あべ俊子文部科学大臣記者会見録(令和7年5月9日)

令和7年5月9日(金曜日)
教育、科学技術・学術

キーワード

広島叡智学園と岩国飛行場内高校、岩国川下幼稚園、岩国高校の視察,ガーナ・エジプトへの出張,審議中である給特法改正案の与野党による修正案,東京都立川市の小学校に不審者が侵入した事案,専門職大学の定員充足率の現況と専門職大学のニーズ,大型連休明けの児童生徒の自殺・不登校の原因と対策,東京大学の教授らによる共同研究先への不適切な接待を求められていた事案,学校における特別活動の在り方,トランプ政権の予算教書発表を受けた我が国の宇宙分野の影響

あべ俊子文部科学大臣記者会見映像版

令和7年5月9日(金曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和7年5月9日あべ俊子文部科学大臣記者会見

令和7年5月9日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

あべ俊子文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 冒頭、私から2件でございます。4月28日に広島県と山口県で学校等の視察をしてまいりました。広島県におきましては、広島叡智学園を訪問いたしまして、地域や世界で活躍できる人材育成を目指す、国際バカロレア教育を軸といたしました教育活動の下、生き生きと学ぶ生徒たちや熱意を持って指導に当たる教師の皆様の姿を拝見いたしまして、教育の国際化の重要性を改めて感じました。山口県の岩国市におきましては、英語に自然と触れられる幼稚園の園児たちの姿、またハワイや岩国飛行場内の高校との交流に関する岩国高校の生徒の英語スピーチなどを拝見いたしまして、感銘を受けたところでございます。今回の視察を通じて得られたことを踏まえて、引き続き関連政策の充実にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。
 2件目でございますが、5月1日から6日まで本年の8月の横浜で開催されますアフリカ開発会議、TICAD9でございますが、それに向けましてアフリカ諸国との連携強化を図るべく関係官僚(注)との会談、学校現場の視察などを含め、ガーナ共和国及びエジプト・アラブ共和国を訪問いたしました。今回の出張に先立ちまして、TICAD9に向けました文部科学省における対応について、昨年末より省内の関係局を含め私自身が直接参加し議論を進めていたところでございます。アフリカにおいては、エジプトに先駆けて日本型教育の導入に取り組んでいるところで、エジプトが先駆けて日本型教育の導入に取り組んでいるところでございまして、来年度から新たな展開としてこれまでの「特別活動」を中心とした取組にとどまらない多分野の、多様な分野での導入に向けまして両国と議論を進めたところでございます。ガーナにおきましては、イドゥルス教育大臣の会談や、また関連する視察を通じまして農業高校、工業高校をはじめとする職業技術教育、またその他教育に関する各種ニーズを伺うとともに、世界銀行とも連携をしながらどのような協力が可能であるか検討を進めることで合意をさせていただきました。エジプトにおいては、ラティーフ教育・技術教育大臣及びアシュール高等教育・科学技術大臣と会談をいたしまして、これまで「エジプト日本科学技術大学」、E-JUSTと言いますが、や「エジプト日本学校」、EJSでございますが、での成功を基礎といたしまして本年9月のエジプト日本高専を設立するということをはじめといたしまして、産業界で活躍する人材育成においての連携、また特別支援教育における知見の提供など、可能な協力を進めることについて合意をいたしました。文部科学省といたしましては、今回のガーナ、エジプトへの訪問を踏まえまして、アフリカでの日本型教育の展開をはじめとする日本の魅力ある教育の海外展開を通じた教育の国際化に積極的に取り組んでまいります。以上でございます。
(注)「官僚」は、正しくは「閣僚」です
 
記者)
 現在、国会で審議中の給特法改正案についてお伺いします。一部報道で、与野党合意による修正案で教育、教員の平均残業時間を月30時間まで削減する目標を明記すると言われていますが、文科省として残業時間の目標を明記することへの見解と、もし見解された場合、削減するための取組として考えることなどがあればお伺いできますでしょうか。
 
大臣)
 「給特法等の改正案」の修正につきましては、与野党の間で協議されていると承知しておりますので、政府としてのお答えは控えさせていただきます。いずれにいたしましても、昨年末の大臣合意、これにおきまして教師の平均時間外在校等時間をまずは令和11年度までに月30時間程度に縮減することを目標といたしまして、小学校教科担任制の第4学年の拡大や中学校35人学級の推進など指導・運営体制の充実、働き方改革に資する外部人材の拡充、また勤務時間管理の徹底とその教育委員会ごとの業務量の管理計画の策定などに取り組むこととされているところでございまして、文科省といたしましても大臣合意に基づきこれらの取組をしっかり進めてまいりたいというふうに思います。以上です。
 
記者)
 昨日、東京都立川市内の小学校において男性2人が校内に侵入するという事件が起きましたが、この事案についての大臣の受け止めを教えてください。また、昨日ありました市教委の会見を聞きますと学校の施設等や出入口等の施錠の徹底の難しさや保護者対応の難しさも課題としてありましたが、今後どのような対策が必要と考えますか。お考えをお聞かせください。
 
大臣)
 まずは、怪我を負いました方々の一日も早い御回復を心からお祈り申し上げる次第でございます。安心して活動できるはずの学校におきまして、このような事案が発生したことは大変遺憾なところでございます。現在、東京都及び立川市教育委員会におきまして事案の詳細の確認等が行われているところでございますが、引き続き教育委員会と連携を取りながら児童の心のケアをはじめといたしまして、必要な対応を随時とってまいりたいというふうに考えているところでございます。
 
記者)
 専門職大学の件で伺います。専門職大学は今、20校ありますけれども、この7割で入学定員に対しての定員割れであることが分かりました。そのうち、20校のうち約半数が入学定員充足率が70%未満というふうになっております。専門職大学ができてから6年が経ちますけれども、まずこういった状況についてどのように思われるか、受け止めをお願いいたします。また、6年で専門職大学がまだ20校という校数にとどまっていることについても合わせて受け止めをお願いいたします。今、大学をめぐっては少子化が進んで大学のあり方自体を検討している真っ最中だと思いますけれども、専門職大学ではどのようなニーズがあるとお考えなのか、どのような役割をもつというふうにこれからお考えになるか、御意見お伺いできればと思います。
 
大臣)
 御指摘のとおり、専門職大学でございますが令和6年(注)までに20校が設置されているところでございまして、入学定員充足率につきましては9校が70%に満たない状況にあるということは承知をしているところでございます。この要因といたしましては、少子化により18歳人口が減少していることに加えまして、専門職大学制度が55年ぶりに創設された新たな大学制度であって、未だに十分認知されていないことも一因の一つであるというふうに考えているところでございます。そうした中、本年2月の中央教育審議会の答申には専門職大学につきまして高度な実践力と豊かな創造性を備えた専門職業人を育成する役割を担っている、とした上で、今後、人材育成の実績等を発信しながら新たな大学制度の更なる普及を図ることとされているところでございまして、文科省といたしましても本答申を踏まえまして専門職大学制度の特色であります長期の学外実習、また実務家教員による指導といった実践的な教育内容と人材育成の実績等を積極的に広報していきたいというふうに思っております。以上です。
(注)「令和6年」は、正しくは「令和6年度」です
 
記者)
 大型連休明けの子供の自殺や不登校の増加の問題についてお尋ねいたします。警察庁の自殺統計では、令和6年度6月の小中高生の自殺者数が夏休み明けの9月に次いで多く、不登校生徒児童の支援団体による相談件数も同様の傾向が見られると言えます。文科省として、大型連休明けにこうした自殺や不登校が増える原因をどのように捉え、またどういった対策をされているのかお聞かせください。教育機会確保法では、不登校児童生徒に対して休養の必要性を明記しています。こちら、休養が必要であることの理由とその意義、またどのように学校に周知・広報していくかという方法についても合わせてお聞かせください。
 
大臣)
 子供の自殺や不登校には様々な要因が複雑に関わっておりまして、一概に申し上げることは困難ではございますが、小・中・高等学校、この不登校児童生徒数と自殺者数が過去最多となっているところに関しましては、私ども大変重く受け止めているところでございます。その上で、自殺につきましては特にゴールデンウィークを含めた長期休業明けに自殺者数が増加する傾向にございまして、その要因といたしましては休み明けの直後、生活環境等が大きく変わり精神的にも動揺が生じやすいことが考えられているところでございます。また、不登校につきましてもゴールデンウィーク明けに相談が増えるなどの声も承知しているところでございますが、いずれにいたしましても不登校の子供を支援する際には本人の意思を十分に尊重しながら、子供によっては休養が必要なことがあることにも配慮していきながら一人一人に合った支援を行う必要があるのだと思っております。文科省としては、こうした考え方を明記した教育機会確保法の趣旨等に関するパンフレットを作成してウェブサイトにも掲載するとともに、各種機会を通じて周知をしているところではございます。加えて、不登校や自殺への対策といたしましてスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の促進と24時間子どもSOSダイヤルの設置、またSNS等を活用いたしました相談体制の構築などを進めているところでございまして、引き続き関係省庁とも連携をしていきながら全ての子供たちが安心して学べる環境づくりにしっかり全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。以上です。
 
記者)
 東京大学の大学院の教授らが、共同研究をしていた日本化粧品協会の代表理事に対して高額接待を求めていたとの疑いがあって、業界側が東京大学側を訴える意向だということが分かりました。この件に関する大臣の所感と、今後、東大に対して調査を求めるかどうかといったお考えをお聞かせください。
 
大臣)
 お尋ねの報道については承知しているところでございます。本件につきましては、東京大学において事実関係を確認中であるというふうに伺っております。文部科学省といたしましても、大学の対応を注視しながら大学においての適切な対応が図られるよう、必要に応じて指導と助言を行ってまいります。以上です。
 
記者)
 冒頭の発言にありましたエジプトでの日本型教育を取り入れた学校の件で関連ですけれども、エジプトでも高く評価されている日本の特別活動についてなのですけれども、日本においては例えば教員の働き方改革等を背景に、例えば行事を短縮、簡略化するなど、一部特別活動を縮小するような動きもあるというふうにも聞きます。次期学習指導要領の改訂に向けた議論も中教審で始まっているところでございますけれども、改めて特別活動というものが今後、日本の学校においてどのようにあるべきか、以前も伺ったのですが改めて御意見を伺えればと思います。
 
大臣)
 特別活動でございますが、学校や学級の課題、児童生徒が自主的、実践的に解決する取組でございまして、いわゆる社会参加型意識(注)の醸成、人間関係の形成、自己実現等の観点で大変大きな意義があるものと考えているところでございます。今回も小学校、あと中学校1年までの学年までしかいなかったのですが、生徒会の様子を見させていただいて、1年生から7年生まで代表が出ていて議論を話し合うという場面がございました。行事やその練習の精選などに関しては大切でございますが、特別活動の趣旨や狙いの実現を犠牲にすることは私は適当ではありませんというふうに私ども考えておりまして、次の学習指導要領に向けた各教科の具体的な審議はこれからでございますので、現時点で確たることを申し上げる段階にはありませんが、私としては日本型教育の代表例である特別活動のさらなる改善が図られるように、積極的に審議をお願いしたいというふうに考えているところでございます。以上です。
(注)「社会参加型意識」は、正しくは「社会参画意識」です。
 
記者)
 トランプ政権の宇宙政策への影響についてお伺いします。トランプ政権が公表した予算では、大型ロケットSLSであったりとか宇宙船のオリオンについて、再来年度の打ち上げを最後に運用を民間の宇宙サービスに切り替える計画の他、ゲートウェイの廃止案についても示しております。既に日米間で正式な文書が交わされた事項についてもこうした廃止案が出されていることについての受け止めと、日本政府としての今後の対応をどうしていくか教えてください。また、アルテミス計画の中では日本人宇宙飛行士の着陸や与圧ローバの開発などが計画されていますが、今後の影響をどのようにて考えられていらっしゃいますでしょうか。
 
大臣)
 先日、米国で来年度に向けた大統領予算教書の骨子が発表されまして、米国の予算、今後議会で審議されるものでございまして、宇宙関連予算も含めまして現時点で確定していないと認識をしているところでございまして、その上で申し上げれば本年の2月の日米首脳共同声明におきまして、アルテミス計画における月面探査をはじめとする日米宇宙協力を継続する方針を確認しているところでございます。このアルテミス計画を着実に推進することが我が国の宇宙政策において極めて重要だというふうに考えておりまして、また大統領予算教書骨子が発表された直後にも、この内容についてNASAから文部科学省に対して個別の説明があったところでございまして、今後とも米国議会を含む動向に注視をしながら日米間で意思疎通を図ってまいりたいというふうに思います。
 
(了)

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大臣官房総務課広報室