ITER(イーター)計画推進検討会(第1回)議事録・配付資料

1.日時

  平成17年8月9日(火曜日)14時~15時30分

2.場所

  KKRホテル東京 白鳥の間(11階)

3.議題

  • (1)ITER(イーター)計画推進検討会の開催及び運営について
  • (2)ITER(イーター)計画の状況と今後の予定について
  • (3)本検討会の進め方について
  • (4)その他

4.資料

5.出席者

  有馬座長、高村委員、松田委員、本島委員

オブザーバー

  吉田科学官、山田学術調査官

事務局

  森口研究開発局長、木谷審議官、藤木審議官、板倉核融合開発室長

6.議事概要

(1)ITER(イーター)計画検討会の開催及び運営について

  資料1、2に基づき、事務局から説明を行い、ITER(イーター)計画推進検討会運営規則について委員会の了承を受けた。

(2)ITER(イーター)計画の状況と今後の予定について

  資料3‐1~3‐5に基づき、事務局から説明を行った。

有馬座長)
  資料3‐2の4ページに「ホスト国は非ホスト国から推薦される的確なITER(イーター)機構長の候補者を支持する。」と書いてあるが、ITER(イーター)機構長は最終的には6極で相談するのだから、他の4極が反対したら認められないのか。資料3‐2の1ページに「添付のジョイントペーパーに留意し、」と書いてあるが、その留意の深さというのはどれぐらいなのか。

事務局)
  ITER(イーター)機構長をどのように決めるかについては、これから協定の中で決めていくわけだが、今までの議論を踏まえると、全会一致で決めるというのが基本的な考え方。ただ、その中でも、日本が候補を出し、そしてホスト国であるEUがサポートするというのは非常に大きなウェートがある。日本とEUで合意できたものについては、十分他の極の理解が得られるものと考えている。
  また、共同文書については、あくまでも日本とEUとの合意文書なので、これを6極が承認する、しない、という性格のものではない。ただし、わざわざ共同宣言に添付して留意すると書いてあるということは、基本的にこれを尊重するということを最大限に表現した言い方と考えている。

有馬座長)
  日本は10パーセントの資金負担で20パーセントの調達に責任を持つということだが、欧州以外の参加国に日本は漁夫の利を占めたというふうに思われてはいけない。日本の負担は1極以上のものがあるということをどこかで言うべきではないか。

事務局)
  それについては、他の4極から、日本とEUとの間での交渉が長引くのは好ましくなく、できるだけ早く合意を得るように努力してほしい、ということを非常に強く求められたという経緯がある。またITER(イーター)本体の費用だけを考えれば確かに10パーセントだが、幅広いアプローチの費用負担が460億円あり、これは建設期間の経費の約8パーセントに相当する。そして幅広いアプローチについては、日本と欧州が費用を出し合うわけだが、そこへの研究者の参加は6極に対してオープンにする。そういう形で貢献する。

有馬座長)
  要するに10パーセント負担はホスト国以外の5極は同じだが、日本は準ホスト国となるために460億円余計に出すので他の4極と比べると全体では負担が大きいというわけか。それは6極全部で了解されているのか。機構の常勤職員を非ホスト国が20パーセント派遣できるということも6極全体が合意しているのか。

事務局)
  それらは「留意」というところに入っていることになる。

高村委員)
  幅広いアプローチの議論を展開するに当たって、まず、核融合研究として優先度が高いか、核融合エネルギーの早期実現に資するのかという視点が必要と思われる。その上で、ITER(イーター)を通して、かつ原型炉へ向けて、日本の実力と存在感が一層向上するという面から見ていく視点が一つあるのではないか。
  もう一点として、幅広いアプローチを日欧協力でやるわけだが、これを日本の核融合コミュニティー、大学、研究所、さらに産業界も含めて幅広い継続的な発展に資するという観点が必要という点を、全般的な話として強調申し上げたい。

松田委員)
  これまで数年間、特にサイト交渉が始まってから、ITER(イーター)がハイライトされたのだが、核融合の研究開発はITER(イーター)だけでできるものではなくて、目的はその後の発電炉である。原子力委員会の計画にもあるように、ITER(イーター)は第3段階の中核装置だがそれだけで十分ではなく、材料開発や先進的なプラズマ研究などを総合的に行い、初めて発電炉ができる。そういう意味で、ITER(イーター)交渉の途中から、幅広いアプローチ等のITER(イーター)以外の研究開発も含めて議論したということは、健全な方向にいったのではないかと思う。そういう観点からすると、ITER(イーター)だけに特化して努力する、あるいは幅広いアプローチだけに特化して努力するというのは不健全な姿であって、それをいかに調和して取り入れ、全体の力を伸ばしていくかというのが非常に重要な視点だと思う。特にどちらも、10~30年という長いスパンでやっていかないといけないので、その間に人材が継続的に育成されていき世界のリーダーシップをとる、というようなシステムを作り上げないといけない。そういう意味で、幅広いアプローチを考えるに当たっても、ある装置だけに特化するのではなくて、バランスよく選ぶというのが、いい人材を継続的に生み出すモチベーションになるのではないかと思う。

有馬座長)
  日本ではJT‐60があり、これも進めなければいけないと思うのだが、ヨーロッパ、イギリスの施設やドイツのミュンヘンにある施設は今後どうするのか。

松田委員)
  ヨーロッパには、現在、トカマクだけでも数台ある。そういうところは、研究者を育てていくという役割を持っているので、無くなることはないと思う。ただし、少しずつ集約化していくのではないかと思っている。一番大きい装置がJETだが、JETは少なくともITER(イーター)の建設期間中は動かしていくと明言していた。ヨーロッパも、ITER(イーター)だけに集中するのではなくて、中・小型の装置も利用しながらやっていくだろうと思う。

有馬座長)
  JETはある時期でシャットダウンするのではないか。

松田委員)
  そう思う。ITER(イーター)の建設が終わったときにシャットダウンするというようなことを聞いている。また、ヨーロッパの目から見ると、幅広いアプローチに入ってくる計画というのは、日欧の共同研究なので、これも一種のヨーロッパの研究という見方をおそらくすると思う。

有馬座長)
  本島委員、あなたのところはどうするのか。

本島委員) JETについて1つだけ補足させていただくと、実験期間というのはいわゆる中性子発生量で決まるので、こちらはある意味、どうしても止めないといけなくなる、というのがヨーロッパの考え方だと思う。
  今までの政府間交渉において日本は大変がんばったと思う。それで、次のステップに移るためには、流れを十分考慮して、今後の方向を決めていく必要がある。先ほど高村委員も言っていた、日本の足腰を強くするということも、国内の体制を重点化するということも、科学技術・学術審議会学術分科会のワーキンググループで議論して決まっている。だから、そういった重点化の中で日本のコミュニティーがITER(イーター)計画にどう取り組んでいくかということだと思う。国際協力だと言っても、はっきり言えば、強調と競争の2点がある。そういう点で、国内体制を学術から開発まで広いスペクトルを包含して、役割分担ができるところはしっかり役割分担をして、人材も育てていくということが重要。
  それから、もう一つは、流れという点では、資料3‐3にもあったが、青森県の尽力というのは非常に大きかったと思う。だから、候補地として名乗りを上げられたという点を重視していかなければいけないのではないかと思っている。
  私ども核融合科学研究所は大学との共同利用機関ということだから、原研が日本の極内機関になるだろうと思っている。しかし、我々の得意なところ、特に学術面、それから、大学には非常に高いポテンシャルを持った研究者がいるので、そういった研究のアクティビティーとの共同利用という観点では、大いに役に立てるのではないかと思っている。

有馬座長)
  核融合研のこともあるけれども、大阪大学のレーザー核融合なども含めて、大学には色々な計画がある。大学側として、そういうものと、この幅広いアプローチも含めたITER(イーター)計画との関係は、今後どういうふうに進めていかれるのか。

高村委員)
  検討事項が3つ挙げられてあって、項目1.は「ITER(イーター)計画の実施に関する我が国の対応のあり方について」とある。今日は幅広いアプローチの議論が主だと思うのだが、実は1.の問題が大変重要。特に、日本の実力を150パーセント出していくためには、連携協力が大変重要だと思う。そういう意味で、日本原子力研究所と核融合科学研究所は大変大きな柱であり、また、ITER(イーター)計画の極内機関としては原研がなるのだろうが、実際にはオールジャパンという図式になることが大変重要だと思う。
  それから、先ほど私が核融合コミュニティーの幅広い継続的な発展が重要であるということを申し上げたが、その観点からすると、大学の研究にとって幅広いアプローチは大変重要であり、例えばデモ炉の設計というのはシミュレーションセンターとも関連するし、サテライトトカマク、IFMIF、これがデモ炉設計センターを中核にしてデモ炉に向かって進んでいくという面がある。ITER(イーター)に関しては、シミュレーションセンターとITER(イーター)の遠隔実験センターがセットになって進めていくというもの。そういう中で、大学等の研究が活かされていく面がかなり多いのではないかと思う。
  それから、学術と開発があるわけだが、炉工学も含めて核融合科学すなわち慣性核融合とか高性能磁気閉じこめとか、そういうものにも配慮しつつ発展していかなければいけないだろうと思っている。それは色々な意味で核融合の可能性を高めるという役割もするし、そこで行われている研究が原型炉などに活かされていくベースになっていくという面もあるかと思う。したがって幅広いアプローチはもちろんだが、それを含めて、大学の基盤的な研究や学術的な研究というのは重要であるという認識を、引き続き高めていただきたいというのが私の希望。

有馬座長)
  460億円ずつ費用分担を幅広いアプローチのためにするのだが、これは何年間するのか。

事務局)
  ITER(イーター)の建設期間と大体同時期ということで、10年間だと思っている。

有馬座長)
  そうすると、46億ずつということか。もちろん、そう平均ではいかないかもしれないだろうが。それから、それ以外にITER(イーター)そのものに対する10パーセント負担があるが、それが年間どのくらいか。

事務局)
  ITER(イーター)の建設費が5,000億円と見積もられており、建設期間中の国際機構の運営費が約700億円なので、合わせて5,700億円、この1割なので、計570億円を大体10年間で負担する。その後は運転費、さらには廃止に必要な経費がかかってくるが、当面は10年間で570億円を負担する。

有馬座長)
  核融合研も含めて、大学関係としては、ITER(イーター)と直接関係しないで研究していくグループが幾つもある。大学関係に対しては、今までどおりの予算は大体考えていいのか。ITER(イーター)計画が動いたことによって、こちらのお金は少し減らそうということになると困るだろうと思うのだが、それはどうか。

事務局)
  予算については、政府全体の予算が今後どうなっていくかということもあるが、我々としては、原子力、ITER(イーター)等の核融合や核分裂も含め、いわゆる国家基幹技術というふうに位置づけていきたいと考えている。第2期の科学技術基本計画でこれらの分野は必ずしも十分に位置づけられていなかったが、国が自ら取り組まないとなかなか進まない分野というのがあると思うので、そういうものを国家基幹技術として位置づけ、また予算も獲得していこうと思っている。

有馬座長)
  核融合、加速器なども含めた原子力予算というのは、ずっと減ってきているが、ITER(イーター)計画をやるときに私が言ってきたことは、原子力予算を、完全に復活までいかなくても、今までのように減らしてしまったらアウトであり、ここから増やさなければいけないと言い続けてきた。今回、ITER(イーター)そのものは日本に誘致できなかったけれども、幅広いアプローチを我が国で実施し、460億はITER(イーター)そのものとは別に出すことになり、その辺は十分担保されるのだろうか。今後さらに原子力予算を減らされるというようなことにならないのか。

事務局)
  国家基幹技術として重要性を訴えて、減らさないどころか、充実、拡充していかなければならないと考えている。

事務局)
  本日ご欠席の田中 知先生のほうからご意見を預かっているので、それを朗読させていただく。

田中委員からの御意見)
  「現時点で重要と考えていることについて、2点申し上げておきたいと思う。

  1. ITER(イーター)計画の実施、幅広いアプローチのいずれにおいても、その目的を核融合エネルギーの実現、特に発電実証プラントないし原型炉に明確に絞り、その観点で具体案の検討を行うべきこと。
  2. 検討は公開、かつ、なるべく広範囲の専門家及び専門外有識者の意見を求め、我が国のエネルギー研究、学術研究としての有効性、整合性を客観的に評価すること。

  1.については、閣僚級会合と幅広いアプローチの概念で強調された概念であり、ITER(イーター)計画を中核としつつも、新たな状況が起こっていると認識する。我が国が核融合エネルギー実現のために必要な課題を再検討して、ITER(イーター)を補完する国際的役割を担ったという事実にかんがみ、専門的検討を行うべきと考える。国際交渉の過程で例として挙がった候補プロジェクトのみならず、エネルギー開発としての整合性、網羅性を踏まえて、広く案を求める必要があるだろう。特にITER(イーター)が我が国に立地しないことで得難くなった知見、逆にITER(イーター)装置が立地しないために国際的に期待される責務を考慮する必要があると考える。この問題については、日本学術会議の核融合研究専門委員会で、既に昨年から工学系研究者を中心に検討が行われ、計画が報告されていることを申し添える。
  2.については、申すまでもないが、外交交渉の過程及び結果として、先に資金があり、後からその使途が政治的配慮で説明されているといった一般社会や他分野研究者の誤解は、できる限り是正しておく必要があると考える。幅広いアプローチは国際交渉の過程で導入された概念と一般的には思われており、少なくとも研究者や学会が自発的に提示したものでないことは事実だ。行政的視点や経緯が重要であることはもちろんだが、プロジェクト選定は核融合研究全体、また国の科学技術研究全体の中でも特に重要性が認められるものとして、その必要性が客観的に説明できる必要があるだろう。そのためには、透明性を確保して検討を公開するだけではなく、広く意見を検討会の外に求める必要があると思う。」

有馬座長)
  私が知っている限りでは、どういうことを幅広いアプローチとして実施すれば双方が納得するだろうかという議論を研究者の意向も踏まえ相当した。その点では今のご意見は、重要なご意見だけれど、そのあたりは少し誤解があるのではないかと思う。外交交渉で出てきたことは事実だが、研究者の意向は随分踏まえたと思う。

松田委員)
  キングさんがファーストトラックという考えを持ち込んだ背景にも、実はヨーロッパの核融合ファミリーの中で、次は何が必要だ、という議論があって、それを政治的に取り上げたということだし、日本においても、第3段階の計画そのものがもう幅広いアプローチを全部包含している。だから、取り上げたというのは政治的に取り上げたけれども、ベースが科学者に無かったというのは、やや違うと思う。ITER(イーター)に取り上げるときにも、6極の科学者が集まって、どういう研究開発が必要かということを2回ばかりワークショップで行った。それから、日欧の間でも専門家が集まって、本島先生なども出席されて行った。それらを集約したものが、今の日欧のペーパーにまとまってきている。

有馬座長)
  そうだと思う。ちょっとした表現の仕方で、何かそういうことが無かったように書かれていたような気がするが、多分そうではなくて、了解の上でやっているのだと思う。また、幅広いアプローチの候補が5個も出ているけれども、これは1つ幾らずつかかるのか。

事務局)
  まだスペックが決まっていないので、費用は決まっていない。次回以降の議論で具体的なスペックを議論する中で、大体見えてくると思っている。

有馬座長)
  松田委員に質問だが、JT‐60のアップグレードをやるべきだとかねがね思っているが、その予算はどこから出るのか。要するに、幅広いアプローチの中に含ませて出すべきなのか、それとも原研そのものとして出すのか。

松田委員)
  幅広いアプローチの中に含ませて出したほうがいいと思っているが、実現できるのであればそうでなくてもいい。とにかく実現するということが重要。

有馬座長)
  それから、本島委員の研究所のほうは、幅広いアプローチの中に繰り込まなくてもいいのか。

本島委員)
  法人化された大学共同利用機関法人の中の運営費交付金で大型ヘリカル装置を運転しており、それから、双方向性を強調した共同研究の強化が学術分科会の下に設けられたワーキンググループの方向性として出ており、ある程度の予算を核融合科学研究所の中の運営費交付金の中に確保して、大学が新しい芽を出していくことにコミュニティーとして責任をとるという仕組みで、今動いている。ITER(イーター)が動き出して、日本の予算の考え方等も少しずつは変わっていくと思うが、今の仕組みで頑張っていけるのではないかと期待している。

有馬座長)
  JT‐60を原研自体の計画として進めれば、原研の研究者及び日本の研究者の考えで主体的に進められる。それが幅広いアプローチになったときに、ヨーロッパの人の意見は当然入ってくる。その点は大丈夫なのだろうか。

松田委員) JT‐60というのは、もともと建設に2,000億円相当の経費をかけている。今度の改修にかかるお金は数百億円。仮に改修にかかるお金を日欧の幅広いアプローチに入れたとしても、例えばマシンタイムの全部が日欧折半ということにはならない。つまり、完成して実験する段になったときには、日本国内計画として実行する部分と、幅広いアプローチとして日欧で共同して実行する部分の両方が共存し得ると思っている。

有馬座長)
  2,000億円投入しているところに、極端に言えば、ちょっと追加するというわけだが、仮に、500億円ぐらい追加するところに対して、ヨーロッパの影響があまりにも強くならないかということが私は心配。国際協力なのだから、そのくらいけちなことを言わないという考えもあるが、日本の今までの努力及び投資というものが十分公平に認められて、マシンタイムの分配の仕方などにおいて、十分考慮に入れられるようにやれるのだろうか、そこはどうなのか。

松田委員)
  そういうふうに交渉しないといけないと思っている。

有馬座長)
  そこはちょっとデリケートな問題だと思う。今まで国際センターでないものが国際センター化していくわけだから、そういうあたりを考えながらやらないといけない。そこはまたご議論を賜りたいと思う。

山田学術調査官)
  まず心配していたのは、これだけ、5つの幅広いアプローチ、プラスITER(イーター)を日本の今のリソースでどれぐらいやれるのかということ。ある一つに最適化しても適当ではなく、要するにパッケージとして、どれだけ全体として利用可能な資源の中でできるかということを考えないといけないと思っている。
  それと、幅広いアプローチについて、日欧の交渉で成り立っていくわけだが、この検討会の目標として、どこまで具体化するのか。というのは、相手がある話なので、あまり絞っていくとご破算になる可能性もあるし、あいまいな形で持っていくと、交渉が成り立たないとか、競争力が出てこないということがあるので、その点を確認させていただきたい。

事務局)
  ヨーロッパとの間の約束では、幅広いアプローチの施設そのものは日本が選択するということになっており、基本的には我々が内容は決められるので、あとはスペックの問題だと思う。ただし、ITER(イーター)本体に絡むような話、例えば遠隔実験装置については、ITER(イーター)本体とつなげるので、これはヨーロッパだけでなく、ほかの4極にも最終的には了解をとらなければならない。そういう意味では、ITER(イーター)本体と直結するようなものでなければ、我々がこういったスペックのもの、それがなおかつ核融合全体の研究開発に資するということが確認できるようなものであれば、こちらの議論が優先するので、ここで決め得ると思っている。

有馬座長)
  今のことに関係するのだが、要するに、遠隔実験にしても計算機シミュレーションにしても、こういうものが仮にできたり、JT‐60のレベルアップができたりしたときに、これは単にヨーロッパと日本だけじゃなくて、6極に対して開かれるのか。

事務局)
  研究活動については、6極に対してはオープンにする。

有馬座長)
  だから、単にヨーロッパと日本の間の合意だけではなく、他の4極も含めて全般での合意で動いていくということか。

事務局)
  運営そのものは、基本的には日欧の2極で運営する。先ほど言った、遠隔実験装置のような本体に絡むものは別だが、それ以外のものはおおむね日本とヨーロッパで運営はできる。研究活動への参加は、ほかの4極にもオープンにすると、そういうことになっている。

有馬座長)
  基本的に、ヨーロッパだけを頭に入れておけばいいわけだな。

事務局)
  遠隔実験装置は別だが、それ以外のものは日本とヨーロッパで大体合意できると思っている。

吉田科学官)
  実はITER(イーター)あるいは幅広いアプローチという時代をどういうふうに読むかというのはなかなか難しい問題。マクロには、いわゆる学術研究から開発研究へフェーズが移行しているという言い方ができると思うが、フェーズの移行というのは研究の現場では難しい問題を含む。学術と開発が二項対立するのではなく、学術と開発がいかに表裏一体で進むのかということに知恵を絞らないといけない。
  有馬先生が質問されたように、具体的な次元で言うと、実験装置がシャットダウンするのだろうか、どうだろうか、こういったような問題があって、これは現場にいる研究者にとっては切実な問題。それは進歩のプロセスであるが、そのときに幅広いアプローチというものが、学術と開発がうまく融合できる場になってほしい。国際的にも、多くの研究者を呼び込んで、さすが日本だと言われるようなものを作っていく。そういうことに知恵を絞る必要があると思う。ぜひこの場でも、そういう視点を重要なポイントとして、具体的な次元でいろいろご議論いただきたいと思っている。

有馬座長)
  私を除いて皆さんご専門の方で、学会の人たちのサポートを十分受けておられると思うのだが、ここだけで決定し得るものではないと思う。研究者の意向をもう少し強く反映しておかなければいけないのなら、それはどういうやり方で行うのか。文部科学省のことは、科学技術・学術審議会がいろいろと議論して決めてきた。それと別にこの検討会があるわけで、ここで一応、デモ炉でも何でもいい、JT‐60をやるとか、それを決めていって、それは単に文科省に対する推薦になるのか。それとも、これが相当決定的な影響力を与えるのか。その辺はどうなのか。
  要するに、決定の前に幾つかの意見を聞かなければいけない。1つは、ここに直接参加していないような研究者の意見をどう酌み取っていくのか。これは高村先生などがおられるから、大学関係はそれぞれご意見を下さると思うけれども、それにしても大勢いる。昔の学術審議会はそれをきちんと聞いて決めていったわけだが、そこのところをどうするのか。それから、これ以外に、我々だけではなくて、産業界の意見とか、色々なことを聞かなければならない面もあるけど、それはどこが聞いて決めていくのか。

事務局)
  いわゆる我が国の核融合に係る研究開発全般については、科学技術・学術審議会のほうにも検討の場を設けたいと考えており、若干重複する部分はあると思うけれども、ITER(イーター)計画に係るもの、特に当面の具体的な話として、幅広いアプローチについては、この場でお決めいただきたいと我々としては考えている。

(3)本検討会の進め方について

  資料4に基づき、事務局から説明を行った。

高村委員)
  コミュニティーの意見をどのように反映させるかというところは、私も、この検討会に臨むに当たって色々な方に相談申し上げた。学会というものもあるのだが、意見の反映の機会は年会等に限られる。核融合コミュニティーの中にはネットワークというものがある。これには核融合科学ネットワークと炉工学ネットワークがあり、全体は核融合ネットワークとしている。これは若干ボランティア的なところもあるが、かなりしっかりした組織になっている。プラズマ関連では、現在、東京大学の小川先生がネットワークの委員長であり、数日前にネットワークの委員会があって、そこでこの検討会の話題を、私と山田学術調査官のほうから、少し紹介した経緯がある。
  それと、もう一つ、核融合フォーラムというのがある。これは会員制であって、佐藤 文隆先生が議長だ。ここもある程度コミュニティーの意見が聞ける。これに関しては、日本原子力研究所が事務局だが、こういうところから、情報をできるだけ流し、色々な意見を出していただいて、少しでもこの検討会に反映できればと考えている。それで十分であるかどうかというのは、私も若干心配するところであるけれども、現在はそういうことで考えている。

有馬座長)
  幅広いアプローチをこの検討会で検討するということは、私も理解した。しかし、ITER(イーター)計画の実施に関する我が国の対応のあり方という検討事項の第1項目は大きな問題。例えば所長の決定等は、まさにITER(イーター)計画の実施に関する我が国の対応の一つだ。その辺までやるのか、それはもうほかでやるからいいのか。どこまでやったらいいのか。

事務局)
  機構長人事等、具体的な話は、行政サイドのほうでやらせていただきたいと思うが、せっかくこういう検討会の場ができているので、我々としては、逐次、情報をご報告しながらご意見を伺うということで進めていきたい。

有馬座長)
  当面、幅広いアプローチと称するところをしっかりとやるということ。それ以上、ITER(イーター)計画全般に対する話までやるとなると、これは大変だ。

高村委員)
  これはもう大変重い課題だと思うけれども、ポイントは、日本が持てる力を150パーセントぐらい出せるような体制をぜひ作りたい、あるいは作っていただきたいということだと考える。

松田委員)
  国際協力についてだが、力がないと良いところをとれない。サイト絡みで幅広いアプローチの決着に至ったというのも、サイトで非常にがんばったからである。そういう意味では、今度、幅広いアプローチとITER(イーター)の色々な組み合わせを実施するが、その中で、必ず日本がイニシアチブをとれるような、そういう配慮というのは必要で、そういう中で競争しながら協力するという精神が大事だと思う。

本島委員)
  専門家の意見を聞くということは非常に大事であるし、現状だと、核融合及びプラズマの専門家が責任を持って議論することは当然のことだと思う。このプロジェクトは、我が国の科学技術のベースをさらに高めるという点で大変重要なチャンスで、したがって、先ほど申し上げたように、専門家で責任を持って検討して案をまとめると。しかし、これだけの幾つかの重要なおもしろい課題があって、さらに、日本にはLHD等のベースがあるのだから、社会に対して責任を持つというのはもちろんのことだが、サイエンスとして考えたときも、他の分野の研究者からどれだけ興味を引き出せるかという点が大変重要になってくると思う。遠隔実験センターについては、データベースが自律系とかそういった複合複雑系等に結びついていくし、シミュレーションセンターについては、地球シミュレータを例にとっても大変広範なことができる。ここの検討会としては、どれぐらい外部から興味を引き出せるかという点について出席している専門家が責任を持って考え方を述べるということで決めていくということになるのかなというふうに思っている。

吉田科学官)
  こういった分野の研究が、学術としてのアイデンティティーを標榜するからには、学術の広い分野から関心をもらうことが非常に大事だ。科学技術・学術審議会のワーキンググループが休会状態になっているが、これをぜひ早い時期に再開して、学術研究としてのあり方について、学際性も含めて議論していきたいと思う。

山田学術調査官)
  今言われたことの一部は、ここで議論されると思うのだが、これはやはりかなり大きなミッションを背負って、具体的な成果を出していかないといけないので、並行して先生方がご指摘された重要な点を議論していただく場をお願いしたいと考えている。

事務局)
  科学技術・学術審議会のワーキンググループについて、吉田科学官のほうからお話があったように、学術のワーキンググループをいずれ復活させるという議論がある。他方、研究開発のほうの議論を、同じように科学技術・学術審議会の場で議論しなければならないというニーズもある。いずれにしても、今後の核融合の研究開発の分野では、ITER(イーター)、それから幅広いアプローチ、それからそれ以外の学術の世界、これをオールジャパンで進めるべきではないかとのご意見があるので、そういった体制も視野に入れながら、核融合の研究開発の政策論を議論する場というのをなるべく早く立ち上げていきたいと思っている。

(4)今後の日程について

  今後の日程について、資料4に基づき事務局から説明を行った。

有馬座長)
  IFMIFにしても何にしても、候補プロジェクト全てを議論するには相当時間が要るので、これはやらないというのがあったら先に言って欲しい。2つか3つにきちっと絞って、そこを十分議論したらいいと思う。核融合の方たちにそれをお願いしたい。全部やるなら、別だが。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

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(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))

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