食育・栄養教諭に関してよくあるご質問Q&A


Q1. 「食育」という言葉を最近よく聞きますが、どのようなことを目的とする教育なのでしょうか。

Q2. 学校教育において食育はどのように進められるべきなのでしょうか。

Q3. 学校において栄養教諭その他の教職員はどのように関わっていけば良いのでしょうか。

Q4. 「栄養教諭」というのは、どのような資格なのでしょうか。学校栄養職員と異なるのでしょうか。

Q5. 食育を進めるためには栄養教諭の配置が必要という話も聞きますが、配置する必要性はないのではないでしょうか。単なる処遇改善ではないでしょうか。

Q6. 栄養教諭は、学校給食の管理業務を行うだけでも大変なのに、実際のところ、さらに食に関する指導など無理ではないですか。



Q1. 「食育」という言葉を最近よく聞きますが、どのようなことを目的とする教育なのでしょうか。
A1.  子どもたちへの食育は、成長期にある子どもにとって、健やかに生きるための基礎を培うことを主な目的としています。
 食育は、本来家庭が中心となって行うものですが、食生活の多様化が進む中で十分な指導を行うことが困難な状況も見られます。そうした状況を踏まえると、学校、家庭、地域が連携して子どもたちへの食育を推進することが必要です。

<解説>
健やかに生きるための基礎
 「食育」という言葉が注目されている背景には、食生活を取り巻く社会環境の変化に伴い、朝食欠食など子どもの食生活の乱れや肥満傾向の増加などの健康問題が見られます。また、食を通じて地域等を理解することや失われつつある食文化の継承を図ること、自然の恵みや勤労の大切さなどを理解することが重要となってきている状況もあります。
 成長期にある子どもにとって、健全な食生活は健康な心身を育むために欠かせないものであると同時に、将来の食習慣の形成にあたって大きな影響を及ぼします。子どもの頃に身に付いた食習慣を大人になって改めることは、非常に困難なことです。このため、成長期にある子どもへの食育は、健やかに生きるための基礎を培うことを主な目的としています。
 食に関する問題は、言うまでもなく家庭が中心となって子どもに指導を行うものですが、食生活の多様化が進む中で、食に関する情報の氾濫や安全性の問題など家庭において十分な知識に基づく指導を行うことが困難である状況もあります。そうした状況を踏まえると、子どもの食生活については、学校、家庭、地域が連携して次代を担う子どもたちの食環境の改善に努めることが必要です。

学校における食育推進の重要性
 学校給食はこれまでも教育活動として実施されてきていますから、各学校においては既に食育の実践を行ってきた実績を有しているといえます。しかし、食育が大きな国民的課題となっている今日、学校給食の教育的役割を改めて見直すとともに、学校の教育活動全体による食に関する指導(学校における食育)を進めていくことが大切です。
 学校では、様々な課題を踏まえ、知識の教授だけではなく、実際に経験をさせつつ児童生徒に食に関する指導を行うことにより、「食に関する知識」「食を選択する力」「望ましい食習慣」を家庭や地域と連携しつつ身に付けさせ、健全な食生活を実践することができる人間を育てること、具体的には、以下のような事項を総合的に育むということを主な目的としています。

 
食事の重要性、食事の喜び、楽しさの理解
心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事の摂り方を理解し、自ら管理していく能力
正しい知識、情報に基づいて、食物の品質及び安全性等について自ら判断できる能力
食物を大事にし、食物の生産等に関わる人々へ感謝する心
食生活のマナーや食事を通じた人間関係形成能力
各地域の産物、食文化や食にかかわる歴史等を理解し、尊重する心

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Q2. 学校教育において食育はどのように進められるべきなのでしょうか。
A2.  学校教育において食育を推進するには、食に関する知識や能力等を総合的に身につけることができるよう、学校教育活動全体で指導することが必要です。そのためには、指導内容を系統的に整理し、各教職員の役割と相互の連携を明確にした、食に関する指導に係る全体計画が必要であり、全体計画の作成、進行管理、評価の役割を中心的に担う「栄養教諭」を配置することが求められています。

<解説>
教育活動全体における取組
 児童生徒の健康課題の解決のために、現在の学習指導要領においては、それぞれの教科等の目標を達成する観点から、健康教育の一環として、食に関する領域や内容が取り扱われています。
 今後は、児童生徒の発達段階に応じて、食に関する知識や能力等を総合的に身につけることができるよう、学校では、各教科等における個々の食に関する指導を、継続性に配慮しつつ、教科横断的な指導として関連付け、学校教育全体で食に関する指導を進めていくことが必要です。
 学校給食の時間や家庭科の時間、保健学習の時間において指導していくことはもとよりのこと、例えば、6年社会科「大昔の人々のくらし」において、小野妹子が持ち帰ったとされている大陸文化として「はし文化の伝来」を扱い、食文化としての「はし」を学習し、併せて、学校給食で和食をとりあげ、日々の給食指導や学級活動において「はし」の使い方を指導することで、教科の内容についても、マナーについてもより意識化されます。さらには、総合的な学習の時間において、日本の文化の追求へと学習を発展させるようなことが考えられます。

全体計画の作成による取組
 学校教育全体での指導を実施するためには、食に関する指導に係る全体計画(PDF:208KB)(別紙1(PDF:208KB)参照。以下、全体計画という。)を作成することが必要です。
 学年ごとの給食をはじめとする教科等における食に関する指導の内容を系統的に整理し、各教職員の役割と相互の連携を明確にしておくことが必要です。また、単に計画を作成するだけで終わっては意味がありませんので、計画に従い確実に実施されるようにしなければなりません。
 このような学校全体における食の指導の計画を作成し、各教職員が連携しつつ確実に実施するためには、その連携・調整の役割を担う「栄養教諭」を学校に配置することが求められます。

全体計画に関する留意点
 全体計画の作成にあたっては、学校教育活動全体に関わることから、学校長の命の下に、「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」ことを職責とする栄養教諭が中心的な役割を果たさなければなりません。
 まず、学校運営における教育目標や方針などへ食に関する指導を位置付け、既存の委員会に担当させたり、新たな委員会を設置するなど校務分掌を整備し、食に関する指導の推進体制を整えることが重要です。
 食に関する指導を担当する委員会等においては、各教科等の指導計画や児童生徒の実態を踏まえつつ、栄養教諭が中心となって関係教職員と連携・協力しながら全体計画を作成し、全教職員の共通理解を図り、全教職員が連携・協力して効果的な指導を実施するといった組織的な取組を進めることが必要です。
 さらに、全体計画が計画的に実施されるよう、学年ごとに、より具体化した食に関する指導に係る年間指導計画(別紙2)(PDF:205KB)の作成も必要となります。
 なお、全体計画等の実施にあたっては、年度終・始の休業、学期間の長期休業中や学校給食の献立作成時、授業の前日の放課後や直前等といった時機をとらえた学級担任、教科担任等と栄養教諭との事前の打ち合わせを綿密に行っておくことが欠かせません。
 その際には、日頃の児童生徒の学習状況や理解度等を踏まえて、栄養教諭が授業の中で指導に入ることにより効果的となる場面等の設定、教材とすることにした資料等の準備、単元や指導の内容に応じた学校給食の献立の作成等を行います。
 計画期間の節目ごとに、実施状況を点検し、改善点を検証することも求められます。

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Q3. 学校において栄養教諭その他の教職員はどのように関わっていけば良いのでしょうか。
A3.  栄養教諭には、学校の食育推進について中心的な役割を果たすことが求められています。その職責を果たすためには、学校の食育を推進するための委員会等を設置したり全体計画を作成したりするなど、各教職員の参画が得られ、食育が適切に推進されるような体制をつくり出すことが必要です。

<解説>
 栄養教諭は、「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」職責を有しており、その学校の食育の推進について中心的な役割を果たすことが求められています。しかし、このことは、栄養教諭自身が、食育に関して、その学校における児童生徒に対する指導の全てを自ら行うことを想定していることを意味するものではありません。栄養教諭は、実際のところ、学校給食の管理業務を担っており、そのようなことが現実的に不可能であることは明らかです。
 つまり、栄養教諭が中心となって、その学校の各教職員の参画により、全ての児童生徒に対する食に関する指導が適切になされるような状態を作り出すことが求められているわけです。

各教職員の役割の明確化と相互連携
 学校における食育の推進は栄養教諭が中心となって取り組まれることにはなりますが、児童生徒に対する食に関する指導は各教科等の多様な領域において行われるべきものであり、その学校の教職員が十分に連携・協力して、指導に関わらなければ、児童生徒に対して、継続的かつ効果的な食に関する指導を行うことはできません。
 全体計画を作成し実施していく上では、その学校の児童生徒の健康状態や運動活動等の実態を把握しておくことが必要となりますが、その実態を踏まえて、栄養教諭は、養護教諭や体育・保健体育の教諭、学級担任などの教職員との情報交換等を行い、その学校における食育推進の基本的な考え方と方向性を全体計画として示すことが大切です。
 学校の食育の推進体制として設けられた委員会等においては、各学年、各教科等の全ての学習にわたり、食育の観点から点検を行い、全体計画を練り上げていくことになりますが、その際には、教務主任などその学校の教育活動を全体的に把握している教職員が参画することが肝要になると考えられます。
 栄養教諭は、学習指導要領や教科書などから学習内容の面で食に関する指導に関連している単元等を抽出し、教務主任が教育課程におけるその学校の諸課題を踏まえ、その学校で行う様々な教育活動と食育にかかる指導の実施時期や実施時数等について調整する必要があります。

栄養教諭による児童生徒に対する直接的な指導
 栄養教諭は、その学校の食育を進める上での課題を明確にするため、児童生徒の食生活の状況や実態を把握し、全体計画の作成及び実施についての中心的な役割を果たしていくとともに、自ら、児童生徒に対して直接的な指導を担うことが必要です。
 栄養教諭は、その配置の態様により、また、担当する学校の数により、給食の実施管理の業務のほか、児童生徒に対する直接的な指導に携わることとなる時間は様々であり、それぞれの状況に応じて取り組んでいく必要があります。
 栄養教諭の指導への関わり方については、食に関する指導を行う教科の種類や指導の形態によって異なります。
 そのため、各教科等における食に関する指導は、栄養教諭が学級担任や教科担任等と連携して指導にあたる場合は、児童生徒の学習実態に基づき、教科の指導目標をよりよく達成するために、教科や指導内容に応じて、具体的な役割分担や給食の時間の食に関する指導との関連など、事前の検討が必要です。また、学級担任等が単独で食に関する指導を行う場合でも、栄養教諭が資料や教材の提供による支援を行うことが考えられます。
 学校給食の時間においては、栄養教諭は、学級担任が行う日々の給食指導等の内容の助言を行ったり、自ら計画的に学級を巡回するなどして、食に関する指導を効果的に行います。また、学級担任は、児童生徒の食事の様子やマナーの実態、好き嫌いや残食の状況等を把握し、栄養教諭と情報を共有しながら食に関する指導を行うことが重要です。

食に関する相談活動等
 個別的相談指導は、食習慣に関する相談から始まったとしても、それ以外の生活習慣や心の健康が関連している場合が多いことから、必要に応じて学級担任や養護教諭と連携を図りながら対応していくことが極めて重要です。
 家庭・地域との連携にあたっては、栄養教諭は、双方向の情報交換ができるように工夫した給食だよりを発行することや、学級担任と情報を共有することが重要です。

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Q4. 「栄養教諭」というのは、どのような資格なのでしょうか。学校栄養職員と異なるのでしょうか。
A4.  栄養教諭は、栄養に関する専門性と教育に関する資質を併せ有する教育職員であり、給食管理のみを本務とする学校栄養職員とは、職務内容や職務上の責任、必要な資質が異なる新たな職です。

<解説>
職務内容及び任用要件の相違
 栄養教諭制度は、学校における食育の推進役として新たに設けられた制度であり、その職務内容や職務上の責任は、学校給食の管理のみを本務とする学校栄養職員とは異なります。
 そのため、職責を果たすための必要な資質能力が異なり、学校栄養職員と同等以上の栄養に関する専門的知識・能力に加え、児童生徒の心理や発達段階に配慮した指導ができるよう、教育の専門家としての資質能力も求められます。これらの資質能力を制度的に担保するため、栄養教諭免許状が創設されました。

栄養教諭免許状
 栄養教諭として標準的な一種免許状では、管理栄養士養成課程における必要科目と、従来からの教職の意義や教育課程などを習得する「教職に関する科目」とを単に習得するだけなく、さらに、両者の専門性を横断的に理解し、身に付けることを目的とする「栄養に係る教育に関する科目」を設けています。この科目は、食文化や食の歴史など食を取り巻く課題を踏まえ、栄養教諭としての使命や職務内容の自覚を促し、食に関する指導方法などを内容としています。これらを習得することにより、栄養教諭固有の専門性として必要な資質能力が備わったものと考えます。
 栄養教諭免許状を取得する方法として、栄養教諭養成大学等での科目等の取得に加えて、学校給食の管理を担っている現職の学校栄養職員が栄養教諭免許状を取得する仕組を設けていますが、これは、学校栄養職員が備えている栄養に関する専門性や経験を踏まえ、不足する資質を身に付けることにより、免許状が付与されるというものです。
 大学等での養成は、平成17年4月から始まったばかりであり、現段階においては、配置されている栄養教諭は、栄養教諭免許状を取得した学校栄養職員からの採用選考による移行を基本としています。

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Q5. 食育を進めるためには栄養教諭の配置が必要という話も聞きますが、配置する必要性はないのではないでしょうか。単なる処遇改善ではないでしょうか。
A5.  食育の推進には、学校全体の指導体制の整備が必要であり、この職責を担う者が「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」栄養教諭です。
 授業場面だけを取り上げれば、栄養教諭と学校栄養職員が行う食に関する指導は同様のものと見受けられる場合もありますが、栄養教諭は学校全体の食育を推進する職責を担うなど、学校における食育の推進に果たす両者の本来的な任務は異なるものであり、単なる処遇の改善ではありません。

<解説>
職務内容の相違
 確かに、従来、学校栄養職員は、栄養士又は管理栄養士としての専門性に基づき、また、実際に学校給食の献立作成等を担う者であることから学校給食を生きた教材として活用し得る立場として、ティーム・ティーチングや特別非常勤講師などにより、児童生徒に対する食に関する指導を行ってきており、現在もそのような努力をしていることは事実です。また、このような取組により、当該学校の食育もある程度充実してきており、一定の成果もあがっています。
 しかし、栄養教諭が「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」ことを任務としており(学校教育法 第28条第8項・第40条等)、他方、学校栄養職員は、「学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる」ことを任務としており(学校給食法 第5条の3)、これら両者の本来的な任務は異なるものです。

教職としての専門性
 栄養教諭は、教員免許法に基づく免許状の所持者であり、一定水準の教職の専門性が担保されている者であると言えます。
 しかし、学校栄養職員は、食に関する指導が職務に位置付けられていないことから、食育の推進においても個々の力量に依存せざるを得ないのが現状です。確かに、学校栄養職員の中には、個々人の個別の資質能力をみれば、既に何らかの教職免許状の所持者であったり、また、免許状は所持していないものの個人的な力量として一定程度の教育的な指導力を有する人がおられると思います。
 しかし、学校栄養職員の個々の力量により、児童生徒に対する食に関する指導が可能であったとしても、その本来の職務内容にかんがみ、学校全体の食育の推進体制を整備する職責を負う者として校務分掌において位置づけられるものではありません。
 したがって、学校の食育を推進するための指導体制の全国的な充実を図るためには、教職員の個々の力量のみに依存することなく、免許制度により教職としての専門性が担保され、その職務として食育を担う栄養教諭を配置することが望まれていると言えます。

学校における食育の推進体制の構築
 学校における食育を適切に進めるためには、単に個々の授業や学校給食の時間に学校栄養職員が参画するだけでは不十分です。
 食育は、学校における教育活動全体で取り組んでこそ、その効果をあげることができるものであり、学校全体の食育の推進体制の整備が必要です。この職責を担う者が「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」栄養教諭であると言えます。栄養教諭は、制度上、そのような職責を担う者であるのです。
 具体的には、栄養教諭が中心となって食育推進のための全体計画を作成し、その計画に従って、各教職員の役割を十分に果たしていただくような体制をつくりあげ、そして継続させていくことが栄養教諭の本来的な職務です。
 栄養教諭は、個々の授業に参画すること、及び個別の食に関する相談活動を行うこともその役割としていますが、最も重要な事項として、学校全体の食育の推進を担う職責を有しているのです。
 他方、学校栄養職員によるティーム・ティーチングや特別非常勤講師による食に関する指導は、学校栄養職員の食に関する専門性を最大限に生かす取組であり、授業の一部にその専門性を発揮することはできますが、学校全体の食育推進を担うことは、その本来的な職務として位置づけられておらず、実際上困難な面があることは否めません。
 以上のように、一つの授業における場面だけを取り上げてみれば、栄養教諭と学校栄養職員が行う食に関する指導は同様のものと見受けられる場合があるかもしれませんが、学校における食育の推進に果たす役割がそもそも異なるものであり、現実に、学校栄養職員が栄養教諭の職に切り替わる際に給与が上がるところがあるとしても、その職務に相応しい処遇を行うものであり、職務が同じで単なる処遇改善を図るというものではありません。
 なお、以上のことから、栄養教諭は教諭として学校に配置されるべき職であり、学校に配置されてこそ、その専門性を生かすことのできる職であることを十分にふまえ配置を促進する必要があります。

栄養教諭の配置の効果の例
 栄養教諭の配置校においては、学校全体で食育を推進するための指導体制が整備され、全教職員が計画的に食に関する指導に取り組んだ結果、以下のような成果が報告されています。

 
教職員の食育の推進に向けた意識の向上が見られ、食育の取組が充実した。
全職員が一丸となって朝食欠食の改善に取り組んだ結果、児童生徒の朝食欠食率が低下し、朝食欠食ゼロの日が増えた。
計画的に指導に取り組んだ結果、児童生徒の健康や食に関する興味・関心が高まり、魚や野菜の摂取量が増加し、給食の残食率が低下した。
栄養教諭が養護教諭等と連携して個別指導に取り組んだ結果、児童の肥満傾向が改善された。
児童や家庭に対する働きかけを通して、保護者の食に関する関心が高まった。
地域の生産者等と連携を図ったことにより、地場産物の使用率が増加した。

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Q6. 栄養教諭は、学校給食の管理業務を行うだけでも大変なのに、実際のところ、さらに食に関する指導など無理ではないですか。
A6.  食育の推進は、学校全体の教育活動によりなされるべきものです。栄養教諭の職務は、教職員各々の専門性を生かしつつ、相互の連携協力の下に全体的な食に関する指導がなされる体制をつくりあげることが第一義的に求められるものです。その上で、児童生徒に対する指導として自ら担うべき業務を分担することが求められるのであり、栄養教諭の勤務時間に占める児童生徒に対する教育指導の時間の占める割合が高くないということ自体が、栄養教諭の職責を果たしていないということにはなりません。また、栄養教諭が学校給食の管理業務を担っていることが、食に関する指導を行う上で、むしろ大きな利点となるといえます。

<解説>
栄養教諭の学校教育法と学校給食法の業務
 栄養教諭は、学校教育法上、「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」ことを任務としており、その学校の児童生徒全体の栄養の指導と管理をつかさどる職責を担っています。
 栄養の指導及び管理の業務については、全体計画の作成及び実施について中心的な職責を担うとともに、授業や給食時間における児童生徒に対する指導や個別の食に関する相談指導の業務があります。栄養の指導と管理については、栄養教諭の業務は、ある観点からみれば当該児童生徒に対して栄養の指導をしているとも言え、別の観点から見れば当該指導を介して当該児童生徒の栄養の適切な管理をしているとも言え、これらの業務は表裏一体のものと考えられます。
 また、学校給食法では、学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員は栄養教諭の免許状を有する者、又は栄養士の免許状を有し学校給食の実施に必要な知識経験を有する者である必要があるとされており、実際のところ、栄養教諭は、学校給食法上の学校給食の管理者としての業務も担うことが通例であると思われます。栄養教諭が学校給食の管理を行うことは、学校教育法で規定している「児童生徒の栄養の管理をつかさどる」ことにつながります。
 したがって、実際に栄養教諭が配置された場合には、全体計画の作成などの食に関する指導の連携・調整や教科や特別活動等における指導、児童生徒に対する個別的な相談指導などの「食に関する指導」、及び献立の作成や衛生管理などの「学校給食の管理」を一体的なものとして行うことが栄養教諭の業務となります。

栄養教諭の業務における教育指導の分担
 栄養教諭は、実際のところ、学校給食の管理業務をも担うことが通例であることから、児童生徒に対する教育指導の時間については、量的に必ずしも多いものにはならないという特性があることは確かです。しかし、栄養教諭の勤務時間に占める児童生徒に対する直接の教育指導の時間の占める割合が高くないということ自体が、栄養教諭の職責を果たしていないということではありません。
 栄養教諭一人だけでその学校の食育の推進を行うことは自ずから困難なものです。
 食育の推進は、学校全体の教育活動によりなされるべきものであり、栄養教諭の職務としては、その学校の他の教職員の方々の各々の専門性を生かしつつ、相互の連携協力の下に全体的な食に関する指導がなされる体制をつくりあげることが第一義的に求められるものです。
 その上で、児童生徒に対する指導として自ら担うべき業務を分担することが求められています。その際、栄養教諭が学校給食の管理業務をも担っていることが、むしろ大きな利点になります。献立作成をも担う栄養教諭は、学校給食を生きた教材として活用し、関連教科等で学んだ食に関する知識を児童生徒が学校給食を通して確認したり、学校給食で使用している食品の栄養や流通・消費等について学ぶなど、学校給食という実践活動を通してより深く理解させることができます。

栄養教諭の教育指導時間の確保
 以上のように、栄養教諭が児童生徒に対して直接教育指導する時間の勤務時間に占める割合が高くないということ自体が栄養教諭としての職責を十分に果たしていないということにはなりませんが、自ら児童生徒に指導する時間を確保するよう、極力、つとめることが必要であることも確かです。
 優れた献立を地域で共有したり、献立のデーターベース化や物資の発注、管理についてコンピューターを活用したり、日常的に調理員の調理技術や衛生管理に関する資質の向上に努め、栄養教諭が食に関する指導のため、一時、調理場を離れている場合であっても、学校給食の提供が行える体制作りをしたりするなど、日常の業務内容の見直しなどの工夫が望まれます。
 また、設置者においても栄養教諭が兼務校への移動を効率的に行うための公用車や事務処理を省力化するためのパソコンソフトの整備等、積極的な支援を行うことが期待されます。

(スポーツ・青少年局学校健康教育課健康教育企画室)


-- 登録:平成21年以前 --