学校法人会計問答集(Q&A)第17号 計算書類の注記事項の記載について[3]

基準第34条第1項第3号ないし第6号の注記
Q13 改正前の基準第34条の注記事項の取扱いはどのようになりますか。
A  従来の規定により記載を要することとされていた「退職給与引当金の額の算定方法」については、重要な会計方針として記載することとなる。「減価償却額の累計額の合計額」、「徴収不能引当金の合計額」、「担保に供されている資産の種類及び額」及び「翌会計年度以後の会計年度において基本金への組入れを行うこととなる金額」については、従来どおりの記載である。

【記載例】
減価償却額の累計額の合計額   バツバツバツ
徴収不能引当金の合計額   バツバツバツ
担保に供されている資産の種類及び額
担保に供されている資産の種類及び額は、次のとおりである。
土地   バツバツバツ
建物   バツバツバツ
定期預金   バツバツバツ
翌会計年度以後の会計年度において基本金への組入れを行うこととなる金額
バツバツバツ

有価証券の時価情報
Q14 有価証券の時価情報の注記は、どのように記載するのですか。
A
 学校法人が時価の変動する有価証券を所有している場合、市場変動リスクにさらされており、会計年度末に相当の含み損又は含み益があれば取得価額による表示だけでは実態を表しているとは言い難いので、保有する有価証券の簿価総額あるいは含み損又は含み益に金額的重要性がある場合には有価証券の時価情報を注記する。時価情報の注記として、時価のある有価証券の貸借対照表計上額及びその時価並びにその差額を記載することとなる。なお、国債、地方債、政府保証債、その他の債券を満期まで所有する意思をもって保有する場合には、会計年度末における評価損益が多額であっても実現する可能性が低いことから、時価情報の注記として満期保有目的の債券を内書きして記載することが望ましい。
 この時価情報を記載しなければならない有価証券の範囲は、時価のある有価証券のみである。ここでいう時価とは、取引市場が十分に確立している場合は市場価格であり、取引市場が十分に確立されていない場合には市場価格に準ずるものとして合理的に算定された価格をいう。外貨建有価証券の時価については、外貨建の時価に年度末日の為替相場により円換算した額によることとなる。

【記載例1】
有価証券の時価情報
【記載例1】有価証券の時価情報の表

【記載例2】
 有価証券の時価情報(貸借対照表の勘定科目ごとの区分によって記載した場合)
【記載例2】有価証券の時価情報(貸借対照表の勘定科目ごとの区分によって記載した場合)の表
記載上の注意
(1)  時価のある有価証券(特定目的の引当資産に含まれる有価証券を含む。)を記載する。なお、時価のない有価証券(特定目的の引当資産に含まれる有価証券を含む。)についても記載する場合には、時価のないものの貸借対照表計上額を明示して記載する。
(2)  特定目的引当資産に含まれる預金等については記載を要しない。

このほか各学校法人の実態に応じて、次のように記載することも考えられよう。
1. 株式、債券などの種類ごとに記載する。
2. 有価証券の運用方針を記載したり、また、満期保有目的の債券の評価損益が多額であっても実現する可能性が低い場合にはその旨を注記する。

満期保有目的の債券
Q15有価証券の時価情報の注記に記載する、満期保有目的の債券の「満期まで所有する意思をもって保有する」とは、どのようなことをいうのでしょうか。
A  満期まで所有する意思をもって保有するとは、学校法人が償還期限まで所有するという積極的な意思とその能力に基づいて保有することをいう。保有期間が漠然と長期であると想定し保有期間をあらかじめ決めていない場合、又は市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんにより売却が予測される場合には、満期まで所有する意思があるとは認められない。また、資金繰計画等からみて、満期までの継続的な保有が困難と判断される場合には、満期まで所有する能力があるとは認められない。

満期保有目的の債券を償還前に売却等した場合の注記
Q16 満期保有目的の債券の一部を償還前に売却した場合、あるいは満期まで保有しないこととなった場合、どのように注記するのでしょうか。
A  当初、満期まで所有する意思をもって保有していたが、その一部を償還期限前に売却し、残りについても満期まで所有する意思がない場合には、時価情報の満期保有目的の債券には集計しない。また、会計年度末において満期まで所有する意思がない場合においても、時価情報の満期保有目的の債券には集計しない。企業会計においては、例えば満期保有目的の債券の売買目的への保有区分の変更によって、評価基準を原価法から時価法へ変更しなければならないが、学校法人会計では評価基準は原価法であるため、保有目的を変更しても評価基準に変更はなく、実態に合わせて注記に正しく集計すればよいものと考えられる。

デリバティブ取引の会計処理
Q17 学校法人会計では、デリバティブ取引はどのように会計処理されますか。
A  デリバティブ取引は、取引により生じる正味の債権又は債務の時価の変動により保有者が利益を得たり、損失を被るものである。例えば、為替予約取引、金利スワップ取引があり、他社株転換社債、日経平均株価連動社債等のいわゆる仕組債もデリバティブが組み込まれた複合金融商品と考えられる。
 学校法人会計では、デリバティブ取引を行っていても、デリバティブ取引に係る価格変動、金利変動及び為替変動による損失が確定しているか、あるいは確定が見込まれる場合を除いて、契約上の決済時まで会計処理が行われない。ただし、デリバティブ取引の契約金額又は決済金額に重要性がある場合には決済時に多額の損益が計上される可能性があり、会計年度末において時価の変動による影響額を把握するために注記が必要となる。

デリバティブ取引の注記
Q18 デリバティブ取引の注記は、どのように記載するのですか。
A
 デリバティブ取引の注記として、デリバティブ取引の対象物、種類、当年度末の契約額等、契約額等のうち1年超の金額、その時価及び評価損益を記載することとなる。当該取引がヘッジ目的であろうと投機目的であろうと注記する。
 なお、当該デリバティブ取引の利用目的について、ヘッジ目的あるいは投機目的である旨を注記することが望ましい。また、ヘッジ目的で評価損益が実現する可能性が低い場合には、その旨を注記することも考えられよう。

【記載例】
デリバティブ取引
【記載例】デリバティブ取引の表

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