川崎市検証改善委員会
川崎市では、学校の教育力を高め、確かな学力を育成するために、自ら学ぶ意欲や自ら考える態度を育成し、思考力・判断力・表現力等を向上させる学習指導の充実を図っている。また、川崎市学習状況調査を実施し、子どもたちの学習状況を正しく把握することにより、指導方法や教育課程の検証・改善に努め、わかる授業や個に応じた指導の充実を図っている。
小・中学校の教育研究会では、「子ども同士の学び合い」や「個に応じたきめ細かい指導」が大切にされ、指導法や指導内容等の研究を積み重ねてきた。また、各学校ではそのことを受けて、学力向上をめざした校内研究に熱心に取り組んでいる。
川崎市検証改善委員会では、全国学力・学習状況調査を通して、本市の子どもたちの学力とその現状を分析し、課題を把握するとともに、国語科、算数・数学科における授業改善プランを作成した。
川崎市検証改善委員会は、東京工業大学教授赤堀侃司氏を委員長とし、臨床教育研究所長、日本女子大学講師等の学識経験者2名、市教育委員会指導課長、市総合教育センター室長、主幹、指導主事の行政関係7名(事務局担当5名含む)、小・中学校校長会、小・中学校教育研究会会長等の学校関係者6名、経理担当1名の計17名から構成される委員会である。
川崎市検証改善委員会の事業は以下の通りである。
全員が参加する検証改善委員会は以下の日程で開催した。
この日程以外にも、国語、算数・数学の教科作業部会、児童生徒質問紙調査作業部会、学校質問紙調査作業部会及び事務局会を随時開催し、結果の分析作業と報告書作成のための編集作業に当たった。
学校改善支援プランはこれらの分析結果をもとに中央教育審議会答申も踏まえて作成した。内容は、「国語科や算数・数学科における授業改善」「児童生徒質問紙調査から指導改善を考える」「学校質問紙調査から授業改善を考える」「教育委員会に望むこと」の4点から、学校改善のための手立てを示し報告書にまとめた。
川崎市検証改善委員会による報告書は学校の教職員を対象に、以下の認識を深める目的で発刊した。
学校改善に当たっては、以上のことを教師一人一人が認識するところから始めることが重要である。
川崎市検証改善委員会報告書(A4版 64頁)
報告書の内容については、自校において授業改善プランを構築する際に活用できることを念頭において、以下のような構成でまとめた。
調査問題A,Bから明らかになった全市の子どもたちの学力は以下の通りである。
単独の領域の習得に関わる問題を見た場合は概ね良好な結果と考えられる。一方、読むことと書くこととを結び付けるなどの2つの領域をつなげるような問題に関しては課題が見られる。また、条件に応じて表現を行うことや資料を生かして表現することなどについても課題が見られる。伝え合う力の育成からすると、話すことにおいて声の大きさなどは意識しているが、聞き手の表情を確かめることについては課題があり、相手意識の明確化が一層求められる。
基礎的基本的な内容の問題は概ね良好な結果である。生活場面における敬語の基本的な知識については、相当数の生徒が理解している。スピーチなどで内容を適切に相手に伝えるために大切なことについては、相当数の生徒が理解している。一方、手紙の形式の理解や漢字の書きの一部には課題がある。古典にはよく親しんでいる。図や表などの非連続テキストの活用や読むことと書くことなどの2つの領域に関連した問題については課題が見られる。
数と計算では、四則計算は概ね良好である。一方、小数の除法や式が表している正しい事がらを選ぶことに課題が見られる。量と測定では、量感を豊かにする具体物を通した学習が不足している。図形では、基本的な図形の性質は理解している。数量関係では、割合についての意味理解や、根拠を示して理由を表現することに課題が見られる。
数と式では、正・負の基本的な計算は概ね良好である。一方、物事を数値や文字式を用いて数学的に表現することや説明することに課題が見られる。図形では、平面図形の基本的な性質については概ね良好であるが、証明など記述された内容を評価していくことや円錐の体積についての理解に課題が見られる。数量関係では、反比例についての理解に課題が見られる。
児童生徒質問紙調査から明らかになった子どもたちの状況は次の通りである。
規則正しい生活を送っている児童や、物事を最後までやり遂げた喜びを感じている児童は相当数を占める。学習塾に通っている児童は半数以上いる。携帯電話でメールをしている児童は4割近くに達する。あいさつや思いやりの大切さは理解していても実際には行動できない傾向も見られる。
朝食を毎日食べている生徒は9割だが、約4割の生徒は規則正しい睡眠習慣が定着していない。将来の夢や目標を持ち、物事の達成感を味わった経験のある生徒は相当数いるが、1割以上の生徒は自分にはよいところがないと思っている。家の人と学校の話をする生徒は約5割である。
小・中学校における学校質問紙調査から明らかとなったことは次の通りである。
近隣の博物館や科学館、図書館などを利用した授業や外部講師や地域のボランティアを招聘した授業も多い傾向にあり、地域を有効に活用した教育が実践されていることがわかる。また朝の読書を実施している割合も高い。学校だよりの定期的な発行や、学校教育推進会議(学校評議委員)の設置など、保護者、地域住民との協働、情報の公表を図っている。
国語において書く習慣、読む習慣を付ける授業が多く行われている。図書館を活用した授業を行っている割合は高いが、朝の読書はあまり多くはない。職場体験活動が多く行われ、地域の人々が学校に参加する傾向は高く、近隣の学校へのサポート体制が充実している傾向にある。
教科に関する指導のポイントを明確にし、授業改善のための構想を提示する。
規則正しい生活リズムに関しては、学校と家庭とで共通理解を図った上で連携し、計画的に指導することが大切である。自尊感情の向上については、子どものよさの小さな表れを見逃さず、褒め、認め、励ますことを積み重ねていくことが大切である。
学校の核は授業であり教師の仕事の中心であることや、授業改善に取り組む必要性について認識を深めることが大切である。教師の専門性の向上のためには、授業研究を伴う校内研修を活性化させることが重要である。
学校改善支援プランを受けて、川崎市では以下のような取組を計画している。
全国学力・学習状況調査の結果と川崎市の現状を照らし合わせ、本調査結果を通して把握した子どもたちの学力や学習状況についての特徴を明確にするため、検証作業に多くの時間を費やした。その作業の中で、本市の様々な取組のよさに改めて気づくことができ、本調査の意義を確認することができた。全国悉皆で実施されたこの調査は大きな話題となったが、各学校がこの結果を受けて、授業改善のためのPDCAサイクルに組み込むことで、子どもたちの学力向上に役立つものと考える。
-- 登録:平成21年以前 --