子どもの読書サポーターズ会議 (第9回) 会議の概要
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参考資料1‐1 学校図書館の充実に関する調査(平成20年3月31日社団法人全国学校図書館協議会)
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参考資料1‐2 学校図書館の整備に関する調査(平成20年3月31日社団法人全国学校図書館協議会)
議事概要
日時
平成20年8月25日(月曜日)15時~17時
場所
文部科学省16階特別会議室
参加者
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きむら ゆういち 氏 |
(児童文学作家) |
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市川 久美子 氏 |
(財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)読書アドバイザー) |
座長 |
片山 善博 氏 |
(慶應義塾大学教授、前鳥取県知事) |
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小林 実 氏 |
(山梨県甲斐市立双葉西小学校校長) |
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庄司 一幸 氏 |
(福島県立あさか開成高等学校教諭、読書コミュニティネットワーク代表) |
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小川 三和子 氏 |
(東京都新宿区立津久戸小学校司書教諭) |
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齋藤 明彦 氏 |
(鳥取県自治研修所長、前鳥取県立図書館長) |
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小峰 紀雄 氏 |
(小峰書店社長、読書推進運動協議会理事、日本書籍出版協会理事長) |
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森田 盛行 氏 |
(社団法人全国学校図書館協議会理事長) |
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木村 滋洸 氏 |
(前社団法人日本PTA全国協議会専務理事) |
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秋田 喜代美 氏 |
(東京大学大学院教育学研究科教授) |
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浜尾 朱美 氏 |
(キャスター、エッセイスト) |
座長代理 |
織茂 篤史 氏 |
(神奈川県横浜市立青葉台中学校校長) |
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中江 有里 氏 |
(女優、作家、脚本家) |
議題
- これからの学校図書館の活用の在り方等について
- その他
配付資料
- 資料1 第8回「子どもの読書サポーターズ会議」概要
- 資料2 これからの学校図書館の活用の在り方等について(審議経過報告)(案)
- 資料3 学校図書館スタッフの業務(改訂)
- 参考資料1‐1 学校図書館の充実に関する調査(平成20年3月31日社団法人全国学校図書館協議会)
- 参考資料1‐2 学校図書館の整備に関する調査(平成20年3月31日社団法人全国学校図書館協議会)
1.開会
※ 事務局より人事異動について紹介
《磯谷児童生徒課長ご挨拶》
前職は学術研究助成課で、大学の先生方の科学研究費補助金を担当していた。片山先生をはじめ、この会議があること自体がすばらしい。先生方の言うように、子どもの学力や生きる力について考える時、図書館は基本中の基本であり、これからもご指導いただきたい。
2.資料確認・説明
《森田委員より参考資料について説明》
平成18年度から2年間、文部科学省から委託研究を受けて調査を行った。平たく言うと、図書標準に達するだけの図書の冊数があると、本当に子どもたちの力が伸びるかどうかという検証。結果から言うと、伸びるということが証明された。初年度は小学校35校、中学校21校、19年度に追加の公募で小学校12校、中学校2校の計70校を対象に調査をした。その結果、学力の定義自体は難しいところもあるため、市販のテストで国語力を調べた結果、有意な変化が見られた。ただ、図書標準に達しても、それを使った学習指導・読書指導を行わなければ、あまり意味がないということも浮かび上がってきた。実質1年間の調査であるが、これが2年・3年になると、もっと結果は明白に出るのではないか。、図書標準に達すると必ず子どもたちの力が伸びる、読書力、情報活用能力、国語力も伸びるということが実証されたので、この成果については、是非これから広めていきたいと思っている。
《事務局より資料2、3について説明》
資料2の審議経過報告(案)について、前回会議においては骨子とプロットについてご審議いただいた。おおむねプロット全体の流れ等についてはご了承いただいたものと理解した上で、さらにその場で頂いた様々なご意見をつけ加えるような形になっている。
まず、条件整備がなければ機能発揮ができないが、機能発揮についてのビジョンを示していくことにより、国民の理解も得られて条件整備が進むという観点について記述するとともに、これからの子どもというのは、自己責任の社会に投げ出され、自分で判断していかなければならないといった観点から、情報を取捨選択する力は高校までに身につけさせなければいけないといった面からも、学校図書館の活用が重要だということについて記述している。
次に、本来、学校図書館が行うことが予定されていた図書館サービスの内容について、法律によって定められていることが実際は行われていないという基本認識の下、法律上の位置付けのところには、第4条第1項の各号の規定を明記する形でまとめている。
続いて、法的位置付けに続く機能と役割について、読書センター機能及び学習情報センター機能、教員のサポート機能、またはその他の機能として子どもたちの居場所の提供や、家庭・地域における読書活動の支援といった観点からの機能について、現状を記述している。また、これまで長年放置されてきた教員サポート機能というものについて、教員の業務を支援していく機能の重要性がより高まっているという視点を入れた。これは、総合的な学習の時間の実施により教員それぞれの創意工夫が求められるが、実際には時間がないといった記述を明記したもの。さらに、子どもの読書活動のより一層の推進に向けた対応のところで、読書の幅を広げる指導という部分についても、対応の中身の一つとして明記している。マネジメントの問題については、スタッフの話と並べる形で「組織的」と入れ、さらにマネジメントの内容について、後ろでも記述をされるという流れにしている。
その後、学校図書館の活用高度化に向けた視点と取組等について、6つの視点は前回の視点と同様だが、具体的に考えられる取り組みの例として幾つか追記している。視点1の多様化の視点の中では、校種横断による継続的な読書指導計画の策定を入れたほか、読書の幅を広げる指導といった取り組みについても追記。視点2では読書を通じた交流活動、視点3~6については、従前からの視点に基づき、それぞれ考えられる取り組みを規定している。
次に、活用高度化推進に向けての留意点等について、学校・教育委員会・国という三本立てにし、記述の書き分けをしている。教育委員会による条件整備・支援ついて、前回では単なる支援だったが、今回は条件整備という4文字を明記し、専門的な人材の書き方について、少し見渡せる形で書いている。また、それ以外の一般的な支援についても整理するとともに、公共図書館の資源・機能の活用が重要な鍵であるということについても明記している。
最後に、とりあえず現段階の審議は、当面目指すべき方向や、そのために取り組むべき方策についてはある程度明らかになってきたが、具体的な事項については、なお一層の検討が必要であるということや、情報化が進む中でのメディアの選択の問題に触れ、まずは我々としての現時点での審議の経過を公表し、今後はそれに対する反響等も踏まえながら審議を進めていくというスタンスをお示しするという形で整理をした。
また、前回ご議論いただいた学校図書館スタッフの業務の整理図については、学校司書とボランティアの間に挟まっていたものについては、影の部分をボランティアに置いているところだが、一方で司書教諭と学校司書との間の役割分担については、なかなか難しいというのがそのまま出てしまっているところ。
〈意見交換〉
〔審議経過報告について〕
- 放課後と限定するのではなく、学校図書館の開放といったようなものを盛り込めないか。
- 法律や指導要領等に出てくる学校図書館の役割をどこかに入れるべき。
- 高等学校も含め、図書標準そのものを見直す必要があるのではないか。
- 良質な本を生む基盤が学校図書館であるということが盛り込まれているといい。
- 学校図書館は、学校の中の図書館ではなく、学校図書館である。学校図書館と学校の中の図書館との違いは、前者は指導機関であり、子どもたちの学習の場であるということ。
- 教員のサポート機能について、サポートというと、学校図書館が学校とは異質なもののように感じられ、言葉が引っかかる部分がある。
- 学校図書館というのは本来、1学級ではなく3学級ぐらいが同時に使えるようなスペースがあり、その中に全てが揃っているというのが本来の形なのではないか。余裕教室を利用して部屋をつくるということが積極的にいいということではない。
- 図書館スタッフという言葉によって、学校図書館の人についての規定が曖昧になってくるのではないか。
- この報告書が中学校・高等学校に合うかどうかを検討する必要があるのではないか。
- 「サポート機能」という言葉は入れたい。将来的には、学校の中の一機能として学校図書館がビルトインされているのが理想だが、今現在、学校図書館が教員の仕事をサポートするものだと認識され、そういった活動が実際に行われているかというと、ほとんどの学校ではなされていない。そこをきちんと押さえ、本来持つべき機能であるということを明記させておいた方がいいのではないか。
- 情報を収集する能力について、学校図書館が中心となって提供していくという意味合いの文言を入れられないか。
- 学習という機能が学校教育において重要であって、児童生徒の主体的な学習活動と同時に、教科の指導の学習を深める機能として必要であるということを明確に書いていただきたい。
- 特別な支援を要する子どもを含め、全ての子どもが読書ができる場として学校図書館という場所があるということを明確に書いていただきたい。
- 学校図書館スタッフの資質向上も重要だが、学校経営の中にきちんと読書を位置づけるためには、教育委員会のレベルでの校長に対する研修が重要。
- 意味をはっきりさせるため、読書センター、学習センター、情報センターの3つではどうか。学校図書館は、まず学習指導に使うため、学習センターを独立させた方がスムーズに理解が進むのではないか。
- 国のモデル事業の成果をもっと前面に打ち出していくということも重要ではないか。
- 教員養成の過程において、学校図書館や読書指導については一切学習してこない。現場に行ってから読書指導、学校図書館のことを習うのでは遅い。国の調査研究の中に、教員養成の課程に、学校図書館なり読書指導を組み込むということを盛り込めないか。
- 調べ学習は特別なものではなく、学校図書館で調べるという、ちょっとした活動である。
- 外国では、ジオグラフィーなど、いろいろな体験ができる、資料が置いてあるような施設が校内にある。余裕教室を調べ学習の場や、いろいろな資料を置く場所にすると、様々な資料がきちんと整理される。
- サポートしてもらうだけではなく、教師自身が学校図書館を使うという意識が必要。小学校だから専門性が低いということではない。むしろ小学校はすべての教科を担っている。
- 学校図書館の教員サポート機能を充実させることも重要だが、同時に教師自身が学校図書館を使って学ぶという意識を持つことが必要。
- 当報告はサポーターズ会議の名義。役人の文体は避け、一般の感覚で書くべき。
- 総合学習で学校図書館が色気づくが、普段の授業で学校図書館は淡々と活用されるべき。
- 学校図書館司書を教育委員会で置くべきという話をこの際言ったらどうか。
- 学校司書を置いてないところは、とにかく置く。非常勤で置いているところは、正規、専門、専任にしましょうという意欲が湧くような表現が欲しい。
- 以前も教育委員会の中に学校図書館担当のような役職を設けてほしいという話があったが、地域ぐるみで読書活動を推進していくとき、担当者がころころと変わっては困る。じっくりと取り組めるような位置づけや役割を与えてもらいたい。そのためには専門家の養成や勉強会というものが必要。
〔学校図書館スタッフの業務分担について〕
- 司書とボランティアの関係はある意味うまく処理されているが、司書教諭と学校司書については、司書教諭のほうにウエートが置き過ぎる感じがする。実際の学校で、専任に近い形や大幅な負担軽減があった場合にはここまでいけるかもしれないが、司書教諭がいて、学校司書がいて、ボランティアのサポートもあるという形があれば、司書教諭がここまで全部かぶってやらなければいけないということにはならない。もう少し学校司書の方にウェートが置かれるべきではないか。
- 幾つかにパターン化しないと難しいのでは。
- あるべき論なのか、現実的なものなのかということも問題。
- ボランティアが学校図書館スタッフの一員であるという図解はおかしいのではないか。ボランティアは学校図書館スタッフの外側にいて、学校図書館を支えるものというのがわからなければ誤解が生まれてしまう。
- この中に教員が出てきてもいいはずではないか。
- 学校図書館を支える地域の力の中に、学校図書ボランティアを入れればいい。
- 学校ぐるみで学校図書館を支えるという発想から言えば、一番左側の学校経営の中に、校長が学校図書館というものを位置づけ、教諭が読書指導や教科指導等に関わり、司書教諭、学校司書といった人たちがそこにいて、周りをボランティアが支えているという、学校図書館の機能が充実されるために、どうマネジメントするかという全体像を示した方がいい。そうでなければ、結局は司書教諭と学校司書任せであとは関係ないという図になりがち。
- 「専門的な」という言葉について、司書教諭のところと学校司書だけが専門性という形で書いてよいのか。ボランティアも含めて、それぞれが専門性を持って学校図書館に関わっているはず。
- 庶務・会計については、学校司書の役割としていいのか。
- 管理職も含めた学校図書館運営委員会の位置づけをどうするのかや、学校司書と司書教諭、担任との3者の連携が重要。小学校では担任の先生抜きには語れない。中学高校なら教科担任といったところか。校内研究の組織という事まで考えるべき内容が出てきたのではないか。
- 学校司書がきちんと5日間勤務していて、司書教諭は学級の担任である場合、司書教諭の仕事は、計画を立案するというところだけやればいいとなり、全ての図書館業務が司書任せになってしまっている。担任をしているから出来ないのが当前という言葉がまかり通ったり、余分な業務を押しつけられるので、司書教諭講習を受けたということを隠している人がいるというのを耳にする。司書教諭の負担軽減も必要だが、本来どうあるべきなのかということをやらなければ、学校司書に任せきりで、学校司書が権限を持って、誰にも口出しさせないということも出てきてしまう。
- 司書教諭の資格を持っている人が学校に2~3人いたとしても、発令されているのは一人という状況がある。知恵を集めてマネジメントすればいい。1人しか発令していないからそれ以外は埋没している。
- 図書館委員会なんかは本の選定だけで終わっていて、学校全体の読書環境をどうしようとかいうような話は出てこない。
- 学校図書館法で「司書教諭は、教諭を持って充てる」とされているところが、担任を持って充てると誤解されている向きがあるのではないか。充て職はだめだということを言う人がいるが、教諭を持って充てるということは、教諭という資格を持っている人を充てるということであって、あの規定で専任の司書教諭というのは出来る。それこそ定数法で1人加配が来れば、あっと言う間に実現する問題。充て職だから駄目だというのはおかしい。この議論は、実は明治時代に既に話されている。やはり人の問題であるということが解決されない限り、これは永遠に繰り返す問題ではないか。
- 全国的にも生徒指導については理解があり、加配を多く出している。同じように司書教諭についても、1人とまでは言わないが、0.5人でもいいから欲しい。
- 学習的により強くしていくことと、学校図書館を魅力的にすることは逆。学習だと思うと子どもは魅力を感じないので、もっと楽しくするには、学習的要素を取っていかなければいけない。司書を増やすことは大事だが、では司書は何をするのかというところのアイデアまで出していかないと、この会議は意味がないんじゃないか。
- 私にとって学校図書館は逃げ場だった。安全地帯というか、ここにいればとりあえず自分の場所が確保できると。勉強することも大事だが、本を読むことの楽しさというのも図書館では知ることができて、なおかついろいろな本に触れることができるというのは、とても大切な経験だと思う。特に小学校高学年や中学校ぐらいの時は、精神的にも成長し、悩みも非常に増え、大人ではわからない部分、友達同士で話してもわからないところもあると思う。そういう時には、自分自身との対話になってくる。その時私の助けになったのは本だった。本自体に何かを教えられたというより、本を読むことで自分と対話していた。当時はそんなことは全くわからないで、ただすることがない、居場所がない、どうしていいのかわからないというところから、逃げていたという表現になってしまうが、セーフーティネットというか、安全地帯としての図書館の在り方。勉強が得意じゃない、スポーツが得意じゃない、じゃ、どこに行ったらいいんだという人間たちを落として欲しくないということは強く望んでいる。
- おもしろくない、つまらない勉強を強いられる、そういう学習を改善するのが学校図書館。学習というのはほんとうに楽しい、自分の知りたいことがわかる、知った喜び、学ぶ喜びを味わわせるのが学校図書館。学校図書館の先進国では、勉強は仕方なくやらされているものというよりも、自分で知りたいからやっているというイメージが強い。そこを目指すのが学校図書館ではないか。
- 子どもは基本的に評価される立場として学校に存在している。それに疲れるから、安全地帯として学校図書館という評価されない場所に逃げて、そこで学習することは評価とは関係ないことだからいいと思う。学校図書館に寄りつきもしない子どもたちに使わせるにはどうするか。「学校に図書館があったっけ?」みたいな子どもを、図書館は面白いと変える部分が、一番の重要課題なのではないか。
- 結局、報告書は読書がどう機能するかとか、ある意味で硬くなっている。だから、魅力的な本を置こうとか、習慣づける前に、ともかくいい本と出会える契機をつくろうみたいな部分が、こういう報告書ではなかなか出にくいし、書きにくい。内容や機能で書くので、本の中身とか、子ども目線で書けないところが難しい。
- 結果論だけで言うと、鳥取県の県立高校でやったのは、ちゃんとした優秀な司書を置いて、新刊本をどんどん入れたら、貸出冊数はウナギ登りに増えたということ。物的、人的配置プラス、コンテンツが必要。
- 子どもたちにとって図書館のありようというのを学校司書の先生はずっと研究している。だからこそ、図書館には人が必要。
- 何かの形で家庭に対しても読書の大切さを伝えたい。学校で読んでも、家でまた改めて読む時間をつくる習慣をつけないと意味がない。
- の家庭へのウェブサイトの作成というのがいいアイデア。学校に来ない家庭こそ大事。「早寝早起き朝ごはん」がかなり浸透してきているので、そこに読書をプラスすると非常にいい。
- 司書を置く、ないし置くものとするように学校図書館法の見直しを提言してはどうかという話があったが、やはり人を置くということをこの会でもっと打ち出していって、その後、その司書たちがどういうふうに子どもたちに接するか、魅力ある司書としてどういうふうに成長していくかを、勉強会でやっていけばいい。
3.閉会

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