素地を養うことが必要であることを記載しているところでございます。御指摘の熊本県教育委員会が実施いたしました調査について、調査のいわゆる方法や調査票につきましては承知をしていないところでございますが、またその内容の影響なども承知をしているところでもないところでございますが、こうした私ども文部科学省の基本指針に基づくいじめ防止等のための取組をしっかりと進めていくことが重要であると改めて考えているところでございます。文部科学省といたしましては、これまでもいじめの未然防止に資する道徳教育、また人権教育を進めてきたところでございまして、令和7年度におきましてはいじめ未然防止に関わる指導教材等の作成、スクールカウンセラーの配置充実等によりまして教育相談体制の強化などに取り組んでいるところでございまして、こうした取組も含めまして、引き続き各学校においていじめの未然防止・早期発見・早期対応・再発防止などに至るまでの総合的な取組が行われるよう、必要な支援に努めてまいります。以上です。
記者)
昨日15日の衆議院本会議で、給特法等の改正案が一部修正の上、賛成多数で可決されました。改めて、大臣の所感と今後に向けた決意について教えてください。また、衆議院の審議の中ではこの法案は労働基準法に違反しているとの声もありました。今後、参議院においても法案の審議が行われる予定ですが、こういった声や意見に対してどのように答えていくのか、大臣の所見について教えてください。
大臣)
昨日の衆議院本会議におきまして、政府より今国会に提出をしておりました「給特法等の改正案」につきまして、一部修正の上で可決をいただいたところでございます。衆議院におきましては、令和11年度までに教師の1か月の時間外在校等時間を平均で30時間程度に削減することを目標といたしまして、様々な措置を講ずること、令和8年度から中学校35人学級実現に向けた法制上の措置を講ずることなどを盛り込む修正が与党と野党との共同提案によって行われたところでございます。これらの中には、昨年末の私と財務大臣との合意事項にある内容も含まれておりまして、提案されました各党の皆様には本法案の実効性を高める観点からも、これらの取組の必要性について御理解をいただいたものと思います。また、御指摘の労働基準法との関係についてでございますが、国会におきまして御説明を重ねてきているところではございますが、この機会にさらに申し上げさせていただければ労働基準法は使用者が労働者に対し時間外労働を命じた場合には割増賃金の支払いを義務付けることで時間外労働の抑制を図る仕組みとなっております。一方、公立学校の県費負担教職員制度のもとにおきましては、給与は都道府県が負担をいたしますが、服務監督の権限は市町村にございますため、割増賃金の仕組みによっては時間外勤務命令を発しないインセンティブが十分に機能しないという点も民間事業、また国立・私立学校とは異なる公立学校特有の仕組みを設ける必要性といたしまして、昨年の中央教育審議会の答申におきましても指摘をされているところでございます。その上で、公立学校の教師につきましては逐一管理職の指揮命令によるのではなく、教師がその専門性を発揮をして業務を遂行できるよう、労働基準法及び地方公務員法の特別法といたしまして、給与その他の勤務条件の特例を定めた給与法(注)によりまして勤務時間の内外を包括的に評価をし、教職調整額を支給する仕組みとしているところでございます。この仕組みのもとに、教師の健康と福祉の確保に向けまして、本法案におきましては全国の地方公共団体におきまして教師の時間外在校等時間を削減する取組を強化してまいります。改正案は今後、参議院において御審議をいただくことになりますが、本法案の成立に向け御理解を得られるよう、しっかりと努めてまいりたいと思います。以上です。
(注)「給与法」は、正しくは「給特法」です。
記者)
公立高校入試の単願制改革に関して進捗状況を伺います。石破首相は、「希望する自治体の事例創出の具体化」を図るように指示していますが、この希望自治体はどのように把握されているのか、希望調査などを実施するお考えはありますでしょうか。また、事例創出の具体化に向けてはデジタル庁とどのような役割分担をされているかも合わせて伺います。
大臣)
公立高校の入学者選抜の実施方法等につきましては、各都道府県教育委員会(注1)が決定するものでございますが、先日の会見でもお答えいたしましたが、デジタル技術を活用した併願制につきましてはメリットも考えられる一方で、生徒の多様な個性と能力が十分に評価することができるのか、さらには学校の特色・魅力、これが損なわれないか、また地域人材を育成する専門高校に影響がないかなどの課題も実は想定されるところでございまして、文部科学省としては総理からいただきました御指示を受けまして、メリット、課題について整理を今しているところでございますが、高校教育の質向上につながるという(注2)自治体・高校関係者の意見もよくお伺いした上で丁寧に検討していく必要があると考えておりまして、御質問いただいた関係省庁の役割分担、また具体的な進め方については現在、デジタル庁などの関係省庁と連携をしながらまさに検討を行っているところでございます。また詳細がございましたら、追って担当課にお尋ねいただければと思います。
(注1)「各都道府県教育委員会」は、正しくは「各都道府県教育委員会等」です。
(注2)「質向上につながるという」は、正しくは「質向上につながるよう」です。
記者)
先ほどの質問に関連してなのですけれども、役割分担について大臣としては総理指示を受けた対応については文科省とデジタル省どちらが主導していくというふうにお考えでしょうか。
大臣)
私の個人的見解になるところでございますが、まずは公立高校の入試について生徒のためにどうあるべきかという観点においては文部科学省が主導して検討を進めるものというふうに考えておりまして、その上で平大臣のデジタル庁の知見をお借りしながら、それで具体化を進めていくことになります。
記者)
給特法に関連して一つお伺いしたいと思います。5月9日の衆議院文部科学委員会で、公立幼稚園教員が教職調整額を支給していない自治体があるという、この実態は文部科学省も把握して指導、助言を行っているという質疑の中でも答弁がありました。この具体的な指導内容についてお尋ねしたいのですけれども、指導された後にその自治体が教職調整額を支給するというふうな対策をしていることはもちろんだと思うのですけれども、これまで支給してこなかった分についても支給するというふうなことまで含めて指導されているのでしょうか。まずこの点についてお伺いいたします。
大臣)
公立幼稚園の教諭に対する教職調整額の支給状況につきましては、全国的な調査を行っておらず、実は網羅的な状況を把握していないところでございますが、一部の自治体におきましては公立幼稚園の教諭に対して教職調整額を支給していないという実態があるということは承知をしているところでございます。文部科学省といたしましては、自治体に対しまして公立幼稚園の教諭等の給与につきまして適切な措置を講じるよう通知をするなど指導助言も行っているところでございますが、今後、教職調整額も含め公立の幼稚園の教諭等の給与の状況について把握をしてまいりたいというふうに考えているところでございまして、また先ほどおっしゃった、さかのぼって請求ということでございますが、公立幼稚園の教諭も含めまして地方公務員の給与におきましては地方公務員法に基づきまして条例で定められているものでございまして、一概にお答えすることは困難でございます。
記者)
確認ですけれども、条例で定められて一概に答えられないということは、もし仮にこの不払いの教職調整額について請求があったとしても支給するかしないかは自治体の条例如何になるというふうな解釈でよろしいでしょうか。
大臣)
詳細に関してはまた追って担当課にお尋ねいただければと思います。
記者)
毎日新聞が今朝報じた宗教法人を対象にしたアンケートの結果についてお尋ねいたします。毎日新聞が全国の62法人や宗教連盟を対象に実施したものでして、こちらについて回答したうちの8割近い法人が旧統一教会の解散命令につきまして評価すると回答しました。その一方で、解散命令が憲法の保障する信教の自由に影響を与えると考えている法人も回答した中で3割ほどおりまして、解散命令自体は妥当だという認識はされていますが、政治が信教に介入することへの懸念も一定程度あるという結果になりました。こちらについて、大臣の受け止め、見解などがありましたらお願いいたします。
大臣)
詳しくは拝見できておりませんが、旧統一教会に関する解散命令に関する宗教法人を対象としたアンケート調査におきまして、8割近い法人が評価すると答えた一方で、また信教の自由に影響を与えると考えている法人が3割に上ったという報道は承知をしているところでございます。個別の調査や回答についてコメントすることは控えさせていただきますが、いずれにいたしましても令和5年10月の旧統一教会についての解散命令請求、法令に基づいて適正に行われたものでございまして、本年3月の東京地方裁判所における決定につきましてもその主張が認められたものと私ども受け止めております。引き続き、旧統一教会の対応につきましては万全を期してまいりたいというふうに思います。以上です。
記者)
14日の衆院内閣委員会でも質疑応答がありましたが、西田昌司参議院議員がひめゆりの塔の説明書きに対して発言をめぐって、会見で沖縄での教育に触れて「米政権下で米国が自分たちの国を正当化する教育をしてきた」と見解を述べたことに、答弁では否定する見解が述べられました。改めて、文科省としてのそのような事実はなかったという見解で良いのか、合わせて西田氏は沖縄でのシンポジウムで「沖縄はめちゃくちゃな教育のされ方をしてきた」という発言をしています。会見でも訂正せず事実だとしていました。事実誤認ではないのか、沖縄戦をめぐる歴史教育について文科省の見解を伺いたいと思います。
大臣)
個別の議員の発言につきまして、政府としてコメントすることは差し控えたいとは思います。その上で、14日にも国会で事務方からも答弁しましたとおり、戦後の沖縄における教育は終戦の直後は沖縄独自の教科書が作成されて教育が行われた時期もありましたが、終戦から3年後には日本の本土同様の学校制度のもと、同様の教科書を用い教育が行われたというふうに認識しています。いずれにいたしましても、沖縄戦を含めて戦争が未曽有の惨禍をもたらしたことを理解させ、二度と繰り返さないようにするためには学校教育において平和で民主的な社会、また国際協調・国際平和に努めることの大切さを教えていくことが極めて重要と認識をしているところでございます。引き続き、学習指導要領に基づくこの学習がしっかりと行われるように取り組んでまいります。
(了)
大臣官房総務課広報室