第1章 地方独立行政法人(公営企業型を除く)に適用される会計基準及び注解 第2節


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2節 概念

8 資産の定義
1  地方独立行政法人の資産とは、過去の取引又は事象の結果として地方独立行政法人が支配する資源であって、それにより地方独立行政法人のサービス提供能力又は将来の経済的便益が期待されるものをいう。
2  資産は、固定資産及び流動資産に分類される。
3  地方独立行政法人においては、繰延資産を計上してはならない。(注8)

注8>繰延資産について
 地方独立行政法人においては、一般的に地方公共団体からの財源措置が行われるが、その額は、通常地方独立行政法人に負託された業務に係る支出額に対応する形で措置されることとなる。また、研究開発費等を資産として貸借対照表に計上することは適当でないとする「研究開発費等に係る会計基準」の考え方を勘案すると、地方独立行政法人においては繰延資産を計上することは適当ではなく、支出した当該事業年度の費用として処理すべきものである。

9 固定資産
 固定資産は、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産に分類される。(注9)

注9>流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について
1  地方独立行政法人の通常の業務活動により発生した受取手形、未収入金、前渡金、未払金、前受金等の債権及び債務は、流動資産又は流動負債に属するものとする。ただし、これらの債権のうち、破産債権、再生債権、更生債権及びこれに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものは、固定資産たる投資その他の資産に属するものとする。
2  借入金、差入保証金、当該地方独立行政法人の通常の業務活動以外によって発生した未収金、未払金等の債権及び債務で、一年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が一年を超えて到来するものは、投資その他の資産又は固定負債に属するものとする。
3  現金及び預金は、原則として、流動資産に属するが、預金については、一年以内に期限が到来するものは、流動資産に属するものとし、期限が一年を超えて到来するものは、投資その他の資産に属するものとする。
4  売買目的有価証券及び一年以内に満期の到来する国債、地方債、政府保証債その他の債券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は投資その他の資産に属するものとする。
5  製品、半製品、原材料、仕掛品、医薬品、診療材料等のたな卸資産(以下同じ。ただし、公立大学法人については、基準第52及び第56においては、医薬品及び診療材料を除く。)は、流動資産に属するものとし、地方独立行政法人がその業務目的を達成するために所有し、かつ、その加工又は売却を予定しない財貨は、固定資産に属するものとする。
6  なお、固定資産のうち残存耐用年数が一年以下となったものも流動資産とせず固定資産に含ませ、たな卸資産のうち恒常在庫品として保有するもの又は余剰品として長期間にわたって所有するものも固定資産とせず流動資産に含ませるものとする。

10 有形固定資産
 次に掲げる資産(ただし、(1)から(9)までに掲げる資産については、地方独立行政法人の通常の業務活動の用に供するものに限る。)は、有形固定資産に属するものとする。
(1) 土地
(2) 建物及び附属設備
(3) 構築物(土地に定着する土木設備又は工作物をいう。以下同じ。)
(4) 機械及び装置並びにその他の附属設備
(5) 船舶及び水上運搬具
(6) 車両その他の陸上運搬具
(7) 工具、器具及び備品。ただし、耐用年数一年以上のものに限る。
(8) 図書
(9) 美術品・収蔵品(標本を含む。以下同じ。)
(10) 建設仮勘定((2)から(7)に掲げる資産で通常の業務活動の用に供することを前提として、建設又は製作途中における当該建設又は製作のために支出した金額及び充当した材料をいう。以下同じ。)
(11) その他の有形資産で流動資産又は投資たる資産に属しないもの。

11 無形固定資産
 特許権、借地権、地上権、商標権、実用新案権、意匠権、鉱業権、漁業権、ソフトウェアその他これらに準ずる資産は、無形固定資産に属するものとする。

12 投資その他の資産
1  流動資産、有形固定資産又は無形固定資産に属するもの以外の長期資産は、投資その他の資産に属するものとする。
2  次に掲げる資産は、投資その他の資産に属するものとする。
(1) 投資有価証券。ただし、関係会社(「第92連結の範囲」及び「第101関連会社等に対する持分法の適用」において定める特定関連会社及び関連会社をいう。以下同じ。)の有価証券を除く。
(2) 関係会社株式
(3) その他の関係会社有価証券
(4) 長期貸付金。ただし、役員、職員(公立大学法人については「教職員」とする。以下同じ。)又は関係法人(「第90連結財務諸表の作成目的」において定める関係法人をいう。以下同じ。)に対する長期貸付金を除く。
(5) 役員又は職員に対する長期貸付金
(6) 関係法人長期貸付金
(7) 破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権
(8) 長期前払費用
(9) 未収財源措置予定額(「第81事後に財源措置が行われる特定の費用に係る会計処理」により計上される未収財源措置予定額をいう。以下同じ。)
(10) その他

13 流動資産
 次に掲げる資産は、流動資産に属するものとする。(注9)
(1) 現金及び預金。ただし、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内(以下この節において「一年以内」という。)に期限の到来しない預金を除く。
(2) 有価証券で、「第31有価証券の評価基準及び評価方法」において定める売買目的有価証券及び一年以内に満期の到来するもの
(3) 受取手形(地方独立行政法人の通常の業務活動において発生した手形債権をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものを除く。以下同じ。)
(4) 未収入金(地方独立行政法人の通常の業務活動において発生した未収入金をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものを除く。以下同じ。)
(5) 製品、副産物及び作業くず
(6) 半製品
(7) 原料及び材料(購入部分品を含む。)
(8) 仕掛品及び半成工事
(9) 商品
(10) 消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品で相当価額以上のもの
(11) 前渡金(原材料、商品等の購入のための前渡金をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものを除く。以下同じ。)
(12) 前払費用で一年以内に費用となるべきもの(注10)
(13) 未収収益で一年以内に対価の支払を受けるべきもの(注10)
(14) 未収収益で一年以内に現金化できると認められるもの

注10>経過勘定項目について
1  前払費用
(1) 前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。
(2) したがって、前払費用として対価を支払った地方独立行政法人においては、いまだ提供されていない役務の提供を受けるという経済的便益が期待されるものであるため、前払費用は資産に属するものとする。
2  前受収益
(1) 前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。
(2) したがって、前受収益として対価の支払を受けた地方独立行政法人においては、いまだ提供していない役務の提供をしなければならず、経済的便益の減少を生じさせるものであるため、前受収益は負債に属するものとする。
3  未払費用
(1) 未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。
(2) したがって、既に提供された役務に対していまだ対価の支払を終えていない地方独立行政法人においては、その対価の支払を行わなければならず、経済的便益の減少を生じさせるものであるため、未払費用は負債に属するものとする。
4  未収収益
(1) 未収収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、既に提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないものをいう。
(2) したがって、既に提供した役務に対していまだ対価の支払を受けていない地方独立行政法人においては、その対価の支払を受けるという経済的便益が期待されるものであるため、資産に属するものとする。

14 負債の定義
1  地方独立行政法人の負債とは、過去の取引又は事象に起因する現在の義務であって、その履行が地方独立行政法人に対して、将来、サービスの提供又は経済的便益の減少を生じさせるものをいう。
2  負債は法律上の債務に限定されるものではない。
3  負債は、固定負債及び流動負債に分類される。

15 固定負債
1  次に掲げる負債は、固定負債に属するものとする。(注9)
(1) 資産見返負債(中期計画の想定の範囲内で、運営費交付金により、又は国若しくは地方公共団体等からの補助金等により補助金等の交付の目的に従い、若しくは寄附金により寄附者の意図に従い若しくは地方独立行政法人があらかじめ特定した使途に従い償却資産を取得した場合(これらに関し、長期の契約により固定資産を取得する場合であって、当該契約に基づき前払金又は部分払金を支払った場合を含む。)に計上される負債をいう。)
(2) 長期預り補助金等
(3) 長期寄附金債務
(4) 長期借入金
(5) 退職給付(地方独立行政法人の役員及び職員の退職を事由として支払われる退職一時金をいう。以下同じ。)に係る引当金
(6) 退職給付に係る引当金及び資産に係る引当金以外の引当金であって、一年以内に使用されないと認められるもの
(7) 長期未払金
(8) その他の負債で流動負債に属しないもの
2  公立大学法人については、前受受託研究費等(受託研究費及び共同研究費を受領した場合に計上される負債をいう。以下同じ。)で一年以内に使用されないと認められるもの及び前受受託事業費等(受託事業費及び共同事業費を受領した場合に計上される負債をいう。以下同じ。)で一年以内に使用されないと認められるものは、固定負債に属するものとする。

16 流動負債
1  次に掲げる負債は、流動負債に属するものとする。(注9)
(1) 運営費交付金債務
(2) 預り施設費
(3) 預り補助金等(公立大学法人については預り科学研究費補助金等に係るものを除く。)。ただし、一年以内に使用されないと認められるものを除く。(注11)
(4) 寄附金債務。ただし、一年以内に使用されないと認められるものを除く。
(5) 短期借入金
(6) 未払金(地方独立行政法人の通常の業務活動において発生した未払金をいう。以下同じ。)
(7) 地方独立行政法人の通常の業務活動に関連して発生する未払金又は預り金で一般の取引慣行として発生後短期間に支払われるもの
(8) 未払費用で一年以内に対価の支払をすべきもの(注10)
(9) 未払消費税等
(10) 前受金(受注工事、受注品等に対する前受金、年度開始前に受領した当該年度に係る授業料等をいう。以下同じ。)
(11) 前受収益で一年以内に収益となるべきもの(注10)
(12) 引当金(資産に係る引当金及び固定負債に属する引当金を除く。)
(13) その他の負債で一年以内に支払又は返済されると認められるもの
2  公立大学法人については、授業料債務(当該年度に係る授業料及び前受金に係る授業料相当額を振り替えたものをいう。以下同じ。)、前受受託研究費等(固定負債に属するものを除く。)、前受受託事業費等(固定負債に属するものを除く。)、預り科学研究費補助金等(科学研究費補助金等の当該公立大学法人以外を補助対象とする補助金を受領した場合に計上される負債をいう。以下同じ。)及び預り金(預り施設費、預り補助金等及び預り科学研究費補助金を除く。以下同じ。)は、流動負債に属するものとする。

注11>補助金等について
 国又は地方公共団体等から、補助金、負担金、交付金及び補給金等の名称をもって交付されるものであって、相当の反対給付を求められないもの(運営費交付金及び施設費を除く。)をいう。

17 引当金
1  将来の支出の増加又は将来の収入の減少であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当該金額を引当金として流動負債又は固定負債に計上するとともに、当期の負担に帰すべき金額を費用に計上する。ただし、引当金のうち資産に係る引当金の場合は、資産の控除項目として計上する。
2  中期計画等に照らして客観的に財源が措置されていると明らかに見込まれる将来の支出については、引当金を計上しない。
3  発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金は計上することができない。

18 資本の定義
1  地方独立行政法人の資本とは、地方独立行政法人の業務を確実に実施するために拠出された財産的基礎及びその業務に関連し発生した剰余金から構成されるものであって、資産から負債を控除した額に相当するものをいう。
2  資本は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に分類される。

19 資本金等
1  資本金とは、地方独立行政法人に対する出資を財源とする払込資本に相当する。
2  資本剰余金とは、資本金及び利益剰余金以外の資本であって、贈与資本及び評価替資本が含まれる。(注12)
3  利益剰余金とは、地方独立行政法人の業務に関連し発生した剰余金であって、稼得資本に相当する。

注12>資本剰余金を計上する場合について
1  地方独立行政法人が固定資産を取得した場合において、取得原資拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案し、地方独立行政法人の財産的基礎を構成すると認められる場合には、相当額を資本剰余金として計上する。
2  具体的には、以下のような場合が想定される。
(1) 地方公共団体からの施設費により非償却資産又は「第84特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産を取得した場合
(2) 国又は地方公共団体等からの補助金等により非償却資産を取得した場合
(3) 中期計画に定める「剰余金の使途」として固定資産を取得した場合
(4) 中期計画の想定の範囲内で、運営費交付金により非償却資産を取得した場合
(5) 公立大学法人について、中期計画の想定の範囲内で、授業料債務により非償却資産を取得した場合
(6) 中期計画の想定の範囲内で、寄附金により、寄附者の意図に従い又は地方独立行政法人があらかじめ特定した使途に従い、非償却資産を取得した場合
3  なお、上記2(2)、(4)及び(6)の場合(公立大学法人については、上記2(2)、(4)から(6)の場合)において償却資産を取得した場合には、相当額を資産見返負債として計上する。その際、公立大学法人については、取得原資が、運営費交付金及び当該年度に係る授業料の場合は、資産見返運営費交付金等とする。

20 費用の定義
 地方独立行政法人の費用とは、サービスの提供、財貨の引渡又は生産その他の地方独立行政法人の業務に関連し、その資産の減少又は負債の増加(又は両者の組合せ)をもたらす経済的便益の減少であって、地方独立行政法人の財産的基礎を減少させる資本取引によってもたらされるものを除くものをいう。(注13)

注13>地方独立行政法人の費用の定義から除かれる事例について
 資本取引として地方独立行政法人の費用から除外されるものの例は、以下のとおり。
(1) 「第84特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産の減価償却相当額
(2) 上記(1)の償却資産の売却、交換又は除却等に直接起因する資産の減少又は負債の増加(又は両者の組合せ)

21 収益の定義
 地方独立行政法人の収益とは、サービスの提供、財貨の引渡又は生産その他の地方独立行政法人の業務に関連し、その資産の増加又は負債の減少(又は両者の組合せ)をもたらす経済的便益の増加であって、地方独立行政法人の財産的基礎を増加させる資本取引によってもたらされるものを除くものをいう。(注14)

注14>地方独立行政法人の収益の定義から除かれる事例について
 資本取引として地方独立行政法人の収益から除外されるものの例として、「第 84特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産の売却、交換又は除却等に直接起因する資産の増加又は負債の減少(又は両者の組合せ)がある。

22 キャッシュ・フロー計算書の資金
 地方独立行政法人のキャッシュ・フロー計算書が対象とする資金の範囲は、手元現金及び要求払預金とする。(注15)(注16)

注15>貸借対照表との関連性について
 キャッシュ・フロー計算書の資金の期末残高と貸借対照表上の科目との関連性については注記するものとする。

注16>要求払預金について
 要求払預金には、例えば、当座預金、普通預金、通知預金及びこれらの預金に相当する郵便貯金が含まれる。

23 行政サービス実施コストの定義
 地方独立行政法人の行政サービス実施コストとは、地方独立行政法人の業務運営に関して、住民等の負担に帰せられるコストをいう。(注17)

注17>住民等について
 「住民等」とは、設立団体の住民のほか、その他の地方公共団体の住民及び国民をも含むものとする。

24 行政サービス実施コスト
 次に掲げるコストは、行政サービス実施コストに属するものとする。
(1) 地方独立行政法人の損益計算上の費用から運営費交付金及び国又は地方公共団体からの補助金等に基づく収益以外の収益を控除した額(注18)
(2) 「第84特定の償却資産に係る減価の会計処理」を行うこととされた償却資産の減価償却相当額
(3) 「第85退職給付に係る会計処理」により、引当金を計上しないこととされた場合の退職給付増加見積額
(4) 国又は地方公共団体の資産を利用することから生ずる機会費用(注19)
 国又は地方公共団体の財産の無償又は減額された使用料による貸借取引から生ずる機会費用
 地方公共団体出資から生ずる機会費用
 国又は地方公共団体からの無利子又は通常よりも有利な条件による融資取引から生ずる機会費用

注18>行政サービス実施コスト計算における損益計算上の費用及び控除すべき収益の範囲について
1  損益計算上の費用には、損益計算書上の費用に計上された設立団体納付額も含まれる。
2  行政サービス実施コストとは、地方独立行政法人の業務運営に関して、住民等の負担に帰せられるコストであることから、損益計算上の費用から控除すべき収益は、住民等の負担に帰せられない自己収入に限られる必要があり、例えば、次のような収益は控除すべき収益には含まれない。
(1) 特殊法人又は独立行政法人等から交付される補助金又は助成金等に係る収益のうち、当該交付法人が国又は地方公共団体から交付された補助金等を財源とするもの
(2) 地方公共団体からの現物出資が、消費税の課税仕入とみなされることによって生じた還付消費税に係る収益
(3) 財源措置予定額収益

注19>機会費用について
1  国又は地方公共団体の財産の減額された使用料による貸借とは、貸主である国又は地方公共団体が法令等の規定に従い減額して貸し付けている場合の当該貸借をいう。
2  国又は地方公共団体からの有利な条件による融資とは、貸主である国又は地方公共団体が政策的に低利融資を行っている場合の当該融資をいう。


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