ともに生きる心をはぐくむ体験活動
理科「人のたんじょう」の学習の中で、子ども一人一人に課題を持たせ、生命の誕生から成長について調べた。
出産を間近に控えた保護者の方に来てもらい、赤ちゃんの超音波映像を見たり、聴診器で赤ちゃんの心音を聞いたり、おなかに手を当てて実際に赤ちゃんが動く様子を確かめたりする体験活動を行った。
保護者の方に赤ちゃんの誕生に寄せる母親としての思いを語っていただくことで、子どもたちは自分が誕生した時の親の思いを感じ取る機会を得ることができた。
1か月後に、無事に生まれた男の子を抱っこする体験を通じて小さな命のあたたかさを実感し、命の誕生を母親とともに喜び合うことができた。
虫さがしをしたり、虫の飼育をしたりする活動を通じて、じかに虫と接し、生き物の命を実感する体験活動を行った。
「ムシムシマスター」を目指して、自分の飼育してきた虫をじっくり観察する時間を設けた。子どもたちは手や体のまわりを忙しく動き回る虫たちに悪戦苦闘しながらも、たくさんの虫の秘密を見付けることができた。
活動が始まって間もなく、誤って虫を踏んでしまい、泣き出した子どもがいた。初めはショックで身動きできない様子も見られたが、墓を作って虫を埋めたことで、もう戻らない命の重みを正面から受け止めることができた。
飼育や栽培の活動で避けて通ることの難しい「死」の場面は、子どもが納得して次の活動へと動き出すまでしっかり向き合わせることが必要だと考えている。
見つけた虫の秘密を互いに絵や文に書いて発表し合い、学習の成果を確認した。
5月の最初の調査では約3割が「命の誕生」に関して無関心だったが、体験活動導入後、12月に実施した調査では、「命の誕生に出会った」と回答した子どもの割合が9割を超えた。
5月には「死んだ人や動物が生き返る」と考えている子どもが5割ほどいたが、7月の調査では2割を割った。「触っても動かない」などのつぶやきから、体験で得た感覚により「死」についての理解がより深まった成果であると考えている。
課題となるのは、「死」の扱いと、「思いやり」の日常的な実践化である。動植物にかかわる体験活動の中で遭遇した死を、子どもの気持ちに寄り添いながら取り上げるようにしたい。また、体験活動で育んだ思いやりの心情を日常生活に生かすには、家庭との連携が欠かせない。子どもの生活環境と学びを結び付ける家庭への働きかけについて方策を探っていきたい。
-- 登録:平成21年以前 --