5.児童生徒の発達の支援

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(3) 個に応じた指導の充実

 学習指導要領においては、児童生徒が基礎的・基本的な知識及び技能の習得も含め、学習内容を確実に身に付けることができるよう、児童生徒や学校の実態に応じ、補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れることなどにより、個に応じた指導の充実を図ることについて規定しています。 [脚注1]

 児童(生徒)が、基礎的・基本的な知識及び技能の習得も含め、学習内容を確実に身に付けることができるよう、児童(生徒)や学校の実態に応じ、個別学習やグループ別学習、繰り返し学習、学習内容の習熟の程度に応じた学習、児童(生徒)の興味・関心等に応じた課題学習、補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れることや、教師間の協力による指導体制を確保することなど、指導方法や指導体制の工夫改善により、個に応じた指導の充実を図ること。その際、第3(款)の1の(3)に示す情報手段や教材・教具の活用を図ること。

 補充的な学習を取り入れた指導を行う際には、様々な指導方法や指導体制の工夫改善を進め、学習内容の確実な定着を図ることが必要であり、発展的な学習を取り入れた指導を行う際には、児童生徒の負担が過重にならないよう配慮するとともに、学習内容の理解を一層深め、広げるという観点から適切に取り入れることが大切です。[脚注2]

 補充的・発展的な学習を行う際には、例えばICTを活用しながら、教師が学習の遅れの見られる児童生徒により重点的に指導を行ったり、学習進度の早い児童生徒には主体的に発展的な学習に取り組む機会を提供したりすることが考えられます。また、知識及び技能の習熟の過程でICTを活用したドリル学習等を組み合わせていくことも考えられますが、併せて「思考力、判断力、表現力等」や「学びに向かう力、人間性等」の育成も十分に行われるよう、計画的に指導を行うことが必要です。

 補充的な学習を取り入れた指導を行う際には、学びに向かう力を育成するため、児童生徒が自己の達成状況を自覚し、計画を立て、学習の進め方を自ら調整していくことができるよう指導していくことも重要です。

 発展的な学習としては、内容理解を深める学習を更に充実することが重要ですが、その際には個別学習のみで学習を終えることにならないように留意し、学校ならではの「協働的な学び」が取り入れられるよう教育活動を工夫する必要があります。各児童生徒が深めた学習の成果を持ち寄って共有し、児童生徒同士の学び合いを行い、またその結果を各自で深めるといった循環を作っていくことが大切です。

 また、従前から、いずれの学校においても学習指導要領において示している内容に関する事項は取り扱わなければならないとした上で、学校において特に必要がある場合は、異なる学年の内容を含めて学習指導要領に示していない内容を加えて指導することができることとされています。[脚注3]学習指導要領では各教科等の目標を実現するために必要な中核的な内容を示すにとどめています。このため、学習指導要領に示している内容は、全ての児童生徒に対して確実に指導しなければならないものですが、児童生徒の学習状況などその実態等に応じて必要がある場合には、各学校の判断により、個々の児童生徒の実態等に応じて学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能です。児童生徒の学習状況に応じ、学年や学校段階を超えて先の学年・学校の内容を学習したり、学び直しにより基礎の定着を図ったりすることも考えられます。

 高等学校においては、小・中学校での学習内容を十分に身に付けていない生徒も少なからず見られるなど、学び直しへのニーズが高い状況にあります。学び直しに関して学習指導要領には以下のとおり規定されており、このような規定も踏まえて、各学校で実態に即した積極的な対応が望まれます。[脚注4]

 生徒や学校の実態等に応じ、必要がある場合には、例えば次のような工夫を行い、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るようにすること。
  • 各教科・科目の指導に当たり、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けること。
  • 義務教育段階での学習内容の確実な定着を図りながら、必履修教科・科目の内容を十分に習得させることができるよう、その単位数を標準単位数の標準の限度を超えて増加して配当すること。
  • 義務教育段階での学習内容の確実な定着を図ることを目標とした学校設定科目等を履修させた後に、必履修教科・科目を履修させるようにすること。

 補充的・発展的な学習を取り入れた指導を行う際には、個々の児童生徒の学習進度が学級・学年集団の学習進度と大きく異なることとなる場合も考えられます。このような場合、学習評価において総括的な評価を行う際には、「目標に準拠した評価」の趣旨にのっとり、指導計画に基づき、学級・学年集団の学習進度を踏まえて学習評価を行うことが基本となりますが、補充的・発展的な学習活動における個々の児童生徒の状況を丁寧に見取り、「主体的に学習に取り組む態度」の評価で学びに向かう意思的な側面を積極的に評価することが重要です。また、内容理解を深める発展的な学習等を行った場合には、その状況に応じて「知識・技能」や「思考・判断・表現」の評価にも反映することが適当です。[脚注5]その際、指導と評価の取組を重ねる中で、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力」、「学びに向かう力、人間性等」が偏りなく育成されるよう学習改善・指導改善が進むことが期待されます。

脚注

  • [1]小学校学習指導要領(平成29年告示)第1章の第4の1の(4),中学校学習指導要領(平成29年告示)第1章の第4の1の(4),高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章第5款の1の(5)
  • [2]令和3年答申p.42,教育課程部会における審議のまとめp.15
  • [3]平成15(2003)年に学習指導要領等の一部改正が行われ、学習指導要領に明示されている基礎的・基本的な内容を指導した上で、異なる学年の内容を含めて学習指導要領に明示されていない内容を指導可能であることを明確にするとともに、個に応じた指導の充実のための指導方法の例示として、学習内容の習熟の程度に応じた指導を加えた。(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/publication/2004/0809/01.html別ウィンドウで開きます
  • [4]高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章第2款の4の(2)
  • [5]教育課程部会における審議のまとめp.18