令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(通知)

3 初児生第28号 
令和3年10月13日 

 各都道府県教育委員会指導事務主管部課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管部課長
 各都道府県私立学校主管部課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当部課長  殿
 附属学校を置く各公立大学法人担当部課長
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当部課長

 

                    文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
江 口 有 隣
(公印省略)

                                                         

令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題
に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)


 平素より、文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り誠にありがとうございます。
 標記については、毎年度御協力いただいているところですが、この度、暴力行為、いじめ、出席停止、長期欠席(不登校)、高等学校における中途退学、自殺及び教育相談の各状況に係る令和2年度の調査についての結果を取りまとめ、公表しましたのでお知らせします。調査結果の概要は別添資料のとおりです。また公表資料は文部科学省ホームページに掲載していますので、以下のサイトからご覧ください。

 

児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

 今回の調査において、令和2年度の国立、公立、私立の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は、約51万7千件、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数が約6万6千件、小・中学校の不登校児童生徒数が約19万6千人等の結果が明らかになりました。一部の調査項目においては近年の傾向とは異なる結果も見られ、新型コロナウイルス感染症によって学校や家庭における生活や環境が大きく変化し、子供たちの行動等にも大きな影響を与えていることがうかがえます。人と人との距離が広がる中、不安や悩みを相談できない子供たちがいる可能性や、子供たちの不安や悩みが従来とは異なる形で現れたり、一人で抱え込んだりする可能性等も考慮し、引き続き、現下の新型コロナウイルス感染症の状況に応じたきめ細かな対応について御配意願います。

 都道府県・指定都市教育委員会にあっては、所管の学校及び域内の市区町村等教育委員会等に対し、都道府県にあっては所轄の学校法人及び私立学校に対し、附属学校を置く国立大学法人及び附属学校を置く公立大学法人にあっては附属学校に対し、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体にあっては認可した学校に対し、本調査結果を連絡するとともに、児童生徒の問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応等に資するため、各地域等における現状の分析を行うとともに、下記事項への対応の徹底を含め、生徒指導の一層の充実が図られるよう御対応をお願いします。また、各教育委員会にあっては、当該地方公共団体の長及び関係部局に対し、本調査結果を連絡するとともに、総合教育会議の議題とするなど、必要な連携を図っていただくよう併せてお願いします。

 

1.暴力行為への対応について
本調査結果によると、小学校、中学校、高等学校における暴力行為の発生件数は、約6万6千件である。全校種において前年度よりも発生件数が減少しているが、小学校においては減少幅が小さく依然として多くの暴力行為が発生しており、憂慮すべき状況にある。暴力行為の発生件数が高い水準にあることについては、いじめの積極的な認知が暴力行為の把握にもつながっていることなど、様々な要因が考えられるところ、犯罪にならない初期段階のものでも暴力行為と捉え、指導している結果という点では肯定的に評価している。
一方、児童生徒1千人当たりの暴力行為発生件数の都道府県間における差は最大で32倍と大きい。暴力行為の定義の当てはめの判断に差異が生じていることもその要因の一つと考えられるため、再度、本調査における暴力行為の定義や形態ごとの例をよく確認すること。
また、教育委員会等及び学校にあっては、
 「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日付け18文科初第1019号文部科学省初等中等教育局長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/07020609.htm
 「生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008.htm
 「暴力行為のない学校づくりについて」(平成23年7月暴力行為のない学校づくり研究会)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/079/houkou/1310369.htm
の考え方に基づき、教職員が一体となって、未然防止と早期発見・早期対応の取組や家庭・地域社会等の理解を得て地域ぐるみでの取組を推進するほか、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、関係機関との連携による教育相談体制を充実すること。
なお、暴力行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、出席停止制度の措置をとることをためらわずに検討し、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報するなど、毅然とした対応をとること。


2.いじめの問題への対応について
(1)学校いじめ防止基本方針、学校におけるいじめの防止等の対策のための組織について
いじめ防止対策推進法の施行から8年が経過し、平成29年3月に「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定)を改定するとともに、新たに「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を策定した。教育委員会等にあっては、これらに沿った対応がなされるよう、学校の対応状況を適切に把握するとともに、実効性のあるものとなるよう指導助言を行うこと。
各学校において作成している学校いじめ防止基本方針については、当該学校の実情に即して適切に機能しているかどうかを点検し、必要に応じて見直すこと。さらに、策定した学校いじめ防止基本方針については、保護者や地域住民がその内容を容易に確認できるよう各学校のホームページへ掲載する等の措置を講ずること。
また、学校におけるいじめの問題に対する日常の取組に関しては、職員会議等を通じた教職員間での共通理解を図った学校が95.8%となっているが、校内研修の実施は80.1%にとどまっていることから、各学校がより積極的にいじめ問題への取組を実施するよう、教育委員会をはじめとする学校の設置者、私立学校主管部局等は、学校いじめ防止基本方針や年間実施計画に位置付けて実施するよう指導助言すること。併せて、校内研修等を実施している学校においても、その実施状況を把握するとともに、実施内容等の一層の充実が図られるよう、必要な指導助言を行うこと。
(資料)
 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406848.htm
 「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定(最終改定平成29年3月14日)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1400030_007.pdf
 「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月文部科学省)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1400030_009.pdf
 「不登校重大事態に係る調査の指針」(平成28年3月文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2016/07/14/1368460_1.pdf
・ 「いじめ対策に係る事例集」(平成30年3月文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2018/09/25/1409466_001_1.pdf
 国立教育政策研究所 生徒指導リーフ増刊号
「いじめのない学校づくり3 Leaves.3」(※国立教育政策研究所のウェブサイトへリンク)

https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaves3.pdf

(2)地方いじめ防止基本方針の策定について
 いじめ防止対策推進法第12条においては、地方いじめ防止基本方針を定めるよう努めるものとされており、都道府県における策定状況は100%となっている一方で、市町村における策定状況は96.8%となっている。同方針の策定は、努力義務ではあるものの、学校がいじめ防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するためには、全ての自治体において、地方いじめ防止基本方針が策定されることが望ましいことから、未策定の市町村は策定を検討すること。また、都道府県教育委員会においては、地方いじめ防止基本方針の策定を検討している区域内の市町村を支援すること。

(3)教育委員会の附属機関の設置状況について   
重大事態の調査主体となり得る組織として、条例に基づきいじめ防止対策推進法第14条第3項に定める教育委員会の附属機関を設置している都道府県は85.1%、市町村では72.7%にとどまっているが、重大事態が発生した場合に、公平性・中立性に十分配慮した組織が調査主体となって(いわゆる第三者委員会の形式で)速やかに調査を開始することを可能にするためには、第三者委員会となり得る教育委員会の附属機関をあらかじめ条例により設置しておくことが望ましい(同法第14条第3項では教育委員会の附属機関を設置することができる旨が規定されているにとどまるので、教育委員会の附属機関の設置に当たっては、地方自治法第138条の4及び第202条の3の規定に基づき、設置の根拠となる条例を制定することが必要である。)。
各都道府県教育委員会にあっては、域内の市区町村教育委員会における、重大事態の調査主体となり得る附属機関の設置に向けた支援を行うとともに、自ら未設置の場合は、速やかに設置を検討すること。
また、地方公共団体の長が行う再調査のための組織についても、未設置の場合は設置に向けた検討を行うこと。

(4)いじめの積極的な認知と適切な対応について
児童生徒1千人当たりのいじめ認知件数の都道府県間における差は、9.8倍と依然として大きい。いじめを漏れなく認知するためには、全ての教職員が改めていじめ防止対策推進法におけるいじめの定義を確認し、積極的な認知を行うとともに、学校を挙げて早期発見に向けた取組を行うことが重要である。文部科学省としては、いじめの認知件数が多い学校について、「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価している。いじめの防止等の対策は、いじめが行われなくなるようにすることを旨として行われなければならず、いじめ防止対策推進法に基づき、認知すべきものは適切に認知し、早期に対応しなければならない。
また、対応に当たっては、早期の組織的対応は当然のこととして、事案に応じて、関係機関と積極的に連携したり、いじめられた側のみならずいじめた側に対するスクールカウンセラー等による専門的継続的な指導支援体制を構築することにも留意する必要がある。
令和2年度中にいじめを認知していない学校(7,396校)にあっては、真にいじめを根絶できている場合も存在するであろうが、解消に向けた対策が何らとられることなく放置されたいじめが多数潜在する場合もあると懸念している。特に、それらの学校においては、いじめの認知件数が零であったということを児童生徒や保護者向けに公表し、検証を仰ぐことで、認知漏れがないかを確認すること。設置者は、その確認状況を適切に把握するとともに、都道府県教育委員会にあっては、教育事務所所管の地域間、市町村間及び設置する学校間、市町村にあっては、設置する学校間における認知件数の格差や同じ学校での経年比較についても適切に分析するとともに、必要に応じ、指導助言を行うこと。
なお、以下の資料をいじめの正確な認知のために積極的に活用し、教育委員会等及び学校の取組の充実に努めること。
 「いじめの正確な認知に向けた教職員間での共通理解の形成及び新年度に向けた取組について」(平成28年3月18日付け27初児生第42号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1400170.htm
 国立教育政策研究所 生徒指導支援資料6「いじめに取り組む」(※国立教育政策研究所のウェブサイトへリンク)
https://www.nier.go.jp/shido/centerhp/2806sien/index.htm
 国立教育政策研究所 生徒指導リーフ
「学校の「組織」で行ういじめ「認知」の手順Leaf.19」(※国立教育政策研究所のウェブサイトへリンク)

https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf19.pdf
「アンケート・教育相談をいじめ「発見」につなげるLeaf.20」(※国立教育政策研究所のウェブサイトへリンク)
https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf20.pdf
「いじめに関する「認識の共有」と「行動の一元化」Leaf.21」(※国立教育政策研究所のウェブサイトへリンク)
https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf21.pdf
令和2年度におけるいじめの1千人当たりの認知件数が最も多かった山形県では、県教育委員会が作成した児童生徒用と保護者用「いじめ発見アンケート」を年2回実施するとともに、その結果を用いながら、全児童生徒の面談を実施することを通して、いじめの早期発見・解消を図っている。また、県教育委員会による独自調査を毎学期実施していじめの解消状況等を把握するとともに、解消していない事案については追跡調査により、全てが解消するまで指導・支援に当たっている。さらに、コロナ禍の影響を把握するため、昨年度から全公立小中学校で長期休業後に「心のケア等に関する実態調査」を行い、児童生徒の状況を捉え、不安や悩みの把握と相談に努めている。
また、いじめの1千人当たりの認知件数が山形県に次いで多かった宮崎県では、積極的な認知を推進するための取組として、各学校において、いじめ防止対策推進法第22条の規定に基づく学校いじめ対策組織を活用し、同組織に集約された情報を全職員で共有するなど組織的な対応を行っている。また、県教育委員会において、県内の全公立学校の児童生徒を対象にいじめに関するアンケートを実施するほか、各市町村教育委員会や県立学校に対し各学校のいじめの認知件数を毎月確認することを依頼するとともに、認知件数が零の学校に対しては積極的な認知が図られているか確認することを併せて依頼している。さらに、令和2年度には、県独自の「いじめの認知から解消までのガイドライン」を策定しており、ガイドラインを活用した校内研修等を実施することで、いじめの積極的な認知から解消までの取組について全職員で共通理解した上で取り組むように指導している。
このような取組も参考としつつ、いじめの正確かつ積極的な認知に努め、早期対応につなげること。

(5)ネットいじめについて
今回調査においてはいじめの認知件数が減少しているが、その中にあってインターネット上のいじめについては件数が増加している。SNS等を用いたいじめについては、外部から見えにくい・匿名性が高いなどの性質を有するため、そうした態様のいじめを学校が認知しきれていない可能性がある。また、GIGAスクール構想が進展する中、1人1台端末等を使ったいじめが発生する可能性があることにも留意が必要であり、端末の活用におけるルールを明確にし、児童生徒との間で共通理解を図り、教師が児童生徒の書き込みを確認できる設定にするなど、安全かつ効果的に端末を活用できるようにすることが重要である。いずれの態様のいじめについても、学校として組織的に対処する必要があることは言うまでもなく、日頃から児童生徒の見守りや信頼関係などの構築等に努め、いじめを訴えやすい体制を整えることが必要である。また、学校における情報モラル教育のより一層の充実を図るために、文部科学省で作成している教材や資料等を参照すること。
(資料)
 情報モラル教育の充実
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1369617.htm

(6)いじめの重大事態の対応について
令和2年度のいじめの重大事態の件数は、第1号の重大事態及び第2号の重大事態ともに減少した。いじめ防止対策推進法の定義に基づくいじめの認知(早期発見)と組織的対応を徹底することが、重大事態の発生防止に不可欠であることから、今後も件数の推移等を注視していく必要がある。
令和2年度調査から、重大事態件数の都道府県別結果を公表しており、各教育委員会等にあっては、重大事態の件数や発生の割合、推移等を的確に把握し、重大事態の発生の背景等の分析に努めるとともに、今後の取組の改善に活用すること。また、重大事態は、いじめ問題に適切に対応することで、限りなく件数を零に近づけるべきであるが、同法に基づき、取り上げるべきものは適切に取り上げなければならない。「いじめの防止等のための基本的な方針」に「児童生徒や保護者から、いじめにより重大な被害が生じたという申立てがあったときは、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる」とあるので、この点は正しい認識が得られるよう特に留意されたい。このことは、学校の理解が浸透しにくく、失念しやすい部分であるため、定期的に教育委員会をはじめとする学校の設置者、私立学校主管部局等が、この周知徹底を図るとともに、学校や被害者等から相談を受けた場合は、同法に基づき学校に調査を実施するよう指導する必要がある。
なお、いじめの重大事態の調査は、事案の対処や再発防止に資するために行うものであることから、個人情報等に配慮しながら可能な限り当該学校を越えて広く調査結果を共有し、いじめの認知や組織的対応の改善、いじめ防止基本方針の改善等に積極的に活用することが強く求められる。

(7)いじめの未然防止のための取組について
上記事項に加え、いじめの防止等のための対策については、いじめの早期発見や対処と併せて、未然防止に積極的に取り組むことが重要である。いじめの防止等に係る留意事項については「いじめの防止等のための基本的な方針」を参照するとともに、いじめ問題への対応の充実等を図る観点から、従来の道徳の時間が「特別の教科」に新たに位置付けられたことを踏まえ、引き続き、「特別の教科 道徳」を要とした全ての教育活動を通じた道徳教育の充実を図ること。さらに、ソーシャルスキルトレーニングやピアサポートなど成長を促す生徒指導にも配意すること。
また、いじめの未然防止の取組が着実に成果を上げるためには、学校の教職員が児童生徒と向き合うための時間を確保することが必要である。このため、教育委員会及び所管の学校にあっては、
「学校における働き方改革に関する取組の徹底について」(平成31年3月18日付け
30文科初第1497号文部科学事務次官通知)

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hatarakikata/1414502.htm
に基づき、引き続き、必要な取組を徹底すること。

3.出席停止制度の運用について
 今回の調査結果によると、小学校及び中学校における出席停止の件数は4件であり、この4年間は1桁の数値となっている。
 出席停止は、懲戒行為ではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために採られる措置であり、市町村教育委員会及び学校は、制度の趣旨を十分理解し、日頃から規範意識を育む指導やきめ細かな教育相談等を行うことが必要である。しかしながら、学校がこのような指導を継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対し、正常な教育環境を回復するため、必要と認められる場合には、出席停止制度の措置を積極的に検討すべきであり、いじめ防止対策推進法第26条においても、いじめを受けた児童生徒その他の児童生徒が安心して教育を受けられるようにするため、出席停止を命ずる等の必要な措置を速やかに講ずることが規定されている。
 市町村教育委員会は、
 「出席停止制度の運用の在り方について」(平成13年11月6日付け13文科初第725号文部科学省初等中等教育局長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/013.htm
・ 「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日付け18文科初第1019号文部科学省初等中等教育局長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/07020609.htm
を踏まえ、出席停止の手続に関し必要な事項を教育委員会規則で定め、運用に当たっては適正な手続を踏むこと。
 また、都道府県教育委員会は、状況に応じ、指導主事やスクールカウンセラーの派遣等の人的支援や警察や児童相談所等の関係機関との連携を促進するなど、市町村教育委員会及び学校に対し、必要な支援を行うこと。

4.不登校児童生徒への支援の充実について 
今回の調査結果によると、小・中学校の在籍児童生徒数が減少しているにもかかわらず、不登校児童生徒数は8年連続で増加し、54.9%の不登校児童生徒が90日以上欠席しているなど、憂慮すべき状況にある。各学校及び教育委員会等にあっては、効果的な不登校支援につなげるためにも、個々の不登校児童生徒の不登校のきっかけや継続理由についての的確な把握に努めるとともに、不登校が増加している要因についても分析に努めること。
また、こうした状況の下、平成28年12月には、不登校児童生徒への支援について初めて体系的に定めた「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立、平成29年2月より施行され、同年3月、同法に基づく基本指針を策定した。さらに、平成30年12月から同法附則に基づき、有識者会議において法の施行状況についての検討を行い、令和元年6月、その議論をとりまとめた。
学校や教育委員会等は、不登校児童生徒への支援に当たり、同法及び基本指針等に基づき、魅力あるより良い学校づくりや児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮を実施すること。また、児童生徒の社会的自立を目指して、組織的・計画的な支援や教育支援センター及び不登校特例校の整備、民間の団体との連携による支援を実施するほか、校内支援体制の整備やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、関係機関との連携による教育相談支援体制を充実するなど、学習会や支援に関する情報提供も含めて、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援を推進すること。なお、不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮し、支援に当たっては、不登校児童生徒の意思を十分に尊重しつつ行うこと。
(資料)
・ 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について」(平成28年12月22日付け28文科初第1271号文部科学省初等中等教育局長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1380952.htm
 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(平成29年3月31日文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2017/04/17/1384371_1.pdf
・ 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の施行状況に関する議論のとりまとめ」(令和元年6月21日不登校に関する調査研究協力者会議・フリースクール等に関する検討会議・夜間中学設置推進・充実協議会)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2019/07/02/1418510.pdf
 「不登校児童生徒への支援の在り方について」(令和元年10月25日付け元文科初第698号文部科学省初等中等教育局長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm

5.高等学校における中途退学への対応の充実について
今回の調査結果によると、高等学校における中途退学者数は、約3万5千人となった。
学校や教育委員会等は、高等学校における中途退学への対応に当たり、
・ 「高等学校等、地域若者サポートステーション及びハローワーク等の関係機関間の連携強化による中途退学者等への切れ目ない支援の実施について」(平成28年6月20日付け28文科初第464号、職発0620第9号、能発0620第4号文部科学省初等中等教育局長・文部科学省生涯学習政策局長・厚生労働省職業安定局長・厚生労働省職業能力開発局長連名通知)
・ 「高等学校等における中途退学への対応の充実に係る協力について」(平成29年1月16日付け28文科生第707号文部科学省生涯学習政策局長・文部科学省初等中等教育局長・文部科学省高等教育局長連名通知)
等に基づき、学校教育を一層充実するとともに学校における指導体制を充実すること。

6.自殺対策について
今回の調査結果によると、児童生徒が自殺に及ぶ事案が後を絶たず大幅に増加しており、極めて憂慮すべき状況にある。
「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」においては、
 「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」(平成21年3月)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/gaiyou/1259186.htm
 「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」(平成22年3月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408018.htm
 「子供に伝えたい自殺予防」(平成26年7月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408017.htm
・ 「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂)」(平成26年7月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408019.htm
を作成・公表している。
さらに、以下の通知および事務連絡により、SOSの出し方に関する教育を少なくとも年1回実施するなど積極的に推進することを依頼するとともに、SOSの出し方に関する教育の教材例を示している。
・ 「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育の推進について」(平成30年1月23日付け29初児生第38号、社援総発0123第1号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長・厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)連名通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408025.htm
 「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育の教材例について」(平成30年8月31日付け事務連絡)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1410401.htm
また、令和2年の自殺者数は前年と比較して大きく増加していること等を踏まえ、令和3年6月に通知を発出するとともに、「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」において、コロナ禍における児童生徒の自殺の状況や原因・動機、課題等に関する審議が行われ、同月、その審議結果がまとめられた。審議のまとめでは、今後必要な施策として、SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の充実、悩みや不安を抱える児童生徒の早期発見・対応に資するICTの活用、関係機関等の連携体制の構築を挙げており、これらの内容を踏まえて、児童生徒の自殺予防に関する取組を行うこと。
 (資料)
 「児童生徒の自殺予防に係る取組について」(令和3年6月23日付け3初児生第14号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00005.htm
 「令和3年度 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 審議のまとめ」(令和3年6月 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/164/index.html
なお、今回の調査結果によれば、児童生徒の自殺者数は415人であったが、厚生労働省及び警察庁の調査結果によれば、令和2年度の自殺者数は507人であり、92人の差が生じていた。これは、警察が、遺書の有無や現場の状況、検視等により自殺と判断した事案を集計しているのに対し、学校が、御遺族からの報告等により自殺と確認できた事案を集計していることによるものと認識しているが、児童生徒の自殺の実態を可能な限り正確に把握することは重要であることから、引き続き、警察等の関係機関と連携し、正確な実態を把握するよう努めること。

7.教育相談支援の充実について
今回の調査結果によると、不登校児童生徒がスクールカウンセラー等に相談した件数が8年連続で増加しており、いじめられた児童生徒、いじめる児童生徒に対する専門的継続的な指導支援体制を行う必要性があるなど、学校における専門スタッフの活用の重要性が増している。一方で、スクールカウンセラーについては、約8%の小学校、約2%の中学校に配置実績がなく、スクールソーシャルワーカーについては、約20%の中学校区で活動実績がないなど、十分な配置状況にあるとは言えない。
こうした状況の下、教育委員会等にあっては、学校教育法施行規則が平成29年3月に改正され、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの名称及び職務等が明らかにされたことなども踏まえ、児童生徒の課題の早期発見や支援のため、引き続き、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充に努めるとともに、
 「児童生徒の教育相談の充実について」(平成29年2月3日付け28文科初第1423号初等中等教育局長通知)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/066/gaiyou/attach/1388337.htm
 「児童生徒の教育相談の充実について ~学校の教育力を高める組織的な教育相談体制づくり~」(平成29年1月教育相談等に関する調査研究協力者会議)
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/07/27/1381051_2.pdf
を踏まえ、未然防止、早期発見及び支援・対応等への体制構築、学校内の関係者がチームとして取り組み、関係機関と連携した体制づくり、教育相談体制の点検・評価、活動方針等に関する指針の策定、積極活用に向けた教職員の研修の実施など、限られた人員の中でもより効果的な活用の工夫を行い、学校における教育相談体制の充実に努めること。
加えて、都道府県・指定都市教育委員会等における小学生、中学生及び高校生に関する教育相談件数が約18万件であるなど、学校外における教育相談も重要な役割を果たしている状況を踏まえ、教育委員会にあっては、学校外における教育相談体制についても学校内における教育相談と連携させながら体制の充実に努めるとともに、相談内容の分析など更なる取組の充実にも努めること。

8.生徒指導上の諸課題への組織的な対応及び関係機関との連携強化について
いじめ、不登校、暴力行為その他生徒指導上の諸課題への対応に当たっては、校長を中心に、学校が組織的に行うことが必要であり、事案に応じて設置者(教育委員会等)への報告及びその指示に基づく対応が求められること。
その際、児童生徒の問題行動・不登校等の背景には、家庭環境など様々な要因が考えられるところ、事案に応じて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を活用するとともに、警察、児童相談所、法務局又は地方法務局、人権擁護委員、福祉・医療等の関係機関との連携を積極的に図ること。

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初等中等教育局児童生徒課