第3章 職場体験充実のポイント

 現在、各中学校では生徒の発達段階、地域性、各学校の実態等に合わせて、それぞれの創意工夫により特色ある職場体験が実践され、生徒の勤労観、職業観の育成、進路への意識や意欲の向上等に大きな成果を上げている。しかしながら、職場体験の実践が体験のみに終わってしまい、本来の教育的機能を十分に発揮できていない傾向も見られる。
 職場体験がその多様な教育的機能を十分に果たし、生徒一人一人の勤労観、職業観の育成を深める学習活動として機能を果たすためには、職場体験のねらいや目的を明確にし、生き方の指導を含めた事前・事後指導の充実、体験の5日間の実施等の質的向上を図る職場体験実施計画の立案が重要となる。また、その実践においては、保護者、体験先(事業所等)、職場体験支援組織等との連携や条件の整備は必要不可欠な条件となる。

【職場体験のポイント】

  • (1)ねらいの設定
  • (2)実施計画の立案
  • (3)体験先、保護者との連携
  • (4)事前指導の充実
  • (5)実施期間中の指導体制
  • (6)事後指導の充実
  • (7)評価

職場体験の広がり/地域との連携

生徒の心に残る職場体験を目指して-1日より3日、3日より5日-

 充実した職場体験を実践するためには、ある程度の期間が必要ではないでしょうか。
 「1日より3日、3日より5日」。同じ活動であったとしてもその質が大きく変わってきます。
 5日間という長さにより、生徒の中にも心の葛藤が現れます。
 緊張の1日目、仕事を覚える2日目、慣れる3日目、考える4日目、感動の5日目・・・・。
 人とふれあう時間の長さが生徒一人一人の心に変容を与えます。
 ある体験受入先の方がこんな感想を述べていました。
 「3日やれば仕事の楽しさがわかる。5日やれば本当の仕事の大切さや厳しさがわかるよ」と・・・。

【職場体験学習チャートマップ(2学年:5日間実践例)】

過程 生徒の活動 学校の役割/保護者・体験先等の支援
1
学年
事前指導 事前学習 将来の夢や職業、働くこと等を通し自分の生き方について考えよう
  • 夢や希望の実現に向けて(夢や希望、生き方への意欲の向上)
  • 職業について考えよう(働くことの意義、職業の内容の理解等)
  • 身近な職業を知ろう(身近な人の職業調べ)
  • 自分の生き方を考えよう(自他の理解、適性の理解、職業人講話)
  • 自分の将来を設計しよう(自己の進路デザイン、進路設計)等
  • 3年間を見通した進路指導全体計画の作成
  • 職場体験実施計画の策定
    (ねらい、位置付け、時期等の検討)
  • 各教科・道徳・特別活動・総合的な学習の時間等との関連による学習活動
  • 支援組織等との連絡
  • 意義やねらいの明確化
  • 基本事項の確認
    (日時、期間、体験先、緊急対応等)
  • 体験受入先の確保
  • 体験先との連絡調整
  • 体験先との基本事項についての確認
    • 職場体験の具体的なねらい
    • 生徒への配慮事項等の確認
    • 仕事の内容
    • 体験時間
    • 昼食、交通手段、服装等
    • 緊急時の対応
    • 欠席等の連絡
    • 評価等の協力依頼
2
学年
◎ 職場体験のねらいの理解、課題の明確化
(「職場体験で何を学ぶのか・・・・?」「職場体験での自分の目標は・・・・?」そのねらいや自分の課題を十分に理解させる)
職場体験に関する直前の指導
  • 体験先希望調査
  • 体験先の選択・決定
  • 調査内容等の検討
    (質問事項、取材方法・内容、活動日誌、まとめ方等の検討)
  • 体験内容の調査、事前訪問
    (自己紹介、体験時間の確認、仕事内容の確認、交通手段、持ち物、服装、昼食、経費等)
  • 安全、緊急対応等に関することの確認
    (欠席連絡の仕方、保険、緊急時の対応、保菌検査等)
  • 社会性やマナーに関することの確認
    (心がまえ、あいさつ、マナー、手紙の書き方等)
  • 体験のまとめ方・事後学習の準備
    (体験のまとめ方、体験期間中のしおり・日誌等のまとめ方等)
5日間の職場体験 1
日目
午前 
  1. 自己紹介・あいさつ
  2. 職場体験実施の注意事項の確認
  3. 職場見学、施設等の説明
昼食
【職場になれよう、職場の方と話をしてみよう】
  1. 仕事内容の見学
  2. 働くことを実感しよう(職業実習)
  3. 本日の反省・まとめ(ノート、日誌への記録)
学校 保護者・体験先等
昼 
  • 緊急対応体制の確認
    • 全生徒の出勤、退勤時間の確認
  • 教職員による引率
  • 教職員による体験先へのあいさつ
  • 生徒の様子の確認や評価
  • 保護者による出欠等の連絡
  • 保護者、支援組織委員等による引率
  • 保護者、支援組織委員、教育委員会等によるあいさつ
  • 生徒の様子の確認や評価
午後
2
日目
午前
  1. 朝のあいさつ、本日の仕事の確認
  2. 働くことを実感しよう(職業実習)
昼食
【「体験先」や「仕事」のことについて質問してみよう】
  1. 働くことを実感しよう(職業実習)
  2. 本日の反省・まとめ(ノート、日誌への記録)
昼 
午後
3
日目
午前
  1. 朝のあいさつ、本日の仕事の確認
  2. 働くことを実感しよう(職業実習)
昼食
【なぜこの仕事についたのか?」「仕事についての考え」等について質問してみよう】
  1. 働くことを実感しよう(職業実習)
  2. 本日の反省・まとめ(ノート、日誌への記録)
  3. 中学校での中間報告会(3日間の体験の確認、情報交換等)
職場体験期間、見守る側のポイント!

学校は・・・・

  • 生徒の変化を観察しましょう
    (5日間の表情や態度の変化)
  • 生徒の不安なこと、困ったこと等を聞きましょう
  • 体験先の方にも、生徒の様子について聞いてみましょう

保護者は・・・・

  • 保護者の仕事や働くことに対する考えを、しっかりと話してあげてください
  • 社会の厳しさ、楽しさを話してあげてください
  • 体験先では、距離をおいて子どもを応援してあげましょう
  • 子どもの話をよく聴いてあげましょう

体験先は・・・・

  • 良いときはほめ、悪いときはしかってください
  • 社会的マナーや礼儀の大切さを教えてあげてください
  • 職業や働くことの大切さを話してあげてください
  • 自分の生き方や中学時代の重要性、学習の大切さ等について話してください
昼 
午後
4
日目
午前
  1. 朝のあいさつ、本日の仕事の確認
  2. 働くことを実感しよう(職業実習)
昼食
【「生き方」「人生への考え」「職場の方の中学生時代」等について質問してみよう】
  1. 働くことを実感しよう(職業実習)
  2. 本日の反省・まとめ(ノート、日誌への記録)
昼 
午後
5
日目
午前
  1. 朝のあいさつ、本日の仕事の確認
  2. 働くことを実感しよう(職業実習)
昼食
【「自分の将来」や「悩み」等について話をしてみよう】
  1. 働くことを実感しよう(職業実習)
  2. 本日の反省・まとめ(ノート、日誌への記録)
  3. 5日間のまとめ(体験先の方からの評価)
  4. 体験活動終了のお礼(今後の予定等の連絡)
昼 
午後
事後指導
職場体験に関する直後の指導
  • 職場体験の記録のまとめ
    • 職場体験ノート、しおり、記録等のまとめ
    • 職場体験全体の感想
  • 職場体験に対する多様な評価
    • 生徒の自己評価 ・ 教職員の評価
    • 保護者からの評価 ・ 体験先の方からの評価
  • 礼状の作成
  • 学校全体の報告書等の作成
  • 事後訪問(職場体験の取組に対する生徒自身の再評価)
  • 職場体験報告発表会
    • 発表資料の作成
    • 多様な体験を生徒間で共有化する機会(相互評価)
    • 保護者、地域、体験先、先輩、後輩等からの多様な評価の機会
  • 生徒の感想や自己評価の集計と分析
  • 保護者、体験先からの評価の集計と分析
  • 学校及び保護者、支援組織等からの礼状
  • 生徒の事後訪問への指導
  • 発表会の内容の検討
3
学年
事後学習
将来の進路に向けての主体的な学習(学習への意欲の向上)
職場体験の経験をもとに、自分の進路を考え決定していこう
  • 適性を生かした進路(自己の適性の再確認、職業の適性等)
  • 卒業後に学ぶ道(中学校卒業後の上級学校等について)
  • 自分の将来のデザイン(職業生活を考えた自分の将来設計等)
  • 自分にあった進路先(中学校卒業後の進路先の選択・決定)
  • 自分の道を切り拓こう(進路決定、自己実現への意欲の向上)
  • 三者面談等による職場体験の評価・振り返り
  • 各教科・道徳・特別活動・総合的な学習の時間等との関連による学習活動
  • 上級学校訪問等への職場体験の経験の活用

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --