永岡桂子文部科学大臣記者会見録(令和5年7月4日)

令和5年7月4日(火曜日)
教育、科学技術・学術、文化

キーワード

不登校対策に取り組む戸田市立笹目東小学校の視察、初等中等教育段階における生成AIの利用に関するガイドライン、世界文化遺産推薦候補について文化審議会の意見、JAXAの新人宇宙飛行士候補者への期待

永岡桂子文部科学大臣記者会見映像版

令和5年7月4日(火曜日)に行われた、永岡桂子文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和5年7月4日永岡桂子文部科学大臣記者会見

令和5年7月4日永岡桂子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

永岡桂子文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 本日、冒頭は私から3件ございますのでよろしくお願いいたします。
 まず1件目でございます。昨日、埼玉県戸田市にある笹目東小学校における不登校対策の取組について視察をしてまいりましたので御報告をいたします。笹目東小学校では、校内サポートルーム「ぱれっとルーム」ですね、そしてシェア型オンライン教育支援センター「room-k」を視察をいたしました。また、戸田市長や戸田市教育長をはじめ教職員またNPO法人の皆様と御意見を交換をさせていただきました。不登校の傾向にあります児童生徒を含みます、一人一人に寄り添ったきめ細やかな不登校対策の取組に対しまして、感謝を申し上げてきたところでございます。文部科学省では、本年3月に「COCOLOプラン」を公表しておりまして、戸田市の先進的な取組というそのプランをですね、推進する上で大いに参考になるものと感じたところでございます。今回の視察を通じて得られたことを踏まえまして、引き続きまして、不登校の施策の充実に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 2件目でございます。本日、初等中等教育段階におけます生成AIの利用に関するガイドラインを公表いたしまして、この後、教育委員会等に通知をいたします。生成AIは発展途上にございまして、多大な利便性の反面、様々な懸念も指摘されております。他方ですね、学習指導要領では「情報活用能力」を学習の基盤と位置付けておりまして、生成AIの仕組みの理解ですとか、また学びにいかしていく観点も重要と考えております。ガイドラインにおきましては、利用規約の遵守を前提にいたしまして、発達段階を踏まえた、事前に生成AIの性質を十分理解させることが可能かを見極めた上で、「教育活動の目的を達成する上で効果的か否かで判断すべき」との考えを示しまして、活用が適切でない例と活用が考えられる例の両方を示しているところでございます。今後はですね、懸念やリスクに十分対応が講じられる一部の学校で、パイロット的取組を実施をいたしまして、成果・課題を検証するとともに、校務での事例共有ですとか教員研修用の動画の提供等を進めてまいりたいと考えております。
 3件目でございます。世界文化遺産の今後の推薦候補でございます「彦根城」及び「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」につきまして、この度、文化審議会の意見が取りまとめられましたので御報告いたします。まず、両資産につきましては、これまで長きにわたりまして世界遺産推薦に向けた努力を継続されてきましたことに、私といたしましては敬意を表したいと思っております。具体的な意見といたしましては、「彦根城」につきましては、世界遺産暫定一覧表記載から長期間が経ちまして、イコモスの評価も多様化していることから、今年から開始されます事前評価に申請すべきものとの意見が示されたところでございます。その評価結果次第では、まず提案内容の見直しですとか、推薦の可否を検討することになります。また、「飛鳥・藤原」につきましては、世界遺産登録に必要な保護措置が十分でない等の課題がございまして、関係自治体が課題解決に向けた継続的な取組を行うべきとの意見が示されたところでございます。なお、今回の意見を踏まえまして、今年度は新規の候補の選定は行いません。また、今回の意見は、両資産の将来の推薦や優先順位を決定したものではございませんので御注意ください。さらにですね、現在の世界遺産暫定一覧表の案件が少なくなってきていることから、今後ですね、文化庁におきまして世界遺産候補の掘り起こしを進めてまいりたいと、そう考えているところでございます。
 今日は以上でございます。

記者)
 生成AIについてガイドラインが示されました。5月の中教審の議論開始から2か月余りとかなりスピード感のある流れ、策定につながってきた、策定をされたその狙いを改めて伺いたいということと、生成AIの利用の可否については対策が十分講じられた学校でパイロット的に行う方針を示されております。一方、学校の外で子供が使うケースですとか、あるいは教員の中にもAIを使っているかどうか見極めがなかなか難しい先生もいるんじゃないかなというふうに想像します。そういう中で夏休み前に示したということも含めて適切でない使い方を仮にしてしまうかしてしまわないか、どのようにそういう状況を防いでいけるのか、そういうことをどうお考えか教えてください。

大臣)
 生成AIにつきましては、様々な活用のメリットを指摘する声がある一方でですね、やはり懸念も指摘されている中で、子供や教師も含めた社会にそれが急速に普及しているというのが現実でございます。こうした中で、夏休みの課題に不適切に活用されることを懸念する声があったこと、また学校現場における活用の適否の考え方をできるだけ早くですね示したいと考えたことから、暫定的なガイドラインを早期に策定・公表することとしたものでございます。ガイドラインのポイントにつきましては、先ほど冒頭で述べましたとおりでございます。また生成AIの活用の適否につきましてでございますが、やはり御指摘のように、教師の生成AIに関するリテラシーというのも現状では様々であるというのは認識をしております。当然のことだと思います。そのため、今回のガイドラインにおきましては、懸念やリスクにですね十分な対応を講じることができる一部の学校でパイロット的取組を進めつつ、並行して教員研修や校務での活用を通じまして、教師のAIリテラシーを高める方向性を打ち出しております。その一方で、スマートフォンの保有率等を踏まえればですね、児童生徒が学校外で使うという可能性も十分に想定できるところでございます。このため、全ての学校におきまして、情報の真偽を確かめること、いわゆるファクトチェックの習慣付けも含めまして、情報活用の能力を育む教育活動を一層充実させることも並行して進めてまいりたいと、そう考えております。

記者)
 生成AIのガイドラインについてお伺いいたします。今後、校務での活用についても実証研究を進められると伺っております。生成AIの活用を教員の働き方改革に結びつけていくためにはどのような使い方が考えられますでしょうか。今回の実証研究で得たいと考えていらっしゃる知見であったりとか個人情報の扱いなど、学校現場で特に留意しなければならないことがあれば教えてください。

大臣)
 生成AIを校務で活用するということはどういうことかということでございます。御指摘のように、生成AIを校務で適切に活用しまして、そして業務の効率化や質の向上を図ることで、働き方改革につながるというふうにしっかり考えております。ガイドラインもですね、児童生徒の指導に関わる業務の支援、また学校運営に関わる業務の支援、それから学校行事・部活動への支援、そして外部対応への支援といった4つの項目を挙げまして、それぞれ具体的な活用方法を例示したところでございます。また、教師自身がですね、新たな技術であります生成AIに慣れ親しんで、そして利便性や懸念点、また賢い付き合い方というものを知っておくことは、やはり近い将来に教育活動で適切に対応する素地を作るものというふうにつながると考えておりまして、校務の適切な活用を進めることは大変重要であると、そう考えております。

記者)
 冒頭発言にありました埼玉県戸田市での不登校対策について伺います。昨日は1時間半に及ぶ座談を現場の皆さんと繰り広げられまして、その中でやっぱり問題になったのは一人一人にきめ細やかに対応していく、例えばサポート要員ですとかオンラインを使ったメタバースとか、そういう非常に大事で効果が上がっていることはわかったんですけれども、問題はこれをどうやって全国に横展開していくのかということだということがありました。その座談の中では例えば自治体が安心してNPOと付き合えるようにNPOに一定の認定基準を文科省が示してあげるとかいくつか改善点、方策の提案があったかと思うんですけれども、こういったことも含めまして大臣がこれを全国に展開していくためにどのような取組が必要とお考えか伺えますでしょうか。

大臣)
 昨日はお付き合いいただきまして長時間、笹目東小学校にいていただきましたこと、本当にお疲れ様でございました。実際お話を聞かせていただき、やはり不登校、また不登校の傾向にあるお子さん達と学校の先生が真摯に向き合っているということに関しましては大変私も感動いたしました。やはりクラスだけではなくて、やはり校内サポートルームですね、「ぱれっとルーム」につきましても、やはり相当お子さん方に気配り、目配りのできる指導員の方をサポートとして置いてらっしゃいまして、子供達の心の中を話し合いながらしっかりと対応し、そして見ようとしている姿というのは大変大きかったと思っております。それとともにですね、全国でもやはり各県に1校、不登校特例校というふうなお話も申し上げておりますけれども、やはり相当お金もかかりますし、また人材も必要になります。それを思いますとやはり各校に一クラスですね、大きくお子様方が増えているというところばかりではないので、空いてるお教室があろうかと思いますので、そういうところではやはり校内サポートルームというものを立ち上げていただきまして、教室にいられなくなったお子さんをちょっと引き取っていただいて少し休憩の時間、また子供が納得してクラスに帰れるような、そういうようなサポートをしていただければ非常に大きな効果があるなと思っております。またですね、NPO法人との関係というのは学校もですね、やはりそれぞれのNPO法人と連携したいと思いましてもどういうふうに連携したらいいか、またどういうようなNPO法人であるかというのを見定めるというのは大変難しいと思います。それぞれの各県、市の上のほうでも難しいと思うんですが、文部科学省といたしましても大変その見極めというのは考えなければいけないところだなと思っておりますが、やはりあちらの教育長、それからNPO法人自体もですね、御指摘がありましたけれども、文部科学省のほうで、ある一定程度のですね、NPO法人のここは信用できると、ちょっと言い方は悪いんですけれども、色々なNPO法人がありますので、こういうところだったらお子さん達のためにはいいのではないかと、不登校対策に使えるのではないかというようなところというのを、やはり認定というまでもちょっとおこがましいんですけれども、やはり考えるということはこちらでも検討させていただきたいと本当に思っております。それとですね、やはり笹目東小学校で対応していること、先ほども申し上げましたけれどもやはり「COCOLOプラン」と同じように対応していただいているということにやはり私も自信を深めましてこれを実践していこうと、そういう決意もわいてまいりました。

記者)
 宇宙関連で1点、お伺いしたいんですが、JAXAの新人宇宙飛行士候補生の諏訪さんが7月1日付でJAXAに採用になりまして、昨日3日に初出勤をされたと思います。改めて新人の宇宙飛行士、候補生に対する期待をお伺いしたいというのと、その2人は月着陸などに向けて、その、月に関して業務をしていくと思いますけれども、日本の宇宙開発の貢献を、月に関しての貢献を加速するために文科省としてより取組を強化したいところがあれば教えてください。

大臣)
 私もですね、ちょっとニュースを見ていまして、官邸に諏訪さんと、それから米田さんが伺ったのねと思いまして、実は今日来ていただきます。ちょっと嬉しかったんですけれども、昨日、宇宙飛行士候補の諏訪理さん、米田あゆさんですね、総理に表敬いたしました。2人とも今日ですね、お会いする予定でございまして、大変楽しみにしております。我が国といたしましても、「アルテミス計画」をはじめとする有人宇宙活動に参画をいたしまして、研究開発に力を入れているところでございます。14年ぶりの宇宙飛行士の選抜に2,000倍を超える難関をくぐり抜けたお二人には、我が国の有人宇宙活動を担う宇宙飛行士の候補者として、訓練を乗り越えて、新しい時代を切り開いていくことを期待をしております。今、ISSありますけれどもこれはもうじきなくなります。そして「ゲートウェイ」ですね、そして月面活動ということがこれから先に見えてまいりますので、そのことにつきまして大変期待をしております。これからの取組の強化ということですね、我が国は、持続的な月面探査の実現を目指す「アルテミス計画」におきまして、我が国が優位性を有し、波及効果の大きい技術で貢献することとしておりまして、民間企業とも連携しながら、月周回有人拠点「ゲートウェイ」への機器提供や補給ですね、それから月面データの取得・提供というのもあります。また有人与圧ローバの開発などに取り組んでおります。また、6月に日米宇宙協力に関する枠組協定が発効したところでありまして、現在、この協定の下で、月面活動に関する実施取決めを調整をしているところでございます。文部科学省では、2020年代の後半の米国人以外の初となります日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現に向けましてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

記者)
 冒頭の世界遺産についてお尋ねしたいと思います。ユネスコの登録審査が厳しくなっている中で年に1国1件の推薦枠というのは近年ますます貴重な機会になっているかと思いますが、その中で手を挙げていた「彦根城」と「飛鳥・藤原」をどちらも今年度は推薦されないというご判断は、両資産について現状では世界遺産になるのは相当厳しいというご判断にも見えますがいかがでしょうか。

大臣)
 イコモスからですね、積極的な評価が得られた場合には、文化審議会におけまして審議・選考を経た上で、これは「彦根城」のことでございますけれども、最短で令和7年度に推薦できる可能性がありますけれども、いずれにいたしましてもやはりイコモスの評価結果次第となっているところなんですね。それで「飛鳥・藤原」でございますが、関係自治体の取組次第でございますけれども、保護措置等への取組が順調に進めば、令和6年度に推薦ができる可能性がございます。いずれにいたしましても、やはり関係自治体の取組状況を踏まえて今後、文化審議会において審議をいただくことになりますので、どちらがどうということではなくてですね、やはりそれぞれの現場の地元、それから現場での対応ですね、ここのところの状況というのがそれぞれ違うということを認識していただければと思います。「彦根城」につきましては積極的な評価が得られた場合にはということでございます。

(了)

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