令和7年2月10日令和6年の児童生徒の自殺者数(暫定値)の公表を踏まえた 児童生徒の自殺予防に係る取組の強化について(通知)

6初児生第16 号
令和7年2月10日
 
 各都道府県教育委員会指導事務主管課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管課長
 各都道府県私立学校主管課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当課長
 附属学校を置く各公立大学法人担当課長   殿
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当課長
 
 
              文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
                        千々岩  良英
                            
 

令和6年の児童生徒の自殺者数(暫定値)の公表を踏まえた
児童生徒の自殺予防に係る取組の強化について(通知)

 
 
 標記については、これまでも自殺対策基本法(平成18年法律第85号)等に基づき、学校等において、児童生徒の自殺予防の取組の充実に取り組んでいただいているところです。
 令和7年1月29日に公表された警察庁・厚生労働省の自殺統計(暫定値)によると、令和6年の児童生徒の自殺者数は、527人(令和5年確定値:513人)と過去最多となる見込みであることが明らかになりました(別添資料1)。如何なる事情であれ、子供たちが自ら命を絶つようなことはあってはならず、極めて重大に受け止める必要があります
 また、令和6年版自殺対策白書においては、
2020~2021年の期間に、女子小中高生の自殺者のうち、自殺未遂歴ありの割合が上昇していること
2022年以降、男女ともに、自殺未遂歴のある小中高生の自殺者のうち、過半数が自殺の1年以内に自殺未遂を行っており、そのうち、特に女子小学生や女子高校生では、自殺から1ヶ月以内に自殺未遂を行った割合が高いことも明らかになっています(別添資料2)。
  このような極めて重大な状況を踏まえ、都道府県・指定都市教育委員会担当課におかれては所管の学校等及び域内の市(指定都市を除く。)区町村教育委員会に対して、都道府県私立学校主管課におかれては所轄の学校法人等を通じてその設置する学校に対して、国公立大学法人附属学校事務主管課におかれてはその設置する附属学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して、令和6年の小中高生の自殺の状況や下記事項について周知を図るとともに、児童生徒の自殺予防について格段の取組をお願いします

 

1.1人1台端末等を活用した心の健康観察について
 「児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」(令和6年12月11日付け6初児生第15号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)においても周知しているとおり、個別の児童生徒の状況を多面的に把握するICTツールを適切に活用することにより、教職員の児童生徒理解の幅が広がり、悩みや不安を抱えた児童生徒の早期把握や早期支援につながると考えられる。
 また、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」(令和5年6月2日こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議決定)では、「1人1台端末の活用等により、自殺リスクの把握や適切な支援につなげるため、有償・無償で利用できるシステムやその活用方法、マニュアル等を整理・作成し、全国の教育委員会等に周知し、全国の学校での実施を目指す」としている。
 これらを踏まえ、文部科学省として、児童生徒の心や体調変化の早期発見のため「1人1台端末を活用した心の健康観察」の導入を推進しており、また、学校のICT環境整備3か年計画(2025~2027年度)における、1人1台端末を活用した児童生徒の学校生活を支援するツール(例:児童生徒の心や体調の変化を早期に発見し、支援するツール)の整備に必要な経費を踏まえて地方財政措置が講じられることとなった(別添資料3)。
 以上を踏まえ、各教育委員会及び学校においては、1人1台端末等の活用による心の健康観察などによるSOSの早期把握に努め、児童生徒の自殺の未然防止に取り組むこと
 
2.教育相談体制の構築、校内連携型危機対応チーム・ネットワーク型緊急支援チームの設置等について
  生徒指導提要(改訂版)に記載しているとおり、自殺への対応については、専門家といえども1人で抱えることができないほど重く、かつ困難な問題であり、きめ細かな継続的支援を可能にするためには、校内の教育相談体制を基盤に、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーや関係機関の協力を得ながら、全教職員が自殺予防に組織的に取り組むことが必要である。そのためには、校内研修会などを通じて、教職員間の共通理解を図るとともに、実効的に機能する自殺予防のための教育相談体制を築くこと(詳細は、別添資料4参照)。
  その上で、児童生徒が自殺をほのめかしたり、深刻な自傷行為に及んだりするなど、自殺やその他の重大な危険行為の予兆を捉えた際には、教育相談体制の構成メンバーを基盤に、校長をリーダーとする「校内連携型危機対応チーム」を組織し、危険度に応じた対応を行うこと。また、平常時に、危機対応のための態勢づくりやマニュアルづくりなどを進めておくこと。
  さらに、実際に自殺や自殺未遂が発生した場合には、校長のリーダーシップの下、「校内連携型危機対応チーム」を中心にしつつも、学校だけで抱え込むのではなく、教育委員会等や専門家、関係機関のサポートを受けながら、全教職員の力を結集して対応することが必要であり、校内連携型危機対応チームを核に、教育委員会等、専門家、関係機関との連携・協働に基づく「ネットワーク型緊急支援チーム」を立ち上げ、周囲の児童生徒や教職員等への心のケアも含む危機管理体制を速やかに構築すること(詳細は、別添資料5参照)。
  加えて、いずれの場合も保護者と連携して家庭での継続的な見守りを行うとともに、教職員間で密接に情報共有し、組織的に児童生徒を支援すること。
 
3.相談窓口の周知や自殺予防教育の実施等について
 学級担任や養護教諭等を中心としたきめ細やかな健康観察や教育相談の実施等により、児童生徒の状況を的確に把握し、スクールカウンセラー等による支援を行ったり、スクールソーシャルワーカー等を活用して医療等の関係機関に繋いだりするなど、心の健康問題への対応を徹底すること。
 加えて、「SOSの出し方に関する教育」を含めた自殺予防教育を実施すること等により、児童生徒自身が心の変化や危機に気付き、身近な信頼出来る大人に相談できる力を培うとともに、児童生徒が安心してSOSを出すことのできる環境の整備に努めること。
 さらに、「24時間子供SOSダイヤル」を始めとする電話相談窓口や、SNS等を活用した相談窓口の周知を積極的に行うこと。相談窓口の周知にあたっては、教室など児童生徒の目につきやすい場所への掲示や1人1台端末を活用する際のポータルサイト、ブラウザのお気に入り機能等を活用して、各種相談窓口を周知するなどの方法も考えられること。その際、文部科学省でまとめたホームページも参考にすること。また、厚生労働省ホームページ「まもろうよ こころ」においても、電話やSNSによる相談窓口や「こころを落ち着けるためのWebサイト」等の情報をまとめているので、こちらも参考にすること(別添資料6)。
【子供のSOSの相談窓口】

なお、令和7年度予算案においては、令和6年度委託事業で作成する自殺予防教育に係る教材や指導資料等を全国の学校に確実に普及させるため、都道府県・指定都市教育委員会において、自殺予防教育のモデルとなる地域や学校を指定し、自殺予防教育を十分に実施できていない学校に対する授業の支援を実施する予算を計上している。
 
(添付資料)

 
 【生徒指導提要(改訂版)】
 
 【子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き】

 【教師が知っておきたい子どもの自殺予防】

 

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

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