3 分析結果からみる改善の方向

(1)調査結果の分析

 全体の状況を,「正答率」と「無答率」とから分析した結果を示す。

ア 正答率からみた結果

(ア)全体の比較

(a)経年比較
2000年に比べて上昇 5ポイント以上上昇した問題数 3 8
0から5ポイント未満の上昇であった問題数 5
2000年に比べて低下 0から5ポイント未満の低下であった問題数 10 20
5ポイント以上低下した問題数 10
(参考)2000年調査から5ポイント以上低下した問題
自由記述 解釈 連続 薬物を与えられた蜘蛛 問3 -5.5
解釈 連続 薬物を与えられた蜘蛛 問4 -6.5
解釈 連続 ワイシャツ 問1 -8.0
熟考・評価 連続 メガネ技師 問3 -5.7
選択肢 解釈 連続 南極点 問4 -6.0
解釈 連続 メガネ技師 問1 -8.6
情報の取り出し 連続 メガネ技師 問2 -5.1
短答 解釈 非連続 求職 問2 -14.6
情報の取り出し 非連続 電話 問3 -6.2
求答 情報の取り出し 非連続 電話 問2 -11.5

 ※ 低下した問題が20問に対して,上昇した問題は8問である。
 5ポイント以上低下した問題をみてみると,「連続」テキストや「選択肢形式」なども含めて全般にわたって低下しているが,特に読解プロセスにおいてはテキストの「解釈」が比較的多いと言える。

(b)OECD平均との比較
OECDに比べて高い 5ポイント以上高い問題数 11(7) 15
0から5ポイント未満高い問題数 4(3)
OECDに比べて低い 0から5ポイント未満低い問題数 7(5) 13
5ポイント以上低い問題数 6(5)

 ( )(かっこ)内は2000年に比べて正答率が低下しているもの

(参考)0ECD平均より5ポイント以上低い問題
自由記述 熟考・評価 連続 イソップ物語 問2 -5.5
解釈 連続 薬物を与えられた蜘蛛 問3 -6.6
解釈 連続 薬物を与えられた蜘蛛 問4 -18.3※
選択肢 解釈 連続 イソップ物語 問1 -5.6
解釈 連続 ワイシャツ 問3 -6.3※
解釈 連続 南極点 問5 -14.3※

 ※ 2000年でも5ポイント以上低い問題

(参考)2000年時でのOECD平均との比較(2003年調査問題として出題されたもののみ)
OECDに比べて高い 5ポイント以上高い問題数 12 16
0から5ポイント未満高い問題数 4
OECDに比べて低い 0から5ポイント未満低い問題数 9 12
5ポイント以上低い問題数 3

 ※ OECD平均より5ポイント以上高い問題は11問あり,5ポイント以上低い問題は6問である。
 OECD平均より5ポイント以上低い問題は,2000年では3問であったのに対して,2003年では6問となっている。
 5ポイント以上低い問題の読解プロセスは「解釈」「熟考・評価」のみである。

(イ)読解プロセスによる比較

(a)経年比較
読解プロセス 問題数 平均値 経年比較 正答率が上昇した問題数 正答率が低下した問題数
情報の取り出し 7 60.8 -3.4 2 5
解釈 15 66.1 -3.3 4 11
熟考・評価 7 57.8 -0.3 3 4

 ※ 「解釈・情報の取り出し」の問題が1問あり,「情報の取り出し」,「解釈」の双方に含めている。

情報の取り出し
形式 問題数 平均値 経年比較 正答率が低下した問題数
  選択肢 連続 1 66.4 -5.1 1(1)
求答 非連続 3 68.0 -3.3 2(1)
  短答 非連続 3 51.7 -2.9 2(1)

 ※ このうちの1問は「解釈・情報の取り出し」の問題である。
 ( )(かっこ)内は5ポイント以上低下した問題数

 (2000年の問題例)

  • 選択肢・連続:インフルエンザ 問1,警察 問1,贈り物 問4
  • 短答・非連続:なし
  • 求答・非連続:労働力 問2,ランニングシューズ 問2,問3
  • アマンダと公爵夫人 問4,人事部 問1
解釈
形式 問題数 平均値 経年比較 正答率が低下した問題数
  選択肢 非連続 1 60.1 -3.0 1
求答 非連続 2 61.0 4.4 0
  短答 非連続 1 69.3 -14.6 1(1)
  自由記述 連続 3 53.4 -6.7 3(3)
  選択肢 連続 8 72.5 -2.6 6(2)

 ※ このうちの1問は「解釈・情報の取り出し」の問題である。
 ( )(かっこ)内は5ポイント以上低下した問題数

 (2000年の問題例)

  • 選択肢・非連続:チャド湖 問4,問5,労働力 問1,問3,
  • 短答・非連続:なし
  • 求答・非連続:アマンダと公爵夫人 問3
  • 選択肢・連続:インフルエンザ 問3,問5,落書き 問1,警察 問2~4,ランニングシューズ 問1,贈り物 問2,問6,アマンダと公爵夫人 問1,問5
  • 自由記述・連続:落書き 問2,贈り物 問3,問5,新ルール 問2
熟考・評価
形式 問題数 平均値 経年比較 正答率が低下した問題数
自由記述 非連続 1 82.3 0.7 0
自由記述 連続 6 53.7 -0.5 4(1)

 ( )(かっこ)内は5ポイント以上低下した問題数

 (2000年の問題例)

  • 自由記述・非連続:チャド湖 問3,プランインターナショナル 問2
  • 自由記述・連続:インフルエンザ 問2,問4,落書き 問3,問4,贈り物 問1,問7

 ※ すべての読解プロセスで低下がみられる。
 「解釈」の「自由記述形式」では,すべて5ポイント以上低下している。

(b)OECD平均との比較
  問題数 正答率がOECD平均より高い問題数 正答率がOECD平均より低い問題数
情報の取り出し 7 6(5) 1
解釈 15 6(5) 9(5)
熟考・評価 7 4(2) 3(1)

 ※ 「解釈・情報の取り出し」の問題が1問あり,「情報の取り出し」,「解釈」の双方に含めている。
 ( )(かっこ)内は5ポイント以上の差がある問題数

 ※ 「情報の取り出し」に比べ,「解釈」「熟考・評価」でOECD平均より低いものが多い。

(ウ)出題形式による比較

(a) 経年比較
  問題数 平均値 経年比較 正答率が上昇した問題数 正答率が低下した問題数 正答率上位10位までの問題数 正答率下位10位までの問題数
自由記述形式 10 56.5 -2.2 3(2) 7(4) 1 5
選択肢形式 多肢 9 71.1 -2.6 2 7(2) 6 1
複合的 1 66.4 -5.1 0 1(1) 0 0
求答形式 4 61.8 -1.8 2(1) 2(1) 2 2
短答形式 4 56.1 -5.8 1 3(2) 1 2

 ( )(かっこ)内は5ポイント以上上昇又は低下した問題数

 ※ すべての形式で低下がみられる。なかでも「短答形式」の平均値が大きく低下している。
 正答率が5ポイント以上上昇した問題が3問であるのに対して,5ポイント以上低下した問題は10問ある。

(b)OECD平均との比較
  問題数 正答率がOECD平均より高い問題数 正答率がOECD平均より低い問題数
自由記述形式 10 5(3) 5(3)
選択肢形式 多肢 9 3(2) 6(3)
複合的 1 1(1) 0
求答形式 4 3(2) 1
短答形式 4 3(3) 1

 ( )(かっこ)内は5ポイント以上の差がある問題数

 ※ 5ポイント以上の差がある問題をみると,「自由記述形式」と「選択肢形式」でOECDの平均より高いものと,低いものとが交錯している。

(エ)テキスト形式による比較

(a)経年比較
  問題数 平均値 経年比較 正答率が上昇した問題数 正答率が低下した問題数
連続 18 62.7 -2.7 4 14
非連続 10 61.4 -3.3 4 6
連続
タイプ 問題数 平均値 経年比較 正答率が低下した問題数
物語 3 66.6 0.8 2
記述 3 64.6 -6.5 3(3)
解説 12 61.3 -2.7 9(4)

 ( )(かっこ)内は5ポイント以上低下した問題数

 (2000年の問題例)

  • 物語:贈り物,アマンダと公爵夫人
  • 記述:人事部
  • 解説:警察,ランニングシューズ,新ルール

非連続
タイプ 問題数 平均値 経年比較 正答率が低下した問題数
書式 3 76.8 -2.7 1(1)
図・グラフ 2 69.2 -3.2 2
地図 1 53.8 1.0 0
4 47.9 -4.8 3(2)

 ( )(かっこ)内は5ポイント以上低下した問題数

 (2000年の問題例)

  • 図:チャド湖
  • 表:プランインターナショナル,アマンダと公爵夫人(問3)
  • 図式:労働力

 ※ 平均値の低下幅は非連続テキストの方が大きいが,低下した問題数の割合は連続テキストの方が高い。

(b)OECD平均との比較
  問題数 正答率がOECD平均より高い問題数 正答率がOECD平均より低い問題数
連続 18 8(6) 10(6)
非連続 10 7(5) 3
連続テキストの内訳 問題数 正答率がOECD平均より高い問題数 正答率がOECD平均より低い問題数
物語 3 0 3(2)
記述 3 3(2) 0
解説 12 5(4) 7(4)

 ( )(かっこ)内は5ポイント以上の差がある問題数

 ※ 連続テキストの方が,OECD平均より低い問題数の割合が高い。特に「物語」はすべての問題で低い。

イ 無答率からみた結果

(ア)全体の状況

無答率 0%以上5%未満 5%以上10%未満 10%以上15%未満 15%以上20%未満 20%以上25%未満 25%以上
問題数 9(12) 5(3) 5(5) 3(3) 2(1) 4(4)
出題形式 自由記述     2(3) 3(2) 1(1) 4(4)
選択肢 9(10) 1        
求答 0(2) 3 1(2)      
短答   1(3) 2 (1) 1  
テキストの形式 連続 9(9)   1(2) 3(2) 1(1) 4(4)
非連続 (3) 5(3) 4(3) (1) 1  
読解のプロセス 情報の取り出し 1(3) 4※(2) 1(1※) (1) 1  
解釈 8(9) 2※(1) 2(3※) 2(1) (1) 1
熟考・評価     2(2) 1(1) 1 3(4)

 ( )(かっこ)内は,2000年における同一問題の数値。
 こめじるしには,「解釈・情報の取り出し」の問題を各1問ずつ含む。

 ※ 15%以上の無答があるものは,28問中9問である。
 「自由記述形式」で無答率の高いこめじるし問題が多い。(9問中8問。)
 「熟考・評価」の問題で無答率の高いこめじるし問題が多い。(15%以上の9問中5問。「熟考・評価」の全7問中5問。)

 ※ 平成14年度高等学校教育課程実施状況調査「国語1」では,15%以上を無答率が高いとしている。そこで,ここでも,無答率が15%以上の問いを,無答率が高い問いとする。

(イ)経年比較

  無答率が減少した問題数 無答率が増加した問題数
5ポイント以上 0~5ポイント未満 0~5ポイント未満 5ポイント以上
問題数 2 5 15 6
出題形式 自由記述 1 3 2 4
選択肢   2 8  
求答 1   3  
短答     2 2
テキストの形式 連続 1 5 8 4
非連続 1   7 2
読解のプロセス 情報の取り出し 1※   5 1
解釈 1※ 2 9 3
熟考・評価 1 3 1 2

 ※には,「解釈・情報の取り出し」の問題を各1問ずつ含む。

 ※ 2000年に比べて,28問中21問で無答率が増えている。(全問平均の増加率は1.4ポイント。11.3%から12.7%)
 すべての形式,プロセスで無答率が増えている。
 出題形式では,「自由記述形式」で5ポイント以上増えたものが多い。
 テキスト形式では「非連続形式」で増加した問題の割合が高い。
 読解のプロセスでは「解釈」「熟考・評価」で5ポイント以上増えたものが多い。

(ウ)OECD平均との比較

  OECD平均に比べて無答率が低い問題数 OECD平均に比べて無答率が高い問題数
5ポイント以上 0~5ポイント未満 0~5ポイント未満 5ポイント以上
2003年(平均で2.5ポイント高い) 1 14 5 8
2000年(平均で2.6ポイント高い) 2 11 8 7
出題形式 自由記述 1(1) 1 2(3) 6(6)
選択肢   10(8) (2)  
求答   1(2) 2(1) 1(1)
短答 (1) 2(1) 1(2) 1
テキストの形式 連続 1(1) 10(7) 1(4) 6(6)
非連続 (1) 4(4) 4(4) 2(1)
読解のプロセス 情報の取り出し (1) 3※(3※) 3(3) 1
解釈 1(1) 11※(9※) (2) 3(3)
熟考・評価   1 2(3) 4(4)

 ( )(かっこ)内は,2000年における数値。
 ※には,「解釈・情報の取り出し」の問題を各1問ずつ含む。

 ※ OECD平均に比べて,日本は無答率が高い。特に,出題形式では「自由記述形式」で,5ポイント以上高い問題が10問中6問と際立って高い。また,読解プロセスは「熟考・評価」の問題で高い。
 2000年と2003年とでは,その差にほとんど変化はない。

(2)主な問題例(2000年の問題から。( )(かっこ)内は正答率と無答率。)

 正答率及び無答率の分析から,読解のプロセスとしては「解釈」「熟考・評価」,出題形式としては「自由記述形式」に課題があると言える。
 そこで,2003年調査の問題は公開されていないので,2000年調査において公開された問題から,これらに該当する問題を中心にその内容を検討した結果,次のような内容の問題に課題があるのではないかと思われる。

  • ア テキストの表現の仕方に着目する問題
  • イ テキストを評価しながら読むことを必要とする問題
  • ウ テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題
  • エ テキストから読み取ったことを再構成する問題
  • オ 科学的な文章を読んだり,図やグラフをみて答える問題

ア テキストの表現の仕方に着目する問題

 ( )(かっこ)内は正答率と無答率

インフルエンザ 問4(41.3%,22.9%) 「熟考・評価」「自由記述」
 町田さんは,通知を配った後で同僚の一人から,「ウイルスの予防をしたい人ならだれでも」という語句は誤解を招くから,省いた方がよかったと助言されました。あなたも,この語句は誤解を招くから,省いたほうがよかったと思いますか。具体的な理由を示して意見を述べてください。

贈り物 問1(65.3%,16.7%) 「熟考・評価」「自由記述」
 以下は,「贈り物」を読んだ二人の会話の一部(省略)です。この二人が自分の意見を証明するには,それぞれどう言えばよいでしょうか。この物語からそれぞれの証拠をさがして,次に示してください。

贈り物 問3(42.7%,29.6%) 「解釈」「自由記述」
 以下は,物語の中でヒョウについて書いてあるうちの,前半の一部です。(中略)物語の後半で起こったことを考えると,著者はヒョウを登場させるにあたって,なぜこういう書き方をしたのでしょうか。あなたの考えを述べてください。

贈り物 問7(34.2%,40.7%) 「熟考・評価」「自由記述」
 「贈り物」の最後の文が,このような文で終わるのは適切だと思いますか。最後の文が物語の内容とどのように関連しているかを示して,あなたの答えを説明してください。

アマンダと公爵夫人 問2(62.5%,22.1%) 「熟考・評価」「求答」
 この台本の中には,俳優のセリフのほかに,俳優や舞台技術者への指示(ト書き)が書いてあります。台本の中のト書きは,どのように見分けることができますか。

イ テキストを評価しながら読むことを必要とする問題

( )(かっこ)内は正答率と無答率

インフルエンザ 問2(44.1%,41.9%) 「熟考・評価」「自由記述」
 この通知の内容(何を述べているか)について考えてみましょう。そのスタイル(内容を伝える方法)について考えてみましょう。町田さんは,この通知を親しみをこめて誘いかけるスタイルにしたいと考えました。うまくできていると思いますか。通知のレイアウト,文体,イラストなどについて詳しく述べながら,そう考えた理由を説明してください。

落書き 問3(71.1%,15.2%) 「熟考・評価」「自由記述」
 あなたは,この2通の手紙のどちらに賛成しますか。片方あるいは両方の手紙の内容にふれながら,自分なりの言葉を使ってあなたの答えを説明してください。

落書き 問4(54.7%,27.1%) 「熟考・評価」「自由記述」
 手紙に何が書かれているか,内容について考えてみましょう。手紙がどのような書き方で書かれているか,スタイルについて考えてみましょう。どちらの手紙に賛成するかは別として,あなたの意見では,どちらの手紙がよい手紙だと思いますか。片方あるいは両方の手紙の書き方にふれながら,あなたの答えを説明してください。

ウ テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題

( )(かっこ)内は正答率と無答率

チャド湖 問3(48.8%,24.7%) 「熟考・評価」「自由記述」
 筆者はこのグラフの始まる年として,どうしてこの年を選んだのですか。

落書き 問2(42.2%,28.8%) 「解釈」「自由記述」
 ソフィアが広告を引き合いに出している理由は何ですか。

プラン・インターナショナル 問2(10.9%,39.8%) 「熟考・評価」「自由記述」
 1996年の時点で,エチオピアは世界で最も貧しい国の一つです。この地域の他の国々での活動と比べ,プラン・インターナショナルのエチオピアの活動がなぜこの水準なのか,表に示された活動内容や実績をもとに考えられる理由を記してください。

エ テキストから読み取ったことを再構成する問題

( )(かっこ)内は正答率と無答率

アマンダと公爵夫人 問3(63.9%,17.3%) 「解釈」「求答」
 次の表は,「レオカディア」のこの場面の上演にかかわる舞台技術者の一覧表です。課題文1の舞台で,それぞれの技術者が実行しなければならない指示を一つずつ書き出して,この表を完成させてください。

アマンダと公爵夫人 問4(57.5%,19.8%) 「情報の取り出し」「求答」
 舞台上に俳優を配置するのは,演出家です。演出家は図の中で,アマンダを文字A,公爵夫人を文字Dと表しています。以下の舞台図にAおよびDを記入して,王子が到着したときアマンダと公爵夫人がそれぞれどこに立っているのか,およその位置を示してください。

オ 科学的な文章を読んだり,図やグラフをみて答える問題

( )(かっこ)内は正答率と無答率

新ルール 問2(24.4%,47.7%) 「解釈」「自由記述」
 この冷凍受精卵の着床の例にあるように,新しい技術によって,どのようにして新しいルールが必要となったかを説明している実例を,この社説の中から二つあげてください。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --