スポーツ振興基本計画 2スポーツ振興施策の展開方策 3我が国の国際競技力の総合的な向上方策 A

2 スポーツ振興施策の展開方策

3.我が国の国際競技力の総合的な向上方策

政策目標: (1) オリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会における我が国のトップレベルの競技者の活躍は、国民に夢や感動を与え、明るく活力ある社会の形成に寄与することから、こうした大会で活躍できる競技者の育成・強化を積極的に推進する。
  (2) 具体的には、1996年(平成8年)のアトランタ夏季オリンピック競技大会において我が国のメダル獲得率(注1)が1.7パーセントまで低下したことを踏まえ、我が国のトップレベルの競技者の育成・強化のための諸施策を総合的・計画的に推進し、早期にメダル獲得率が倍増し、夏季・冬季合わせて3.5パーセントとなることを目指す(注2)。

(注1) 「メダル獲得率」とは、オリンピック競技大会における我が国のメダルの獲得数を総メダル数で除したものである。
(注2) 我が国のメダル獲得率は、1976年(昭和51年)のモントリオール夏季及びインスブルック冬季オリンピック競技大会では合わせて3.5パーセントであったが、その後諸外国において競技者の育成・強化のための施策が組織的・計画的に推進される中、長期的に低下する傾向にあった。2004年(平成16年)のアテネ夏季オリンピック競技大会及び2006年(平成18年)のトリノ冬季オリンピック競技大会では合わせて3.22パーセントのメダル獲得率となっている。なお、夏季・冬季合わせたメダル獲得率とは、直近に開催された夏季及び冬季オリンピック競技大会におけるメダル獲得数の合計をそれらのオリンピック競技大会における総メダル数の合計数で除したものである。

A.政策目標達成のため必要不可欠である施策

 国際競技力の向上を図るためには、広くジュニア層まで視野に入れ、優れた素質を有する競技者に対し、個人の特性や各年齢期における発達の特徴に応じた指導を行い、世界で活躍できるトップレベルの競技者を組織的・計画的に育成する必要がある。
 このため、競技団体は、競技者の育成・強化を行う主体として、トップレベルの競技者の育成方針を作成し、これに基づき競技者を育成する仕組みを構築する。国、地方公共団体をはじめとする関係機関・団体は、この仕組みの基盤となる強化拠点の整備をはじめとして、指導者の養成・確保及び競技者が安心して競技に専念できる環境の整備を総合的に推進する。
 また、財団法人日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)や競技団体をはじめとするスポーツ団体は、スポーツの社会的意義を認識し、国民からの一層の信頼を得られるよう自らの運営の適正性及び透明性を確保することが必要であり、国としても、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年9月20日閣議決定)等に基づき、健全かつ適正な業務運営を行うよう引き続き指導を行う。
 さらに、JOCや競技団体は、競技力の向上のための各種事業を円滑に推進するため、競技力向上の企画立案やマーケティング活動等を担当する職員に対する研修活動の充実やこうした職員の専任化等を推進し、地方組織を含めてマネジメント機能の強化と財政基盤の充実を図るとともに、組織内の責任体制を明確にすることが期待されている。

(1) 一貫指導システムの構築
 
1 到達目標
   トップレベルの競技者を組織的・計画的に育成するため、一貫指導システムを構築する。具体的には、2005年(平成17年)を目途に競技団体が作成してきた、トップレベルの競技者を育成するための指導理念や指導内容を示した競技者育成プログラムを全国に普及し、このプログラムに基づき競技者に対し指導を行う体制を整備する。

2 現状と課題
   我が国においては、ジュニア期の競技者については学校における指導者が、トップレベルを目指している競技者については大学、企業等における指導者が、それぞれの考え方に基づき指導を行い、これらの競技者のうち国内の競技大会で好成績を収めた者をオリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会への参加に当たり強化するという競技者の育成方法が主体となっている。
 しかしながら、この方法では、競技者の能力を将来に向けて適切に伸ばすための指導が十分行われず、とりわけ競技者の育成において最も重要なジュニア期における指導が各学校段階を通じて継続的に行われにくい。このことが、競技者の育成を計画的に行う諸外国と比較して、我が国ではトップレベルの競技者が多く輩出されず、国際競技力の低下を招いた要因の一つに挙げられている。
 また、少子化の進行等により競技人口の縮小が懸念される中、自然に淘汰されて選び出された競技者を強化するという現在の育成方法では、今後の国際競技力の向上は望みにくい状況にある。
 このため、現在の育成方法を見直し、優れた素質を有する競技者が、指導者や活動拠点等にかかわらず、一貫した指導理念に基づく個人の特性や発達段階に応じた最適の指導を受けることを通じ、トップレベルの競技者へと育成されるシステム(以下「一貫指導システム」という。)を各競技で構築する必要がある。
 一貫指導システムの構築に当たり、競技団体は、国際的な競技者育成の動向等を踏まえ、トップレベルの競技者を育成するための指導理念や指導内容等を競技者の発達段階や技術水準に応じて明確にし、優れた素質を有する競技者にこの指導理念等に基づく高度な指導を継続して行うことが不可欠である。
 競技ごとの競技者育成プログラムの作成については、2005年(平成17年)を目途に作成を促してきたところであり、大多数の競技団体において作成されたことから、今後はその全国的な普及に更に取り組む必要がある。また、各競技における技術や指導法の進歩が目覚ましいことから、競技者育成プログラムを適宜更新し、指導内容の充実を図る必要がある。
 また、一貫指導システムが円滑に機能するためには、競技者が日常のトレーニングを行う学校等における指導内容と競技団体の指導内容とが大きく異なり、競技者の効果的な育成に支障が生じないよう、学校、財団法人日本中学校体育連盟や財団法人全国高等学校体育連盟等の学校体育・スポーツ活動の振興を図る団体(以下「学校体育団体」という。)及び総合型地域スポーツクラブをはじめとする地域スポーツクラブと競技団体との十分な連携が必要である。

3 今後の具体的施策展開
 
1) 競技者育成プログラムに基づく競技者の育成の促進
   各地域の優れた素質を有する競技者や大学、企業等でトップレベルを目指している競技者に競技者育成プログラムに基づく高度な指導を継続して実施する競技団体等に対する支援を充実する。
 競技団体は、各地域等での指導を行うに当たり、競技者の体力・運動能力、スポーツ適性等の情報の把握に努め、この情報を基に特に将来が嘱望される者を全国レベルで選考し、これらの者に対するより高度な指導が効果的に行われるよう十分配慮する。

2) 競技者育成プログラムの普及及び一貫指導を実施するための体制の整備
   学校や地域スポーツクラブにおける指導者をはじめとするスポーツ関係者に対して、一貫指導システムの意義や競技ごとの競技者育成プログラムの趣旨及び内容に関する普及啓発活動を推進する。この場合、ジュニア期の競技者を効果的に育成するため、地域の強化拠点への生徒の派遣や複数の競技種目を体験する機会の確保、競技者の心身両面での負担の軽減等について関係者の理解の醸成に努める。また、競技大会については、学校対抗形式にとらわれず、複数校合同及び地域スポーツクラブからの参加の促進や児童生徒の発達に即した年齢別グループごとの競技の実施等の工夫がなされるよう、関係者の相互の理解と連携を図る。
 競技団体は、この普及啓発活動の一環として、中央組織にあっては大学の運動部や企業の指導者と、地方組織にあっては各学校や地域スポーツクラブの指導者との連絡会議や合同練習等を積極的に開催するなど、中央レベルから地域レベルまでが一体となった競技者の組織的な育成体制を整備することが望ましい。

3) 優れた素質を有する競技者の発掘手法の研究開発等
   競技団体が、競技特性を踏まえた客観的な指標に基づき、優れた素質を有する競技者を発掘できるよう、各競技における競技者育成プログラムの内容等を勘案した上で、競技者の発掘手法に関する調査研究を行う。この調査研究に当たっては、JOCや国立スポーツ科学センター(以下「JISS」という。)、体育系大学等と連携し、トップレベルの競技者の身体特性等の情報を活用しつつ、地方公共団体の協力を得ながら行う。
 競技団体は、JISSの協力を得て、優れた素質を有する競技者について各団体が保有する情報の共有化を図ることが望ましい。

(2) トレーニング拠点の整備
 
1 到達目標
   一貫指導システムに基づく競技者の育成・強化を効果的に行うため、トップレベルの競技者や地域の優れた素質を有する競技者が集中的・総合的にトレーニングを行う拠点を整備する。特に、トップレベルの競技者の強化のため、ナショナルトレーニングセンター中核拠点施設を2007年(平成19年)中に整備するとともに、中核拠点施設では対応できない競技については、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点の指定を2006年(平成18年)度中に開始し、2007年(平成19年)度から支援を開始する。

2 現状と課題
   トップレベルの競技者の強化に当たっては、競技者が同一の活動拠点で集中的・継続的にトレーニングを行う環境を整える必要がある。特に、国際的な動向を踏まえると、トップレベルの競技者はスポーツ医・科学の成果を活用した高度なトレーニングを十分な時間をかけて行う必要があり、こうしたトレーニングを行う拠点を恒常的に確保することが求められている。
 諸外国では、こうした観点から、トップレベルの競技者が高度なトレーニングを行う拠点としてナショナルトレーニングセンターを設置しており、アテネ夏季オリンピック競技大会の金メダル獲得数上位10か国のうち9か国までがこうした施設を有している。
 我が国においても2001年(平成13年)10月に開所したJISSがスポーツ科学・医学・情報の各側面から競技団体等に対して行った支援が、2004年(平成16年)のアテネ夏季オリンピック競技大会での好成績に貢献し、日本は、金メダル獲得数ではシドニー夏季オリンピック競技大会の第15位から第5位に躍進した。今後とも、国際競技力の向上を図るためには、ナショナルレベルの本格的なトレーニング拠点の充実を図り、JISSと連携していくことが不可欠となっている。
 また、一貫指導システムによる競技者の育成のためには、各地域の優れた素質を有する競技者に対して個人の特性に応じた高度な指導を継続して行う必要がある。こうした指導は使用施設によっては十分な効果を得られない場合もあることから、あらかじめ各地域におけるトレーニング拠点を確保した上で計画的に行うことが重要である。

3 今後の具体的施策展開
 
1) 我が国のナショナルレベルのトレーニング拠点の整備
   ナショナルトレーニングセンターの設置等の在り方に関する調査研究協力者会議の結論を踏まえ、ナショナルトレーニングセンター中核拠点施設を2007年(平成19年)中に整備する。
 また、中核拠点では対応できない冬季競技、海洋・水辺系の競技、屋外系競技及び高地トレーニング等の強化拠点については、2006年(平成18年)度中に既存のトレーニング施設をナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点として指定を開始し、2007年(平成19年)度から施設の高機能化や中核拠点とのネットワーク化を図るために必要な支援等を行う。
 施設の指定に当たっては、強化拠点としての指定の在り方についての調査研究を踏まえるとともに、JOCや競技団体の選手強化方針に留意する。

2) 地域における強化拠点の整備等
   各地域の優れた素質を有する競技者が効果的なトレーニングを恒常的に行うことができる地域の強化拠点の整備を促進する。この整備に当たっては、既存の公共スポーツ施設や企業等が所有するスポーツ施設の活用に十分留意する。
 また、競技団体は、この地域の拠点を核として一貫指導が適切に実施されるよう、地方公共団体と連携を図りながら、この拠点における専門的な技術指導者の確保やスポーツ科学・医学・情報面でのサポート体制の整備に努める。

(3) 指導者の養成・確保
 
1 到達目標
   一貫指導システムにおいて、優れた素質を有する競技者への指導を担う高度な専門的能力を有する指導者の養成・確保と指導者の専任化を促進する。

2 現状と課題
   国際競技力の向上のためには、競技者の育成・強化方法に関する世界の先進事例等を十分に理解した指導者が、トップレベルの競技者やこれを目指す優れた素質を有する競技者(以下「トップレベル競技者等」という。)に十分な時間をかけて指導を行う必要があるが、我が国の指導者は質的、量的にみて以下の状況にある。

(質的な面)
 国際競技力の向上を図るためには、トップレベル競技者等に対して、競技者育成プログラムを踏まえつつ、競技者各人の特性に応じた専門的な技術指導を行うことができる指導者を十分に確保する必要がある。とりわけ、トップレベルの競技者の指導者は、オリンピック競技大会等の国際競技大会に向けて、国際的な競技水準を踏まえた戦術・戦略を構築するとともに、これに基づきスポーツ医・科学に関する知識等を活用した強化方法を立案・指導する能力が求められている。
 しかしながら、我が国では専門性の高い指導者の養成を計画的に行う仕組みが確立されていない。

(量的な面)
 国際的な競技者育成の動向を踏まえると、トップレベル競技者等は十分な時間をかけてトレーニングに専念することが必要であり、その指導者についても指導に専念することが求められている。
 我が国でも、1989年(平成元年)から、国の支援により、JOCがオリンピック競技大会でのメダル獲得が有望な競技団体に専任コーチを配置しており、2005年(平成17年)現在、30競技において45名が配置されている。競技団体においても独自の財源により指導者を確保している団体もあるが、その数は十分とはいえない状況にある。
 このため、我が国においても指導者が指導に専念できる体制の充実を図ることが求められている。
 さらに、技術的な専門指導者に加え、体力トレーニングや栄養面の指導、心理面のサポート、コンディショニング等の競技水準の向上に重要な役割を果たす分野において、高い専門性を有するスタッフを確保することも課題となっている。

3 今後の具体的施策展開
 
1) 一貫指導システムを担う指導者の養成・確保
   中央から各地域まで一貫指導システムを担う指導者が十分に確保されるよう、競技団体が作成する指導者養成・確保計画に基づき、トップレベル競技者等の指導者の専任化の促進や各地域における指導者の適正な確保を図る。また、地方の競技団体や地域スポーツクラブの指導者が各学校の要請に基づき必要に応じて定期的に運動部活動を指導できるようなシステムを構築する。
 この場合、日体協と加盟競技団体が連携して実施しているスポーツ指導者養成事業について、競技者育成プログラム等に基づく指導に必要となる知識を効果的に習得でき、また、トップレベル競技者等の指導者にも受講し易いものとなるよう、必要な見直しを行う。
 また、競技団体は、指導者がトップレベルの競技者への指導に専念できるようにするため、例えばこうした指導者がトップレベルの競技者への指導から離れた後も、各地域等における指導者として継続して活躍できる体制を整備すること等を検討することが望ましい。
 さらに、JOCと競技団体は、指導者養成・確保計画の作成に当たり、日体協との連携を図りつつ、競技者育成プログラムを実施する上で必要となる指導者の資質を明確に示すとともに、競技力向上の企画立案、体力トレーニングや栄養面の指導、心理面のサポート、コンディショニング等に高い専門性を有するスタッフの養成・確保に十分配慮する。

2) ナショナルコーチアカデミーの設置
   トップレベル競技者等の指導者が国際的な競技水準を踏まえた戦術・戦略の構築やスポーツ医・科学に関する知識を活用した強化方法の立案・指導を行うために必要となる、高度な専門的能力を習得するための研修制度(ナショナルコーチアカデミー制度)の創設を支援する。制度の創設に当たっては、スポーツ指導者養成事業の効果的な活用、ナショナルチーム等での実践指導の機会の提供、スポーツ医・科学面の最新の専門的知識等の効果的な習得、既存のスポーツ指導者在外研修制度の活用等に十分留意する。
 また、この研修が効果的に行われるよう、JISSや体育系大学との連携体制を確立し、スポーツ医・科学の研究成果の活用や研究者の協力の確保を図る。

3) 学校や地域における指導者に対する一貫指導システムについての理解の増進
   競技者が日常のトレーニングを行う学校や地域スポーツクラブの指導者に対して、一貫指導システムの意義や競技力育成プログラムの内容についての普及啓発活動を推進する。この場合、競技団体は、日体協及び地域の体育協会と連携を図り、競技者育成プログラムを踏まえた指導の優良事例を学校等の指導者に積極的に提供することが望ましい。

(4) 競技者が安心して競技に専念できる環境の整備
 
1 到達目標
   トップレベル競技者等が世界の頂点に向け競技に専念できるような体制を整備する。

2 現状と課題
   トップレベルの競技者がオリンピック競技大会等の国際競技大会でその実力を発揮するためには、十分な時間をかけてトレーニングに専念することが不可欠であるが、我が国におけるトップレベル競技者等を取り巻く環境は、以下の状況にある。

(我が国のスポーツを取り巻く環境の変化)
 我が国の国際競技力は、企業が社会貢献という観点も踏まえて運動部を運営し、トップレベル競技者等がこの運動部でトレーニングを行うとともに、各種大会へ参加するなど多くの企業の支援に支えられてきた。しかしながら、近年の厳しい経済状況等から、2000年(平成12年)、2001年(平成13年)の2年間で180以上の企業の運動部が休廃部する事態が発生しており、トップレベル競技者等が安心して競技に専念できる環境を確保する上で支障が生じ始めている。
 こうした中で、国際競技力の一層の向上を図るためには、我が国における今後の企業スポーツの在り方をはじめとして、競技者が安心して競技に専念できる環境の整備に向けて取り組むべき課題を明確にする必要があることから、競技団体、企業及び地域の役割等について調査研究を行い、企業とスポーツの良好な協力関係を生むための方策について検討を行ったところである(「ニッポン」の未来を支える企業とスポーツのパートナーシップを求めて(平成15年3月 企業スポーツに関する調査研究有識者会議))。今後とも我が国におけるトップレベル競技者等が競技に専念できる環境の整備に向け継続して取り組む必要がある。
 また、我が国の競技スポーツにおいては、企業等の民間セクターが重要な役割を果たしていることを踏まえ、企業の社会的責任としてスポーツへの支援を行うという意識をより一層醸成していくとともに、スポーツへの支援を行う企業の社会的な評価の向上に努めるなど、企業が積極的にスポーツを支援するための誘導措置を講じることが求められている。さらに、企業等からの支援を積極的に導入するため、JOCや各競技団体によるマーケティング活動の充実を図ることも不可欠になっている。

(競技者の引退後への配慮)
 トップレベル競技者等の生活を考えた場合、トレーニングに専念している期間には学業や仕事の停滞が生じ、引退後の生活全般に負担が生じるおそれがある。
 このため、トップレベル競技者等については、人格的にも優れた社会性を培うとともに、トレーニングに専念している期間や競技生活から引退した時点で、引退後の生活に必要となる職業的知識や技能を習得する機会を提供することが重要である。
 また、国際競技力の向上を図るためには、トップレベルの競技者の国際競技大会等における経験や日常のトレーニングで得た経験が世代を超えて蓄積され、次代の競技者に活用されることが重要である。
 しかしながら、我が国のトップレベルの競技者は、引退後スポーツ以外の職業につく場合が多く、競技生活で培ったノウハウが十分活用されているとは言い難いことから、これらの競技者が引退後に指導者として活躍できる環境を整備する必要がある。

(傷害への適切な対応)
 競技者の活動中の傷害への補償については、スポーツ安全保険や競技団体等が加入する民間保険等により対応しているが、こうした保険への加入状況や一部保険における保険金額は、競技者が安心して競技に専念するためには十分とは言えない状況にある。

3 今後の具体的施策展開
 
1) スポーツ環境の変化への対応
   近年の経済不況等による企業のスポーツチームの休廃部が相次ぐ中、競技者が企業に所属するだけでなく、企業に頼らなくても競技を続けられるような環境整備が必要である。
 このため、地域との連携や共生を目指すトップレベルのスポーツクラブに対する支援やトップリーグの運営に対する支援を行うとともに、今後とも、地域と連携し、地域に支えられるスポーツの在り方について検討する。
 また、競技大会に対する支援や競技団体・競技者に対するスポンサーシップ等のスポーツに対する民間からの多様な支援の在り方について引き続き検討する。
 一方、市区町村においては、地域に根差したチームの存在は、地域の活性化につながることから、地域再生という観点から、地域の実情に応じたスポーツを振興することが望ましい。

2) トップレベルの競技者に対するセカンドキャリア支援の充実
   トレーニングに専念している期間から引退後の生活に必要となる職業的知識や技能を習得する機会を提供できるよう、セカンドキャリアに関する研修プログラムを開発し、実施する。
 また、トップレベルの競技者が、引退後に一貫指導システムを担う指導者として活躍できるよう、ナショナルトレーニングセンター中核拠点において指導者となるための研修を実施するとともに、研修活動に対する支援措置を充実する。
 さらに、トップレベルの競技者が引退後、新たな人生を切り開くためのキャリアアップとして、資格を取得したり、技能を身に付けられるよう支援を行うとともに、地域におけるスポーツ指導者や学校における部活動の指導者等への活用方策の検討を行う。
 地方公共団体は、トップレベルの競技者を引退後に学校の特別非常勤講師等として採用し、その経験を競技力向上や青少年の教育へ活用することが望ましい。

3) 競技力向上を支える企業に対する支援措置の充実
   スポーツの振興に貢献した企業の顕彰制度を設け、スポーツ振興のために行う企業の活動を積極的に周知するとともに、日体協及びJOCが行う免税募金制度が企業にこれまで以上に活用されるよう、事務の簡素化等の見直しや企業に対する一層の周知に努めるなど、企業からスポーツへの支援を広く受けることができるような多様な措置を積極的に講じる。
 JOCや競技団体は、こうした観点から、選手の肖像利用の在り方の多様化等マーケティング活動について必要な措置を講ずることが望ましい。また、スポーツへの支援を行う企業に使用する権利が与えられているシンボルやエンブレム等を第三者が不正に使用し、スポーツを支援する企業に不利益が生じることのないよう、こうした知的財産の保護に向けた取組みを一層推進する。

4) 傷害への適切な対応
   スポーツ活動中の傷害に対する保険への競技者の加入を一層促進するとともに、保険金額の面を中心に必要に応じて競技者の傷害に対する補償の在り方について必要な見直しや関係者への協力要請を行う。

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スポーツ・青少年局企画・体育課

(スポーツ・青少年局企画・体育課)

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