1.学校選択制[ブロック選択制・隣接区域選択制]

(4)隣接校から学校選択(北海道江別市)

1   制度の概要
 
(1)   実施の経緯、趣旨
   本市においては、これまでも在学中における住所の変更や心身上の事由など「相当と認められる理由」がある場合、または、特認校の野幌小学校へ就学する場合に限り保護者の申し出により通学区域の弾力的な取扱い(就学校の変更)を認めてきた。
 しかし、保護者等からは、「幼稚園等の友だちと同じ学校に通わせたい」、「部活動の活発な学校に行きたい」などの要望が寄せられていたことから、学校教育法施行規則の一部改正を契機に、平成15年9月24日、「江別市立小学校及び中学校通学区域審議会」(以下、「通学区域審議会」)に学校選択制の導入の是非を含めて基本的な考え方及び導入方法等について諮問した。
 審議の過程において、教育委員会では教職員や保護者との意見交換会や市民との意見交換を目的とした教育タウンミーティングを開催するとともに、児童生徒等の保護者にアンケート調査を実施した。アンケートでは、学校選択制の実施について、「賛成又はどちらかというと賛成」が合わせて62.2パーセント、「反対又はどちらかというと反対」を合わせると27.3パーセントの結果であった。
 これらの検討経過を踏まえ、「学校の活性化」及び「保護者が学校に積極的に関わる意識や責任感の向上」などが期待されること、また、通学区域の弾力化の視点に立ち「子どもの個性や希望に応じた学校選択の保障」を推進する必要があることから、子どもたちが行きたい学校、保護者が行かせたい学校を希望できる学校選択制を導入すべきとの答申を平成16年2月10日に受けた。
 教育委員会では、この答申を踏まえ学校選択制の基本的な考え方を平成16年2月26日に決定し、導入の時期、対象児童生徒、選択できる学校の範囲などについて、市民説明会を開催し、現行の通学区域制度及び特認校制度を残しながら平成16年5月27日に導入の最終決定を行った。

(2)   制度の内容
 
1  対象となる児童生徒は、平成17年度から江別市立小学校、中学校に入学する新1年生とした。
2  選択できる学校の範囲は、隣接校の中から1校を希望することができる。ただし、隣接校の選択肢が1校の場合は、公共交通機関の利用等を勘案して複数校とした。
3  受入人数は、各学校の施設規模に応じて、余裕のある範囲内で希望者を受け入れる。学校の教室に余裕のない場合は、年度により受け入れない場合もある。
4  受け入れる児童生徒の決定は、次のとおりとする。
 
 入学希望者が受入人数を超えた学校は、公開抽選で入学者を決定する。
 入学希望者が受入人数の範囲内の学校は、希望どおり入学することができる。
 抽選に漏れた場合は、通学区域の指定校に入学する。補欠登録は行わない。
5  学校選択制の情報提供については、制度に関して市「広報」やホームページで、学校の教育活動等のことは学校案内冊子の配付や教育ホームページへの掲載、学校公開などで行う。
6  児童生徒の通学は、原則として徒歩通学とし、卒業まで選択した学校に通学する。ただし、在学中に「相当と認められる理由」がある場合は、区域外通学の申立てにより対応する。
7  在校生の学校選択については、「新1年生特例」として、新1年生が学校選択する場合の兄、姉で同じ学校への転校を希望する場合に限り認める。また、平成17年度に限っては、「通学距離特例」として、現在通学している学校より近い学校へ転校を希望する場合は、各学校の受け入れ可能な範囲内で受け入れる。

2   事務の流れ
 
実施時期 内容 備考
6月下旬
学校説明会(新1年生の保護者対象)
小学校19校で開催
7月上旬中旬
学校一斉公開
受入れ可能人数調査
小中学校(29校)
8月下旬
制度案内、学校案内、希望申請書配付
受入れ人数の公表、ホームページ掲載
新小1年生保護者は郵送
新中1年生は在6年生配付
9月下旬
希望申請書の受付
申請は市教委に提出
10月上旬
変更、取下げの受付
受付状況HP随時掲載
10月中旬~下旬
受入れ人数範囲内の学校の確定
受入れ人数を超えた場合は、公開抽選
結果通知
抽選通知・公開抽選結果通知
11月
就学時健康診断(小学校新1年生)
 
1月
入学通知書の郵送
 
2月
入学説明会
 
4月
入学
 

3   実績と傾向
   平成17年度については、小学校は10校に39人(特認校の数を含む。入学者全体の3.5パーセント)、中学校は7校に22人(同1.6パーセント)の全体で17校に61人(同2.5パーセント)の希望があった。希望者は全て受入れ人数の範囲内であったので、抽選を行わないで入学することができた。
 また、在校生特例では、1新1年生と同じ学校は中学校1人、2通学距離の近い学校に転校の初年度のみの特例は、小学校4人、中学校1人であった。
 なお、アンケート結果から見た学校を選んだ理由は、小学校では1学級数や児童数の規模が適当27.8パーセント、2距離が近い22.2パーセント、中学校では、1学校の教育活動に魅力を感じる42パーセント、その内、部活動に魅力を感じる19.4パーセント、2学級数や生徒数の規模が適当16.1パーセントとなっている。

4   評価等
   平成17年10月に、学校選択で入学した児童生徒の保護者を対象としてアンケート調査を実施した。
 入学した結果の「満足度」では、「満足」「やや満足」合わせて保護者が92.7パーセント、児童生徒が100パーセントであり、保護者、児童生徒ともに希望した学校に高い満足を示している。一方、「満足していない」保護者からは、「少人数学級にならなかった」「集団下校での学校の対応」に不満との意見があった。
 校長を対象としたアンケートでは、「保護者や地域の関心が高まった」31.8パーセント、「教職員の意識が変わった」24.4パーセント、「学校の特色が定着した」19.5パーセントなどの結果となっており、特に教員の意識にかかわっては、「自校の特色を出していくようになった」「開かれた学校を意識するようになった」などの声が寄せられている。
 今回の保護者及び校長のアンケート結果では、学校選択制が制度として良い評価となっていることから、概ねスムーズに導入できたものと考えている。導入1年目であり、今後とも学校生活等の様子などを継続的に調査し、学校選択制の検証を図っていくこととしている。

本事例の問い合わせ先
江別市教育委員会 教育部学務課
電話 011-381-1058


(5)ブロック内及び隣接校から選択できる小学校選択制(埼玉県川口市)

1   制度の概要
 
(1)   実施の経緯
   本市では、平成9年1月27日付け文部省初等中等教育局長名の「通学区域の弾力的運用について(通知)」(文初小第78号)を受け、平成9年3月21日に教育局内に「規制緩和に伴う通学区域の調整検討委員会」を発足した。指定校変更要件13項目、隣接する学校を選択できる調整区域29か所などの運用を定めた「通学区域の弾力的運用について(通知)」を平成10年11月に発布し、弾力的運用を導入した。この結果、平成14年度には指定校変更・区域外就学許可人数が小学校では4.8パーセントに及んだ。
 埼玉県では教育の在り方について意見・提言をいただく「彩の国教育改革会議」が平成12年12月に設置され、平成13年11月5日に学校選択制を含め6項目の提言を知事に提出した。
 こうした背景のもとに、市長の施政方針の一つである「人づくりなくして郷土づくりなし」に基づき、教育改革に取組むことを平成13年度に決定した。
 平成13年10月に教育長を委員長とする「川口市教育改革検討委員会」を発足、平成14年1月には市民等を委員とする「川口市教育改革プログラム検討会議」を設置した。学校選択制は、川口市教育改革プログラム検討会議において検討いただき、平成14年10月18日に、市内の小学校について平成17年度から、ブロック内と隣接校から選択できる方式を実施することが提案された。

(2)   趣旨
   通学区域の弾力的運用の中で区域外就学ニーズの高さが明らかになったことから、選択幅を一層拡大し保護者ニーズに応えることとした。また、学校が選ばれる立場に立つことにより切磋琢磨するとともに、学校自身が自己を客観的に見る視点をもち、地域に開かれた特色ある学校づくりを推進するものとした。
 ブロック制は、小学校1年生が対象になることから通学の安全確保が重要であり、遠距離通学となることを避けたものである。また、児童期の成長には地域社会の役割が大きいことから、従来の地域性を損なわない範囲としたものである。

(3)   制度の枠組み
 
 選択できる範囲
   本市は1町8村の昭和の合併により誕生したが、今日においても旧町村はコミュニティ単位として活用されている。この9つのコミュニティをベースに(最大規模のコミュニティを2分割)、10のブロックを設定した。また、隣接校の選択ニーズが高いことから、ブロックに隣接する小学校も選択できるものとした。
 条件等
 
1  平成17年度の新入生から実施する。
2  転入生も転入の際選択することができる。
3  基本学区は現状維持し、区域内の児童は全て基本学区の小学校で受け入れる。
4  各学校の余裕教室の状況により、基本学区外からの受入れ定員を決定する。
5  希望者が定員を超えた場合は、抽選により決定する。抽選に際して、兄・姉が当該校に在籍している場合には、抽選によらないで優先して入学できる。
6  自転車通学は認めない。
(4)   受入れ枠
   平成18年度入学予定者の区域外受入れ枠は、市内48校のうち若干名が9校、受入れができない学校が2校、そのほかは概ね1学級程度(32名)可能とした。

2   事務の流れ(平成18年度入学予定者の手続き等)
 
時期 内容 場所等
5月上旬 入学予定者の各家庭に学校選択制実施のお知らせ、学校公開の年間スケジュール表を郵送する 市教育委員会
5月~ 各小学校において学校公開、公開行事を実施 各小学校
10月中旬 入学予定者の各家庭に、お知らせ、小学校選択希望申請書、学校紹介冊子を郵送する(申請開始) 市教育委員会
11月30日 希望申請の受付締切 市教育委員会
12月8日 希望申請受付結果の公表 各小中学校、公民館、支所ほか
12月18日 公開抽選会 抽選対象校
12月19日~12月22日 抽選において選外となった児童に対し、新たな学校選択の受付を行う 市教育委員会
1月下旬 入学通知書発送 市教育委員会

3   実績と傾向
 
年度 対象者数 私立等 基本学区希望者A 基本学区外希望者B 計AたすB 学区外希望者の率 抽選校
17 4,747 82 4,256 409 4,665 8.77パーセント なし
18 4,834 73 4,321 440 4,761 9.24パーセント 1校

4   評価等
   平成17年度入学者の保護者全員にアンケートを実施したところ、次のような結果となった。
 
(1) 学校選択制について
 
区分 選択制に賛成 従来どおりがよい どちらでもよい 無回答
基本学区選択保護者 72.5パーセント 9.2パーセント 17.8パーセント 0.5パーセント
学区外選択保護者 81.7パーセント 0.6パーセント 8.7パーセント 9.0パーセント

(2) 選択理由(複数回答)
 
区分 1位 2位 3位 4位 5位
基本学区を選択した保護者 基本学区の小学校が一番近いから
64パーセント
学区外を選ぶ大きな理由がない
50パーセント
近所の友達が行くから
40パーセント
兄姉が通っているから
37パーセント
地元とのつながりを考えたから
21パーセント
学区外を選択した保護者 自宅から近いから
51パーセント
子どもの希望を尊重したから
30パーセント
学校の教育活動に魅力を感じたから
22パーセント
兄姉が通っているから
20パーセント
近所の友達が選択したから
15パーセント
   アンケートの結果、本市の学校選択制は保護者に評価されているものと考えている。しかし、「学校の教育活動に魅力を感じたから」が学区外を選択した保護者で22パーセントにとどまり、今後こうした点の改善が課題となる。

本事例の問い合わせ先
川口市教育委員会学務課
電話 048-258-1110


(6)小学校在学者の学校希望制度(東京都杉並区)

1   制度の概要
 
(1)   実施の経緯
   【平成13年3月「教育を考える懇談会」からの提言】
 本区教育委員会の諮問機関である本懇談会から、学校を活性化し、特色ある教育を展開しつつ、子どもたちにとって魅力ある学校づくりを進めるために、現行の制度を維持しつつ、保護者や子どもたちが通学したい学校の希望を聴くなど、より弾力的な仕組みの検討が必要との提言が出された。
 【平成13年9月「学校希望制度」の開始】
 魅力ある教育活動の実現と開かれた学校づくりをめざして、平成14年度入学の小学校・中学校の新1年生を対象に、住所地の学校に隣接した通学区域をもつ学校(以下「隣接校」という。)への就学を申請できる、「学校希望制度」を実施することとし、実施要綱を制定した。
 なお、隣接校方式としたのは、1事前の関係団体との意見交換の中で通学時の交通安全に関する意見が多かった2指定校変更申立の実績も9割が隣接校への希望であった3これまで培ってきた学校と地域との繋がりへの配慮、といった理由からである。
 【平成16年9月制度改正】
 保護者や児童の意向を反映させた就学校指定の推進を図るために実施要綱を改正し、対象者を小学校在学者にまで拡大し、これまで指定校変更の申立でのみ対応してきた事例の一部について、学校希望制度による対応も可能とした。
 以下は、特に、対象が小学校在学者にまで拡大されたこの制度改正について記載する。

(2)   制度内容
 
(a) 拡大された対象者
 
小学校在学者の転入、転居者
国立、私立小学校からの転校者
(b) 申請できる学校の範囲
 隣接校
   ただし、下記(ア)(イ)のいずれかに該当する場合は、申請することができない。なお、在学中の小学校が隣接校に該当し、引き続き同校への就学を希望する場合は、下記(ア)(イ)の条件は適用しない。
 
(ア)  受入れを制限する必要がある学校
 
平成17年7月からは、本区教育委員会が定めた「杉並区立小中学校適正配置基本方針」(16年7月)において小学校の適正規模としている学級数(12~18学級)を大幅に超えている学校1校を対象としている。原則として例年7月に見直すこととしている。
(イ)  (ア)以外の学校で1学級あたりの人数が40人を超えると見込まれる学年
(c) 追加された申請時期
 
転入、転居の届出時(ただし、区域外就学承諾または指定校変更認定により転校を延期する場合は、その承諾・認定の期間満了時)
国立・私立小学校の退学手続き終了時

2   事務の流れ
   隣接校への就学を希望し、かつその学校が申請可能である場合において、保護者は所定の希望申請書を教育委員会へ提出する。
 希望申請書には、通学区域の学校、隣接校、隣接校ごとの申請可否を掲載しておく。申請可否については、児童数の増減に応じて随時更新していく。申請書を交付する際は、庁内イントラネットから最新の申請書を印刷する。
 なお、申請不可とされた小学校を希望する場合は、通学区域の学校を就学校として指定するが、保護者からの指定校変更の申立があれば、教育委員会が定める基準により就学希望校への指定校変更を認定することもできる。
 
転入・転居の場合の事務の流れは図のとおり
  小学校在学者の転入・転居者の就学事務手続-区民事務所で転入届・転居届を受理した場合-

3   実績と傾向
   平成16年・17年度の申請数
 
学年 転校 継続通学 総計
転入転居 国立私立 小計 転入転居
16 17 16 17 16 17 16 17 16 17
1 9 12 1   10 12 24 24 34 36
2 7 11   1 7 12 33 24 40 36
3 16 11   1 16 12 29 30 45 42
4 5 10     5 10 24 23 29 33
5 7 10   1 7 11 23 36 30 47
6 2 2     2 2 21 27 23 29
46 56 1 3 47 59 154 164 201 223
 
「転校」「継続通学」は、いずれも本制度改正による学校希望制度の申請者であるが、結果的に転校となるかどうかによる区分である。
「16」イコール平成16年9月1日から17年3月31日まで
「17」イコール平成17年4月1日から17年11月30日まで
参考 平成17年12月1日現在の区立小学校(44校)の児童数イコール17,241人
  (心身障害学級の児童を除く)

4   評価等
   学校希望制度は希望理由の審査等がないため、保護者にとっては指定校変更申立よりも簡単な手続きで、希望に添った学校へ就学させることができる。また、指定校変更の申立件数の減少により、教育委員会の事務の軽減にもつながっている。
 なお、中学校在学者への対象者の拡大については、今後検討を要する。

本事例の問い合わせ先
杉並区教育委員会 学務課学事係
電話 03-3312-2111


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