「再犯防止推進計画」を受けた児童生徒に係る取組の充実について(通知)

元受文科初第261号 
令和元年7月3日 

各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事                                                    
附属学校を置く各国公立大学長                                    殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の
認定を受けた各地方公共団体の長

文部科学省初等中等教育局長事務代理
文部科学審議官
芦立  訓
(印影印刷)

 

「再犯防止推進計画」を受けた児童生徒に係る取組の充実について(通知)

 

 平成28年12月,「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104号)が公布,施行されました。本法律は,再犯の防止等に関する施策に関し,国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに,再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくための基本となる事項を定めるものであり,平成29年12月15日には,同法に基づき,平成30年度からの5年間を計画期間とする「再犯防止推進計画」(以下「計画」という。)が閣議決定されたことは,「『再犯防止推進計画』の策定について」(平成29年12月20日付け29受文科生688号文部科学省生涯学習政策局長・初等中等教育局長通知)で通知したとおりです。
 計画では,犯罪をした者等が,多様化が進む社会において孤立することなく,再び社会を構成する一員となることができるよう,関係行政機関の相互の連携に基づき施策を総合的に推進することをはじめとする5つの基本方針を設定しています。さらに,7つの重点課題の一つに「学校等と連携した修学支援の実施等」が掲げられ,その具体的施策として,法務省及び文部科学省において,矯正施設における復学手続等の円滑化等を促進するため,矯正施設・保護観察所,学校関係者に対し,相互の連携事例を周知するよう求められているところです。これを受けて法務省は,令和元年6月12 日,別添のとおり「保護観察・少年院送致となった生徒の復学・進学等に向けた支援について」(以下「事例集」という。)をとりまとめました。
 非行をした児童生徒が,再び学校に戻って居場所を得ること,また,進学等の形で学びを継続していくことは,進路の選択肢が増えるなどその改善更生や生活の安定において極めて重要です。また,本人が更生を決意したとしても,復学後の周囲の理解や支援がなければ再非行の防止や改善更生につながりません。このようなことから,あらためて計画の趣旨の徹底を図るとともに,本事例集について管下・所轄の学校に周知いただきますようお願いします。
 また,出院後の復学を円滑に行う観点から,この度,学齢児童生徒が少年院及び少年鑑別所に入・出院(所)した際の保護者の就学義務や当該児童生徒の学籍,指導要録の取扱い等については,下記によることとしましたので,各教育委員会におかれては,適切にご対応いただきますようお願いします。
 各都道府県教育委員会におかれては,管下の学校及び域内の市区町村(指定都市を除く。以下同じ。)教育委員会に対して,各指定都市及び市区町村教育委員会におかれては管下の学校に対して,各都道府県及び学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体におかれては所轄の学校に対して,附属学校を置く各国公立大学法人におかれては管下の学校に対して,本通知の趣旨及び内容を周知くださるようお願いします。

 

 

1.少年院・少年鑑別所に入院・入所した児童生徒の復学について
 児童生徒が少年院や少年鑑別所を出院・退所して学校に復学するに当たって,従来の学校生活や交友関係等で様々な問題を抱えていたことも多く,学校生活に適応するまでに困難を伴うことが少なくない。このことから,学校は,当該児童生徒の生徒指導等について少年院や少年鑑別所に相談するなど,継続的に連絡体制を整えておくことが重要であること。また,教育委員会等設置者は学校の受入れが円滑に行われるよう,個別事案を十分に把握し,関係機関と連携して必要な支援を行うこと。その際,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーをはじめとする心理や福祉,弁護士等の専門家と必要に応じて情報を共有し,連携するなど,児童生徒の改善更生に多角的に関わることが重要であること。

 

2.少年院に入院した児童生徒について
 (1)保護者の就学義務及び児童生徒の学籍について
  児童生徒の就学の機会を確保することは,憲法に定める教育を受ける権利を保障する観点から極めて重要であり,学校教育法第17条において,保護者は子を義務教育諸学校(小学校,中学校,義務教育学校,中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。以下同じ。)に就学させる義務を課している。ただし,当該子が「病弱,発育不完全その他やむをえない事由のために就学困難と認められる」場合,同法第18条及び同法施行規則第34条により,保護者の願い出を受けて,教育委員会は保護者の就学義務を猶予又は免除することができる。
 文部科学省においては,これまで,児童生徒の少年院への入院はこの「やむを得ない事由」に当たり,当該児童生徒の保護者は就学義務の猶予又は免除を受けることとなるとの考え方を示してきた。
 しかしながら,少年院において,少年院法第26条第1項に基づき,教科書を用いて学校教育に準ずる内容の教科指導が行われていることに鑑み,児童生徒が出院後に円滑に学校に復学できるようにする観点から,入院前に当該児童生徒が通学していた学校が,少年院との連携の下,少年院における学習の状況等を適切に把握していると判断する場合は,保護者は教育委員会に就学義務の猶予又は免除の願い出をする必要はなく,在院中も引き続き入院前に通学していた学校に在籍することができることとしたこと。
 なお,国立大学法人,公立大学法人及び学校法人等が設置する義務教育諸学校に通う児童生徒が少年院に入院した場合であって,その学校を退学したときは,学齢簿を編製する教育委員会は,保護者の願い出を受けて,就学義務を猶予・免除することもできること。また,円滑な復学の観点から,保護者の意向を聴取した上で,在院中に就学すべき学校を指定し,在籍を認めることもできること。この場合,当該学校が少年院との連携の下,少年院における児童生徒の学習の状況等を適切に把握する必要があること。

 (2)在院中の児童生徒の学習評価,卒業の認定等について
  (1)により,入院前に通学していた学校における在籍が継続する場合,当該学校は少年院において矯正教育を受けた日数について指導要録上出席扱いとすることができること。また,当該矯正教育において行った学習の評価を適切に行い,指導要録に記入することができること。
 なお,指導要録上出席扱いとした場合,指導要録においては,「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成31年3月29日付け30文科初第1845号文部科学省初等中等教育局長通知)を踏まえ,出席日数の内数として出席扱いとした日数及び当該施設において学習活動を行ったことを記入すること。
 この他,児童生徒の在院中における各学年の課程の修了又は卒業の認定に当たっては,当該学校は少年院との連携の下,在院中の学習の状況等を把握して平素の成績を評価し,その修了又は卒業を認めることができること。
 また,学校保健安全法第13条第1項に基づく定期の健康診断については,少年院において実施された健康診断等が,同法施行規則第6条に照らし適切に実施されたとみなされる場合は,当該健康診断等の結果をもってこれに代えることができること。なお,当該健康診断等の結果は,学校において同法施行規則第8条第1項に規定する健康診断票に転記すること。

 

3.少年鑑別所に在所中の児童生徒について
 (1)保護者の就学義務及び児童生徒の学籍について
  観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される場合は,家庭裁判所の審判を受けるまでの一時的(概ね4週間)な措置として入所するものであることから,学校教育法第18条における「やむを得ない事由」には当たらず,就学義務の猶予・免除の対象とはならないこと。

 (2)在所中の児童生徒の指導要録に係る対応について 
  少年鑑別所は,少年院と異なり,教育を行う機関ではないが,入所した児童生徒の健全な育成への配慮として,その自主性を尊重しつつ,生活習慣等に関する助言・指導や学習の支援が行われている。このような状況等を踏まえ,児童生徒が少年鑑別所において助言等を受けた場合であって,当該児童生徒の自立を支援する上で当該助言等が有効・適切であると判断され,かつ,以下の要件を満たす場合には,当該施設において助言等を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができること。
   
〔出席扱いとする場合の要件〕
(1)当該施設と学校との間において,児童生徒に対する助言等に関し,十分な連携・協力が保たれていること。
(2)当該施設において,児童生徒の状況に適した適切な助言等が行われていることが確認できること。

なお,指導要録上出席扱いとした場合,指導要録においては,「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成31年3月29日付け30文科初第1845号文部科学省初等中等教育局長通知)を踏まえ,出席日数の内数として出席扱いとした日数及び当該施設において学習活動を行ったことを記入すること。


 

(担当)

保護者の就学義務及び児童生徒の学籍に関すること
 初等中等教育局初等中等教育企画課
 教育制度改革室義務教育改革係
 電話 03-5253-4111(内線2007)

入院・入所した児童生徒の復学の支援並び在院・在所中の児童生徒の出席の取扱い及び学習評価等に関すること
 初等中等教育局児童生徒課
 生徒指導室生徒指導第一係
 電話 03-5253-4111(内線3299)

健康診断に関すること
 初等中等教育局健康教育・食育課
 保健指導係
 電話 03-5253-4111(内線2918)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)