愛媛県検証改善委員会
愛媛県では、「確かな学力」の定着と向上を目指し、平成16年度から確かな学力定着向上調査研究事業に取り組んできた。
平成17、18年度には、平成16年度に小学5年生及び中学2年生を対象に実施した県の学習状況調査の結果を踏まえ、県内の全市町に研究指定校を1校ずつ設置し、確かな学力の定着向上に向けた調査研究に取り組んだ。具体的には、全市町に地区協議会を設置し、指定校を核とした地区ぐるみで実践研究をするとともに、指定校の取組を県教育委員会のホームページで公開したり、指導改善資料を作成・配付したりして、県内の小中学校にその成果を普及できるよう努めた。
平成19年度には、2年間の取組の成果を検証するため、再度、学習状況調査を実施した。16年度調査に比べると、全教科ともある程度の学力の向上が見られたが、家庭学習の時間や読書時間が短く、自主的な学習態度にやや欠けること、すべての教科の基盤となる「読む能力」については全国を下回っていることなどが課題として明らかになった。
平成19年度は、確かな学力の定着と向上に向け、各学校で指導と評価の一体化を図り、指導改善に一層取り組むことができるよう、授業評価システム構築のためのガイドラインを作成し、県内の小中学校に配付したところである。
愛媛県検証改善委員会は、愛媛大学教育学部教授である山口充を代表者として、愛媛大学教育学部教授等の学識経験者4名、企業関係者1名、PTA関係者1名、愛媛県教育会等の教育団体関係者5名、県内の小中学校の教諭8名(国語4名、算数・数学4名)、愛媛県教育委員会の指導主事を中心とした教育行政関係者6名、計26名の検証改善委員から構成される委員会である。
本委員会には、国の各種答申及び県の学習状況調査結果等を基に「確かな学力定着向上のための提言(以下「学校改善支援プラン」と言う。)」の試案を作成する「確かな学力定着向上部会」と、平成19年度全国学力・学習状況調査の結果を分析・考察を行う「学力分析・考察部会」の2部会を設けた。
9月に検証改善委員会の第1回会合を行い、3月までに計5回の委員会を開催し、学校改善支援プランを含む報告書を作成した。
検証改善委員会では、本県の全国学力・学習状況調査の結果について、知識・技能を活用する力、読む能力、基本的な学習習慣や生活習慣に小中学校とも、課題が見られた。また、県の学習状況調査結果の活用状況調査では、学習状況調査が指導改善に十分活用されていないこと、研究授業の実施がやや少ないことなどがわかった。
これらを受けて、愛媛県検証改善委員会としては、次の5点を中心に学校改善支援プランをまとめた。
前項の概要でも言及したが、本県の全国学力・学習状況調査の結果について、検証改善委員会で分析を行ったところ、次の点が明らかになった。
教科に関する分析では、本県において全体として知識・技能を活用する力について小中ともに課題が共通して見られた。また、県の平均正答率を全国と観点別に比較してみると、算数の「数学的な見方」と数学の「数学的な見方や考え方」は、調査のあった三つの観点の中で平均正答率が最も低く、特に数学の「数学的な見方や考え方」は平均正答率が60パーセントを下回っており、課題が見られた。
個別の教科について具体的に見ると、次のような特徴と課題が見られた。
県の平均正答率を全国と観点別に比較してみると、「話す・聞く能力」「言語についての知識・理解・技能」は全国を上回っているものの、「読む能力」は10問中7問が全国を下回っており、課題が見られる。
県の平均正答率を全国と観点別に比較してみると、「数量や図形についての表現処理」「数学的な考え方」は全国を上回っている。しかし、問題形式別にみると、方法や理由を説明するために用いる記述式の平均正答率が低く、筋道を立てて考え、自分の考えを数学的に表現することに課題がある。
県の平均正答率を全国と観点別に比較してみると、すべての観点で全国をわずかではあるが上回っているものの、文章を読み取り、文章中から根拠を挙げて自分の意見をまとめ、さらに書いて表現する力や、複数の資料を読み比べ、それぞれの資料に表れている表現の仕方の特徴や書き手のものの見方や考え方を整理する力に課題が見られる。
県の平均正答率を全国と観点別に比較してみると、すべての観点で全国を上回っているものの、記述式の問題の無解答率が全体的に高く、問題解決の方策を説明したり、数学的に解釈したりする問題に課題がある。
各市町の状況については、平均正答率から見ると、ほとんどの市町が全国の平均正答率の5パーセントの範囲内にあり、ばらつきが小さかった。しかし、中学校調査の数学B(活用)は全国の平均正答率を上回る市町が16市町あるが、市町の差が約14ポイントあり、他の教科に比べて最も差が大きかった。
各学校の状況については、平均正答率から見ると、全体として大きなばらつきは見られなかったが、小中学校ともA(知識)に比べ、B(活用)の方がばらつきが大きかった。また、学校規模において小中学校ともほとんど差が見られなかった。
3で述べた分析結果を受け、知識・技能を活用する力を育てる、読書活動を充実させるとともに、読む能力を育てる、個に応じた指導の充実を図る、校内研修を充実させ、教師の指導力の向上を図る、基本的な学習習慣及び生活習慣を確立することについて、学校改善支援プランとしてまとめ、行動計画と併せ、学校及び教育委員会に対し提言を行った。
教育委員会に対する提言の概要は、次のとおりである。
学校改善支援プランの作成までに、検証改善委員会で出た意見で特に必要なものについては積極的にその意見を取り入れ、学校での指導改善に生かせるようにした。
まず、「指導改善で大切なことは、各学校での詳細な分析と考察である」という意見を参考に、操作が簡単で、分析の視点を明らかにした「分析シート」を愛媛県教育委員会で作成し、各学校に配付するとともに、「分析シート」の電子データを教育委員会のホームページからもダウンロードして活用できるようにした。
また、「基本的な学習習慣及び生活習慣の確立のためには、保護者や地域への啓発が大切である」という意見を参考に、愛媛県教育委員会で保護者向けのちらしを作成し、これについても各学校がPTA総会や懇談会等で活用できるように、教育委員会で作成・配付するとともに、保護者用ちらしの電子データを教育委員会のホームページからもダウンロードできるようにした。
さらに、「各学校の意識改革を図ることが大切である」という意見に対しては、各教育事務所別に校長研究協議会を開催し、全国学力・学習状況調査の趣旨である継続的な検証改善サイクルの確立の大切さについて説明するとともに、学力向上で効果のあった学校の取組について紹介した。
4で述べた学校改善支援プランについては、その周知を図るため、愛媛県検証改善委員会でとりまとめた報告書を県内の市町教育委員会や小中学校等に配付するとともに、特に、提言の内容については平成20年度に開催される各種研修会の機会を活用して、具体的な取組の事例を紹介しながら、その周知徹底に努めたいと考えている。
また、1で述べた授業評価システム構築事業については、平成20年度も引き続き行い、すべての市町に設置する研究指定校において、本年度作成したガイドラインを活用して実践研究を進めるとともに、その成果については実践事例集としてとりまとめることにしている。
愛媛県検証改善委員会では、次の二つのことを確認した上で、愛媛の子どもたちの「確かな学力」を定着させ、向上させるためには何が必要かを、26名の委員がそれぞれの専門領域の視点から、その方法を求めて検討してきた。
一つは、子どもたちの「確かな学力」を定着向上させるためには、学力を単なる知識・技能の獲得といった、狭い領域でとらえるのではなく、基礎的・基本的な知識や技能の習得に加え、学ぶ意欲や思考力・判断力・表現力などの育成を含んだ幅広い学力ととらえ、こうした学力観を教育関係者の中で共有することが必要であるということ。もう一つは、今日の学校現場には、様々な活動が要請され、教師は過度の多忙感を抱えており、提言の中に新たな方策を過重に盛り込んだとしても、消化不良を起こし、かえって教育活動の停滞を招きかねないということであった。
愛媛県検証改善委員会が作成した学校改善支援プランは、こうした考えから、これまでの教育活動の見直しや力点の置き方により、実現可能な提言をできるだけ多く取り入れるよう心がけ、作成したものである。
今後は、提言の実施を第一歩として、学校現場はもちろんのこと、すべての教育関係者がその実現に尽力することを願っている。
「えひめの教育はえがおで!」
えひめの子どもたちに
がくしゅうすることや、がんばることの
おもしろさや、おくの深さを感じさせる教育を通じて
えがおで、自分の夢を語れる子どもたちを育てていきます。
平成19年度全国学力・学習状況調査結果(愛媛県公立)
(※愛媛県教育委員会ホームページへリンク)
分析シート(小学生用・中学校用)
-- 登録:平成21年以前 --