10. 少年院や児童自立支援施設に入っている学齢児童生徒の就学について

Q 児童自立支援施設や少年院に入っている学齢児童生徒の就学についてはどのように取り扱えばよいでしょうか。

A 
〇学齢児童生徒の就学について
   すべての国民は日本国憲法第26条、教育基本法第5条により、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負っています。これを受けて、学校教育法第16、17条は、子に9年の普通教育を受けさせる保護者(※)の義務(就学義務)を具体的に定め、同法18条ではこの保護者に対する就学義務の猶予又は免除について規定しています。保護者に対して、この就学義務が猶予または免除される場合とは、「病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合」とされています。
 かつて文部科学省では「その他やむを得ない事由」として、児童自立支援施設や少年院に収容された場合が該当するという考え方を示してきたところです。

〇児童自立支援施設に入所した学齢児童生徒について
   児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童(満18歳未満の者)及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設(児童福祉法第44条)です。
  児童自立支援施設の長は、保護者に準じて、その施設に入所中の学齢児童生徒を就学させなければならないとされています(同法第48条)。これは親権を行う者又は未成年後見人がいる入所中の学齢児童生徒について、これらの保護者とともに、施設の長に保護者に準ずる就学義務を課したものと解されます。

  入所中の学齢児童生徒に学校教育を実施する具体的な方法としては、地域の小・中学校等への通学や児童自立支援施設内における分校・分教室の設置等があり、これらのうちから教育委員会の判断により適切な方法が実施されることとなります。

  平成9年の児童福祉法等の一部を改正する法律の経過措置として当分の間、児童自立支援施設の長が、入所中の児童に学校教育に準ずる教科指導を実施する(文部科学大臣の勧告に従って行う)ことができ、この場合は、小・中学校等の在学とみなすこととされておらず、学校教育法第18条にある「やむを得ない事由」として、保護者は就学義務の猶予・免除を受けることとなっていました。  
しかしながら、現在、ほとんどの児童自立支援施設において地域の小・中学校等への通学や施設内における分校・分教室が設置されており、この場合、入所しているが児童生徒は学校教育を受けていることから、保護者は就学義務の猶予・免除を受ける必要はありません。

〇少年院に入院中の学齢児童生徒について
少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された者を収容し、矯正教育と社会復帰支援を行う施設です。学齢児童生徒が入院した場合、少年院においては、少年院法第26条第1項に基づく学校教育に準ずる内容の指導が行われます。

  従前の取扱いでは、学齢児童生徒が少年院に入院した場合、学校教育法第18条に定める「やむを得ない事由」として、保護者は就学義務の猶予・免除を受けることとしており、学籍が除籍されることもありました。しかしながら、児童生徒が再び学校に戻って居場所を得たり、進学等の形で学びを継続していくことは改善更生や生活の安定において極めて重要です。このため、児童生徒が出院後に円滑に学校に復学できるようにするため、入院前に学齢児童生徒が通学していた学校が少年院との連携の下、少年院における学習の状況等を適切に把握していると判断される場合は、保護者は教育委員会に就学義務の猶予・免除の願い出をする必要はなく、入院中も引き続き入院前に通学していた学校に在籍することもできるといたしました(下記、参考通知)。
 なお、国立大学法人、公立大学法人及び学校法人等が設置する義務教育諸学校に通う児童生徒が少年院に入院した場合であってその学校を退学したときは、学齢簿を編製する教育委員会は、保護者の願い出を受けて就学義務を猶予・免除することもできます。また、円滑な復学の観点から、保護者の意向を聴取した上で、在院中に就学すべき学校を指定し、在籍を認めることもできます。この場合、当該学校が少年院との連携の下、少年院における児童生徒の学習の状況等を適切に把握する必要です。

※ 子に対して親権を行う者。親権を行うもののないときは未成年後見人。

〔参照条文〕
学校教育法(昭和22年法律第26号)
第18条 前条第1項又は第2項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第1項又は第2項の義務を猶予又は免除することができる。

児童福祉法(昭和22年法律第164号)
第44条 児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
第48条 児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者並びに里親は、学校教育法に規定する保護者に準じて、その施設に入所中又は受託中の児童を就学させなければならない。


少年院法(平成26年法律第58号)
(教科指導)
第26条 少年院の長は、学校教育法(昭和22年法律第26号)に定める義務教育を終了しない在院者その他の社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる在院者に対しては、教科指導(同法による学校教育の内容に準ずる内容の指導をいう。以下同じ。)を行うものとする。
2(略)


〔参考通知〕
「再犯防止推進計画」を受けた児童生徒に係る取組の充実について(通知)(令和元年7月)

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)