『生徒指導メールマガジン』 第2号

(平成16年11月26日)
文部科学省初等中等教育局児童生徒課

目次

  1. 巻頭言:『人生二度なし(森 信三)』について
  2. 施策紹介:
    • 「不登校への対応について」
    • 「教育相談体制の充実について」
  3. 各地域又は学校の優れた取組みの紹介
    • 『千葉県富里市立富里南中学校の取組み』について
    • 『不登校への対応「きら星学級」「あけもどろ学級」(沖縄県那覇市)』
  4. 主要行事の予定又は連絡事項等
  5. 施策に関する各地域からの提言又はQ&A

1 巻頭言:『人生二度なし(森 信三)』について

  皆さんは、教育者「森信三氏」をご存知でしょうか。彼は、故人ですが、「人生二度なし」を中心命題として「二度と繰り返すことが出来ない人生だからこそ、一日一日を真剣に有意義に生き抜き、精一杯充実したものとしなければならない。」と、昭和30年代頃から全国各地で講演活動をしてきました。
  その彼の言葉に、「教育とは、流れる水に文字を書くようなはかない仕事なのです。しかし、それをあたかも岸壁にノミで刻みつけるほどの真剣さで取り組まなければならないのです。教師が己自身、赤々と命の火を燃やさずにいて、どうして生徒の心に点火できますか。教育とはそれほどに厳粛で崇高な仕事なのです。」というものがあります。
  教育において優れた教師の存在は、世界中何処にいても、何時の時代においても普遍的に必要な教育の要素です。それでは、子供達の心に火を付けていくような、優れた教師とはいったいどうあるべきなのか?そもそも、このメールマガジンのテーマである、生徒指導を行う上で、教師はどのような取組みをすればいいのか?答えは人それぞれあるでしょうし、各人が自分の経験から自分なりに答えを見出していけばいいでしょう。ただ、森氏の言葉には、それを考える際に手がかりとなる点が多々あります。
  先ず、上記の『教師が赤々と命の火を燃やすこと』の部分、森氏の持論の中心となる「一度しかない人生をいかに充実して過ごし、何のために自分の人生を使うのか」ということでしょう。「教師」という仕事を選んだのであれば、「教師」という仕事を通じて、子供達の教育の為に自分の毎日の生活を捧げ、その事によって子供達を有為な社会人として育て上げ、社会の発展に寄与するとともに、子供達から「先生、有り難う」と感謝され、自分がこれまで努力してきたことの意味を見出し、ひいては自分の教師生活自体、さらには教師として捧げている自分の人生を有意義で豊かなものとしていくこと、これなくしては、なかなか児童生徒の心に火をつけることは難しいでしょう。
  次に、森氏は、「教師を志すほどの者が自分一個の人生観、世界観を持たなくてどうするのです。眼は広く世界史の流れを捉えながら、しかも足下の紙くずを拾うという実践をおろそかにしてはなりません。」とも語ります。教師には、上記のような仕事に対する志や熱意と同時に、このような「地道な実践」が必要なのかもしれません。これも生徒指導を行ううえでは心得ておく必要があることでしょう。
 いずれも当たり前の事ですが、その当たり前の事を着実にこなすことが生徒指導を行う上でも必要なことだと考えます。そして、教師が、1秒1秒を大切に真剣に生きながら、高い志を保ちながら地道な実践を失わず、「挨拶をする、身だしなみを整える、人の話を聞く、TPOをわきまえた行動をする、時間を守る、感謝の気持ちを持つ、マナーをわきまえる等」当たり前にやるべき事を当たり前に、根気強く継続して行えば、その教師の姿こそが生徒達にとって良い教材でしょう。もちろん、それ以外にも生徒指導を行う上で留意すべき点は多々あるだろうと思います。ただ、このように当たり前の事を当たり前にこなしていく教師の姿勢こそが、生徒指導を行う上で先ず教師が行うべきことかもしれません。

2 施策紹介:

「不登校への対応について」

  平成15年度の国公私立の小・中学校における不登校児童生徒数は約12万6千人(対前年度約5千人減,対前年度減少率は3.8%)であり,平成14年度に引き続き,2年連続で減少しました。学校,教育委員会,教育支援センター等,様々な関係者による熱心な取組の成果が定着しつつあるものと思われます。しかし,その数は依然として相当数に上っており,教育上の大きな課題となっています。
  不登校への対応の在り方については,平成15年3月,「不登校問題に関する調査研究協力者会議」により報告を取りまとめていただいています。この報告においては,不登校に対する基本的考え方として,1.将来の社会的自立に向けた支援,2.連携ネットワークによる支援,3.将来の社会的自立のための学校教育の意義・役割,4.働きかけることや関わりを持つことの重要性,5.保護者の役割と家庭への支援という5つの視点が挙げられています。これらの基本的な考え方に立ちながら,報告では,学校・教育委員会それぞれにおける取組の充実のために様々な提言がなされているところです。教育委員会等におかれては,今一度,報告及び平成15年5月16日付け通知「不登校への対応の在り方について」の内容を御確認いただき,不登校に関する取組の一層の充実をお願いいたします。
  報告の提言を受け,国立教育政策研究所生徒指導研究センターにおいて,学校等におけるより具体的な指導方法や事例の紹介等を内容とする指導資料が作成されています。ホームページに概要及び事例が掲載されていますので御活用ください。(http://www.nier.go.jp/shido/hutoukou2/honbun.htm)
  文部科学省においては,平成15年度から開始した「スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)」において,早期の対応と不登校児童生徒やその家庭へのきめ細かな支援を行うため,学校・家庭・関係機関が連携した地域ぐるみのサポートシステムを整備しているところです。現在,47都道府県に設置された広域スクーリング・サポート・センター及び約460箇所に設置された地域スクーリング・サポート・センターを中心として取組が進められています。本年10月18日に開催した全国連絡協議会においては,事例発表や分科会で取組の成果が発表される一方,今後取り組むべき課題も提示されました。
  このSSN事業は,地域においてネットワークを整備することにより,幅広い情報交換・共有を行うだけでなく,地域の様々な人的資源,物的資源を共有して活用し,一施設では対応しきれない多様な要因・背景等を持つ不登校児童生徒へのきめ細かな支援を行おうとするものです。これまで,不登校児童生徒を受け入れている教育支援センターやNPO・民間施設は,不登校児童生徒の「居場所」として重要な役割を果たしてきましたが,「将来の社会的自立に向けて支援を行う場」として,より積極的な役割が求められています。教育支援センターやNPO・民間施設等が効果的な連携を進め,お互いの得意分野を活かしながら,地域における不登校児童生徒等への支援の充実を図っていただけますようお願いいたします。連絡協議会で配布した「スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)取組状況」の冊子では,各指定地域の様々な取組が紹介されていますので,これらの資料等も参考にしていただけたらと思います。
  SSN事業は,平成17年度概算要求においても,引き続き推進していくこととしております。さらに,平成17年度概算要求においては,不登校児童生徒に多様な支援を行うため,不登校児童生徒及び保護者への指導・支援を行っている実績のあるNPO,民間施設,公的施設に対し不登校児童生徒の実態に応じた学習カリキュラム,活動プログラム等の開発を行う調査研究を委託することとしております。具体的には,不登校児童生徒の実態に応じた効果的な学習カリキュラム,コミュニケーション能力や人間関係を築く力を身につけるための活動プログラム,非行傾向の不登校児童生徒に対する効果的な指導プログラム,ひきこもり傾向にある児童生徒及び保護者に対する効果的な訪問指導,さらに,将来の社会的な自立を目指した進路指導及び中卒後の支援などの内容を想定しています。委託先の団体としては,公的施設も対象となっておりますので,教育委員会におかれては,所管の機関における実施について御検討いただくとともに,域内への周知をお願いいたします。
  不登校に関する最近の動きとしては,構造改革特別区域において実施されている取組の全国化があります。具体的には,「不登校児童生徒等を対象とした学校設置に係る教育課程弾力化事業」及び「IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会拡大事業」が,平成17年度中に全国化されることとなっています。これらの内容については,SSN全国連絡協議会で関連資料を配布しておりますので,詳細はそちらで御確認ください。
  不登校については,繰り返しになりますが,2年連続で減少したものの依然として相当数に上っており,教育上の大きな課題となっています。教育を受ける機会は義務教育段階にある全ての児童生徒に保障されるべきものであり,そのために,児童生徒が安心して楽しく学校に通えるようにすること,そして何らかの理由により学校に通えない児童生徒に対し,学校復帰や社会的自立に向けて支援をしていくことは,教育関係者の重要な責務です。教育委員会等におかれては,国の事業や資料などを活用し,さらに不登校に関する全国的な動向等も視野に入れながら,地域の実情に応じた取組の充実に努めていただけますようお願いいたします。(本件連絡先:児童生徒課生徒指導第一係)

「教育相談体制の充実について」

  児童生徒の不登校や問題行動等の状況は,平成15年度において不登校児童生徒数が約12万6千人,学校内の暴力行為件数が約3万1干件,いじめの件数が約2万3干件にのぼっており,依然として憂慮すべき状況にあります。
  このため,文部科学省では、特に,学校内のカウンセリング機能の充実を図るための施策として,平成7年度より「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」(-平成12年度まで)を実施し、平成13年度からは,この調査研究の成果を踏まえ,都道府県・指定都市においてスクールカウンセラーを学校に配置し活用する事業に対して必要な経費の補助を行っており,平成15年度実績では6,941校(小学校:1,599校,中学校:4,778校,高等学校:564校)にスクールカウンセラーが派遣されています(平成17年度要求額4,605百万円・10,000校)。
  スクールカウンセラーは,1.財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士,2.精神科医,3.心理学系の大学の教授等教員(常勤のみ)のほか,4.心理臨床業務又は児童生徒を対象とした相談業務について一定の経験を有する者のいずれかに該当する者の中から,都道府県・指定都市教育委員会が選考することとなっています。
  これまでの調査研究の成果から,スクールカウンセラーは児童生徒の臨床心理士に関して高度に専門的な知識・経験を生かして職務を行うこと(専門性)と教員等と異なる校外の者であること(外部性)という二つの面が高く評価された存在であり,児童生徒へのカウンセリング,教職員及び保護者に対する助言・援助及び児童生徒のカウンセリング等に関する情報収集・提供等において効果を上げています。
  また,スクールカウンセラー配置校における児童生徒の問題行動等の発生状況についても,スクールカウンセラーの活動による効果が見られます。例えば,平成14・15年度におけるスクールカウンセラー配置校について,配置前(平成13年度)と配置後(平成15年度)の問題行動等の発生件数の減少率を比較すると,不登校,いじめのいずれについても,全国の減少率を大幅に上回っています。
  これは,児童生徒へのカウンセリング等により個別の問題行動等の解消につながるとともに,予防的なカウンセリングの実施,教員に対する助言・援助,校内研修等を通じた教員の対応能力の向上,スクールカウンセラーの配置をきっかけとした校内体制の整備などにより,各学校における全校的な教育相談機能が強化されていることを示していると考えることができます。こうした成果は,平成15年3月に「不登校問題に関する調査研究協力者会議」がまとめた「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」においても積極的に評価されています。
  このようにスクールカウンセラーについては様々な成果が報告され,配置枚数も毎年増えてきているが,公立中学校(3学級以上の公立中学校)を中心に計画的にその配置を拡充している段階とはいえ、平成15年度においても約47%にとどまっており,日常的に全ての学校において十分な相談体制がとれているとは言えないのが現状です。また,スクールカウンセラー等の有資格者は,その大部分が指定都市がある都道府県に集中しているという人材確保の課題もあります。これらに加え,不登校に関する上記報告書においては,不登校に関する学校の取組に対する一層積極的な関わりを求めるとともに,1.教員とスクールカウンセラーとの円滑な連携協力のためのマニュアル作成や研修の実施,2.不登校児童生徒に対する訪問型支援への協力,3.スーパーバイザー的な役割を果たす者の配置,4.学校種別ごとの効果的な配置をすること等について,その必要性や課題が提起されています。
  今後,文部科学省としてはこうした成果や報告等を踏まえ,当面平成17年度までに公立中学校に在籍するすべての生徒がスクールカウンセラーに相談できる体制の整備を図っていくこととしています。
  また、前述の報告書では、小学校における不登校について1.学校生活上の問題や基本的な生活習慣が身についていないこと等が背景となっているため、早期の段階での対応が効果的であること、2.中学校で不登校が大幅に増加するため、小・中学校間の接続を図る観点から、小・中連携を推進する等の配慮が重要である、と報告されており、小学校の教育相談体制の充実が求められており、このため、退職教員・保育士、民生児童委員等の地域の人材を「子どもと親の相談員」として小学校に配置し、不登校などの早期発見・早期対応や未然防止、学校運営の課題や児童虐待問題へ対応のあり方等に関する調査研究を平成16年度より新たに実施しています。
  さらに、本年6月に発生した長崎県佐世保市の小学校の同級生殺害事件を受け、再発防止に向けて設置した「児童生徒の問題行動に関するプロジェクトチーム」が10月に公表した「児童生徒の問題行動対策重点プログラム」においては、学校として組織的な生徒指導が行える体制の強化が求められ、退職警官・退職校長などの人材を「生徒指導推進協力員」として小学校に配置し、法的知識や経験則による助言等を通じて、予兆の早期発見・事件の未然防止・緊急時の対応のあり方等に関する調査研究を平成17年度より新たに実施するなど、小学校における教育相談体制・生徒指導体制の充実を図ることとしています。
  平成17年度要求額1,060百万円 子どもと親の相談員 1,410校
  生徒指導推進協力員 550校
  (本件連絡先:児童生徒課生徒指導第二係)

3 各地域又は学校の優れた取組みの紹介:

『千葉県富里市立富里南中学校の取組み』について

1.富里南中学校の概要

  富里南中学校は千葉県の北西部に位置する富里市にあり、来年,学校創立20周年を向かえる比較的新しい中学校です。学区は農村地帯にあり,成田空港に関連して新住宅団地がいくつか開発され、現在では三分の二以上が新住宅団地の住民で占めるようになってきており、教育への関心も高まりつつあります。

2.いきいきワクワク講座

(1)「いきいきワクワク講座」の概要

  本校では平成11年度から「いきいきワクワク講座」を実施しています。その基本的なコンセプトとしては、1.地域の専門的な技術や知識を持った人材を講師として学校に招き、様々な講座を実施すること、2.生徒にはいきいきとした感動体験を持たせること、3.地域の人たちと生徒の関わりを深化させていくこと等です。
  講座の実施は年間2回,6月と11月に午後の2時間程度を位置付けています。
  各講座は縦割り学年で構成されており、指導する講師の要望で最大数を決め、実施に向け具体化していきます。講座数は毎回約30程度開設し,講師は約80名です。
  具体的な講座名:手話・介護・木彫・イラスト・ステンドグラス・ギター・三味線・少林寺拳法・スキューバダイビング・ゴルフ・エアロビクス・囲碁・将棋・編み物・フラワーアレンジメント・華道・茶道・手打ちそば作り・着付け教室・護身術・大正琴等

(2)この取り組みの生徒指導的意義

  学校の授業は学校の先生が行うものという観念に縛られないでこの講座は行われます。先生が講師の補佐をして講座を運営するために、いつもと違う雰囲気になり、講座で行う内容も今まで行っている授業と全然違う内容を学習するため、生徒によっては,自分の得意なことや趣味を生かすことができたり、新たな楽しみを見つけることができるという点を持っています。
  各講座の様子を見ると、普段の授業では口数の少ない生徒が、生き生きと話しかけてくる姿や喜々として活動制作する姿、真剣に考え込む姿など、新たな生徒の一面に触れることができます。
  この講師は,地域の人材を中心にお願いしております。そのために,地域で見かけるおじさんやおばさんと,この講座をきっかけにして知り合いになれるということがあります。講師にとっても,地元の学校の様子を自分の肌で感じることができ好評でもあります。
  また、来年度からは小・中連携として来年中学校に入学してくる小学校6年生をこの講座に招待し、実際に体験してみるという企画が動き始めています。

(3)いきいきワクワク講座の課題

  この講座の講師は「その道のプロ」「地域の方々」であり「教師」ではありません。そのため、生徒の実態を加味し、指導をすることは、決して上手ではないときがあります。そこで補佐の担当教師が力を発揮します。講師の先生の言葉を分かりやすく噛み砕いて話したり、生徒の様子から先回りして指導をしたり…。そういった講師との連携を事前に十分に行う必要があります。
  また、この学習では新鮮な感動体験を大切にしているため毎年講座を固定化しているとマンネリ化してきます。私たちの開拓する意欲も大切であることはいうまでもありません。

3.上級学校体験学習

(1)上級学校体験学習の概要

  本校の大まかな進路学習の流れは1年次職業体験学習(2日間)2年次上級学校体験学習(1日間)3年次進路先の調査(説明会、体験入学など)という流れになっています。
  上級学校体験は、1年時の職業体験学習を受けて将来の夢を実現するために,目的意識を持って進路決定に役立てるため,専門学校や短期大学,4年生大学で体験学習を行うことで,生徒の夢がより現実的なものになればと考え行っているものです。
  方法としては,生徒の進路希望調査を参考にしながら、体験できる学校を探し,受け入れの許可を得ます。生徒は実施に向けて数回にわたり学校種別に会議を持ち、当日に備えていくわけです。(メンバーの確認、代表者の決定、事前学習の後、質問事項の検討、当日の交通手段や交通費の検討、事前打ち合わせの持ち方、及びその交渉の仕方など)昨年度実施した学校は、専門学校、短大、4年制大学、計14校です。

(2)この取り組みの生徒指導的意義

  高校での中途退学者やフリーターなど定職に就かない若者の増加が社会問題化しているだけに、生徒自身が自分の進路に夢を持ちにくくなってきているように思われます。この学習では、高校では学ぶことのできないより専門的な体験を通して,自分の夢をしっかりと持ち,将来への自己実現に向けて支援し,生きる力を育んでいけたらと思います。
  また、専門的な知識を学習している学生の姿や多彩な学習内容に触れることは、生徒に大きな驚きと関心を与えてくれると思います。そのことから自分の中学校生活をさらに見直すことができればと思います。

(3)上級学校体験学習の今後の課題

  進路学習は自分の生き方を考える学習です。私たちは様々な指導を通して、特に2つのことを卒業までに理解させなければいけないと思ってます。それは、1.夢を実現させることは自分がいきいきと生きていくために大切なことだということ2.社会は互いに支え合って成り立っており、身勝手な行動は許されない,世の中は厳しいということの2つです。その意味でも上級学校体験では,「学ぶことの楽しさ」を感じることができるよい機会ではないでしょうか。単に体験学習を実施するだけではなく、上記の大きな目標を達成させるために、さらにこの学習を深化させていきたいと思います。

『不登校への対応「きら星学級」「あけもどろ学級」(沖縄県那覇市)』

  (1)沖縄県においては、不登校児童生徒の中でも、特に「あそび・非行」の不登校児童生徒が多いという特徴を持っています。那覇市教育委員会では、そのような「あそび・非行」の不登校児童生徒を3年間でゼロにするという目標を立て、遊び・非行に向かう児童生徒が将来への大きな夢と希望を抱き、社会的に自立できるよう積極的な支援を行うため、教育長の強力なコミットにより、教育委員会内に「やる気・元気サポート室」を本年度設置しました。
  本室では、教育委員会や市長部局内の各課、学校、青少年センターや警察などの関係機関等と連携して不登校のみならず問題行動への横断的な取組を行っており、臨床心理士の資格を持った職員を含め、職員が日々学校を訪問し、校長先生や教頭先生、生徒指導主事の先生方と協力して問題行動や不登校への対策に当たっています。また、各関係課や関係機関と連携し、他課の事業を活用して生徒指導の推進を図ったりもしています。例えば、福祉部局所管の青少年育成事業担当厚生員が中学校に配置される前に行う事前研修を、生徒指導サポーターと合同で行い、不登校対策への取組への理解と連携を深めるといったことを行っています。
  このような那覇市における取組の中、今回は教育支援センター(適応指導教室)及び青少年センターでの取組をご紹介いたします。

  (2)那覇市では、教育支援センターを2つ設置しています。ひとつは「きら星学級」、もうひとつは「あけもどろ学級」です。「きら星学級」においては、「あそび・非行」の不登校児童生徒を、「あけもどろ学級」においては、主に心因性の不登校児童生徒を対象として支援を行っています。このように原因ごとに分けて対応することにより、より子どもたちの実態に沿ったきめ細かな支援を行うことができます。
  例えば、「きら星学級」においては、一対一での支援を基本としており、児童生徒が同じ場で作業をする際も、それぞれに職員がつく形で支援を行っています。心因性の子どもたちに比べ、子どもたちだけで接していると、非行を起こす可能性が高くなるということからです。一対一での支援が基本ではありながら、職員間で接し方の方針を確認するため、臨床心理士の資格を持った職員を含め、ミーティングを毎朝実施し、その日の対応の方針を全員で話し合っています。そして、毎月、学校の先生や関係機関の職員と打ち合わせを行い、学校に復帰させることを一番の目的として支援を行っています。設置場所についても、以前は教育研究所内に設置されていましたが、児童生徒に心理的な負担を与えないよう、民間の建物を借りて運営しています。さらに、「きら星学級」の職員は、児童自立支援施設に設置してある「若夏分校」に赴き、子どもたちへ学習支援を行っています。
  また、「あけもどろ学級」においては、青少年センターの中に併設してあることの利を活かし、充実したカウンセリングを実施しながら学校への復帰を目指して支援を行っています。青少年センターでは、青少年の健全育成を目的として街頭補導等も行っていますが、臨床心理士の資格を持った職員が現時点で5名おり、子どもたちや学校の先生の教育相談を受け付けるとともに、各学校へ実際に赴いての支援も行っています。学校の枠を超えて問題が起こっている場合、一つの学校に所属しているスクールカウンセラーよりも、複数の学校をカバーしている青少年センターの方がより有効な支援を行える場合もあるため、各学校の教育相談担当の職員等と連携して子どもたちへの支援を行っています。また、青少年センター、きら星学級の職員それぞれが「ヒーローズ」、「スターズ」という劇団を組織し、いじめや非行行為に関してロールプレイを行い、子どもたちにどう行動すべきか考えさせる、といった活動も行っています。

  (3)このように、不登校児童生徒への対応においては、児童生徒一人一人の状況や背景等を把握し、きめ細かな対応を行っていく必要があります。そのためには、学校の先生だけでなく、臨床心理士や精神科医など、各分野の専門的な知見も活かしながら対応に当たることが不可欠であり、そのためにも関係機関等と連携しながら対応を行っていくことが重要です。実際、「きら星学級」へ通っている児童生徒の中には、学校へ行きたいという子どももおり、そのような子どもたちの声を真摯に受け止めながら、取り組んでいく必要を実感しました。(参考:那覇市教育委員会HP:http://www.naha-okn.ed.jp/)。

4 主要行事の予定又は連絡事項等:

  (すべてを記載しているわけではありませんので、必ず正式文書で確認をお願いします。)

  • 第161回臨時国会 10月12日(火曜日)から53日間
  • キャリア教育推進フォーラム(東京会場) 12月18日(土曜日)
    (詳細は文部科学省ホームページにて掲載しておりますので、奮ってご参加下さい。)
  • 生徒指導メール・マガジン第3号 12月24日(金曜日)
    (次回号からは『教育長より』の項を新たに立てたいと思います。次回号は、広島県教育委員会関教育長の予定です。)
  • 平成16年度第2回都道府県・指定都市生徒指導担当指導主事連絡会議 1月28日(金曜日)(予定)
  • 平成16年度全国不登校フォーラム 2月28日(月曜日)

5 施策に関する各地域からの提言又はQ&A:

  今回号は特に無し。

本件連絡先:

  • 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 生徒指導企画係
  • メール・マガジン問い合わせ先 <jidou@mext.go.jp
  • 電話:03-5253-4111(内線3055)、FAX:03-6734-3735
  • ※ 生徒指導及び進路指導上の優れた実践事例を公募したいと思います。全国的に紹介したい事例がある場合には、ご執筆の上、送信いただきたいと思います(その際、執筆者が都道府県・指定都市教育委員会でなくても、学校又は市町村教育委員会の執筆でも可です)。内容を見て、「各地域又は学校の優れた取組みの紹介」の項で紹介していきたいと思います。
  • ※ 教育課題についての質問や提言、他の都道府県教育委員会へ伝えたいニュースや連絡事項などありましたら、上記アドレスまで返信メールの送信をお願いします。なお、恐縮ですが、質問に関しては、全体に周知する事が必要なものについて、本メール・マガジンで回答していきます。
  • ※ メール・マガジンは、文書による通知・連絡とは異なり、あくまでも文部科学省からの情報提供を目的としています。通知・連絡については、従来通りの方法にて行いますのでご留意願います。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --