2.社会奉仕体験 22.北海道苫前町立苫前小学校

思いやりの心を育てる交流体験活動(福祉・ボランティア)

【活動のポイント】

  • 人間としての在り方や生き方についての自覚を深め、生命を大切にする心や他人を思いやる、美しいものに感動する心などの豊かな人間性の育成を目指し、各学年において、生活科・総合的な学習の時間を中心に福祉・ボランティアの学習に取り組んでいる。
  • 校区には特別養護老人ホームがあり、毎年交流を行っている。また、地域の高齢化が進み、周辺に多くの高齢者が居住していることから、本校では福祉に視点を当てた教育活動を推進している。
  • 本校は、社会教育と連携した苫前町の学社融合事業や校区の住民の協力を呼びかける学校支援ボランティアの制度を推進しながら、地域の人材を生かし、自ら進んで対象と関わり、活動に取り組む児童を育成するための体験活動を展開している。

活動内容

(1)第3学年における福祉に関する学習

○事前指導

 校区の特別養護老人ホームを訪れ、高齢者とのふれあいを通して、生活の様子等について対話し、高齢者との交流の仕方について考える。また、疑似体験グッズをつけて様々な活動をすることを通して、高齢者の体について理解を深める。

○活動の展開(総合的な学習の時間)

  • ゲートボール愛好会の方との交流
     高齢者と一緒にゲームを楽しむ。高齢者の方にゲームのルールなどを質問し会話する。
  • 特別養護老人ホームの高齢者の方との交流
     高齢者にふさわしいデザインを考えて作成した贈り物を渡したり、学芸会での遊戯を披露して交流する。一緒に折り紙やぬり絵をしたり、リコーダーの練習をするなど、高齢者と積極的に交流する。
     これらの交流においては、高齢者との交流を重ねる中で、高齢者との関わり方を見つけ、より親しくなるために、毎回交流の内容を振り返り、次回の計画を考えさせる。

○事後指導

 高齢者との交流を振り返り、高齢者に喜んでもらったことや交流を通して嬉しかったことなどについて話し合い、交流活動に対する関心・意欲を高める。また、高齢者のために自分たちがこれからできることを考える。さらに、高齢者に対して、思いやりの気持ちを持って手紙を書く。

(2)第4学年における福祉的な学習

○事前指導

 目が不自由ということについて考え、どんなことが大変なのかを話し合う。そして、実際にアイマスクをして、歩行や食事などを体験し、目で見ることができないことへの不安や苦労について感じ取ったり、たとえば、「点字について」や「盲導犬について」、「点字ブロックについて」など、自ら追究するテーマを設定し、調べ学習を進め、発表する機会を設ける。これまでの学習から得た知識や技能を生かし、目の不自由な方との交流会に向けた学習計画を立て、交流会への参加意欲を高める。

○活動の展開(総合的な学習の時間)

  • 盲導犬との歩行体験
     盲導犬との歩行訓練を通して盲導犬の役割を理解し、その大切さや素晴らしさを実感する。
  • 視覚障害者との交流
     自分が調べたことを生かしながら、目の不自由な方とゲームを通した交流をしたり、目の不自由な方の話を聞いて、苦労や願い、喜びを知ったりした。

○事後指導

 これまでの学習や目の不自由な方との交流会を振り返り、自分の考えの変容に気付くとともに、今後、自分たちにできることについて考え、話し合いをする。また、視覚障害について学んだことを生かし、社会で暮らすすべての人が幸せに生活するために、これから自分が心掛けたいことについて考える。
 生徒達からは、「目が見えないと大変なことがわかった」、「目の不自由な人がいたら助けてあげたい」などの感想があり、目の不自由な方の苦労を理解し、障害を持つ人に対して思いやりの気持ちを持つことができた。

体験活動の支援体制

 本校における体験活動の推進に当たっては、苫前町が平成8年度から実施している「学社融合推進プロジェクト(注1)」が大きな役割を果たしており、この事業を通して、各学校の教育活動に地域の方々が講師として協力するシステムが確立された。それにより、学校独自では実施が困難な稲作体験や自然体験など、幅広い体験活動を実施することが可能となっている。さらに、本校においては、学校支援ボランティア(注2)の取組を実施し、体験活動の指導者を確保している。
 また、講師となった地域の方々が、学校教育について関心を深める機会となるなど、地域の方々の児童や学校への関わりにおいてもよい影響を与えている。

  • (注1)学社融合推進プロジェクト
    苫前町が実施している事業であり、開かれた学校づくりの推進と生涯学習社会の構築による町づくりといった2つのねらいを持っている。本校では町の実施要項に基づき、毎年実施事業に対する希望を申請しており、平成18年度実績で本校は、自校の教育課程の効果的な実施に向け、農業体験や陶芸教室等において、専門的な技能のある講師を招いて指導を受けるなど、全68事業中、27事業での協力を受けた。
  • (注2)学校支援ボランティア
    教育課程を推進する上で、外部講師等の協力が得られるよう、保護者や地域住民へ協力依頼をし、人材バンクを作成する本校独自の取組。平成18年度には、地域の高齢者や保護者など7名の登録があり、体験活動の指導のほか、社会科や総合的な学習の時間の調べ学習の補助、図画工作の絵画指導等を行い、教育活動をより一層効果的に展開するための支援をしている。

【全体の指導計画】

  • 3、4年は「活動内容」を参照。

体験活動の成果と課題

成果

  • 18年度に実施した「総合的な学習の時間におけるアンケート」の結果から、以前よりも体験活動に進んで取り組めるようになったという回答が多くなった。
  • 身近な教育環境を生かした体験的な学習の実施に当たって、人とふれあう活動を取り入れたり、教科の学習計画を工夫したりすることによって、児童が自ら考え、判断しようとする場を設定することができた。
  • 評価項目を活動内容に応じて詳細なものにしたり、教師・児童自身・児童相互による評価を行うなど評価方法を工夫したりすることによって、児童一人一人の学習状況を適確に把握することができ、自己を高めようとする気持ちを育てるとともに、達成感を持たせることができた。

課題

  • ねらいに迫る効果的な体験的・問題解決的な学習を展開するために、交流活動の実践的な積み重ねを継続して行う必要がある。
  • 児童の実態及び教科等の特性に応じた指導計画の作成や全体計画の見直しを行い、より一層「豊かな人間性」を育んでいく教育活動を展開していくことが大切である。

-- 登録:平成21年以前 --