2.育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び

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(2) 学校教育の情報化

 人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)、ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられたSociety 5.0時代が到来しつつあります。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、例えばテレワーク、遠隔診療のように、世の中全体のデジタル化、オンライン化を大きく促進しています。

 学校教育の情報化に関しては、令和元(2019)年6月に学校教育の情報化の推進に関する法律が公布・施行されました。また、令和元年度からGIGAスクール構想により、新たな学校の「スタンダード」として、小学校段階から高等学校段階において学校における高速大容量のネットワーク環境の整備を推進するとともに、令和3(2021)年度からはほとんどの義務教育段階の学校において児童生徒1人1台端末環境での学習が開始されることとなります。

 我が国の学校教育におけるICTの活用は国際的に大きく後れをとってきましたが、今後はICTをツールとして効果的に活用し、教育の質の向上につなげていくことが必要です。

 平成28(2016)年に取りまとめられた「『2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会』最終まとめ」では、ICT環境整備を進めるに当たって、学習指導要領の趣旨が十分に生かされるようにすることが最も重要であるとしています。また、習得・活用・探究という学習過程の中でICTの効果的な活用の方法を模索していくことが望まれるとされるとともに、家庭における学習との効果的な連携の視点を持つことの重要性などが指摘されています。その上で、ICT活用の特性・強みは以下の3点に整理されています。 [脚注1]

① 多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめ、表現することなどができ、カスタマイズが容易であること(観察・実験で得たデータなどを入力し、図やグラフ等を作成するなどを繰り返し行い試行錯誤すること)

② 時間や空間を問わずに、音声・画像・データ等を蓄積・送受信でき、時間的・空間的制約を超えること(距離や時間を問わずに児童生徒の思考の過程や結果を可視化する)

③ 距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができるという、双方向性を有すること(教室やグループでの大勢の考えを距離を問わずに瞬時に共有すること)

 具体的には、①については文書の編集、プレゼンテーション、調べ学習、ドリル学習、試行の繰り返し、情報共有が、②については思考の可視化、学習過程の記録が、③については瞬時の情報共有、遠隔授業、メール送受信等が可能となります。

 このように、ICTの活用は知識及び技能の習得のみならず、児童生徒の思考、判断、表現や、学習状況の他の児童生徒との共有、学びの振り返りを行う際の有効な手段にもなります。

 また、情報活用能力のような従来はなかなか伸ばせなかった資質・能力の育成や、例えば知識の習得に関して、その特性等により今までの学習方法では困難さが見られた児童生徒の一部への効果の発揮、他の学校・地域や海外との交流など今までできなかった学習活動の実施、家庭など学校外での学びの充実などにもICTの活用は有効です。

 さらに、現代社会において、日常生活における営みをICTを通じて行うことが当たり前となっている中では、児童生徒にはICTを受け身で捉えるのではなく、手段として積極的に活用していくことが求められます。学習の場でもあり生活の場でもある学校において、社会で広くなされているように、端末を日常的に活用することでICTの活用が特別なことではなく当たり前のこととなるようにすることは「社会に開かれた教育課程」を実現する上でも極めて重要です。児童生徒自身がICTを「文房具」として自由な発想で活用できるよう環境を整え、授業をデザインすることが求められます。

 なお、ICTの活用に当たっては、ICTを活用すること自体が目的化してしまわないよう留意し、教育効果を考えながら有効に活用することが重要です。同時に、ICTの学校教育への影響の全てを現時点で予測することは困難であり、児童生徒がICTを日常的に活用することにより、予想しなかったような形で児童生徒の可能性が引き出されることも考えられます。各学校においてICTの新たな可能性に着目し、教職員の協働による創意工夫を通してその活用を図っていくこと、学校管理職がそうした教職員の協働をリードすることが重要であり、設置者においてはその支援を図ることが求められます。

脚注

  • [1]「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」最終まとめp.13

関係資料等