『生徒指導メールマガジン』 第10号

(平成17年7月29日)
文部科学省初等中等教育局児童生徒課

目次

  1. 巻頭言:「ほんのちょっとの工夫」 (児童生徒課今泉課長補佐)
  2. 兵庫県教育委員会:「生徒指導に関する兵庫県の取組について」
  3. 施策紹介:
    • 「問題行動対策(サポートチーム)について」
    • 「特区805『IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会拡大事業』の全国展開について」
  4. 主要行事の予定又は連絡事項等
  5. 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

1 巻頭言:「ほんのちょっとの工夫」(児童生徒課今泉課長補佐)

(1)はじめに

  私は、学習成果が顕著になるのは、学ぶ側の「学習意欲の向上」があることと、教える側の「効果的な教育」が提供されることの二つが合わさった時であると考えています。
  これまで、後者の「効果的な教育の提供」のためには、教育行政は予定調和型(「ある一定以上の質と量の『施設、教員、教育内容及び教材等』の環境を整備すれば、必然的にある一定以上の学力が保証できる」という手法)の施策を組んできました。一方、学習者の「学習意欲の向上」については、ともすれば、学習者本人のやる気や教員の資質向上に委ねられておりました。
  私は、教育は一種のコミュニケーション活動だと考えております。どんなに話し手が上手い話し方で良い内容の話をしても、そもそも聞き手が聞こうとしていない状況では、せっかくの話す内容も台無しになってしまいます。聞き手の側の基盤、つまり、1.聞き手の意欲を向上させること、2.聞き手が話の内容についてある程度の知識があること、3.聞き手が集中力を持続させることができること、4.聞き手が話を聞くポイントを心得ていること(スキルを身につけていること)、5.十分なコミュニケーション能力がある事などの前提があって、はじめてコミュニケーションが「効果的な形」として成立するのだと思います。
  私は、そこに教育現場で改革を行う上での重要な視点があると考えております。個々の教師は、より良い授業のために日々その資質の向上に努めているでしょうが、それ以外にも、児童生徒の側の『聞く力』を高めるために『ほんのちょっとした工夫』をすることで、これまでの教育のコミュニケーションの質が一層高まるのではないでしょうか。
以下に示すことは、別に新しいことではありません。すでに、多くの学校や教員が実施している「ほんのちょっとの工夫」の一例です。これらは、決してお金がかかるものでもなく、教員の人数を増やさなくても、既存の取組を行う中で、各教員のほんのちょっとの工夫でできることです。

(2)『学び方指導』

  よく学校訪問をすると、子ども達のノートの取り方や学び方が多種多様である事を発見します。
  もちろん、それぞれ自分にあった学び方があるのでしょうが、子ども達が果たしてどれだけしっかりとした自分なりの学習方法を身に付けていると言えるでしょうか?実際のところ、子ども達の中には、どうやって学べばいいのか分からないという子も多いのではないでしょうか。または、学び方を知らないままに、見よう見まねで勉強している子どももいるのではないでしょうか。それでも、試行錯誤を繰り返して自分なりの学習方法が身につけばいいのですが、それ以前の段階で自信を失って学習意欲さえの萎えてしまったら元も子もありません。
  もし仮に、授業を始める前に『学ぶ方法』に関して基本的なガイダンスがあれば、年間の授業の密度が濃くなり、児童生徒の側にとっても学習の効率性が向上するのではないでしょうか。多くの学校では、「学び方指導・調べ方指導」を年度初めにオリエンテーションの形態で実施していると思います。ただ、それ以外に、定期的に学び方の指導をすることがどれだけあるでしょうか。学習スキルは、ある意味、テクニックですので、実践の中で身につけていくしかないものです。その際、年度初めに学習スキルやノートの取り方を教える事はとても重要ですが、子ども達の立場に立てば、実際に授業を受けなければ、学習スキルの話は、なかなか実感が湧かないものです。このため、学習スキルは、実際の授業や予習・復習する中で、継続的に指導される必要があるのです。さらに、学校週5日制の下では家庭学習が重要ですが、この「学び方指導・調べ方指導」は、この家庭での自学自習を促進するための手段でもあると思います。子ども達の中には、家庭での予習・復習をどうすれば良いのかについて「学び方指導」を受けたことがないままの子もおります。決して能力的に劣っているわけでもないのに、学び方が効率的でないが故に、時間をかけて一生懸命勉強したとしても成績が伸び悩むことがあれば、そのような時には「俺は、あいつよりも勉強しているはずなのに、成績が良くない。もしかしたら、自分は頭が悪いのではないか」と悩む事だってありえます。もし、それで自信を失って学習する意欲を失ってしまったとしたら、その子にとって非常に不幸なことだと思います。あとほんのちょっと、「学習スキル」の「定期的な修得」に目を向けさえすれば、成績が思うように伸びない生徒にとって勉強が分かるようになり、自信がつき、成績も伸びることになるかもしれません。

(3)『学校の教育活動の体系化(既存のデータの蓄積と相関関係分析)』

  多くの学校では、既に「家庭での学習時間調査」や「児童生徒による授業アンケート」が行われていることと思います。また、児童生徒の出席率や遅刻率のデータもあり、個人面談等を通じた進路希望調査もあり、当然に定期考査の成績もあります。しかし、えてしてこれらのデータは、それぞれ教務部、生徒指導部、進路指導部、研修部又は各学年集団等が、別々に持っている既存のデータ類であることが多くのケースではないでしょうか。
  これらの調査が、データベースの形で蓄積され、例えば、定期考査との相関関係の変化についてクロス調査ができるのであれば、「成績が伸びない子どもが何故伸びないのか」、「その他の子どもとの比較の中で何が違うのか」が見えてくるのではないかと思います。つまり、その子どもが、1.学習への意欲が足りないのか、2.学習スキルが身に付いてないため学習の効率が悪いのか、3.学習時間が少ないなど学習習慣が身に付いてないのか、4.知識・能力等が足りないのか、5.教員の授業が悪いのか、6.早寝・早起き・朝ごはん等の基本的生活習慣ができていないのか等、何が原因で成績が伸び悩んでいるのか見えてくるのではないでしょうか。これらは、新たな調査を行わずとも、既存に持っているデータを蓄積し、相互に比較して、その相関関係を見つければ、個々の児童生徒に応じて必要な対策が見えてくるのではないでしょうか。
  例えば、もし、家庭学習を一生懸命頑張っているが、効率の悪い学習をしているために成績が伸びない子どもがいた場合に、その子に対して、学習方法の指導をせずに、「もっと頑張れ」と発破をかけるだけでは、その子に「これ以上どう頑張ればいいのか、自分は頭が悪いのではないか」と思わせてしまう危険性だってあるのではないでしょうか。もちろん、データよりも、教員が自分の目で子ども達一人一人を良く見ていくことが第一ですが、それ以外に、教員の目が届かない部分について、上記のような既存のデータを生かして、個々の子ども達の課題の原因を見極め、その対策を行うことができれば、これこそが個に応じた指導の在り方だと思います。

(4)『教室環境の整備』

  学校の教育環境は、子ども達が一日の大半を過ごす場所であり、明るくて雰囲気が良いに越したことはありません。そして、教室のちょっとした場所や廊下のちょっとした場所に、教員の思いの一端が垣間見られる言葉があれば、子ども達の目に止まってそれだけで子ども達を教育することとなるものです。
  私が学校訪問したことがある例では、『志が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば人生が変わる。』というスローガンを掲げていた教室がありました。
  もし、子ども達が授業中に集中力が切れて、視線を教員から外し、授業を聞いてなくても、このような言葉が教室の前にあれば、視線を泳がしている最中に、しっかりと教師から教育を受けることになると思うのです。一種のサブリミナル効果です。もちろん、この掲示物は、一年間を通じて全く同じものが掲示されているようでは、また、効果が薄くなるので、定期的に新しいものに変えていく必要があります。このようなちょっとした教室環境の工夫だって、そうばかに出来ないのではないかと思います。

(5)『コミュニケーション能力の向上方策』

  上述のとおり、教育が一種のコミュニケーション活動だとすれば、当然に、聞き手である子ども達の側にある一定程度のコミュニケーション能力が必要になります。私は、「もし、子ども達の側にコミュニケーション能力がきちんと備わっているのであれば、教科指導も、生徒指導も、進路指導ももっと効果的に行われるのではないか」と時々思うことがあります。
  子ども達の側に立てば、教員の言葉は日本語としては理解できても、心に響いていかないということもあるだろうし、自分が考えていることをきちんと整理しきれないということもあるだろうし、自分が教員に伝えたい思いを上手く表現できないということもあるでのはないかと思います。その観点から、子ども達のコミュニケーション能力を向上させるための方策として、1.朝の10分間読書、2.小論文指導、3.ディベート活動等を取り入れているのは良いことです。例えば、「朝の10分間読書」については、コミュニケーション能力の下地である読書の効果だけでなく、授業前の生徒の心を落ち着かせ、読書の習慣付けの一助となり、遅刻指導等の効果も指摘されているところです。また、小論文指導及びディベート指導については、これらの活動の過程で調べ学習を必要とし、資料を収集し、その資料を読み解き、自分の考えを言葉によって整理し、それを文字や言葉によって表現する、その「訓練」がとても重要なのです。さらにディベートに関して言えば、相手の言うことに耳を傾ける態度が必要とされ、話の要点を聞くテクニックを磨くことができるだけでなく、それらをゲーム感覚で楽しみながら行うことができる点にメリットがあるのです。

  以上のようなちょっとした工夫で、一人でも多くの子どもが勉強が楽しくなり、学校の授業に充実感を感じるのであれば、こんなに素晴らしいことはありません。どうぞ、「これはいいんじゃないか」と思える教育現場のちょっとした工夫があれば、ぜひ「jidou@mext.go.jp」宛にご紹介ください。その良い実践事例は全国に還元していきたいと思います。

2 兵庫県教育委員会:「生徒指導に関する兵庫県の取組について」

(1)はじめに

  兵庫県の小中学校においては、いじめや対教師暴力・器物損壊といった暴力行為に増加傾向が見られ、学校秩序に関わる暴力行為の増加とあわせてその対応が課題となっている。
  各小中学校においては、教職員の共通理解のもと、児童生徒理解に努め、人間的なふれあいにもとづく指導を推進しているところであるが、一部の学校において他の児童生徒や教師に対する傷害行為や授業妨害など学校の教育活動が阻害される事態も少なくなく、学校の「指導の域」を超えたものもあり、解決・解消に向け学校だけでは十分に対応できない状況も見られる。これらに対応するため、学校では、学校サポートチーム(下記に説明)、こども家庭センターや少年サポートセンターなどの関係機関や保護者を含む地域等と緊密な連携をとりながら、生徒指導の取組を進めている。

(2)生徒指導の充実

1 学校サポートチームの設置

  生徒指導においては、児童生徒の深刻化する問題行動等への対応に関する関係機関との連携がますます必要になってきており、これまで以上に、学校内の指導だけでなく、地域や関係機関とより効果的な連携を図ることが求められている。
  県教教育委員会は、その必要性を鑑み、平成14年の6月に県下の10教育事務所に「学校サポートチーム」を設置した。各教育事務所には、学校OB、警察OBの3名(一部2名)の相談員が常駐するとともに、精神科医等で構成している。
  問題行動を起こす児童生徒への対応としては、以下の通りであり、相談員が各地域や学校に出向き、状況把握に努めたり、学校関係者が問題行動の予兆を察知したときに適時相談にのるなど、問題を共有化し、その事案にふさわしい関係機関への紹介など多岐に渡って活動している。

  1. 問題行動を起こす児童生徒の最適処遇の検討並びに関係機関への紹介
  2. 課題を抱える学校・学級運営等の在り方に係る相談
  3. 各学校の状況把握、関係機関、地域からの情報収集
  4. 問題行動に係る事例分析
  5. 問題行動を起こす児童生徒への支援
  6. 懇談会、研修会等への講師派遣

  昨年度において全教育事務所における支援回数は、のべ5,613回にのぼり、関係機関との連携が進むとともに、校内で研修会が頻繁に行われ、指導体制の強化が図られたなどの事例も多く報告されている。
  問題行動等に対して、学校だけで抱え込むことなくお互いが連携しながら、早期対応、早期解決を図っている。

2 自立支援活動補助員の配置

  校内における対教師暴力・器物損壊が増加するなど生徒指導上の問題が深刻化しており、一部の中学校においては、授業妨害や暴力行為など担任や生徒指導担当教員等だけでは対応しきれない状況がある。
  そこで、自立支援活動補助員(以下「補助員」という)を公立中学校に配置し、生徒指導担当教員等を補助し、授業妨害や暴力行為などの問題行動を繰り返す生徒へのきめ細やかな指導・支援の充実に努め、学校における生徒指導機能の向上を図るとともに問題行動等の解決に資するものである。
  配置校数等は以下の通りである。

  • 配置校数:中学校40校
  • 配置期間
      1年間(4月1日から3月31日まで)。ただし、8月を除く。
      また、配置校の状況に応じ、配置期間を4月から9月(8月を除く)までの前期5か月又は10月から3月までの後期6か月とすることがあり、県教育委員会と関係教育委員会があらかじめ協議の上決定する。
  • 補助員の資格等について
      生徒指導担当の経験のある元教員、自立支援施設元職員、少年院元職員、カウンセラー、その他補助員の適性に合致する経験を有する者
  • 職務内容
      生徒指導担当教員等を補助して次の事務を処理する。
    1. 問題行動を起こす生徒やその恐れのある生徒等がいる学級の担任等に対する支援や指導の補助業務
    2. 学校と学校サポートチーム相談員、地域諸団体、関係機関等との連携の補助業務
    3. 出席停止の際の当該生徒に対する自立支援のための補助業務
    4. その他教員等の教育活動補助業務

(3)おわりに

  本県では、以上のような対応にあわせ、これまでも地域住民が教育活動を支援する「PTCA活動支援事業」をはじめ「地域教育支援事業」「いきいき学校応援団」など、県民自らが子どもたちの教育の場に参画・協働する事業を実施しているが、昨年度より11月を「兵庫の教育推進月間」と設定し、県下全域で授業をはじめ様々な教育活動をありのまま地域住民に公開する「オープンスクール」の展開など開かれた学校づくりを推進している。
  さらに、これまでも命と人権を大切にする心を重んじ、人間的なふれあいに基づいた指導や教育相談体制の充実に努めてきたが、新たに「命の大切さ」を実感させる教育プログラムの策定に取り組み、「心の教育」をより一層推進させていきたい。
  このような取組をとおして、今後も、県民が教育にかかわることができる機会と場を拡充していきたいと考える。

3 施策紹介

「学校と警察との連携」

  (1)平成16年中の少年非行の情勢については、刑法犯少年の検挙人員が約13万5千人(前年比6.6パーセント減)となり、刑法犯検挙人員に占める少年の割合が昭和52年以来27年ぶりに35パーセントを下回った(34.7パーセント)。一方、同年齢層の人口1千人当たりの刑法犯少年の検挙人員は、前年度よりは減少したものの16.8人となっており、成人(2.5人)の約6.7倍となっている。その内容は、凶悪犯の数が大幅に減少した(前年28.2パーセント減)ものの、国民の身近な犯罪である路上強盗やひったくりなど、いわゆる街頭犯罪における検挙人員の約7割を少年が占めている状況が続いている。さらに、不良行為少年(飲酒・喫煙・けんか等)の数は増加し、平成に入ってから最高になった。上記以外にも、平成16年中は長崎県佐世保市での小学生による同級生殺害事件等社会を震撼させる事件が続発し、少年の非行防止又は保護の両面において予断を許さない状況となっている。

  (2)こうした状況に対しては、1.社会全体の規範意識の問題、2.基本的な生活習慣や食習慣が十分に身についていない事などの家庭の教育力の問題、3.少子化による子どもの数の減少、4.核家族化・都市化の進展による地域の教育力の低下の問題、5.高度情報化社会による各種メディアとその子ども達に及ぼす影響の問題、6.メディアをはじめとした街中の有害環境の問題、7.子ども達自身の変容の問題等様々な要因が考えられ、その様々な要因が複雑に絡み合っていると思われる。
  こうした子ども達を取巻く環境に対しては、学校だけの力で解決できるものではなく、状況に応じて、学校や教育委員会が、家庭や関係機関と密接に連携することが大切であり、特に、街中での不良行為等に対しては、学校と警察との連携・協力は必要不可欠である。

  (3)この問題行動対策のための関係機関との連携強化は「心と行動のネットワーク」(少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議報告書:平成13年4月)において指摘されている。文部科学省では、これに基づきサポートチーム等地域支援システムづくり推進事業(平成14~15年度)を実施し、関係機関の職員からなる「サポートチーム」を組織して指導助言に当たるなど機能的・効果的なサポートチームの在り方について研究を行った。また、同事業の成果を踏まえ、「学校と関係機関等との行動連携を一層推進するために」(平成16年3月:学校と関係機関等との行動連携に関する研究会)等において、より具体的なサポートチームの在り方が提示された。文部科学省では、これを踏まえて、平成16年度から「問題行動に対する地域における行動連携推進事業」(平成17年度予算額530百万円)を実施している。(これら事業については、前回の生徒指導メールマガジン第9号において詳細に記述してあるので、そちらをご参照願いたい。)

  (4)このような関係機関との連携の中において、問題行動対策の観点から特に重要なものが、学校と警察との連携である。学校と警察との連携では、1.学校警察連絡協議会(以下「学警連」という)、2.学校警察連絡制度、3.サポートチームによる行動連携(生徒指導メールマガジン第9号参照)、4.非行防止教室又は防犯教室の実施(生徒指導メールマガジン第4号参照)、5.学校安全のための方策、6.生徒指導推進協力員等人的な連携(生徒指導メールマガジン第2号参照)及び7.少年補導活動など様々な方策が考えられるが、今回は、特に誤解が生じやすい上記の1.と2.について説明する。

  1.まず、学警連については、その経緯が、昭和38年に警察庁保安局長と文部省初等中等教育局長との通達に基づき、全国の警察署と市町村その他の区域ごとに学警連が設けられたことに端を発している。これによって、少年非行防止に向けて警察と学校が連携していく体制が整備され、平成9年に警察庁少年課長と文部省中学校課長からの通知で、少年非行防止だけでなく、犯罪被害防止についても念頭において具体的な措置を取るよう役割の拡大が図られたところである。
  このように、全国津々浦々の警察署及び学校において学警連への取組みが進められており、平成16年3月末現在では、全国の国公私の小・中・高等学校の約96パーセントの学校が学警連へ加入している状況となっている。
  このような活動によって、学警連は青少年の健全育成に大きな成果を残してきたが、その一方、単なる情報交換に終始する等形骸化していたり、実効的な連携体制が十分に構築されていなかったり、少年犯罪の広域化によって個別の学警連だけでは対処できないような事態になっていたことなどから、平成14年5月に警察庁少年課長からの通知によって、学警連の活性化のための少年警察関係者に向けた「執務資料」が出され、その改善方策への取組みが進められているところである。
  学警連の具体的な活動状況としては、1.少年非行の防止及び青少年の健全育成のための学校と警察との協議、2.共同での街頭補導活動の実施、3.万引きや薬物乱用防止等非行防止教室・犯罪被害防止教室等の実施、4.少年の社会参加活動等の機会の共同設定・実施、5.教員の社会貢献活動体験研修の警察署での受け入れ等学校と警察官の相互交流の推進、6.サポートチームによる取組み等保護者や地域の関係機関との共同による活動の実施などが行われている。

  2.一方、学校と警察の連絡制度(=文部科学省では、学校と警察との間で、協定等に基づいて一定の児童生徒の個人情報を連絡しあう制度として「学校と警察との連絡制度」を考えている)については、その経緯が、各地方公共団体の実情に応じて自然発生的に生じたものであり、学警連とは異なり、文部科学省及び警察庁等が指導して構築してきたものではない。実際、学校と警察との連絡制度は、各地域の実態に応じて、その形態も様々である。文部科学省においては、これまで学校と警察の連絡制度に関して特段の通知を発出して指導したことはなく、その制度の創設や在り方については、各地方公共団体がその実情に応じて、その設置や形態の是非を判断すべきものと考えている。
  学校と警察の連絡制度は、本年1月現在で、制度を設けているところが29都道県、うち協定を締結しているところが17都道県、申し合わせ段階のものが3県、協定の締結等は行わず通知の発出であるものが9県あると把握している。また、警察と学校の双方で連絡を取り合っているのが17都道県、警察から学校への連絡のみが12県となっている。連絡する内容としては、当該児童生徒の氏名、住所。学校、学年、事案の概要、事案の原因・動機、指導等に関する情報、非行防止・健全育成のために必要な情報をやりとりしている。
  以上のように、学校と警察との連絡制度は多種多様であり、今後とも各都道府県においては、他県の情報等を参考にしつつ、地域の実態に合わせた在り方を検討して頂きたい。

「特区805『IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会拡大事業』の全国展開について」

  特区805「IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会拡大事業」は,不登校児童生徒が、訪問等による対面の指導が適切に行われていることを前提として、自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合、当該学習について校長は指導要録上出席扱いすること及びその成果を評価に反映することができるという措置で、これまで7つの自治体が構造改革特別区域の認定を受け、特例措置として実施してきたところである。この特区805を、本年7月6日付け17文科初第437号通知「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」で全国展開することとしたので、今回は,この通知の内容について説明する。

(1)趣旨

  不登校児童生徒の中には、学校への復帰を望んでいるにもかかわらず、家庭にひきこもりがちであるため、十分な支援が行き届いておらず、不登校であることによる学習の遅れなどが、学校への復帰や中学校卒業後の進路選択の妨げになっている場合がある。この通知は、このような児童生徒の学校復帰や社会的な自立を支援することを目的とするもので、学校に登校しないことを認めるものではないということを十分理解されたい。

(2)措置の内容

  不登校児童生徒が、自宅においてIT等活用した学習活動を行うとき、一定の要件を満たし、当該学習活動が学校への復帰に向けての取組であり、不登校児童生徒の自立を助けるうえで有効・適切である場合には、校長の判断により、当該学習活動について、指導要録上の出席扱いを可能とするものである。また、当該学習活動の成果を、指導要録や通知表に記載するなどして、評価に反映することもできることとしている。

(3)で出席扱いの要件については説明するが、この出席扱いの要件を満たせば、即出席扱いということではなく、当該学習活動が学校への復帰に向けての取組であり、当該児童生徒の自立に、不登校状態の改善につながるものであるかどうかということを校長が判断することになる。自宅での学習活動を出席扱いと認めることで、児童生徒に学校や教育支援センターに通わなくてもよいのだという気持ちを起こさせて、不登校状態を悪化させることのないように、児童生徒の状況を十分に把握していく必要がある。

(3)出席扱いの要件

1.「保護者と学校の間に十分な連携・協力関係が保たれていること」

  自宅における学習活動を適切に進めていくとともに、学習の状況を十分に把握するためには、保護者の理解と協力が必要不可欠である。学校においては、保護者の十分な理解と協力が得られるように、保護者に対してこの措置について十分な説明を行っていく必要がある。また、保護者と協議しながら、児童生徒の実態に応じた指導・支援の方法について、検討していくことが求められる。

2.「IT等を活用した学習活動とは、IT(インターネットや電子メール、テレビを使った通信システムなど)や郵送、ファクシミリなどを活用して提供される学習活動であること」

  学校の教職員が家庭訪問を行った際に、学習プリントや教材を届ける場合も、当該学習活動に含まれる。

3.「訪問等による対面指導が適切に行われることを前提とすること。対面指導は、当該児童生徒に対する学習支援や将来の自立に向けた支援などが定期的かつ継続的に行われるものであること」

  対面指導を定期的・継続的に行うことは、当該児童生徒の学習の状況を適切に把握するとともに、学校復帰や社会的な自立に向けて、自宅での自主的な学習活動だけでは得られない人間関係を築く力を養うためにも、必要不可欠なものだと考えている。
  特区においては、対面指導を行う者として、学校の担任教員や教育支援センターの指導員のほか、学生ボランティアを活用している例もある。学生ボランティア等を活用する場合には、より効果的な対面指導が行えるよう、事前の研修や専門家等によるスーパーバイズを実施して、指導員の資質向上を図ることが求められる。

4.「学習活動は、当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること」

  本人の興味、関心に終始するだけではなく、本人の状態や学習理解の程度に応じて、段階的に学習を進めるなどして、実際の学校復帰や社会的な自立につなげていけるような計画的な学習プログラムとしていくことが求められる。
  学習活動を行わせる主体として、民間事業者も認めているが、対面指導を行うことを前提とし、学校復帰や社会的な自立に向けての働きかけを行うための相談・指導体制を備えていることが必要である。「民間施設についてのガイドライン(試案)」を参考にされたい。

5.「校長は、当該児童生徒に対する対面指導や学習活動の状況等について、例えば、対面指導に当たっている者から定期的な報告を受けたり、学級担任等の教職員や保護者などを含めた連絡会を実施するなどして、その状況を十分に把握すること」

  特区においては、対面指導を行った者からの定期的な報告書の提出、担任教員による本人や保護者との面談により、学習状況の把握を行っている。本人の努力を適切に認めてやることが、学校復帰や社会的自立に向けてのさらなる意欲につながるものと考える。そのためにも、学習状況を十分に把握した上で、出席扱いについて判断することが求められる。
  特区では、出席扱いとして換算する日数について、

  • 小学生45分、中学生50分を1単位時間として、5単位分の学習が積算されれば、1日の出席扱いとする。
  • 対面指導による学習については2時間以上、自主学習では5時間以上を1日の出席扱いとする。といった基準を作って判断しているところが見られる。参考にされたい。
6.「IT等を活用した学習活動を出席扱いとするのは、基本的に当該不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動であること」

  今回の措置が、学校外の公的機関や民間施設に通うことができず、家庭にひきこもりがちな不登校児童生徒の支援を目的とするものであることを示すものである。出席扱いとすることで、教育支援センター等の学校外の機関に通わなくなり、学校復帰や社会的自立に向けての努力をしなくなってしまうということのないよう留意しなければならない。

7.「学習活動の成果を評価に反映する場合には、学校が把握した当該学習の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される場合であること」

  通知の留意事項にも記載していることであるが、評価の指導要録への記載については、全ての教科、観点について学習状況、評定を記載するということではなく、児童生徒の学習状況を文章記述するなどして、当該児童生徒の次年度以降の指導に生かすことができるような記載に努めることも重要である。

(4)最後に

  上記でも繰り返し述べているところであるが、この措置の本来の目的を念頭に置いて、児童生徒の状況把握を十分に行い、不登校状態の悪化につながることのないように留意しながら、適切な運用に努められたい。

4 主要行事の予定又は連絡事項等

  (全てを記載しているわけではありませんので、必ず正式文書で確認をお願いします。)

  • 生徒指導メール・マガジン第11号 8月26日(金曜日)

5 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

  今回は特になし。

本件連絡先

  • 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 生徒指導企画係
  • メール・マガジン問い合わせ先 <jidou@mext.go.jp
  • 電話:03‐5253‐4111(内線3055)、FAX:03‐6734‐3735
  • ※ 生徒指導及び進路指導上の優れた実践事例を公募したいと思います。全国的に紹介したい事例がある場合には、ご執筆の上、送信いただきたいと思います(その際、執筆者が都道府県・指定都市教育委員会でなくても、学校又は市町村教育委員会の執筆でも可です)。内容を見て、「各地域又は学校の優れた取組みの紹介」の項で紹介していきたいと思います。
  • ※ 教育課題についての質問や提言、他の都道府県教育委員会へ伝えたいニュースや連絡事項などありましたら、上記アドレスまで返信メールの送信をお願いします。なお、恐縮ですが、質問に関しては、全体に周知する事が必要なものについて、本メール・マガジンで回答していきます。
  • ※ メール・マガジンは、文書による通知・連絡とは異なり、あくまでも文部科学省からの情報提供を目的としています。通知・連絡については、従来通りの方法にて行いますのでご留意願います。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --