永岡桂子文部科学大臣記者会見録(令和5年5月30日)

令和5年5月30日(火曜日)
教育、科学技術・学術、スポーツ、文化、その他

キーワード

「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案」の成立、学校の水害対策の推進、性的マイノリティ等の方々への理解増進方策、自由民主党内における教育国債を発行すべきとの意見、教育現場における生成AIの扱い、AIの研究開発、AIと著作権との関係、インフルエンザ等による学級閉鎖、野球等の移動式バッティングゲージの転倒による事故防止

永岡桂子文部科学大臣記者会見映像版

令和5年5月30日(火曜日)に行われた、永岡桂子文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和5年5月30日永岡桂子文部科学大臣記者会見

令和5年5月30日永岡桂子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

永岡桂子文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 本日、私から冒頭、2件ございます。
 1件目ですが、今国会に提出をしておりました「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案」が、26日の参議院の本会議におきまして可決、成立をいたしました。この法律では、在留外国人の増加とともに日本語学習者が増加していく中で、日本語教育の質の維持向上を図るために、質の担保された日本語教育機関を認定する制度、そして認定日本語教育機関で日本語を指導することができる登録日本語教員の資格の制度を新たに創設することとしております。文部科学省といたしましては、来年4月1日の法の施行に向けまして、法務省をはじめといたします関係省庁や関係者の方々と連携しながら、着実に準備を進めまして、新たな制度が円滑に実施できますように、丁寧に周知などを行ってまいる所存でございます。
 2件目でございます。明後日から6月となりますが、6月から10月は出水期と呼ばれまして、大変雨量が増しまして、水害が起きやすい時期とされております。このため、それに先駆けて、本日、「学校の水害対策」に資する方策を2点、各都道府県の教育委員会等に通知をすることといたしました。1点目でございます。「学校施設の水害対策の手引」について、でございます。この手引では、浸水想定区域に立地をする学校などの水害対策が円滑に進められるよう、学校ごとのハザード情報の整理や脆弱性の確認、浸水対策とその優先度の検討など、学校施設の水害対策の検討手順を分かりやすく示したものであります。これに基づきまして、ソフト・ハード両面から水害対策が進むことを期待しております。2点目でございます。水害発生時に備えた住民ひとりひとりの防災行動計画であります「マイ・タイムライン」の活用の呼びかけでございます。この「マイ・タイムライン」は私の地元の茨城県の常総市にも大きな被害をもたらしました、平成27年9月の関東・東北豪雨の教訓として始められた取組でありまして、有効な防災活動の一つとして、私も実は思い入れがございます。自然災害の中でも大雨などによります河川の増水・氾濫は一定の予測が可能でございまして、適切な備えを行うことが、逃げ遅れを防ぎ、そして被害を小さくすることができるわけでございます。学校の水害対策関連情報は、文部科学省の学校安全ポータルサイトに集約をして掲載をいたしました。今後ですね、河川に接した地域におかれては、「手引」や「マイ・タイムライン」を積極的に活用いただくとともに、自治体の関係部局ですとか、また河川事務所等とも連携をいたしまして各学校の水害対策を推進していただきたいと考えております。
 以上です。

記者)
 冒頭発言があった水害対策についてなんですけれども、今後、通知をした後に再度学校の水害対策がどの程度実施されているのかという調査を行っていく予定はありますでしょうか。

大臣)
 これはですね、近年の豪雨等によりまして、学校施設においても被害が生じております。また、令和3年度の流域治水関連法の制定等によりまして、学校を含めました、流域に関わる全ての関係者による治水対策の取組が必要となったわけですね。他方で、令和3年6月の調査におきまして、浸水想定区域に立地をし、要配慮者利用施設として位置づけられておりました公立学校施設の水害対策が必ずしも十分に進んでいないことが、明らかとなっております。これらを踏まえまして、学校設置者等が、ハード・ソフト両面からですね、学校部局等と連携をして、再発時の児童生徒等の安定確保やまた教育活動の早期再開を実現する、水害対策を進めることができますように、本手引を策定をしたものでございます。それからですね、やはり何と言いましても令和3年6月の調査というものが、必ずしも十分に学校施設の水害の対策が進んでいないということが明らかになっているわけでございますので、今後も、引き続きですね、学校設置の水害対策の進捗状況を適時、適切に把握をしながらですね、また関係省庁と連携をしてですね、学校設置者へのきめ細かな支援につなげてまいりたい、そう考えております。

記者)
 政府のAI戦略会議の会合で先週、論点整理が示されました。生成AIを作文やレポートに使うことで、児童生徒の創造性が低下されるなどと言及しています。文科省は夏までに有効な活用法や注意点をまとめるということにしておりますが、今回の論点整理の内容も反映した内容になるのかどうか、見通しを聞かせてください。

大臣)
 26日(金曜日)になりますけれども、AIの戦略会議の論点整理におきまして、懸念されるリスクのひとつとして教育現場における生成AIの取り扱いが取り上げられたわけでございます。昨日のAI戦略チームでもですね、論議が行われたものと承知をしております。文部科学省といたしましては、子供達の批判的思考力や創造性への影響などについてですね、やはりリスクの整理が必要である一方で、学習指導要領では、学習の基盤として「情報活用能力」を位置付けておりまして、新たな技術であります生成AIをどのように使いこなすかという、そういう視点ですとか、あとは自分の考えを形成するのにいかすといった視点も重要であるというふうに考えてもいるところでございます。現在ですね、AIの戦略会議の論点整理、また先般のG7におきまして、教育大臣会議(注)ですが、また中央教育審議会の議論というのもございまして、さらにですね、有識者からのヒアリングなどを踏まえまして、学校現場の参考となるガイドライン、その策定作業を行っているところでございまして、やはりですね、夏前ですね、これを目途といたしまして、しっかりと公表してまいりたい、そう考えております。
 (注)「教育大臣会議」は、正しくは「教育大臣会合」です。

記者
 骨太の方針と「教育国債」の考え方について伺いたいと思います。昨日、自民党の文部科学部会がありまして、「教育国債」というのを検討事項として盛り込むように主張していきたいということを部会長がお話になっておりました。この「教育国債」については、私、以前に萩生田政調会長にインタビューした時に、少子化によってこれから児童生徒の人数が減っていくので、当然今の法体系でよると、教員に必要な人件費も子供が減るのと一緒に減っていくと、ただ一方で、働き方改革は待ったなしなので、それまで実際に人件費も含む必要なお金が生じるまでの間、つなぎとして教育国債を出して、それによって働き方改革を一刻も早く実現すべきだということをお話になっておりました。こういう「教育国債」の発行について現時点でどのようにお考えなのかということと、それから萩生田政調会長がおっしゃるような少子化のペースを先取りするような形でつなぎの財源として「教育国債」を発行するという考え方が検討に値する内容だとお考えなのかどうか伺いたいと思います。

大臣)
 自民党内でですね、「教育国債」について意見があることは承知はしております。ご指摘の「教育国債」については、安定財源の確保やまた財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。こども・子育て政策につきましては、総理の下に設置されております「こども未来戦略会議」におきまして、必要な政策強化の内容、予算、財源について、具体的な検討を深めまして、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠をお示しするものと承知をしております。また現在、今年度の経済財政運営と、また改革の基本方針、いわゆる骨太ですね、につきまして、来月の取りまとめに向けた作業が行われているところでございます。経済財政諮問会議にて先週金曜日26日に示されました骨太方針の骨子案においては、経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進、少子化対策・こども政策の抜本強化、スタートアップの推進、官民を通じた科学技術・イノベーションの推進など、結構、文部科学省に深く関係のある項目が掲げられているわけでございまして、文部科学省といたしましても、骨太方針に必要な内容がしっかりと盛り込まれるように、調整に当たってまいりたいと思っているところでございます。
 6月の骨太までに予算倍増で少子化対策をやりますけれども、様々な手法を駆使しながらですね、必要な教育予算、これは引き続きですね、着実に確保してまいりたい、そういうふうには考えております。

記者
 今まさに「教育国債」というのは安定財源の中で考えるということをおっしゃられて、これは大事なところだとはもちろん理解しているんですけども、一方で萩生田政調会長がおっしゃっているように少子化というのは年々すごいペースで進んでいくので当然、教員に必要な人件費も減っていくと思います。その間、子供が減っていけば当然、安定財源は自然に発生すると思います。だったらそれまでの間の繋ぎとして国債をきちんと償還できるペースで発行するというのは確かに安定財源を確保しながら、かつ直近の必要な政策の財源を確保するという意味ではなかなか妙案と言いますか工夫された案ではないかと思うんですけど、ここはいかがお考えですか。

大臣)
 確かに「教育国債」については安定財源の確保や財政の信認確保の観点から本当に慎重に検討する必要があると考えております。議論は注視をしてまいりたいと考えております。

記者)
 生成AIについて話が戻るんですけれどもお伺いします。文科省は教育分野については夏までに方針を制作するということを明らかにしていますけれども、著作権侵害のリスクとか研究分野での活用、また生成AIそのものの研究開発など文科省に関わるテーマも他にはあるかと思うんですけど、これらの議論の進捗状況とかこれからどういうふうに進めていくのか、またどういうことが論点になっていくかということを教えてください。

大臣)
 AIの研究開発についてでありますけれども、AIの研究開発を進めることは大変重要だと考えております。基盤モデルの原理解明ですとか、科学研究向けに特化した基盤モデルの構築等を通じまして、その設計から事前学習、最終的な調整に至るまでですね、これ一連の知識と経験を有した高度人材、また関係省庁との連携をしつつですね、育成してまいりたいと、そういうふうには考えております。そしてAIと著作権についてでございますが、著作権については、現行の著作権法制度を丁寧に周知してですね、これから、専門家も交えて、AIの学習やAI生成物の利用に当たっての論点を整理をいたしまして、考え方を周知・啓発してまいりたい、そう考えております。

記者)
 女子野球部の部活中にネットが倒れてしまって生徒がその下敷きになって大けがするという事態が今月ありました。こうした事態は他の部活でも大きな重大事故につながってしまったケースがあるので、これに対して何か文科省として再発防止に向けた通知のようなものは出すご予定はございますでしょうか。

大臣)
 お尋ねの事故があったことは、北海道庁の報告により承知をしております。今回の事故で負傷した生徒さんの一日も早い回復を心より願っております。事故の詳細につきましては、現在、警察が事故原因等の調査を行っている他ですね、当該学校におきましても、事故の原因究明と再発防止策を審議するための第三者委員会、それが設置をされたと伺っております。文部科学省といたしましては、毎年ですね、各都道府県教育委員会等に対しまして、学校におけます体育活動中の事故防止について通知をしているところでございますが、今回の事故を受けまして、移動式バッキングケージの取り扱いの留意点というものを具体的に示した事務連絡文書を発出して事故防止を徹底してまいりたい、そう考えております。

記者)
 もう発出したんですか。

大臣)
 これからですね、もう文書はできておりますので発出をするというところまで来ております。

記者)
 5月に入って全国でインフルエンザによる学級閉鎖が相次いでいるということなんですけれども、文科省として現状をどのように把握されているかということと、なぜ今流行っているのかの原因、それから今後の対応とかご予定があれば教えていただけますでしょうか。

大臣)
 一部の地域の学校におきまして、インフルエンザ等によりまして学級閉鎖などが生じていることは承知しております。この原因につきましては、昨シーズンまでの2年間というものは、インフルエンザがほとんど流行しなかったことに加えまして、今年はですね、インフルエンザの流行のピークが遅く、5月上旬においても、患者数が比較的多い中で、新型コロナの感染症法上の位置づけ変更後、社会経済活動がより活発になったことなどが指摘をされているところでございます。文部科学省といたしましては、これまで厚生労働省と連携をいたしまして、インフルエンザ対策について周知をしているところでありまして、引き続きまして、感染状況を注意しつつですね、基本的な手洗いなどの手指衛生や咳エチケットの指導、適切な換気の確保などの重要性について、様々な機会を通じて、教育委員会や学校等に情報発信を行ってまいりたいと考えております。

記者)
 AIに関連しての質問なんですけれども、各大学や各機関ですでに独自のAIのガイドラインを策定しているところが増えてきています。昨日も国立大学協会がAIに対する会長コメントを出しました。そういった独自の方針と文科省のこれから作成するガイドライン等との整合性みたいなところ、もしくは作成した後にどうすり合わせしていくのかというのを伺いたいです。もう1点なんですけれども、LGBT法案が先週、国会に提出されました。まだ成立するかはわかりませんけれども今後、文科省として取組が必要なことがあれば教えていただきたいです。

大臣)
 「LGBT理解増進法」につきまして、お答えいたします。法案については、私からのコメントというものは差し控えさせていただきたいと思っております。国会での御審議、これを見守りたいと、そう思っております。これは文部科学省の中でございますが、性的マイノリティの方々をはじめですね、個々人が持ちます多様な背景に関わらず、全ての人がお互いを尊重して、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会というものを目指した取組、これを進めることが本当に重要だと思っております。文部科学省におきましては、学校教育や社会教育における人権教育を通じまして、多様性に対する理解、また自他の人権の尊重などの態度を育む取組ですね、これを進めるとともに、また性的マイノリティの児童生徒へのきめ細かな対応に資するよう、教職員向けの啓発資料や支援の事例を提供するなどの取組に努めてきたところでございます。また、性的マイノリティなどの多様性に理解のあります教員、これの養成をしていくことも重要と考えておりまして、引き続きまして、意識啓発のための取組や研修の実施などに努めてまいりたいと思っております。これらを通じまして、学校現場や省内におきまして性的マイノリティの方々への理解が深まりますように、引き続き取組の充実を図ってまいりたいと思っております。
 AIのことに関してですが、大学における授業ですとか学修成果の評価方法は様々でありまして、生成AIがこれからもたらす影響については一概にお答えすることは難しいと考えております。ですけれども例えばですね、学生が生成AIの出力をそのまま用いまして自らの手を加えずにレポートを書くというようなことがありますとやはりそれは適切に活用すればですね、学生の学びを深めることに全くつながらないということになります。そう認識しております。またすでに各大学におきましては、学内で独自に検討した上で生成AIに係る対応方針等を公にする動きも広がっていると、そういうふうに承知をしております。こうしたことを踏まえればですね、大学におけます生成AIの活用については政府全体の検討状況も踏まえまして検討していきたいと、そういうふうには考えているところではございます。大学の皆様方はもうすでに学内でいろいろ検討が始まっているということでございますので、それはお任せしながらですね、しっかりとそれを政府におけますAIの使い方について結論が出るようであればそれと整合性を深めていくということが一番大事かというふうには思っております。

(了)

お問合せ先

大臣官房総務課広報室