永岡桂子文部科学大臣記者会見録(令和5年3月31日)

令和5年3月31日(金曜日)
教育、スポーツ

キーワード

教科書採択の公正確保、大規模な国際又は国内競技大会の組織委員会等のガバナンス体制等の在り方に関する指針、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)、病気療養児に対するオンデマンド型の授業を可能にするための改正、G7を契機としたGIGAスクール特別講座の実施、2024年度(令和6年度)から小学校で使われる教科書の検定結果及びQRコード掲載等のデジタル化、日本語指導が必要な児童生徒への対応の地域差について

永岡桂子文部科学大臣記者会見映像版

令和5年3月31日(金曜日)に行われた、永岡桂子文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和5年3月31日永岡桂子文部科学大臣記者会見

令和5年3月31日永岡桂子文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

永岡桂子文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 私からは冒頭、5件ございます。
 まず1つ目です。教科書発行者の大日本図書が、採択関係者に飲食を無償提供するなど、不当な利益供与を行い、贈賄罪で有罪となるなどの事実がございました。この結果、教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせまして、教科書に対する信頼を大きく揺るがす事態に至ったことについては極めて遺憾でございます。このため、先日、当該発行者に対しまして、来年度の中学校用教科書の検定におきまして、3種目を不合格とする旨の処分方針を通知したところでございます。また、本日、教育委員会及び各教科書発行者に対しまして、教科書採択の公正性確保に関する通知の発出をいたします。本通知は、今回の事案を踏まえまして、不当な利益供与が二度とないよう、公正確保の徹底に万全を期すよう強く求めるものでございます。教科書は全ての児童生徒が必ず使うものでございますし、またその採択には高い公正性と、それから透明性が求められます。その点で文部科学省といたしましてはより一層の指導に努めてまいります。
 2件目でございます。昨日30日に、スポーツ庁とJOCが中心となり設置をいたしましたプロジェクトチームにおいて、「大規模な国際又は国内競技大会の組織委員会等のガバナンス体制などのあり方に関する指針」を策定をいたしました。本指針は、組織委員会からのヒアリングや海外事例等の調査・分析などを通じまして、大会組織委員会のガバナンスの実情や課題を把握するとともに、競技団体や経済団体からもご意見をいただきながら、今後、我が国で開催されます大規模な競技大会において参考となりますように、適切な運営体制の構築に向けた指針として策定をされたものでございます。早速昨日付けでJOCとも連携をいたしまして、スポーツ団体や地方自治体に対して遵守を促す事務連絡を発出をしておりまして、引き続きまして、その趣旨の周知徹底を図ってまいりますが、今後の刑事手続きなどで新たな事実が判明した場合には、必要に応じまして、本指針の修正等の検討は行ってまいりたいと思っております。
 本日3件目でございます。小・中・高等学校で不登校の児童生徒が約30万人と過去最多となったことを踏まえまして、誰一人として取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」(注)を取りまとめたところでございます。本プランは、不登校の児童生徒全ての学びの場を確保いたしまして、学びたいと思った時に学べる環境を整えること、2つ目ですが心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援をすること、そして3つ目になります、学校の風土の「見える化」を通しまして、学校「みんなが安心して学べる」場所にすることを柱としております。こうした取組の実効性を高めるために、不登校の児童生徒の学びや支援の状況を把握するための調査の見直しや、学校におけます働き方改革の推進なども合わせて進めていくことで、不登校により学びにつながることができない子供たちをゼロにすることを目指してまいりたいと考えております。近日中に、こども家庭庁の参画も得ながら、私を本部長といたします「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部」を立ち上げまして、プラン取組の推進や不断の改善をですね、しっかりと進めてまいりたいと考えております。
 4件目でございます。昨日、疾病によります療養等のため、相当の期間学校を欠席する児童生徒に対しまして、教育機会の保障の観点から、事前に収録した授業を視聴したい時間に受講することが可能なオンデマンド型の授業配信を実施することができるように、告示及び通知を改正いたしまして、交付しましたので、ご報告を申し上げます。本改正によりまして、4月1日からは、同時双方型の授業配信を原則とした上で、児童生徒の病状や治療の状況に応じまして学校の判断により、オンデマンド型の授業配信を実施することが可能となりました。引き続きまして、病気療養児に対します教育支援の充実に努めてまいります。
 そして5件目です。文部科学省では、1人1台端末等を活用いたしまして、魅力あふれるオンライン講座を子供たちに提供する「GIGAスクール特別講座」を実施をしてまいりました。今回は、G7広島サミット及び閣僚会議を契機といたしまして、「国際交流」をテーマに実施することとしましたのでプレスの皆様方にお知らせを申し上げます。第1回となるカナダ大使館との特別講座は、4月24日(月曜日)でございますが、14時から予定をしておりまして、カナダの歴史・文化などの紹介を聞いた後に、クイズなどを交えまして交流をしてもらう予定でございます。その後も、G7の閣僚会議のある12月にかけましてフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアの各国大使館との連携によりまして、同様の特別講座を実施をしてまいることにしております。
 以上でございます。
(注)「誰一人として取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」」と発言しましたが、正しくは「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」」です。


記者)
 今週28日なんですけれども、今年度の教科書検定結果が公表されました。まず結果全体に対する大臣のご所感と、あと小学校では合格した149点全点でQRコードが掲載されるなどデジタル化が進んでますけれども、今後の学びの姿はどのように変わっていくのか大臣のお考えがあればよろしくお願いします。

大臣)
 今回の教科書検定は、現行の学習指導要領に基づきます、小学校の教科書の2回目の検定と、主にですね、高等学校の3年生が使用します教科書の初めての検定というものでございました。申請図書の主な特徴といたしましては、学習指導要領の趣旨を踏まえまして、児童生徒の主体的、また対話的で深い学びの実現に資するように、課題解決活動などを通して必要な資質・能力の育成につなげられるような記述が充実しております。今回検定を決定した図書は、令和6年度から使用されます。文部科学省といたしましては、各学校におきまして、今回の検定を経た教科書を活用していただきまして、学習指導要領の趣旨を踏まえて質の高い授業が展開されることを期待しているところでございます。二次元コードについてでございますが、今回申請されました図書では、小学校の全教科で図書の内容に関連する外部コンテンツを参照する二次元コードが記載をされております。これらのリンク先のコンテンツというのは、教科書本体とは異なるものではありますが、当該教科書を使用して学習する子供たちの学びを一層充実させるため、教科書発行者自らの責任において行なわれる工夫の一環ということで受け止めているところでございます。

記者)
 冒頭発言の不登校の対応のプランの関係でお尋ねしたいんですけど、後段でおっしゃった不登校で学びにつながらない子供をゼロにしたいというのは不登校の子供をゼロにしたいという意図は違うという理解でいいのか、ちょっと補足して説明いただけるとありがたいというのと、プランの中で端末を活用したりして小さなSOSを見逃さない支援ということなんですけど、これが一部の教育関係者からするといわゆる不登校の予防というふうに捉えられて、それは不登校を問題行動とみなす過去に逆戻りしてしまうのではないかという懸念もあるんですけれども、この点に関する大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 学校というのは本当に色々なことを学ぶことができるというところだと思っております。不登校は誰にでも起こり得ると、そういう思いもございます。今回のプランは、不登校の児童生徒の数をゼロにすることを目標にしているというものではございませんので、重要なことはですね、仮に不登校になったとしても、やはり小・中・高等学校などを通じて、学びたいと思った時に多様な学びにつながるということが、やはり受け皿を整備するということだというふうに考えているところでございます。このため、今回のプランを通じまして、不登校により学びにつながることができない子供たちというものをゼロにすることを目指したいというふうには考えているところです。
 1人1台端末を使ったりですね、今までコロナ禍でですね、それぞれの家で子供たちの健康をね、お母さんがチェックしているということもありました。そういうことがありましたので、やはり端末を使っての自分の心ですね、気持ちのありようというものが日に日に違うということは学校の先生方も知っておいて非常によろしいかなと思っております。そういうこともありますのでしっかりとですね、対応できるかなと思っております。やはり予防の観点に関しましては、1人1台端末、これの健康診断というのを本当にやっていたので、それがあってこそね、非常にわかりやすく早期発見、心の変化の早期発見というものに結びつけられるし、また発見ができれば早期支援につなげることができると、そう思っております。

記者)
 不登校の関連で、冒頭発言にあった学校風土という考え方の部分について伺いたいと思います。文科省の委託研究で、学校風土を四つの場で評価して、そういう評価の基準を上手に作れれば不登校が起きにくい学校が作れる、たぶんそういうことを狙ってらっしゃるかと思うんですけども、要するにその評価の基準みたいなものを文科省が定めて日本中の公立学校に評価を基準の中でどういうふうな対応をすればいいかということをガイドラインとか何かを作ってやっていくとか、今後の進め方について伺えますでしょうか。

大臣)
 学校風土という一言で言ってもなかなかそれをどういうものかというのは非常に難しいことかと思っています。今日公表のプランにおきましては、児童生徒の授業への満足度であるとか、また教職員への信頼感ですね、子供たちが学校の先生へ持ちます信頼感、また学校生活への安心感など、つまり安心して学校にいられるかということも大変大きいかと思っております。やはりそういう学校風土と今申し上げますけれども、やはり「見える化」というのが非常に大事かなと思っているところです。今後ですね、文部科学省におきましては、学校の風土などを把握するための手段を整理いたしまして、全国にお示しすることを予定をしているところでございます。こうした取組を進めることによりまして、やはり学校みんなが安心して学べる、そういう場所にしていきたいと思っております。

記者)
 2021年度に文部科学省が実施した日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ実態調査についてお伺いしたいんですけれども、この調査で文科省は初めて日本語指導が必要な子供のうち特別支援学級に入っている子供の数を調べて全国平均で6.1%の子供が在籍していると明らかになりました。この集計を当社で都道府県別に集計しなおしたところ、多いところだと鳥取県で15%、香川県や静岡県でも約10%の子供が特別支援学級に入っているということが分かりまして、全国平均の2倍・3倍という規模で日本語指導が必要な子供が特別支援学級に入っている県があるということが明らかになりました。こういった地域格差がすごく大きい実態について大臣としてどういうふうに捉えておられるかであったり、この原因をどういうふうに推測しておられたというのをお伺いしたいと思っています。その上で誰一人取り残さないという話が先ほどからたくさん出ていると思うんですけれども、日本語指導が必要な子供たちが取り残されないためにこういった実態を踏まえて文部科学省としてどういった取組が必要だと考えておられるかというのを教えていただければと思います。

大臣)
 ご質問についてでございますけれども、一概にですね、各県それぞれ特別支援学級で日本人ではない外国籍の子供たちがいるということ、理由を説明するのは相当ちょっと難しいのかなとは思っております。でも外国人の子供が数多く住んでいる地域というところと、長年日本語指導に取り組んできた地域ですね、外国の方がですね、数多く住んでいて、また長年日本語指導に取り組んでいた地域と、最近になって外国人の子供が住み始めたというところではね、やはり新たに日本語の指導に取り組まなければいけないということがあろうかと思うんですね。そういうことになりますとやはり日本語の指導体制の整備の状況というのはやはりなかなか地域によっても差が出てしまうのではないかというふうにも思います。地域によって本当に色々であるというお話なわけでございますが、やはり日本語の指導が必要な児童生徒に対しましては、どの自治体でもやはり適切な指導がなされなければいけないと、それが重要だと思っております。そのためですね、特別の教育課程を編成した指導が実施できますように、日本語指導に必要な教職員の定数の着実な改善というものに取り組んでおります。その他ですね、関連事業などを通しまして、日本語指導の補助者、または母語支援員ですね、これは外国の国籍の言葉を話す、そういう支援員の派遣というものを、自治体の事情に即した取組というものを支援していきたいと考えているところです。

記者)
 鳥取県で15%ということに少し驚かれたように見えたんですけど、私も手元で計算していてこれくらい多く出るとは思っていなくて、数字を見た時に驚いたんですけれども、そういったかなり数値が高い県の実態について今こういった話を聞かれて大臣としてはどういうふうに感じられたかというのを教えていただけますでしょうか。

大臣)
 やはり日本語教育ですね、日本語をまず知ってもらって、小さいお子さんでしたらば辛い日はあるかもしれないけど、スタート時はですね、日本語わからなくて、でもやはり支援の日本語教育をしっかりとやっていただけると、そういうね、補助的な授業をしていただくことによって本当にしっかりと学校に馴染んでいただきたいなと思っております。

記者)
 冒頭発言にあった大日本図書への処分方針についてお尋ねします。今回は検定不合格となりましたが、なぜ小学校には適用しなかったのか、また発行者の指定取り消しという処分を選択しなかった理由も含めて今回の判断に至った理由についてお聞かせください。加えて教科書業界は過去に謝礼問題もありましたけれども、改めて今回の事態への大臣の受け止めと再発防止策についてもお聞かせください。

大臣)
 今回のことでございますけれども、やはり何回も申し上げますように教科書というのは本当に全ての子供たちが必ず使うものですから、やはり高い公正性と透明性が求められます。それがですね、このような事態が生じたことは本当に遺憾だと思っております。発行者とそれから自治体の調査から採択関係者への不当な利益供与の事実が明らかとなりまして、贈賄罪も確定をしたなどを踏まえまして、教科用の図書検定規則に基づきまして、中学校用の教科書の3種目について来年度の検定審査不合格の決定をしたところでございます。これは、新しい教科書の発行を4年間不可能とする極めて大変重い処分だと思っております。制度に基づく厳正な対応を検討していた結果でありまして、発行者は重く受け止めていただきたいと考えております。このような事態、これが二度とですね、起きませんように、発行者と自治体に対する指導、これを徹底してまいりたいと考えております。それからですね、なぜこのような範囲で処分だということですね。これは発行者と関係自治体の調査によりまして、不当な利益供与の事実関係が明らかになったところでありますので、一連の事案を検討いたしたわけでございます。藤井寺市の事案では、中学校用教科書の採択期間に、採択に関与する選定委員へ複数回に及ぶ不当な利益供与が行われまして、調査・選定に関する情報が漏えいし、贈賄罪で罰金刑が確定をしたということなども踏まえまして、現在、発行しております中学校用の教科書の全種目について処分の対象としたものでございます。それからですね、教科書発行者の指定取消が行われた場合はですね、全ての教科書の発行が直ちにできなくなります。その場合ですね、やはり採択の不公正が行われていない教科書も含めまして、既に使用されている教科書が全て発行不能となるためですね、本当に教育現場におけます混乱、そして児童生徒の学習上の支障を生じさせることになるものですから、発行者の指定取消を行うに至らないという、そういう判断をしたわけでございます。一方、不公正な事案に対する検定不合格の制度が無償措置法の根幹でありますので、教科書の安定供給の観点と、それから採択の公正確保の観点の調和を図るために創設されたところでございまして、今回の事案には検定不合格の制度を適用すべきものと、そういうふうに判断をしたわけでございます。

記者)
 今回の処分によって学校現場への影響というところについてどのように考えているのかということと、そこに対しての対応策についてもありましたらお聞かせください。

大臣)
 今回の処分はですね、来年度の検定審査を不合格とする措置なんです。既に中学校用の教科書として採択されました、令和6年度まで使用予定の物はですね、引き続きまして発行されることとなります。このため、来年度から教科書を発行できなくなるというものではなくて、通常の採択替えのタイミングで他の教科書を選ぶことができるために、学校現場への影響というものは限定的なものと認識をしております。

(了)

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