令和7年12月12日児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

7初児生第25号
令和7年12月12日
 
 各都道府県教育委員会指導事務主管課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管課長
 各都道府県私立学校主管課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当課長
 附属学校を置く各公立大学法人担当課長   殿
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当課長
 
 
              文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
                        千々岩  良英
                            
 
 

児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

 
 
 標記については、これまでも自殺対策基本法(平成18年法律第85号)等に基づき、学校等において、児童生徒の自殺予防の取組の充実に取り組んでいただいているところです。
 しかしながら、厚生労働省・警察庁の自殺統計によると、令和6年の児童生徒の自殺者数は、529人(令和5年:513人)と過去最多であることが明らかになりました(別添資料1)。また、令和7年の児童生徒の自殺者数についても、1月から10月までの暫定値で420人(令和6年同期間:448人(確定値))と、高い水準で推移しております(別添資料2)。如何なる事情であれ、子供たちが自ら命を絶つようなことはあってはならず、極めて重大に受け止める必要があります
 児童生徒の自殺は、長期休業明けの前後に増加する傾向にあり、今年1月の児童生徒の自殺者数は50人(暫定値)であり、各月と比較しても多い月となっております。
こうした状況を踏まえると、児童生徒の尊い命を救うため、特に長期休業の開始前から長期休業明けの時期にかけては、学校として、児童生徒の自殺予防について組織体制を整え、取組を強化することが必要です。
 また、令和6年の児童生徒の自殺の原因・動機として、学校問題のうち、約5割が学業不振や入試、進路に関する悩みであることが分かっており(別添資料3)、今年10月29日に公表した「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」においても、自殺した児童生徒が置かれていた状況として、学校に係る問題のうち進路問題や、学業等不振に係るものが多くなっています。特に、この長期休業期間は、成績や進路等に関する悩みを抱える児童生徒も多くいると考えられることも踏まえて、進路指導の充実や見守り活動を丁寧に実施していただくようお願いします。
 さらに、「自殺対策基本法の一部を改正する法律の一部の施行について(通知)」(令和7年12月1日付け こ支総第262号、7文科初第1793号、社援発1201第1号 こども家庭庁支援局長、文部科学省総合教育政策局長、文部科学省初等中等教育局長、文部科学省高等教育局長、厚生労働省社会・援護局長通知)においても周知しているとおり、第217回国会において成立した自殺対策基本法の一部を改正する法律(令和7年法律第64号)について、令和7年12月1日にその一部が施行されたところです。
 今般、施行された内容において、こどもに係る自殺対策に社会全体で取り組むことが基本理念に追加されるとともに、こどもの自殺の防止等について学校の責務が明記されたところです。各学校・教育委員会等におかれましては、従前より自殺予防に向けた取組を行っていただいているところですが、今般の法改正を踏まえて、関係機関との連携強化を含め、学校における自殺予防の取組の一層の充実を図っていただくようお願いいたします。
 その上で、長期休業の開始前から長期休業明けにおける児童生徒の自殺予防に向けた取組に関し、下記のとおり、学校として、保護者、地域住民、関係機関等と連携の上、全力で取り組んでいただくよう、お願いいたします
また、厚生労働省からは各都道府県・指定都市・市区町村自殺対策主管部局長に対して、「令和7年度「自殺対策強化月間」に向けた啓発活動等の推進について(依頼)」(令和7年12月12日付け参自発1212第2号厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)通知)が発出されていますので、自殺対策主管部局と連携し、啓発活動等の推進に取り組んでいただくようお願いいたします(別添資料4)。
 これらのことについて、都道府県・指定都市教育委員会担当課におかれては所管の学校等及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、都道府県私立学校主管課におかれては所轄の学校法人等を通じてその設置する学校に対して、国公立大学法人附属学校事務主管課におかれてはその設置する附属学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、周知を図るとともに、児童生徒の自殺予防について特段の御配慮をお願いします。

 

1.学校における早期発見に向けた取組
 各学校において、長期休業の開始前から、アンケート調査、教育相談等を実施するとともに、一人一人に対して面談を行うなど、悩みや困難を抱える児童生徒の早期発見に努めること
 その際、児童生徒の心や体調の変化や、個別の児童生徒の状況を多面的に把握するICTツールを適切に活用することにより、教職員がこれまで気付いていなかった児童生徒の心身状態に気付くことができ、教職員の児童生徒理解の幅が広がり、悩みや不安を抱えた児童生徒の早期発見や早期支援につながると考えられる。
 「こどもの自殺対策緊急強化プラン」(令和5年6月2日こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議決定)では、「1人1台端末の活用等により、自殺リスクの把握や適切な支援につなげるため、有償・無償で利用できるシステムやその活用方法、マニュアル等を整理・作成し、全国の教育委員会等に周知し、全国の学校での実施を目指す」としていることを踏まえ、文部科学省においては、児童生徒の心や体調変化の早期発見のため「1人1台端末を活用した心の健康観察」の導入(※)を推進しているところ、今年度から、学校のICT環境整備3か年計画(2025~2027年度)における、1人1台端末を活用した児童生徒の学校生活を支援するツール(例:児童生徒の心や体調の変化を早期に発見し、支援するツール)の整備に必要な経費を踏まえて地方財政措置が講じられることとなった(別添資料5)。
 以上を踏まえ、各教育委員会及び学校においては、1人1台端末の活用等による心の健康観察などによるSOSの早期把握に努め、児童生徒の自殺の未然防止に取り組むこと
 さらに、学校が把握した悩みや困難を抱える児童生徒や、いじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等に対しては、長期休業期間中においても、全校(学年)登校日、部活動等の機会を捉えた面談の実施や、保護者への連絡、家庭訪問等により継続的に児童生徒の様子を確認すること。
 また、児童生徒の自殺の背景の一つとして精神疾患が挙げられていることを踏まえ、学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細やかな健康観察や教育相談の実施等により、児童生徒の状況を的確に把握し、スクールカウンセラー等による支援を行ったり、スクールソーシャルワーカー等を活用して医療等の関係機関に繋いだりするなど、心の健康問題への対応を徹底すること。
 
(※)「1人1台端末を活用した心の健康観察」の導入に当たっては、文部科学省において、1人1台端末等を活用して、無償・有償で利用できる健康観察・教育相談システムを別添資料6のとおり整理するとともに、Google フォーム又はMicrosoft Formsを活用して同様のアンケートフォームを作成するためのマニュアルを別添資料7のとおり作成しているので、合わせて参照いただきたい。なお、利用にあたっては各自治体における教育情報セキュリティポリシー等もあわせてご確認いただきたい。

教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月)

2.教育相談体制の構築や学校を中心とした組織的な対応等について
 生徒指導提要(改訂版)に記載しているとおり、自殺への対応については、専門家といえども1人で抱えることができないほど重く、かつ困難な問題であり、きめ細かな継続的支援を可能にするためには、校内の教育相談体制を基盤に、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーや関係機関の協力を得ながら、全教職員が自殺予防に組織的に取り組むことが必要である。そのため、校内研修会などを通じて、教職員間の共通理解を図るとともに、実効的に機能する自殺予防のための教育相談体制を築くこと(詳細は、別添資料8参照)。
 
その上で、児童生徒が自殺をほのめかしたり、深刻な自傷行為に及んだりするなど、自殺やその他の重大な危険行為の予兆を捉えた際には、教職員が抱え込まず、教育相談体制の構成メンバーを基盤に、校長をリーダーとする「校内連携型危機対応チーム」を組織し、危険度に応じた対応を行うこと。また、平常時に、危機対応のための態勢づくりやマニュアルづくりなどを進めておくこと。
 さらに、実際に自殺や自殺未遂が発生した場合には、校長のリーダーシップの下、「校内連携型危機対応チーム」を中心にしつつも、学校だけで抱え込むのではなく、教育委員会等や専門家、関係機関のサポートを受けながら、全教職員の力を結集して対応することが必要であり、校内連携型危機対応チームを核に、教育委員会等、専門家、関係機関との連携・協働に基づく「ネットワーク型緊急支援チーム」を立ち上げ、周囲の児童生徒や教職員等への心のケアも含めた対応に当たること(詳細は、別添資料9参照)。

 ○生徒指導提要(改訂版)

3.相談窓口の周知及び自殺予防教育の実施等について
 「SOSの出し方に関する教育」を含めた自殺予防教育を実施すること等により、児童生徒自身が心の変化や危機に気付き、身近な信頼出来る大人に相談できる力を培うとともに、児童生徒が安心してSOSを出すことのできる環境の整備に努めること。
 さらに、「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする電話相談窓口や、SNS等を活用した相談窓口の周知を積極的に行うこと。なお、相談窓口の周知にあたっては、教室など児童生徒が気付きやすい場所への掲示や1人1台端末を活用する際のポータルサイト、ブラウザのお気に入り機能等を活用して、各種相談窓口を周知するなどの方法も考えられる。また、複数の相談窓口を周知する場合は、悩みや不安を抱える児童生徒がどこに相談すべきか混乱してしまわないよう、必要に応じて相談窓口を整理し、周知すること。その際、文部科学省でまとめたホームページも参考にすること。
 また、今般、こども家庭庁から、
 ・「こどもの悩みを受け止める場に関するプロジェクトチーム」を発足させ、こども・大人・社会のそれぞれに対して伝えたいメッセージ等を盛り込んだ「こどもの悩みに寄り添える社会に向けて(中間報告)」を公表していること
 ・こうしたメッセージ等を広く社会全体に発信し、機運醸成を図ることを目的として、大人及びこども向けの啓発漫画・啓発動画(以下URL参照)を作成し、こども家庭庁ウェブサイト内のページに掲載したこと
について、周知依頼があったところ(別添資料10参照)。
 こども基本法(令和4年法律第77号)は、全てのこどもについて、個人として尊重されることや、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることを基本理念として掲げており、文部科学省としても、社会の急激な変化とともに、児童生徒の発達上の多様性や家庭環境の複雑性も増している中、学校のみならず、社会全体として、児童生徒の悩みを受け止める機運の醸成は重要であると考えているところ、今回作成された啓発漫画・啓発動画等を積極的に御活用いただくなどして、こどもの悩みに寄り添える社会に向けた機運の醸成に努めること
 
(※)自殺予防教育については、「子供に伝えたい自殺予防-学校における自殺予防教育導入の手引-」を参照。特に、自殺を企図する兆候については、「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」第2章を参照いただきたい。

子供に伝えたい自殺予防-学校における自殺予防教育導入の手引-
教師が知っておきたい子どもの自殺予防
〇 子供のSOSの相談窓口
○ こども・大人のみなさん向けの動画・漫画(こども家庭庁ホームページ)
 

4.保護者に対する家庭における見守りの促進
 保護者に対して、長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すこと。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については、積極的に学校に相談するよう、学校の相談窓口を周知しておくこと。その際、「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする電話相談窓口や、SNS等を活用した相談窓口についても、併せて保護者に対して周知しておくこと。なお、これらの各家庭における保護者による見守りについては、長期休業の開始前又は長期休業期間中における保護者会等の機会や学校(学級)通信を通じて、保護者に促すことが考えられる。学校は、保護者から相談を受けた時には、必要に応じて関係機関と連携しながら、適切に対応すること。

5.学校内外における集中的な見守り活動について
 長期休業明けの前後において、学校として、保護者や地域住民の参画を得て、また、関係機関等と連携して、学校における児童生徒への見守り活動を強化すること。さらに、放課後から夜間等における学校外の見守り活動については、保護者又は地域住民その他の関係者が担う体制に委ねつつも、自殺未遂等の事案が発生した場合に速やかに対応することができるよう、教育委員会等において、学校、警察等関係機関、地域の連携を一層強化する体制を構築し、取組を実施すること。その際、警察との連携においては、「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(令和5年2月7日付け4文科初第2121号)において指定を求めている「学校・警察連絡員」が情報共有を図り、緊急を要する事案を含め緊密に連携して対応に当たること。特に、学校において、児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については、長期休業明けの前後の時期に見守り活動を集中的に実施することが有効であること。

6.ネットパトロールの強化について
  児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす等の書き込みを発見することは、自殺を企図している児童生徒を発見する端緒の一つである。このため、教育委員会等が実施するネットパトロールについて、長期休業明けの前後において、平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。自殺をほのめかす等の書き込みを発見した場合は、即時に警察に連絡・相談するなどして当該書き込みを行った児童生徒を特定し、当該児童生徒の生命又は身体の安全を確保すること。また、警察等関係機関においてネットパトロールが実施されている場合には、当該関係機関との積極的な連携に努めること。

【添付資料】  


【参考資料】

 〇児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
 〇子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き
 〇小学生用啓発教材「わたしの健康」、中学生用啓発教材「かけがえのない自分 かけがえのない健康」、高校生用啓発教材「健康な生活を送るために」

                

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。