4.その他の事例(広報等)

(19)  学校選択のための情報提供の方法(岐阜県瑞穂市)
(20)  「隣接校・行政区域内校選択制」の実施と情報提供(広島県広島市)



(19)学校選択のための情報提供の方法(岐阜県瑞穂市)

1   本制度の概要
   本市が、「就学区域の弾力的運用(新入学児童生徒及び他市町村からの転入生について、保護者が市教育委員会に申し出ることにより、就学区域にとらわれることなく、瑞穂市立7小学校及び3中学校から就学する学校を自由に選択することができる)」制度を導入したねらいは、次のとおりである。
 
 保護者の住所地により就学すべき学校が指定される仕組から、保護者(児童生徒)が行かせたい(行きたい)学校が選択できる仕組にすることによって、保護者(児童生徒)の選択幅を拡大し、より公平性・平等性に応える。
 この制度が「特色ある(魅力ある)学校づくり」「開かれた学校づくり」を推進することになり、総じて瑞穂市の教育の活性化につながる。
 学校選択制を通して、児童生徒が自己を確立しながら多様な価値を認め合い、目標に向かってゆとりの中で「生きる力」を身に付け、その子にあった自主的な生き方・個性を伸長する魅力ある教育風土を醸成していく。
   制度導入後の各小中学校では、児童生徒及び保護者の選択に応じる学校をつくるため、子どもたちの実態や地域の特質を十分に理解したうえで、子どもたちの実態に応じ、地域のよさを生かして、一人一人の子どもに「確かな学力」と「豊かな心」を育てるべく特色ある(魅力ある)教育活動を展開している。(本市では「魅力ある学校づくり」と称している。)
 市教育委員会としても、児童生徒及び保護者に制度の主旨を理解していただき、また、各学校の特色ある(魅力ある)教育活動に共感・理解した上で学校を選択してもらいたいと考えており、そのための情報提供を次の方法で行っている。

2   情報提供(広報)の方法や内容
 
(1)   市広報誌への掲載
   市教育委員会は、市広報「広報みずほ10月号」で新1年生の入学準備から入学式までの流れを特集するなど、市民に広く本制度を紹介している。(広報誌は瑞穂市HPにも掲載)

(2)   就学時健康診断の際に小学校新1年生の保護者へ説明
   市教育委員会は、各小学校長へ10月から11月にかけて実施している就学時健康診断の際に、制度についての具体的な説明を保護者にするよう依頼している。受診日に各小学校長は、市教育委員会作成の資料を配付のうえ保護者に説明をしている。

(3)   中学校新1年生の保護者に資料を配付
   市教育委員会は、制度についての詳細な資料を作成し、10月に各小学校を通じて現小学校6年生の保護者に配付している。

(4)   自由参観日の設定
   保護者が実際の教育活動を参観することができるよう全市一斉に各学校で自由参観日を設定している。

(5)   その他
   市外からの転入生については、転入の際、市教育委員会から保護者に説明をしている。

  以上の情報提供の方法で特筆されることは、次の2点である。
 
1  冊子『まちの学校』の刊行
   市教育委員会は、毎年冊子『まちの学校』を刊行し新入学児童生徒の保護者へ配付をしている。内容は、市教育の方針と重点、就学区域の弾力的運用の説明並びに各学校の魅力づくりの取組の具体的内容(学校規模、教育目標、指導方法、教育活動等)で、各内容A4判2ページずつで紹介している。
2  学校自由参観日の設定
   児童生徒の姿や学校の様子及び特色ある(魅力ある)教育活動を実際に保護者が参観できるよう参観日を12月上旬に1週間程度設けて実施している。
   市教育委員会は、このような方法で学校選択のための情報提供を行っており、保護者には制度及び各学校の特色(魅力)についてを概ね理解していただいているものと考えている。

3   実績と傾向
 
年度 児童生徒総数 新入学児童生徒数(A) 就学区域の弾力的運用利用者数(B) 利用率(BわるA)
(注1)12年度 (小学校)2,134人
(中学校)1,026人
(小学校)356人
(中学校)354人
(小学校)3人
(中学校)1人
(小学校)0.8パーセント
(中学校)0.3パーセント
(注1)13年度 (小学校)2,155人
(中学校)1,035人
(小学校)382人
(中学校)347人
(小学校)5人
(中学校)1人
(小学校)1.3パーセント
(中学校)0.3パーセント
(注1)14年度 (小学校)2,151人
(中学校)1,035人
(小学校)336人
(中学校)333人
(小学校)2人
(中学校)0人
(小学校)0.6パーセント
(中学校)0.0パーセント
(注1)15年度 (小学校)2,188人
(中学校)1,019人
(小学校)385人
(中学校)332人
(小学校)3人
(中学校)4人
(小学校)0.8パーセント
(中学校)1.2パーセント
(注2)16年度 (小学校)3,059人
(中学校)1,447人
(小学校)547人
(中学校)493人
(小学校)27人うち新入学12人
(中学校)11人うち新入学4人
(小学校)0.9パーセントうち新入学2.2パーセント
(中学校)0.8パーセントうち新入学0.8パーセント
17年度 (小学校)3,141人
(中学校)1,454人
(小学校)573人
(中学校)492人
(小学校)12人
(中学校)5人
(小学校)2.1パーセント
(中学校)1.0パーセント
 
(注1)  穂積町が平成12年度に制度を導入した。平成12年度から15年度までは、穂積町(小学校4校、中学校2校)の実績。平成15年5月1日に穂積町と巣南町(小学校3校、中学校1校)が合併して瑞穂市となった。平成16年度以降は、瑞穂市一円で実施している。
(注2)  平成16年度に限っては、合併のメリットを生かすための特例として、新入学児童生徒及び他市町村からの転入生だけでなく、市内全小中学校全学年の児童生徒も対象として実施したため利用者数が多くなっている。

4  評価等
   上の表から、制度利用者数はやや増加傾向であることが分かる。しかし、児童生徒の全体数からすれば利用者数は少なく、ほとんどの児童生徒は保護者の住所地によって指定された学校に通学している。制度導入以前は、学校間に児童生徒数の大きな偏りが生じることも心配されたが、導入して6年が経過した時点でそれほど大きな動きは見られない。保護者に対し、広く学校選択のための情報提供を行っている中で利用者が少ないのは、通学の利便性や地域社会における交友関係といった理由もあるが、特色ある(魅力ある)学校づくりの努力の結果、住所地の学校への教育に対する信頼が大きいことの現れであると市教育委員会ではとらえている。
 また、各学校も自校を選んだ保護者の期待に応えるべく、子どもをよりよく成長させなければという意識を持ち、特色ある(魅力ある)教育活動の充実に努めている。
 市教育委員会では、制度利用者数が増加することよりもむしろこうした各学校の意識の高まりこそが大きな成果であるととらえ、今後も市の教育がより活力のあるものとなるよう「就学区域の弾力的運用」を推進するとともに、保護者だけでなく広く市民にも情報を提供していきたいと考えている。

本事例の問い合わせ先
瑞穂市教育委員会 学校教育課
電話 058-328-7206
市URLhttp://www.city.mizuho.lg.jp(※瑞穂市ホームページへリンク)


(20)「隣接校・行政区域内校選択制」の実施と情報提供(広島県広島市)

1   制度導入に伴う情報提供
   広島市では、平成15年度に設置した検討委員会において、「通学区域の弾力的運用」について、保護者アンケートや市民意見募集の結果を踏まえて多角的に検討し、最終報告書を取りまとめた。この提言を受けて、教育委員会では、「近くに学校がありながら遠くの学校が指定されているなど、通学距離の不満を解消するとともに、教育内容や部活動によって入学する学校を選べるようにすることで学校への関心を高め、公教育の信頼感を向上させること」を趣旨として、現行の通学区域を維持しながら、隣接校や同じ行政区域内にある中学校を選んで入学することができる「隣接校・行政区域内校選択制」を、平成17年度入学生から導入した。
 検討委員会の報告書には、実施に伴う留意事項として、「保護者や児童生徒が、風評等に惑わされることなく希望する学校を判断できるよう、積極的な学校情報の提供に努める必要がある」と提言されており、本市では、特に、検討段階から制度に関する情報提供とともに、中学校ガイドブックの配付や学校公開週間・学校説明会の開催等により、積極的な学校情報の提供に努めている。

2   アンケート結果から見る実施状況
   教育委員会では、導入1年目の成果と課題を整理し、制度の改善と学校運営の参考にするため、平成17年5月、市立中学校1年生全員及びその保護者全員を対象にアンケート調査を行った。(生徒数8,990人、回収率:生徒88.7パーセント、保護者84.7パーセント)
 この調査結果によると、中学校を選べるようになったことについて、生徒、保護者とも、回答者の8割以上が肯定的にとらえていることが分かったが、その一方で、学校情報を得る上で参考にしたものに「知人からの情報」と回答した保護者は3番目に多い38.6パーセントに達しており、かなりの保護者が、知人から間接的に得た情報を参考にしている実態が明らかになった。
 また、中学校ガイドブック、学校公開週間、学校説明会の改善点として、各学校の情報として、より違いが分かりやすく、より詳しい情報提供が求められており、記述欄では小学校における説明や相談体制の充実を求める意見もいくつか見られた。
 教育委員会では、このアンケート調査結果と中学校長からの聞き取り調査の結果から、正しい情報に基づく選択が行われるよう、保護者への啓発とより質の高い情報提供に努めることが必要であると判断し、実施2年目は1中学校ガイドブックの充実、2小学校における進路相談体制の充実、3制度説明会の充実に重点を置いた。

3   具体的な情報提供の方法
 
(1)   ホームページでの情報提供
   広島市のホームページでは、平成15年度の検討委員会における議事録など、検討段階から情報提供に努め、広く市民意見を募集した。平成16年度からは、制度の趣旨や経緯の周知を図るとともに、選択にあたって必要な情報を提供してきた。
 (広島市役所ホームページ(※広島市役所ホームページへリンク)「くらしのインデックス」→学校・教育→教育委員会→新しい教育の推進→通学区域弾力的運用)
 また、各中学校では、以前からホームページで独自に学校情報を提供しており、掲載内容の充実と更新期間の短縮に努めている。

(2)   広報紙による情報提供
   市民対象の「市民と市政」、市立学校保護者対象の「教育ひろしま」によって、検討委員会の情報、制度説明会の案内、平成17年度実施状況等を情報提供してきた。

(3)   制度説明会の開催
   保護者・市民を対象に制度の概要を説明するため、8月中旬から下旬にかけて実施した(平成16年は市内4会場、平成17年は8会場)。特に制度の対象となる市内の小学校6年生(約11,000人)には案内チラシを配付し、保護者の参加を呼びかけている。(参加者数:平成16年351人、平成17年613人)

(4)   中学校ガイドブックの配付
   制度の概要、受入数、申請手続き等のスケジュールなど制度に関わる情報と、各学校の紹介、部活動等の一覧表など、選択する上で参考となる情報を一冊にまとめた冊子を作成し、9月はじめに該当の6年生全員に配付した。平成17年は、アンケート結果にもとづき、各学校の違いがわかりやすいように内容の改善を図った。
 

(5)   学校公開週間の実施
   9月上旬から10月中旬までの間に、対象61中学校を4グループに分けて学校公開週間を設定し、学校の普段の様子を児童・保護者に公開している。
 (延べ参加者数:平成16年412人、平成17年2,112人)

(6)   学校説明会の開催
   学校公開週間の期間中、保護者が参加しやすい平日の夜間や休日に、近隣校の日程が重ならないように調整して、児童・保護者を対象に全中学校で説明会を行っている。
 (延べ参加者数:平成16年2,698人、平成17年3,061人)

(7)   小学校における進路相談
   アンケート結果から、うわさや風評によらず、児童や保護者が正しい学校情報に基づいて選択を行ってもらうための啓発活動が必要であることから、特に小学校長と第6学年の主任を対象に事前の研修会を行い、小学校における進路相談体制の充実を図っている。

4   今後に向けて
   本市では、今後も子どもや保護者へのアンケート等により、本制度の工夫・改善を図るとともに、制度の趣旨に沿った学校選択が行われるよう、積極的に学校情報を提供していくつもりである。
 また、学校評議員制度の代わりに平成13年度から導入した学校協力者会議や、平成15年度から導入した学校評価システム等により、各学校では、特色ある、開かれた学校づくりを進め、主体的に教育活動を改善するよう取り組んでいるが、選択制の導入により、こうした動きがより一層活性化し、本市における公教育の信頼感の向上が図られることを期待している。

本事例の問い合わせ先
広島市教育委員会 学校教育部企画課
電話 082-504-2627


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