4.教育課程の実施と学習評価

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(1) 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

③ 学びに向かう力、人間性等を育成する教育の充実

 資質・能力の三つの柱のうち、「学びに向かう力、人間性等」は児童生徒が「どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか」に関わる資質・能力であり、他の二つの柱をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素です。具体的には主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する力、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等があり、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する、いわゆる「メタ認知」に関わる力を含むものです。また、多様性を尊重する態度や互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなどの人間性等に関するものも幅広く含まれます。

 「学びに向かう力、人間性等」の育成に当たっては、他の二つの柱以上に、児童生徒や学校、地域の実態を踏まえて指導のねらいを設定していくことが重要です。学習指導要領の総則では「児童(生徒)の発達の支援」の項目において、児童生徒一人一人が興味や関心などが異なることを前提に、児童生徒が自分の特徴に気付き、よい所を伸ばし、自己肯定感をもちながら日々の学校生活を送ることができるようにすること、また全ての児童生徒が学校や学級において豊かな人間関係の中で有意義な生活を築くことができるようにすることの重要性を示しています。 [脚注1]

 また、学習指導要領においては、児童生徒が自主的に学ぶ態度を育み、学習意欲の向上に資する観点から、以下のとおり見通しを立てたり、振り返ったりする学習活動について示しています。[脚注2]

 児童(生徒)が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を、計画的に取り入れるように工夫すること。

 「学びに向かう力、人間性等」の育成は幼児期から成人までかけて徐々に進んでいくものですが、初期の試行錯誤段階を経て、様々な学びの進め方や思考ツールなどを知り、経験していくことが重要です。とりわけ小学校中学年以降、学習の目標や教材について理解し、計画を立て、見通しをもって学習し、その過程や達成状況を評価して次につなげるなど、学習の進め方を自ら調整していくことができるよう、発達の段階に配慮しながら指導することが大切です。また、中学校以降において、多様な学習の進め方を実践できる環境を整えることも重要です。[脚注3]

 ICTを活用し、学習履歴(スタディ・ログ)を分析したり、分かりやすく表示したりすることで、児童生徒が自らの学習を振り返ったり、計画を立てたりすることが容易になります。また、学校での学習と家庭での学習を円滑に接続することにもつながります。

 授業改善に当たっても、このようなデータも活用しながら、学習の進め方(学習計画、学習方法、自己評価等)を自ら調整していくことができるよう指導することを一つの柱として行うことが考えられます。また、学校の授業以外の場における学習の習慣や進め方についても視野に入れ、指導を行うことが重要です。 

脚注

  • [1]小学校学習指導要領(平成29年告示)第1章の第4の1の(1),中学校学習指導要領(平成29年告示)第1章の第4の1の(1),高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章第5款の1の(1)
  • [2]小学校学習指導要領(平成29年告示)第1章の第3の1の(4),中学校学習指導要領(平成29年告示)第1章の第3の1の(4),高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章第3款の1の(4)
  • [3]令和3年答申p.41,教育課程部会における審議のまとめp.12