第1章 地方独立行政法人(公営企業型を除く)に適用される会計基準及び注解 第3節


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3節 認識及び測定

25 取得原価主義
 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。

26 無償取得資産の評価
 譲与、贈与その他無償で取得した資産については、公正な評価額をもって取得原価とする。

27 有形固定資産の評価
1  有形固定資産については、その取得原価から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。
2  有形固定資産の取得原価には、原則として当該資産の引取費用等の付随費用を含めて算定した金額とする。
3  地方公共団体からの現物出資として受入れた固定資産については、時価を基準として地方公共団体が評価した価額を、設立団体から承継した固定資産については、時価を基準として設立団体が評価した価額をそれぞれ取得原価とする。
4  償却済の有形固定資産は、除却されるまで残存価額又は備忘価額で記載する。

28 無形固定資産の評価
 無形固定資産については、当該資産の取得のために支出した金額から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。(注20)

注20>ソフトウェアについて
1  ソフトウェア(コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等をいう。以下同じ。)を用いて外部に業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウェアの制作に要した費用に相当する額を無形固定資産として計上しなければならない。
2  法人内利用のソフトウェアについては、完成品を購入した場合のように、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、当該ソフトウェアの取得に要した費用に相当する額を無形固定資産として計上しなければならない。
3  機械装置等に組み込まれているソフトウェアについては、原則として当該機械装置等に含めて処理する。

29 リース資産の会計処理
 リース取引に係る会計基準については、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の二種類に分け、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行い、オペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行い、かつ、リース期間の中途において当該契約を解除することができるオペレーティング・リース取引を除き、次に掲げる事項を財務諸表に注記する。(注21)
(1) 貸借対照表日後一年以内のリース期間に係る未経過リース料
(2) 貸借対照表日後一年を超えるリース期間に係る未経過リース料

注21>リース資産の表示方法について
1  ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借り手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的便益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう。オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいう。
2  地方独立行政法人におけるファイナンス・リース取引の会計基準については、地方独立行政法人が公共性等共通の性格を持ち、一の統一した制度の下に存在するものであって、その比較可能性を考慮した場合、企業会計原則では認められている「通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理」を選択的に認めることは適切ではないことから、通常の売買取引に係る方法に準じた処理を行うものとする。

30 たな卸資産の評価基準及び評価方法
1  製品、半製品、原材料、仕掛品、商品等のたな卸資産については、原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算し、これに個別法、先入先出法、平均原価法等のうちあらかじめ定めた方法(公立大学法人については原則として移動平均法)を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。(注22)
2  ただし、時価が取得原価よりも下落した場合には時価をもって貸借対照表価額としなければならない。
3  なお、たな卸資産の評価方法は毎事業年度継続して適用しなければならず、みだりに変更してはならない。

注22>たな卸資産の貸借対照表価額について
 公立大学法人について適用するたな卸資産の貸借対照表価額の算定のための方法である移動平均法とは、単価の異なる仕入れが行われる毎に、当該仕入直前の残高(金額)と当該仕入額との合計額を、残高数量と当該仕入数量の合計数量で割って平均原価を求め、これを順次、その後の払出単価とする方法である。

31 有価証券の評価基準及び評価方法
1  有価証券の取得原価は、購入代価に手数料等の付随費用を加算し、これに平均原価法等の方法を適用して算定した金額とする。
2  有価証券は、地方独立行政法人が保有する目的により、次のように区分し、評価差額等について処理した上、それぞれ区分ごとの評価額をもって貸借対照表価額としなければならない。
(1) 売買目的有価証券
 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(以下「売買目的有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。(注23)
(2) 満期保有目的の債券
 満期まで所有する意図をもって保有する国債、地方債、政府保証債、その他の債券(以下「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基いて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。(注24)(注25)(注26)
(3) 関係会社株式
 関係会社株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、当該会社の財務諸表を基礎とした純資産額に持分割合を乗じて算定した額が取得原価よりも下落した場合には、当該算定額をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の費用として処理するとともに、翌期首に取得原価に洗い替えなければならない。
(4) その他有価証券
 売買目的有価証券、満期保有目的の債券及び関係会社株式以外の有価証券(以下「その他有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額はその全額を資本の部に計上し、翌期首に取得原価に洗い替えなければならない。なお、資本の部に計上されるその他有価証券の評価差額については、資本の部に計上される他の剰余金と区分して記載しなければならない。(注23)
3  満期保有目的の債券及びその他有価証券のうち市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の費用として処理しなければならない。市場価格のない株式については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の費用として処理しなければならない。

注23>時価について
 時価とは、公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場に基づく価額をいう。市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場がない場合には、合理的に算定された価額を公正な評価額とする。

注24>償却原価法について
 償却原価法とは、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。

注25>満期保有目的の債券とその他有価証券との区分
1  その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券及び関係会社株式以外の有価証券であり、長期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券や、政策的な目的から保有する有価証券が含まれることになる。
2  余裕資金等の運用として、利息収入を得ることを主たる目的として保有する国債、地方債、政府保証債、その他の債券であって、長期保有の意思をもって取得した債券は、資金繰り等から長期的には売却の可能性が見込まれる債券であっても、満期保有目的の債券に区分するものとする。

注26>満期保有目的の債券の保有目的の変更について
 満期保有目的の債券を償還期限前に売却した場合には、次に掲げる場合を除き、当該売却した債券と同じ事業年度に購入した残りの満期保有目的の債券の全てについて、保有目的の変更があったものとして売買目的有価証券に振り替えなければならない。
(1) 満期保有目的の債券を購入した中期目標期間後の中期目標期間において、中期計画上の資金計画において、満期保有目的の債券の売却収入を財源とした事業計画が策定されている場合であって、当該事業計画に従って売却した場合
(2) 満期保有目的の債券を購入した中期目標期間後の中期目標期間において、金利情勢の変化に対応して、より運用利回りの高い債券に切り換えるため、又は地方独立行政法人が定める信用上の運用基準に該当しなくなったことに伴い、運用基準に該当する他の債券に切り換えるために売却した場合

32 貸付金等の貸借対照表価額
1  未収入金、貸付金、割賦元金等の債権の貸借対照表価額は、取得価額から貸倒引当金を控除した金額とする。なお、貸倒引当金は、資産の控除項目として貸借対照表に計上するものとする。
2  貸倒引当金は、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により算定する。なお、貸倒引当金の算定について、他の方法によることがより適当であると認められる場合には、当該方法により算定することができる。

33 債務保証の会計処理
1  地方独立行政法人が民間企業等の債務の保証を行っている場合は、債務保証の履行によって損失が生じると見込まれる額を保証債務損失引当金として計上しなければならない。
2  保証債務損失引当金の額は、主たる債務者の財政状態、担保価値の評価等を総合的に判断して見積もらなければならない。
3  決算日における債務保証の総額は注記しなければならない。また、保証債務の明細、増減との関係並びに保証債務損失引当金の増減を附属明細書において明らかにしなければならない。

34 外貨建取引の会計処理
1  外貨建取引は、原則として、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録する。(注27)(注28)
2  在外事務所における外貨建取引については、原則として、主たる事務所と同様に処理する。ただし、外国通貨で表示されている在外事務所の財務諸表に基づき地方独立行政法人の財務諸表を作成する場合には、在外事務所の財務諸表の費用及び収益(費用性資産の費用化額及び収益性負債の収益化額を除く。)の換算については、期中平均相場によることができる。
3  外国通貨、外貨建金銭債権債務及び外貨建有価証券については、決算時において、次の区分ごとの換算額をもって貸借対照表価額とする。
(1) 外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額
(2) 外貨建金銭債権債務については、決算時の為替相場による円換算額
(3) 外貨建有価証券の換算額については、保有目的による区分に応じ、次により換算した額
 満期保有目的の外貨建債券については、決算時の為替相場による円換算額
 売買目的有価証券及びその他有価証券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額
 関係会社株式については、取得時の為替相場による円換算額。ただし、当該会社の財務諸表を基礎とした純資産額に持分割合を乗じて外国通貨により算定した額が外国通貨による取得原価よりも下落した場合には、当該算定額を決算時の為替相場により円換算した額
4  外貨建有価証券について時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合には、当該有価証券の時価又は実質価額は、外国通貨による時価又は実質価額を決算時の為替相場により円換算した額とする。
5  決算時における換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。ただし、外貨建有価証券換算差額については、時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により、決算時の為替相場による換算を行ったことによって生じた換算差額は、当期の有価証券の評価損として処理するほか、次に定めるところにより処理するものとする。
(1) 満期保有目的の外貨建債券について決算時の為替相場による換算を行うことによって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。
(2) 売買目的の外貨建債券について決算時の為替相場による換算を行うことによって生じた換算差額は、当期の有価証券評価損益として処理する。
(3) 外貨建の関係会社株式について決算時の為替相場による換算を行うことによって生じた換算差額は、当期の有価証券評価損益として処理する。
(4) 外貨建のその他有価証券について決算時の為替相場による換算を行うことによって生じた換算差額は、資本の部に計上し、翌期首に取得原価に洗い替える。

注27>取引発生時の為替相場について
 取引発生時の為替相場とは、取引が発生した日における直物為替相場又は合理的な基準に基づいて算定された平均相場、例えば取引の行われた月又は週の前月又は前週の直物為替相場を平均したもの等、直近の一定期間の直物相場に基づいて算出されたものとする。ただし、取引が発生した日の直近の一定の日における直物為替相場、例えば取引の行われた月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の直物為替相場によることも認められる。

注28>外国通貨による記録について
 外貨建債権債務及び外国通貨の保有状況並びに決済方法等から、外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には、取引発生時の外国通貨の額をもって記録する方法を採用することができる。この場合には、外国通貨の額をもって記録された外貨建取引は、各月末等一定の時点において、当該時点の直物為替相場又は合理的な基礎に基づいて算定された一定期間の平均相場による円換算額を付するものとする。

35 原価計算の基準
 製造等の業務を行う地方独立行政法人における製品等の製造原価は、適正な原価計算基準に従って算定されなければならない。(注29)

注29>原価計算の基準について
 製造等の業務を行う地方独立行政法人は、製造等の業務の種類、業務の規模等を勘案し、一般に公正妥当と認められた原価計算の基準に従い、合理的な原価計算手続を定めなければならない。

36 退職給付引当金の計上方法
1  退職給付引当金は、退職給付債務に未確認過去勤務及び未認識数理計算上の差違を加減した額を計上しなければならない。
2  退職給付債務は、地方独立行政法人の役員及び職員の退職時に見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を一定の割引率及び予想される退職時から現在までの期間に基づき割り引いて計算する。(注30)(注31)
3  未認識過去勤務債務とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分のうち、費用処理(費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理を含む。次において同じ。)されていないものをいう。未認識過去勤務債務は、平均残存勤務期間内の一定年数で均等償却することができる。
4  未認識数理計算上の差違とは、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差違及び見積数値の変更等により発生した差違のうち、費用処理されていないものをいう。未認識数理計算上の差違は、平均残存勤務期間内の一定年数で均等償却することができる。
5  職員数三百人未満の地方独立行政法人については、退職給付債務の計算に当たっては、期末要支給額によることができる。

注30>退職給付の総額のうち期末までに発生していると認められる額
 退職給付の総額のうち期末までに発生していると認められる額は、退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法その他役員及び職員の勤務の対価を合理的に反映する方法を用いて計算しなければならない。

注31>割引率について
 退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い長期の債券の利回りを基礎として決定しなければならない。

37 費用配分の原則
1  資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分しなければならない。
2  有形固定資産は、当該資産の耐用年数にわたり、無形固定資産は、当該資産の有効期間にわたり、減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならない。
3  減価償却の方法は、有形固定資産及び無形固定資産のいずれについても定額法によるものとする。(注32)(注33)

注32>図書の評価方法について
 図書(印刷その他の方法により複製した文書若しくは図面又は電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によっては認識できない方法により文字、映像又は音を記録した物品としての管理が可能なもの。以下同じ。)については、雑誌やパンフレット等、業務上一時的な意義しか有さないものを除き、有形固定資産として取得価額をもって貸借対照表価額とする。
 なお、図書は個々により使用の実態が大きく異なること及び比較的少額かつ大量にあることから、図書を除却する際に費用として認識することとし、使用期間中における減価償却は行わないこととする。

注33>美術品・収蔵品の評価方法について
 美術品・収蔵品については、原則として取得原価によることとする。なお、美術品・収蔵品については減価償却は行わないこととする。

38 発生主義の原則
1  地方独立行政法人に発生したすべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割り当てられるように処理しなければならない。
2  なお、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。


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-- 登録:平成21年以前 --