5.児童生徒の発達の支援

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(1) 発達の段階を踏まえた指導の充実

① 小学校

 児童の資質・能力の育成に当たっては、幼児が主体的に環境と関わり、直接的・具体的な体験を通して豊かな感性を発揮したり好奇心や探究心が高まったりしていくなどの幼児期の学習を小学校以降にもつなげていくことが重要です。

 平成28年答申では小学校低学年における学力差が、その後の学力差の拡大に大きく影響しているとの課題が指摘されているとした上で、「学習の質に大きく関わる語彙量を増やすことなど基礎的な知識・技能の定着や、感性を豊かに働かせ、身近な出来事から気付きを得て考えることなど、中学年以降の学習の素地を形成していくとともに、一人一人のつまずきを早期に見いだし、指導上の配慮を行っていくことが重要となる」としています。また、同答申において中学年については「生活科の学習が終わり、社会科や理科の学習が始まるなど、具体的な活動や体験を通じて低学年で身に付けたことを、より各教科等の特質に応じた学びにつなげていく時期である」とされています。 [脚注1]

 これを踏まえ、小学校低・中学年においては、安心して学べる居場所としての学級集団の中で、基礎的・基本的な知識及び技能を反復練習もしながら確実に定着させるとともに、知識及び技能の習得や活用の喜び、充実感を味わう活動を充実することが重要です。資質・能力を確実に習得させるためには、個々の児童の状態をより丁寧に把握し、個別的な対応を行うことが重要です。 [脚注2]

 特に小学校低学年においては、まず安心して学べる居場所である学級集団を確立し、教師が提示する課題を自らの学習課題として捉え、「分からないこと・できないこと」を「分かること・できること」にする過程が学習であることや、「分からないこと・できないこと」を他者に伝えたり助けを求めたりするなど、他の児童や教師との対話が学びを深めるために存在することといった事柄を理解することが必要です。また、語彙については児童のそれまでの学習の状況を代表的に示す面があることから、その状態を把握した上で、家庭・地域との連携も図りながら、教科等横断的な視点で教育課程を編成・実施し、意味・文脈を含めた語彙の獲得など、言語能力の育成を図る必要があります。さらに、立式における計算の意味等の理解と計算方法等の習熟、数学的な見方・考え方を働かせた日常及び数学の事象の把握といった資質・能力を伸ばすことや、中学年以降に向けて教科等の基礎となる気付きを様々な体験、読書、対話から学ぶことなども重要です。

 小学校中・高学年以上の指導においては、各教科等の内容を、徐々にその中核的な概念を使って指導することにより、見方・考え方が鍛えられていくことを踏まえることが重要です。また、体験活動と教科の内容との関連付けを自覚的に行えるように指導することが重要です。

 平成28年答申においても、小学校高学年においては「子供たちの抽象的な思考力が高まる時期であり、教科等の学習内容の理解をより深め、育成を目指す資質・能力の育成に確実につなげるためには、指導の専門性の強化が課題となっている」とした上で、「専科指導の充実は、子供たちの個性に応じた得意分野を伸ばしていくためにも重要である」としています。また、様々な生徒指導上の課題が早期化し、中学校からではなく、小学校高学年からの対応が必要となっているとの指摘もあります。こうした課題に対応するためには、学級担任だけではなく、複数の教員が関わり育てていくことが重要になっており、学級担任のよさと、教科担任のよさを兼ね備えた指導体制の確立が重要です。

脚注

  • [1]平成28年答申p.84
  • [2]令和3年答申p.40,教育課程部会における審議のまとめp.10