スポーツ振興基本計画 2スポーツ振興施策の展開方策 2生涯スポーツ社会の実現に向けた、地域におけるスポーツ環境の整備充実方策 B

2 スポーツ振興施策の展開方策

2.生涯スポーツ社会の実現に向けた、地域におけるスポーツ環境の整備充実方策

B.政策目標達成のための基盤的施策

 誰もがスポーツに親しむことのできる生涯スポーツ社会を21世紀の早期に実現するための基盤的施策として、各主体がその役割に応じ、スポーツ指導者の養成・確保・活用、スポーツ施設の充実、地域における的確なスポーツ情報の提供体制の整備、住民のニーズに即応した地域スポーツを推進する。
 また、生涯スポーツ社会の実現のためには、学校において、体育の授業や運動部活動等を通じ、児童生徒がスポーツに親しみ、その楽しさや喜びを味わう機会を確保することが極めて重要であり、その充実を図る必要があるが、具体的施策については、「1.スポーツの振興を通じた子どもの体力の向上方策」に記載されている。

(1) スポーツ指導者の養成・確保・活用
 
1 到達目標
   ニーズに対応した質の高いスポーツ指導者を養成・確保・活用する。

2 現状と課題
   スポーツ指導者には、日体協、日レク協等が行うスポーツ指導者養成事業により認定された指導者のほか、体育指導委員、地方公共団体が養成・確保する指導者、公共スポーツ施設の専門指導員等がいる。地域住民のスポーツ活動へのニーズが高度化・多様化する中、質の高い技術・技能を有するスポーツ指導者に対する需要は高まっているが、そのようなスポーツ指導者の数は不足しており、今後、総合型地域スポーツクラブの数が増加していくことにより、その傾向がさらに強まることが予想される。このため、質の高いスポーツ指導者の養成・確保とともに、これらのスポーツ指導者のより一層の活用が必要である。
 さらに、地域のスポーツ指導者に関する情報に関しては、地方公共団体ではスポーツリーダーバンク等を設置しているものの、その情報が地域住民のニーズを十分に満たすものとなっていない場合もあるために、地域住民が自らのスポーツ活動に同バンクを十分活用していないという問題に加え、指導を行いたい者がその存在を知らないために登録されず、指導を行えないという問題も生じている場合がある。
 また、市区町村の非常勤職員である体育指導委員に関しては、従来の実技指導だけではなく、地域住民と行政の調整役(コーディネーター)としての役割が期待されているが、市区町村によっては、必ずしも適任者が委嘱されていない場合があると指摘されている。

3 今後の具体的施策展開
   質の高い技術・技能を有したスポーツ指導者の養成方策の充実を図るとともに、総合型地域スポーツクラブの全国展開等、スポーツ活動の場の拡大に伴って必要となる指導者の確保とより一層の活用を図り、スポーツ指導者が指導を円滑に行うことのできる環境を整備する。

(国)
 国民の量的・質的ニーズに応えるため、日体協、日レク協等が行うスポーツ指導者の養成・確保・活用についての基本的考え方を示す指針を策定するとともに、市区町村におけるスポーツリーダーバンク等の整備やネットワーク化による地域に密着した仕組みづくり等、スポーツ指導者の効果的な活用方策の研究を行い、その成果を全国に普及する。

(地方公共団体)
 都道府県及び市区町村においては、体育系大学等を卒業したり、あるいはスポーツ指導者養成事業に基づく指導者の資格を有する、質の高いスポーツ指導者をスポーツ振興部局や広域スポーツセンター、主要な公共スポーツ施設に配置するとともに、指導者の研修の充実を図るなど、地域のニーズに即した人材活用方策を検討することが期待される。また、スポーツリーダーバンク等について、地域住民のスポーツ活動の一層の充実のために、より地域に密着したものとするなど定期的な見直しに努めるとともに、地方公共団体、スポーツ団体、学校等の関係者による話し合いの場を確保し、総合型地域スポーツクラブや学校等におけるスポーツ指導者の活用を促進することが期待される。
 さらに、市区町村においては、今後は総合型地域スポーツクラブの創設や活動の充実、地域における子どものスポーツ環境の充実のために中心的な役割を果たすなど、地域住民のニーズを踏まえたスポーツ振興の推進役として期待される体育指導委員について、女性の積極的な委嘱にも配慮しつつ、熱意と能力のある有資格の指導者をこれに積極的に委嘱するとともに、研修の充実を図ることが強く期待される。

(スポーツ団体)
 日体協、日レク協等においては、国民の量的・質的ニーズに応えるため、スポーツ指導者養成事業の定期的な見直しを推進することが期待される。
 また、スポーツ団体は、女性や高齢者のスポーツ指導を適切に行うことのできる指導者の講習会を実施するなど、多様なスポーツ・レクリエーション活動を支援したり、青少年のスポーツ活動や自然体験活動の振興を図るため、青少年教育団体との連携を強化したりすることが期待される。
 さらに、障害者のスポーツ活動を支援する観点から、財団法人日本障害者スポーツ協会等の障害者スポーツ団体は、地方公共団体等の関係団体と連携して、一般のスポーツ指導者が、障害者へのスポーツ指導を適切に行う能力を修得するための講習会等の障害者スポーツ指導者の養成を一層推進することや、養成された指導者の活用を促進することが期待される。

(2) スポーツ施設の充実
 
1 到達目標
   全国展開される総合型地域スポーツクラブに必要な、魅力あるスポーツ空間を確保する。

2 現状と課題
   地域の公共スポーツ施設は、都道府県や市区町村において整備が進められているが、身近で利用しやすく親しみやすいスポーツ施設の不足感は現在も大きい。また、総合型地域スポーツクラブの活動の場として期待されるものの、クラブの利用を前提とした整備、管理運営が行われていないため、女性、高齢者、障害者等が利用しにくい場合が見られる。
 地域住民の最も身近に所在するスポーツ施設である学校体育施設に関しては、総合型地域スポーツクラブの拠点施設としての期待も大きい。現在、学校体育施設は、地域への単なる場の開放にとどまらず、地域の有益なスポーツ施設として、共同利用が図られつつある。しかし、学校体育施設はそもそも学校教育活動に使うことを主たる目的として整備されており、スポーツ施設として地域住民から期待される機能を満たすには十分でない場合がある。さらに利用日時や利用者が限定されているなど、施設の十分な有効活用という面においても、地域住民のニーズを満たしていない場合がある。

3 今後の具体的施策展開
   学校体育施設や公共スポーツ施設を、総合型地域スポーツクラブの活動の場として有効活用できるよう充実させるとともに、地域の実情に応じて、公共スポーツ施設の指定管理者として総合型地域スポーツクラブを指定するなど、管理運営の弾力化を図る。

(国)
 総合型地域スポーツクラブのニーズを踏まえつつ、地域住民が日常的にスポーツに親しむことができるよう、地方公共団体が行うスポーツ施設の充実を支援する。
 また、総合型地域スポーツクラブによるスポーツ施設の管理運営に関する先進事例を調査し、情報提供を進める。

(地方公共団体)
 地域住民の日常スポーツ活動の場である学校体育施設や公共スポーツ施設は、総合型地域スポーツクラブの全国展開を効果的に推進するために不可欠な基盤となるものである。このため、地方公共団体においては、次の事項にも留意しつつ、これらのスポーツ施設の充実及び効果的な管理運営の促進に努めることが期待される。

 公共スポーツ施設の充実、管理運営について、総合型地域スポーツクラブ側のニーズを踏まえるとともに、女性、高齢者、障害者を含む地域住民が日常的にスポーツに親しむことができるよう、バリアフリー等にも留意した整備を進めること。
 公共スポーツ施設に指定管理者制度を活用する際は、既存の地域のスポーツ大会の開催等に支障を生じるなどの問題が起こらないよう、事務の効率化だけでなく、地域住民へのサービスの向上の観点から検討を行うとともに、地域の実情に応じて指定管理者として総合型地域スポーツクラブを指定すること。
 新たな整備、管理運営の手段としてPFIを活用すること。
 学校体育施設については、総合型地域スポーツクラブの拠点として共同利用をさらに推進すること。
 学校施設については、スポーツだけではなく、レクリエーション・文化・福祉活動等も含めて、地域住民が様々な分野で生涯学習活動を行うことが可能となるよう、地域コミュニティの拠点施設としての建設、管理運営を推進すること。
 運動場については、子どもから高齢者まで地域住民の誰もがいつでも楽しく安全にスポーツ活動に親しむことを通じて、心身の両面にわたる健康の保持増進を図ることができる場として、地域の実態に応じて芝生化を促進すること。
 地域の河川敷、休耕田、空地等、地域スポーツ活動に資することが可能な空間について、土地の所有者・管理者の協力を得て、地域住民の多様なスポーツ活動の場としての有効な活用を図ること。

(3) 地域における的確なスポーツ情報の提供
 
1 到達目標
   地域のニーズに即したスポーツ情報提供体制を整備する。

2 現状と課題
   地域住民が主体的にスポーツ活動に取り組むためには、スポーツに関する様々な情報を容易に入手できる環境が整備されていることが望ましい。しかし、スポーツ施設の利用、スポーツイベント等の各種のスポーツ事業や質の高いスポーツ指導者等に関する情報の提供体制は、地域の実情に応じて整備が行われつつあるものの、情報の入手場所が限定されていたり、あるいは入手の手続きが煩雑であるといった問題がある。このため、スポーツをしたいと思っている者にとっては、スポーツ情報を入手することが困難であることから、主体的なスポーツ活動から遠ざかり、ひいてはスポーツ実施率が伸び悩む一因となっている。

3 今後の具体的施策展開
   スポーツ情報の提供体制の整備は、地域住民がスポーツに親しむための基盤であり、地域の実態及び住民のニーズに応じた情報提供システムの構築を図る必要がある。

(国)
 地方公共団体に対して、地域住民一人一人に有益な情報を提供するシステムについてのモデル事例の提示等を行う。

(地方公共団体)
 地方公共団体においては、広報誌等の紙媒体を中心とした情報提供の在り方を見直し、単に地域住民が受け取るにとどまらず、興味・関心を持ち、スポーツ活動に積極的に結びつくよう、多様な媒体を活用した有益な情報提供の実施が期待される。その際、インターネットを活用して、スポーツ情報に関するホームページを開設するなど、地域住民がより簡便な方法で情報を入手できるシステムを構築することが期待される。

(スポーツ団体)
 スポーツ団体においては、自らが積極的な情報発信に努めることはもとより、地方公共団体と連携・協力して、住民のスポーツ活動に結びつくスポーツ情報を提供する体制を構築することが期待される。

(4) 住民のニーズに即応した地域スポーツの推進
 
1 到達目標
   地域住民の主体的なスポーツ活動を支援する方向へ地域スポーツを推進する。

2 現状と課題
   地域におけるスポーツ行政は、施設整備を行うほかは、単発的・定型的なスポーツイベントやスポーツ教室等の開催に偏る傾向にあり、その結果参加者が固定化されたり、女性、高齢者、障害者等の参加が困難であるなど、地域住民の継続的なスポーツ活動に十分結びついていない場合がある。
 さらに、総合型地域スポーツクラブの意義・効果に関する認識も十分でなかったり、認識はしていても、総合型地域スポーツクラブの育成に関与しないなど、住民の総合型地域スポーツクラブ創設への主体的な活動に対する行政の支援が十分ではない場合が多い。

3 今後の具体的施策展開
   総合型地域スポーツクラブの全国展開に向けて、国と都道府県、市区町村のスポーツ振興を担当する部局相互間の連携・協力を推進する。さらに、それぞれのスポーツ振興部局においては、社会福祉・健康づくりやまちづくり等のスポーツ活動に資する施策を行う関係部局との連携・協力を図り、総合的・効率的なスポーツ行政を推進する。
 また、総合型地域スポーツクラブの全国展開を効果的に推進するためには、住民にとって最も身近な行政主体である市区町村の役割は特に大きい。このため、市区町村においては、次の事項にも留意しつつ、スポーツ行政の見直しを図ることが期待される。

 総合型地域スポーツクラブの育成計画を盛り込んだ、市区町村のスポーツ振興計画を策定・改定すること。
 イベント中心に陥りがちなスポーツ行政ではなく、住民に対するスポーツ行政への定期的な需要調査の実施等を通じて、変化する住民ニーズを適時適切に把握し、総合型地域スポーツクラブの育成等のように、地域住民自らが主体的に取り組むスポーツ活動への支援を推進する方向へ行政の重点を移行すること。
 地域のニーズを反映した行政を推進するためにも、住民と行政の調整役としての役割が期待される体育指導委員の資質の向上及び積極的活用を図ること。
 総合型地域スポーツクラブの活動を促進するため、指導者の養成・確保・活用や施設の充実、活動の機会の場の提供等の環境整備を行うこと。

 さらに、スポーツは全ての人が平等に参加できるものであるという理念を踏まえ、地域住民が、障害の有無にかかわらずスポーツ活動に参加できる機会を確保することに努める。また、障害者のスポーツニーズが多様化していることを踏まえ、スポーツ振興部局、福祉関係部局、スポーツ団体や障害者スポーツ団体等の関係団体が連携した障害者スポーツの取組を推進する。
 また、女性がスポーツに参加しやすい環境づくりのために、関係機関やスポーツ団体がネットワークを形成することを推進する。
 あわせて、総合型地域スポーツクラブ等が行う女性、高齢者、障害者等がスポーツに参加しやすい環境づくりに関する取組を推進する。

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スポーツ・青少年局企画・体育課

(スポーツ・青少年局企画・体育課)

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