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実施報告書【まとめ】北九州市教育委員会

平成19・20年度JSLカリキュラム実践支援事業実施報告書【まとめ】

実施団体名【北九州市教育委員会】

2年間の取組内容及び成果と課題

1.具体の取組内容

【1】講師招聘による研修

 平成19年7月に,群馬県大泉町立東小学校 市川昭彦教諭を講師として招く。二日間にわたって,小倉中央小学校でJSLカリキュラムを活用した授業の学習指導案作成を中心に研修を行った。小倉中央小の教員と専任教員が参加した。
 平成20年6月には,第1回北九州市国際化推進地域連絡協議会で,東京学芸大学 臼井智美准教授を招いて,外国人児童生徒の受入体制と日本語指導の在り方について講話をいただいた。参加者は,市内の外国人児童生徒の在籍校の担当者,専任教員らである。

【2】授業研究

 平成19年度,20年度の2年間で,計10回の授業研究を行い,1月と2月で,あと2回行う予定である。10回の内訳は,JSL国語科の授業が2回,JSL算数科の授業が6回,JSL外国語科が2回である。今後予定の2回は,JSL算数科である。
 ※ これらの授業研究は,国際理解教育の研究大会の一環として行ったもの,校内の授業研究会として行ったもの,東京学芸大学臼井准教授による視察目的のものなどを合わせたものである。

【3】他地域での研修及び先進地域の視察 

 平成19年度,20年度の2年間で,計7回,研修に参加し,3回視察を行った。また,2月に1回ずつ,研修と視察を行う予定である。
 7回の研修は,「日本語指導担当教員のための外国人児童生徒教育初任者研修」,「同フォローアップ研修」,「実践ワークショップ」等である。
 先進地域の視察は,神戸市立生田中学校,豊田市立西保見小学校・保見中学校,浜松市立遠州浜小学校・佐鳴台小学校・開成中学校を訪問した。

2.成果

【1】専任教員のJSLカリキュラムについての理解の深まり

 講師を招いて研修の機会を設けたことにより,専任教員のJSLカリキュラムに対する理解が深まった。特に,これまでの日本語指導テキストを中心とした内容と異なり,児童生徒の実態に沿って授業を柔軟に作り上げる点についての理解が進んだ。さらに,演習形式で,学習指導案作成の作業を取り入れ,個別の指導を受けたことも効果を上げた。

【2】JSLカリキュラムのよさの分析と発信

 授業研究を校内研修だけでなく,研究大会等,他校の教員に授業を公開することで行うことにより,JSLカリキュラムのよさや作り方を広く発信することができた。本市の専任教員が研修会での講師となるなど,専任教員の研究成果も着実に上がってきている。さらに,JSLカリキュラムの原理を生かして在籍学級での授業に転用した新しいスタイルの授業の開発の可能性が見えてきた。今後は,臼井准教授と連携して,在籍学級でのTT方式で,JSLカリキュラムを応用した一斉指導における日本語指導の在り方を究明する方針である。

【3】北九州市の日本語指導体制の改善

 本市は,外国人児童生徒が市内各地に分散して生活しているが,先進的地域は,集住型が多く,JSLカリキュラムを活用した授業の研究も進んでいる。集住型の地域を視察することにより,本市との体制の比較ができ,有益な情報交換ができた。また,本市の訪問指導を効率化の必要性,在籍校の教員全体の日本語指導技術の向上など,改善に向けた方向性が見えてきた。

3.課題

【1】外国人児童生徒の在籍校と非在籍校では,管理職の意識に大きな差がある。非在籍校では,初期日本語指導やJSLカリキュラム,日本語指導員の訪問システムなどについての認識が十分でなく,負担感を現実以上に感じている。非在籍校の管理職及び教員の意識を高めていくことが課題である。

【2】【1】に関連して,どの学校でも外国人児童生徒の編入を行い,適切な日本語指導を行えるように,市内の全教員がJSLカリキュラムを活用した授業づくりについて,理解を深める必要がある。

4.その他(今後の取組等)

【1】JSLカリキュラムを応用した新しい日本語指導の開発

 現在,外国人児童生徒の在籍学級で,TT指導における日本語指導を試行的に行っている。今後は,在籍学級の担任との連携を深めた新しい日本語指導の在り方を明らかにしていきたい。

【2】JSLカリキュラムの広報の充実

 一人一人の能力に応じて,言葉の力を育てるJSLカリキュラムの考え方が,日本人の児童生徒に対しても,学力向上の点から有効であることが分かってきた。そのため,JSLカリキュラムの理論と実践についての情報をこれまで以上に学校に広めていく。具体的には,在籍校の外国人児童生徒教育担当教員を対象に行っていた研修会を,全校の管理職まで対象を広げていく。

【3】国際理解教育に適切に位置付けた整理

 日本語指導は,これまで外国人児童生徒が在籍する一部の学校の教員にのみかかわる課題と受け止められてきた。今後は,国際理解教育の中に適切に位置付け,「異文化理解」・「自己の確立」・「コミュニケーション能力の育成」の柱との関係が明確に見えるようにする。

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総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成22年01月 --