令和6年11月5日(火曜日)
教育、文化、その他
ブラジルでのG20教育大臣会合及びユネスコ主催グローバル教育会合の出席,令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査の結果,令和6年度コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査の結果,「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録の勧告,衆院選後の各政党間の政策協議による文部科学省への影響,政府内で教職調整額の廃止を検討という報道,教員採用試験の実施時期,いじめ重大事態の調査等と予算確保の課題,不登校の児童生徒への専門的な相談・指導、保護者への支援に対する今後の取組,過去最多の発生件数となった小学校における暴力行為への対策
令和6年11月5日(火曜日)に行われた、あべ俊子文部科学大臣の記者会見の映像です。
令和6年11月5日あべ俊子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
大臣)
冒頭、私のほうからは4件ございます。先週の10月28日月曜日から11月2日にかけまして、G20の教育大臣会合及びユネスコ主催のグローバル教育会合に出席するため、ブラジルを訪問させていただきました。G20の教育大臣会合におきましては、まず学校と地域の連携、また二つ目は教師の能力向上、三つ目としましてはESDにおけるデジタル教材の共有についての方策を各国より共有をさせていただきまして、G20の首脳会合に向けたサマリーにまとめさせていただきました。また、ブラジルやカナダとバイ会談を実施いたしまして、人的交流の更なる活性化、また質の高い教師の確保など、共通の課題への対処方策を共有させていただきました。また、グローバル教育会合におきましては、持続可能な開発目標の一つに掲げられているところでございます、「質の高い教育の提供」、この実現に向けましたいわゆる取組を加速するため、科学技術イノベーション、またデジタル革新の教育を推進すること、そのための人材育成の方策について、世界からの参加国と議論を深めさせていただきました。今回の訪問で得た知見を活用させていただきまして、文部科学省といたしましては、引き続き、教育分野における国際貢献と、関連の施策の充実に積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。
次になります。2件目でございますが、先月の31日令和5年度の児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査の結果を公表させていただきました。小・中・高、この学校の不登校の児童生徒数、いじめの重大事件(注)の件数が過去最多となるなど、極めて憂慮すべき状況が継続しているところでございます。また、文部科学省はいじめを積極的に認知し解消に向けた取組を進めることも各学校に求めているところでございますが、いじめの認知件数も過去最多となりました。コロナ禍を経て子供たちをめぐる環境が変化する中、不安や悩みを相談できない子供たちがいる可能性があること、それを一人で抱え込んだり、またコロナ前の子供たちの様子とは異なる形で現れたりする可能性があることを考慮しながら対応する必要があると考えているところでございます。文部科学省といたしましては、こども家庭庁をはじめとする関係省庁、教育委員会などの関係機関とも連携をしていきながら、いじめの防止、不登校児童生徒の学びの継続、さらには教育相談体制の充実に全力を尽くしてまいります。
3件目になります。本日、令和6年度のコミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況の調査の結果を公表させていただきます。調査結果では、本年の5月時点でコミュニティ・スクールの導入校は、2万校を超えました。これは前年度の比で2千校以上増えたところでございますが、全国の公立学校の約6割、58.7%で導入されたことになります。コミュニティ・スクールは、学校と地域が連携・協働する地域学校協働活動と一体的に取り組んでいくことで、「社会に開かれた教育課程」の実現、また学校の働き方改革など、学校や地域の課題解決に資するものでございまして、引き続き、更なる導入の加速を図ってまいりたいというふうに思います。
4件目、最後になりますが、日本からユネスコ無形文化遺産の登録を提案しておりました「伝統的酒造り」に関しまして、評価機関の事前審査の結果、無形文化遺産の代表一覧表への「記載」がふさわしいとの勧告を受けました。「伝統的酒造り」に関しましては、杜氏・蔵人などが、こうじ菌を使って、日本各地の気候風土に合わせて、経験に基づいた、築き上げてきた我が国の大切な文化でございまして、今回の勧告は大変喜ばしいことでございます。今後は、12月2日から12月7日にパラグアイで開催されるところでございます政府間委員会に正式決定される予定でございまして、引き続き、登録に向けて最善を尽くしてまいりたいと思います。以上です。
(注)「重大事件」は、正しくは「重大事態」です。
記者)
衆院選が終わりまして、与党で過半数割れという事態になりました。部分連合を模索する石破政権は国民民主党との政策協議を行っている、進めているところですけれども、文科行政に対する影響というのをどのように考えているか、また国民民主党と政策協議を進めているところですけれども、衆院選で国民民主が訴えていた高校までの無償化をはじめとした教育費の負担軽減策であったりだとか、あとは5兆円とも言われています「教育国債」についてのお考えについて改めてお聞かください。
大臣)
お尋ねの件に関しましては、各政党間で議論されるべき事柄でございまして、文部科学大臣としてのコメントは差し控えさせていただきます。いずれにいたしましても、石破内閣の一員として、政府全体の方針を踏まえさせていただきながら、文部科学行政を前に進めてまいりたいというふうに思います。また、お尋ねの「教育国債」も含めた無償化のところでございますが、先の衆議院選挙におきまして、国民民主党が「高校までの教育の無償化」、また「教育国債」、公約に掲げたことは承知しているところでございますが、個別の党の具体の政策に関してはコメントを控えさせていただきたいというふうに思います。いずれにいたしましても、文部科学省としては、あらゆる人が最適な教育を受けられる社会、これを実現できるよう、教育費の負担軽減にしっかりと取り組むとともに、必要な教育予算を着実に確保してまいります。以上です。
記者)
先日、政府内で公立学校の教員に残業代を支払い、現状の教職調整額を廃止することの検討を始めるとの報道が一部ありました。まず、こうした事実が実際にあるのかどうかということが1点と、この報道が事実だとすると、これまでの中教審の議論というのが大きく方向修正されることになりますし、給特法も廃止ということになるというふうに思うのですけれども、文科省としての現時点でのスタンス、あるいはこうした給特法廃止の可能性といったものをどの程度想定しているのかといったところを教えてください。
大臣)
政府内でいわゆる時間外勤務手当の部分の検討が行われているということは承知をしておりません。文部科学省といたしましては、本年の8月の中教審の答申を踏まえまして、令和7年の概算要求におきまして、教職調整額の引上げなどによる教師の処遇改善、教職員の定数の改善、また支援スタッフの更なる配置充実に必要な経費を要求しているとともに、骨太方針の2024年におきましては、中教審の提案も踏まえて、「2025年の通常国会に給特法の改正案を提出する」ということを示させていただいているところでございます。引き続き、教育の質の向上に向けて、学校における働き方改革の更なる加速化、教師の処遇改善、学校の運営・指導体制の充実を一体的に、総合的に進めていきたいところでございます。また、給特法の件でございますが、給特法は、教師の自発的・創造性に基づく勤務に期待する面が非常に大きいこと、また、どこまでが職務であるかの切り分けが難しいという教師の職務の特殊性のところから、時間外勤務手当ではなく、勤務時間の内外を包括的に評価するものとして、教職の調整額を支給することとしているところでございます。中教審の答申におきましても、教師の裁量性を尊重するこの仕組みは合理性を有しているとされているところでございまして、給特法を廃止することは考えておりません。文科省といたしましては、教育の質の向上に向けまして、学校における働き方改革の更なる加速化、また教師の処遇改善、学校の指導・運営体制の充実を一体的・総合的に推進してまいります。以上でございます。
記者)
教員不足の件で質問します。高知県で実施された小学校の教員採用試験で、合格者の7割が辞退し、予定していた採用人数を確保できない事態となっています。辞退者がかなり多いなという状況を感じる結果でしたが、このように年々深刻化する教員不足の現状について大臣の所見をお聞かせいただきたいのと、文科省としては教員採用試験の日程の前倒しを進めているところでありますが、高知県のケースのように、辞退者が増えるだけで教員の確保にはつながらないのではないかとの見方もあるかと思います。これについても合わせて大臣のお考えをお聞かせください。
大臣)
教員の確保が非常に厳しくなっているのは、実は世界中でもそうみたいでございまして、G20でもかなりの大きなトピックになりました。お尋ねのところの高知県の教育委員会におきましては、教育採用選考(注)を周辺の自治体より早く実施するということによって、できるだけ多くの受験者数を確保した上で、辞退者が出ることを見込んで、採用予定人数を大幅に上回る人数を合格者とするという方法を従来から実施してきたというふうに聞いているところでございます。こうした取組方針も任命権者としてのいわゆる教師の人材確保に向けた工夫の一つであるというふうに受け止めさせていただいているところでございますが、文部科学省としては、教員不足の現状は厳しいというふうに認識をもちろんさせていただいてるところでございまして、優れた教師人材の確保に向けまして、計画的な新規採用、現職以外の教員免許の保有者に向けての研修の実施、またさらには採用選考の工夫・改善などの取組を各教育委員会などに促させていただいているところでございます。8月に中教審において取りまとめられました答申も踏まえさせていただきながら、学校における働き方改革の更なる加速化、教師の処遇改善、学校の指導・運営体制の充実、教師の育成支援を一体的・総合的に進めてまいりたいというふうに、繰り返しになりますが思っているところでございます。また、いわゆる教員採用試験(注)の前倒し、これが教師の確保につながらないのではないかということでございますが、教員採用選考におきましては、民間、他の職種の公務員の採用活動に比べ時期が遅くなっているということもございまして、他のいわゆる業種との人材確保競争の観点からは、選考実施時期の前倒しは必要であるというふうに考えているところでございます。特に、他の業種への就職が多い教育学部以外の学部出身者が多く受験する中学校・高等学校の新卒受験者を確保し、教師を職業選択の際の選択肢にしていただくためには、特に早期化は必要な取組であると考えておりまして、その考えに変わりはございません。もとより、優れた教師人材の確保、教員採用試験(注)の選考の工夫改善のみで達成されるものではないという認識もさせていただいているところでございまして、文部科学省といたしましては、繰り返しになりますが、学校における働き方改革の更なる加速化、また教師の処遇改善、また学校の指導・運営体制の充実と、教師の育成支援を一体的・総合的に、繰り返しになりますが進めてまいります。以上です。
(注)「教育採用選考」及び「教員採用試験」は、いずれも正しくは「教員採用選考」です。
記者)
いじめの重大事態ですけれども、特に不登校の場合は調査は学校が主体で行うというふうに定められている、ガイドラインとしてありますけれども、自治体によって財産基盤が違ったりしていますので、お金があるところは弁護士などの専門家を入れられるというようなことがあります。ないところはなかなか入れられなくて、学校主体で結構、加害者、被害者の言い分が違って困っているのに学校にお願いしなければいけないというような状況があるということですけれども、そういうような自治体の格差についてどういうふうに対応するか、お願いします。
大臣)
自治体の財政基盤の格差の問題、大変大きいところでございますが、文部科学省におきましては、今年の8月、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインの改訂を行いましたところでございまして、調査実施にかかる事務的負担の軽減、さらには学校の設置者における平時からの備えといたしまして、報酬に要する予算確保を促すなど、設置者における予算確保の必要性については周知を図らせていただいたところでございます。また、こども家庭庁におきましても、いわゆる調査組織の第三者性の確保に関して助言を行うところの「いじめ調査アドバイザー」の制度を運用させていただいているところでございます。引き続き、各自治体において、いじめの重大事態の調査を適切に実施していただけますよう、関係省庁と連携しながら、ガイドラインの周知、またいじめ防止対策の改善・強化に努めてまいりたいというふうに思います。
記者)
財政支援は特に。
大臣)
こちらのほうも、しっかりと確保できるようにまた文科省としても検討させていただいておりますが、特に先ほど申し上げましたように、平時からの備えとしての報酬、特に予算確保を促す以外に、ガイドラインの周知、またその改善の強化に努めてまいります。
記者)
今の問題行動との関連なのですけれども、今度は不登校のほうで、総数としては34万人以上で、カウンセラーに専門的な指導・相談を受けられていない児童生徒が13万人以上いたという結果になりましたが、これの受け止めと、学びを保障していく観点から、文科省としてはどういうふうに支援されていくか、もう一つ、民間調査なのですけれども、保護者の離職など、保護者の方の負担もかなり多いという調査もあるようですが、この辺についてはどのように支援されていくお考えでしょうか。教えていただければと思います。
大臣)
今回の調査結果は大変厳しい結果でございました。そうした中で、私ども、子供たちの支援は当然でございますが、先ほどおっしゃってくださった、特に不登校の児童生徒、適切な支援につながるために、保護者の特に支援も重要だというふうに考えているところでございまして、文部科学省としてはこれまでも、保護者からの相談にも対応するスクールカウンセラーの配置の充実を図るとともに、各自治体における、保護者への相談窓口に関わる情報提供を促してきたところでもございます。さらに、令和7年の概算要求におきましては、教育支援センターにおける、この不登校の児童生徒の保護者を対象とした支援体制の強化に必要な経費を計上するとともに、各教育委員会において作成いたしました相談支援機関等に関する情報を文部科学省のホームページにまとめて情報発信するという、保護者の支援の更なる充実を図っているところでございまして、引き続き、保護者や関係者との声も伺っていきながら、必要な取り組みを進めてまいりたいというふうに思います。
記者)
1点目でお伺いした専門的な指導、相談を受けられていないお子さん方については。
大臣)
先ほどの専門的な支援を受けられていない、特におっしゃってくださった3万人増加したということでございますが、専門的な指導を受けていない児童生徒は約13万人ということでございまして、文部科学省としましては、不登校の児童生徒の学びの環境を整えていくために、令和7年の概算要求におきまして、教育支援センターにおけるアウトリーチ、この支援体制の強化と保護者支援体制の強化と、さらにはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置充実について必要な経費を計上するとともに、本年8月には、一定の要件の下、学校の判断で不登校児童生徒の成績評価を行うことができる旨、これを法令上明確化させていただいたところでございまして、その内容・趣旨について、周知を進めているところでございます。今後とも、不登校により学びにアクセスできない子供たちをゼロにするということを目指しまして、取組を進めてまいりたいというふうに思います。以上です。
記者)
問題行動に関してなのですけれども、いじめ、不登校もそうなのですけれども、暴力行為も10万件を初めて超えて過去最多になっているという状況です。中でも小学校が大部分を占めていて、過去最多になっているという状況です。このあたり、背景なども含めて大臣の受け止めなどをお聞かせください。
大臣)
おっしゃるとおり、今回の調査におきまして小学校における暴力行為7万件となりまして、こちらも過去最多となりました。この増加につきまして、主として、いじめの積極的認知、また児童生徒に対するいわゆる見取りの精緻化などによるものと捉えているところでもございますが、犯罪にならない初期段階のものでも暴力行為と捉え、指導している結果と認識をさせていただいているところでもございます。文部科学省といたしましては、今後とも引き続き、道徳教育の充実、さらにはコミュニケーションスキルを高めるための実践的な指導、さらには学校と警察などの関係機関との連携などによって暴力を根絶していくための取組を推進してまいります。以上でございます。
(了)
大臣官房総務課広報室