国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議(第2回)議事録

1.日時

令和4年11月24日(木曜日)13時00分~16時00分

2.場所

Web 会議システム(ZOOM)

3.議題

(1) 国際バカロレアを活用した大学入試について
(2) 有識者ヒアリング
(3) 主な検討事項(案)について
(4) その他

4.議事

【岩崎座長】
 定刻になりましたので、会議を始めさせていただきたく思います。皆様お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は竹内委員が御欠席ですが、そのほかの方は御出席ということになっております。
 それでは、国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議の第2回を開催いたします。
 まずは、事務局から議事と配付資料の確認をお願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 事務局でございます。本日の議事次第でございますけれども、資料にございますとおり、(1)国際バカロレアを活用した大学入試について、(2)有識者ヒアリング、(3)主な検討事項(案)について、(4)その他ということで、四つの議題を本日予定してございます。
 また、資料は1から7まで、そして参考資料は1から3までを事前に送付させていただいております。もし過不足等ございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 
【岩崎座長】
 もし途中でお気づきになられましたら、チャットか何かで事務局にお伝えください。
 それでは、議題1の国際バカロレアを活用した大学入試の議事に移ります。
 事務局から資料1、資料2の説明をお願いします。
 
【事務局(出口)】
 お手元の資料1でございますけれども、主な検討事項(案)ということで、前回の会議でもお示しをさせていただいたものでございます。
 検討事項は1から4までございますけれども、今回は検討事項の3、4ということで、具体的には3番が大学入試でのIBの活用促進、そして4番がIBの教育効果等の把握・検証です。こちらの二つを本日は御議論いただければと思ってございます。
 続きまして、資料2は、IBを活用した国内大学の入試の状況やIB生の出願先について、事務局でデータを少し整理させていただいたものを御紹介させていただきます。
 今、画面に映ってございますのが、IBを活用した国内大学の入試ということで、全学部で実施しているところが35大学、一部の学部で実施しているところが33大学、合計68大学においてIBを活用されているということになってございます。
 こちらは日本の学校の卒業生を対象としているものでございまして、大学名に下線が引かれているものがいくつかございますけれども、これはIB資格取得者、取得予定者のみを対象とした入試も実施している大学ということです。各大学へのアンケートに基づきまして、当省、文部科学省IB教育推進コンソーシアム事務局にて作成してございます。
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 こちらはIBを活用した入試を実施している大学、これを円グラフで国立、公立、私立としてお示ししたものになっております。内訳としては、国立が21校、公立が7校、私立が40校となっております。
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 その中で、大学単位と入試単位ということで、中身を少し分けながら円グラフの形にしております。
 大学単位で見たときには、IB選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜と、3色に色分けしております。IB選抜は、先ほどの資料での名前に下線のある大学が該当しますが、IB資格取得者、取得予定者のみを対象とした入試を実施している大学をIB選抜と分類をいたしました。
 また、入試単位につきましては、母集団は315入試となっており、この中で同様にIB選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜と分けております。いずれの単位においても、IB選抜が最も多く、総合型選抜、学校推薦型選抜の順になっております。
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 こちらは入試単位で見たときに、IB選抜、こちらは入試で実施されている大学の中での学部の種別を色分けして集計してございます。
 左側がIB選抜、右側が総合型選抜となってございますけれども、どちらの区分におきましても理工系の学部において最も多くIB選抜が実施されていると思われます。
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 こちらは、IBスコアの基準の公表の有無について集計しております。
 左側が大学単位でございますので、こちらはIB選抜を行っている37大学が母数となっております。その中で国立、公立、私立とございますけれども、国立大学の出願においてIBスコア基準が公表されているものが多い傾向かなと思います。
 また、右側は入試単位でございますけれども、こちらもIB選抜を行っている188の入試を全体といたしましたところ、国立が多い傾向が見て取れました。
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 こちらは総合型選抜ということで、IB資格の位置づけとして、IBに対して何らかの優遇や配慮があるのか、もしくはそういうのはなく、ほかと全く同じように使われているのかというところで集計をいたしましたところ、特に優遇・配慮なしというところが82%で、約2割が配慮ありとなってございました。
 その際どういうIBの優遇、メリットがあるかと申し上げますと、個別学力試験の免除や、出願時に提出が必要な課題論文をIBの課程で作成することとなっているEE(課題論文)の写しでもって提出することができるということがございました。
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 また、IBを活用した大学入学者選抜に関するアンケート調査も行ってございまして、傾向が幾つか見て取れます。
 IBを活用した入試を導入した目的が左側になってございますが、グローバル人材の獲得、学生間の多様性の担保というところが目的として多くなってございます。
 また、右側の大学が期待するIB生の資質・能力では、主体性・積極性・チャレンジ精神、語学力、課題発見・解決能力というところが高くなってございます。
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 入学後のIB生に対する大学側の評価ということで、なかなか一概に評価というのは難しいところではございますけれども、コメントを幾つか紹介させていただきます。
 IB生のGPAの平均は高くて、熱心に学業に取り組んでいる様子が見える、グループワークやディスカッションを伴う授業のときには中心として活躍をしてくれる、そういう意味で主体性、積極性、リーダーシップがあるという評価のコメントをいただいております。
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 また、入試導入時の課題についてもアンケートにお答えいただいてございます。
 やはり一番課題だと皆様がお考えになったのは、IB生の学力や資質に対する適切な評価方法で、これがほかの項目に比べて圧倒的に高くなってございます。
 それに対してどういうふうにアプローチをしてきたのかを右側に、各項目について記載してございます。
 本当に手探りながら、いろいろな経験をされたり、いろいろな意見を聞いたりしながらIBを活用した入試の導入を模索してこられたというのがよく分かるコメントが多いです。
 既にIB生の受入れ実績がある国立大学や、医学部志望者を持つインターナショナルスクールへの視察などを繰り返しながら、双方の視点からの情報を積極的に収集する。学内の理解の不足という項目については、例えば教員向けの研修会を開催する。広報活動・応募者の確保という点では、東京や近くのIB校へ出張して、学校の入試の説明会を行う。IB生入学後のサポート体制については、メンターを配置するなどの工夫もされてこられたと伺ってございます。
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 入試を導入した後、入試制度を設計する際に工夫・留意された点についてもお話を伺いました。
 受験者の属性に応じて入試の実施機会を複数回設けるとか、対象者については、他大学で実施されているIB入試ではDP資格を出願要件とされているけれども、フルディプロマを取得できなかった場合でも出願できるなど、おのおの工夫をされています。また、対象学部については、全学部を対象に実施されたということも伺っています。
 下半分の考査内容については、学力考査全般で、小論文と面接の試験で多面的・総合的に評価・判定ということがございます。
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 こちらが最後のページになります。日本のIB履修生の成績送付先大学ということで、2015年から2019年までをまとめたものになってございます。
 インターナショナルスクールを含む日本のIB校から10通以上の成績が送付された日本を含む世界の大学を抽出して、掲載しております。IB機構のウェブサイトに掲載されているものから、文科省で日本語にしたり並び替えたりして作成させていただいております。
 黄色で色をつけているのが日本の大学でございます。また、ちょっと見にくいですけれども、薄い水色で、名前の後ろにアスタリスクをつけているところは、大学への出願を仲介する機関となっており、ここからさらに各大学のアドミッションオフィスへ出願者の成績の通知が行われます。
 表を御覧いただければお分かりになると思いますけれども、日本から出しているものでございますので、送付先としては日本の大学が全体で一番多くなってございまして、22大学、送付数は1,421となってございます。
 こういった資料を本日、参考資料にも基礎資料として入れさせていただいておりますけれども、今、御説明させていただいた資料は追加で御用意させていただきました。
 事務局からの説明は以上となります。またヒアリングの後にいろいろ御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。非常に貴重な、基礎的な資料を文科省から御提示いただいたと思います。
 このデータも基にし、これから各委員の先生方からヒアリングということになります。
 それでは、議題の2の有識者ヒアリングに移りたいと思います。もし御意見等ありましたら、また改めて、時間を見て、御発言お願いしたいと思います。
 それでは、事務局から流れの説明をお願いします。
 
【事務局(出口)】
 本日の発表者の方々、また、発表順の御説明をさせていただきます。
 皆様、各15分でお願いできればと思います。最初は東京学芸大学附属国際中等教育学校校長、荻野委員、お願いいたします。2番目に茗溪学園中学校高等学校、松崎先生、お願いいたします。3番目、東北大学副学長、山口委員、お願いいたします。4番目、上智大学高大連携担当副学長、西澤先生及び学事局入学センターチームリーダー、高谷様、よろしくお願いいたします。この順番でお願いできればと思います。
 
【岩崎座長】
 それでは、現場の生の状況を聞くという非常に貴重な機会になるかと思います。いろいろな刺激的なお話があるかと推測するわけですが、まずはIB生を送り出す高校側の生の声ということで、荻野委員から御発表をお願いしたいと思います。
 荻野委員、よろしくお願いいたします。
 
【荻野委員】
 皆さん、こんにちは。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
 資料を共有させていただきます。
 東京学芸大学附属国際中等教育学校校長の荻野です。本日は、大学入試でのIBの活用促進という題で、国立大学附属校である本校から見ましたDP生の進路、また、大学入試についての現状と課題についてお話をさせていただきます。
 まず、本題に入ります前に、本校の進路の全体像を体感していただくことといたします。
 本校は創立16年目の学校ですけれども、前進校から数えますと60年間近く海外からの帰国生徒を受け入れてきた学校であります。現在でも1年生の入学時には、生徒が約105名おりますけれども、そのうちの30%の生徒が帰国生徒または外国籍の生徒であります。入学後も年に2回帰国生徒等を編入生として受け入れまして、最終学年の6年生――高校3年生が大体130名程度になりますけれども、そのうちの45%が帰国生徒となります。
 スライド中央の円グラフを御覧ください。過去2年間の入試形態別の大学進学実績であります。
 このように、帰国生徒が多いせいかもしれませんけれども、本校は1期生の頃からこの2年間と同じような傾向が続いてきております。つまり、約半数が総合型・学校推薦型選抜によって大学に進学し、半分に満たない生徒たちが一般選考に臨み、そして毎年大体10名前後の生徒が海外大に進学するという傾向であります。
 本校のIB認定は御覧のとおりでございます。最初のDB生が2018年3月に出ておりまして、直近2022年3月までに5回の卒業生を出したことになります。
 スライド3です。ここからいよいよ本題に入らせていただきますけれども、こちらのスライドが、本校DP生の過去2年間の進路に関する状況であります。
 なぜこの2年間の資料をお示しするかと申しますと、その理由は2点あります。
 一つは、大学側のIB入試がかなり進んできているということであります。5年前はまだDPスコアの要求科目や基準点は、ともすると海外大に比べて多かったり、かなり高めであったりしました。また、出願に際しては、学校全体のプレディクティッド・グレーズの分布を添えることを要求されるなど、今考えますと驚くような状況がありました。この状況が大学側の御理解によって徐々に変わってきたというのが、ここ数年の実感です。また、利用できる大学も、今御案内にありましたように、増えてきております。
 二つ目は、やはりこの2年間、コロナの影響で、生徒たちに新たな傾向が出てきているということであります。
 こういった理由もありまして、過去2年間の進路状況を本日はお示しすることといたしました。
 次に、このDP利用入試という言い方、タームです。このスライドの上部にも書かせていただきましたけれども、これは本校の呼称でありまして、DPが受験資格の一つとなっている総合型選抜及び学校推薦型選抜のことであります。大学によって選抜の名称は様々でありまして、ずばりIB入試と銘打っている大学もあれば、国際総合入試や帰国生等特別推薦入試などと呼んでいる大学もあります。さすがにIB入試と呼んでいる大学につきましてはDP生しか受験できませんけれども、その他の名称の入試は、DPが受験資格の一つとなっています。本校では、それらを区別せずに、DP利用入試と呼んで、くくっております。
 こちらの左側の表を御覧ください。2021年、DP生は12名おりました。このDP利用入試の利用者は8名おりました。そして延べの受験校は17校であります。直近2022年は、16名、10名、14名という形で並んでおります。最終的にDP資格を利用して大学に入った生徒の数は、2021年は7名、2022年は4名になっております。
 また、進路の多様化ということで、海外大学の受験者も、こちらにありますように、2021年は5名、翌年は7名となっております。そして最終的には、このうち各年度とも4名が海外大学に進学しております。
 コロナ禍の特徴となるのでしょうか、国内の大学に4月に入学して、その後にその生徒が海外の大学にも進学するケースが、こちらの数字になりますけれども、ここのところ出ております。4名のうち3名、4名のうちの2名、半数以上がそのような形で少し安全策を取っているということでございます。コロナの水際対策が緩和されてきていますので、この傾向はひと段落すると想像できますけれども、例えばゼロコロナ政策を続ける国への進学を第一希望にしている生徒がいるとすると、この傾向は続くかもしれません。
 本校のDP生は、毎年一人平均5校程度受験をしております。したがいまして、割り算をしますと、全受験校に占めるDP利用入試の割合は32.1%、17.3%という状況であります。ちょっと割合が落ちてきているところが気になります。
 なお、本校の呼称であるDP利用入試ですけれども、文科省では、先ほど説明もありましたように、IB入試などのDP生だけを対象とした入試と、DPが受験資格の一つとなっている総合型選抜入試とをまとめてIB入試と呼んでいるようですので、この後のスライドにつきましては、本校の呼称を使わずに、IB入試ということで一本化してまいりたいと思います。
 DPが我が国ではグローバル化教育の一つとして数えられており、海外大学への進学指導もDPを実施する上では基盤の一つであると考えられますので、このスライドでは、DP生を含めた本校全生徒への海外大学への進路指導体制についてお話をさせていただきます。
 本校では毎年、先ほども申しましたが、10名前後の生徒が海外大学に進学をしております。DP生はそのうち、今お話ししましたように、4名前後です。これは本校のDPが文系科目に特化したものであって、理系の海外大志望者はDPからではなく一般コースから進学しておりまして、その人数は海外大志望のDP生よりも多くなっております。
 まず、組織ですけれども、全教員に校長が年度当初に示す学校経営計画につきましては、御覧のとおりであります。こういった目線合わせをした上で、進路指導部内に進路指導部主任を長とする海外大学指導担当というのを置きまして、ここにありますように、海外大学への進路説明会や出願サポートを行わせております。これら二つの業務は、生徒対象であると同時に教員対象でもありまして、教員が日常的な進路指導業務を行う中で海外大学指導のノウハウを学べるように工夫をしております。
 こういった分掌上のライン職とは別に、かつて進路指導部内でこのような仕事をした教員をスタッフ職として海外大学進学アドバイザーにつけております。彼らの役割は、特に6年生――最終学年のクラス担任への海外進学指導をする場合の指導助言、あるいは直接生徒の海外大の進路指導に乗る業務を行わせております。
 例えば進路説明会は、各大学の方をお招きしたり、オンラインで志望者にこのような説明会をしたり、卒業生に話してもらったり、奨学金の説明会をしたり、アプリケーションエッセイの書き方などを説明したりと、こんな具合で作っております。
 出願サポートにつきましては、御覧のとおりであります。
 ひとわたり本校の状況を説明したところで、見えてきましたIB入試の課題とその改善要望についてお話をさせていただきます。
 先ほども申しましたように大学側のIB理解が進みまして、IB入試が質・量ともにかなり改善してきたことは、公立と国立の二つのIBスクールで5年間IB入試の推移を見守ってきた者として、大変ありがたく感じております。
 事実、本校でも過去2年間で6割以上のDP生がIB入試を少なくとも1回は受けております。しかしその一方で、ほぼIB入試しか受けずに進路を決めた生徒は、この2年間で28名中の3名に過ぎません。また、IB入試を全く受けてない生徒も12名に上っております。
 このことは、やはりIB入試がDP生にとって受けやすい入試になりきっていないことを示しているのではないでしょうか。
 秋までに出願するIB入試の場合、その時点で持っているスコアはいわゆるプレディクティッド・グレーズです。10月下旬から11月にかけてのDP最終試験の結果を受けて、正式なスコアは1月上旬にならないと分かりません。大学には最終的な結果を2月末くらいまでに出すことが求められているのが通例で、大学が示す基準点を下回った場合、どのようなことになるのかについては明確に示されておりません。
 つまり、年内にIB入試の合否は明らかになるものの、受験生であるDP生にとってはあくまでもいわゆる条件つき合格でありまして、不安な日々を年が明けるまで過ごさなければいけない状況があるということです。このことによりまして、多くの生徒、保護者、教員は、一般的な総合型選抜等に比べて、IB入試は不利だ、不公平だと感じております。
 こちらの二つ目の星印を御覧ください。一般的な総合型選抜後の場合には、学校の出す、あくまでも仮評定に過ぎない1学期の評定で合否が決定するのに、世界標準で算出されたIBのプレディクティッド・グレーズはなぜ大学の信頼が低いのだろうという不満につながっている状況があります。
 それから、最近スコアが確定した1月に出願するIB入試も増えてきて、ありがたいことではありますが、時期的に万一のことを考えると、これを専願にというわけにはいかない。やはり高校側としては、秋にプレディクティッド・グレーズで最終結果が出る入試であってほしいと望むわけであります。
 次に、IB入試が受けにくい入試となっていることから、どのような困難がDP生に降りかかっているかについてお話をし、第2の課題とさせていただきたいと思います。
 まず、秋出願のIB入試は、ちょうどDPの最終試験準備や受験の頃と重なります。そして、DP生はこの最終試験と大学出願の両方の準備をしなくてはならなくなっております。それでもせめてIB入試だけでも、海外大学のように出願手続きがシンプルであればよいのですが、日本のIB入試は、改善されたとはいえ、出願時の提出物が多いと思います。英語の外部試験スコアは事前に受けておけるのでよしとしましても、例えばEEなどの要約をつけなくてはならない大学も多いのが現実です。IBOはEEを生のまま外部に提出することを禁じていますので、大学はあえて要約版を出させるのかもしれませんけれども、この時期のDP生にとっては大きな負担となっております。一般的な総合型選抜に至ってはやむを得ないとはいえ、それを受けざるを得ないDP生にとっては、受験ごとに用意しなくてはならない提出物は、この時期大きな負担となります。推奨はしていませんけれども、どうしても志望大学に入りたいために、受験科目負担の少ない型での一般選抜を受けるDP生も、本校にはいます。
 我が国におけるIB教育の拡大や質的充実を追及するのであれば、この時期のDP生がDPの最終試験に専念できる環境を整えることが肝要ではないかと考えております。ここに挙げましたIB入試の拡大と出願課題の簡略化、それからアメリカのコモンアプリケーションのような大学出願システムの整備が必要ではないでしょうか。
 最後に、DP生が求める海外大学進学に伴う困難さについてお話をいたします。
 まずは、何千万円単位にも上る生活費を含めた学費の高さであります。
 本校では、合わせて毎年四、五名の生徒が、ほぼ学費の全額を賄える奨学金を在学中に獲得していますが、それでも10名前後いる海外大学進学者の希望には十分応えられておりません。もちろん進学後に現地で奨学金を得る例などもありますけれども、経済格差が教育格差につながっているということは否めません。本校でも、海外大学に合格したものの、奨学金等が得られなかったために進学をあきらめるDP生も複数出ております。
 二つ目の困難は、校内における海外大学進学指導体制と円滑な継承体制の確立であります。
 多くの日本の学校の海外大学進学指導力は、途上にあります。保護者が独自に留学カウンセラーを子供のために雇っている場合もあり、学校が大手情報出版社の留学情報サービスに業務委託をするケースなどもあります。こういった外部のサポートを活用しながら、徐々にノウハウを学校に蓄積していっているというのが現状ではないでしょうか。
 本校も創立当初、十数年前には、全くノウハウがありませんでした。したがって、海外経験のある生徒や保護者に教えてもらいながら、ノウハウを重ねていった経緯があります。当時の教員に話を聞くと、最初の海外大進学者を出すまでがきついと。出始めると、指導のポイントが見えてくるし、海外大に進学した卒業生から情報が入ったり、協力が得られたりするようになるという話をします。また、実績を出した海外大学も、情報提供や相談の機会を対面やオンラインで与えてくれるようになります。
 本校は1年間の長期の研修教員を他県からお預かりしておりますが、OJTにより研修教員にも本校の海外指導のノウハウを伝えています。しかしながら、学校によってはノウハウが学校の大きな財産となっているために、他校と共有することをためらうケースもあるようです。
 それから、ノウハウの継承という点では、海外大学進学担当者を英語のできる教員に限定してしまうのではなく、例えば通訳として外国人教員を活用するなどして、英語が得意でなくても、広く人材を育てる仕組みを校内に導入すべきだと考えます。
 こちらに挙げました、人材が育つまでの留学カウンセラーの活用、学校を超えた海外大学進学情報バンクの基盤づくり、英語通訳の活用などが、海外大学進学の困難さを軽減する策になるのではないかなと考えております。
 私からの発表は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。意見交換は、追って時間を取らせていただきたいと思いますが、荻野先生の御発表の事実確認に限定しまして、御質問があればお願いします。どなたかいらっしゃいますでしょうか。
 
(質問無し)
 
【岩崎座長】
 まずは送り出す学校、高校側のお話を幾つかお聞きして、まとめてまた事実確認の質問に戻りたいと思います。
 続きまして、茗溪学園中学校高等学校の松崎先生から御発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
 
【松崎(茗溪学園中学校高等学校)】
 では、皆様、よろしくお願いいたします。今、スライドを共有させていただきました。私は茨城県のつくば市にあります茗溪学園でDPのコーディネーターをしております松崎と申します。よろしくお願いいたします。あとIB関係のワークショップリーダーとかもやっております。
 本校は2013年からIB校になる準備を始めて、2016年に認定校になりまして、2017年にIB1期生を迎え入れて、2020年3月に初めて1期生が卒業し、今、3回IBの卒業生が出ているという状況です。
 今回IB生の進路の多様化というお題をいただいていたのですが、学びのデザインと選択の幅を広げるということになるのかなと感じました。
 IB生は、そもそも本校でも、日本のカリキュラムで行くのかIBで行くのかを、いろいろ生徒たちが調べて、自分で学び方を選ぶんですね。IBに進んだ子たちは、IBの興味のある科目と、得意な科目をHL――発展レベルとして三つ選んでいく形になります。こちらが本校の開講している科目ですが、こういった中から選んでいくわけですね。
 というところで、自分の学び方とか、自分が何が得意なのかとか、そういったことを選んでいく過程が、まず最初にあるのかなと思います。
 幾つかポイントを挙げたのですが、まず最初に、日本語DPでも海外の大学は全く不利にならないということが分かりました。本当にスタンフォードやUCバークレーなどのトップ大学でも、全く不利になりませんでした。
 本校はIBの生徒が出る前は、海外大学はせいぜい二つ、三つぐらいの合格で、一人、二人が行くぐらいだったのですが、IBができてからは、IB1期生が30ぐらい、2期生も30ぐらいの合格が出ています。去年の3期生は合格が100ぐらい出まして、海外大学という選択肢の幅は急激にIBが始まってから広がったと思います。
 科目選択は、国内大学はいろいろリクワイアメントがありまして、文系だと社会のHLが必要とか、理系だと数学や理科のHLが必要なところが多いです。海外の大学では、生物系とか農学系であれば生物、工学とか機械工学であれば物理がメインです。カナダやオーストラリアなど、理科が二つあったほうがよいという国も一部あります。
 ただ、文系か理系かというところでは、日本の履修過程よりも柔軟かなと感じております。理科一つと社会のHLがあれば、文系と理系どちらでも結構対応可能です。例えば1期生では、歴史と物理でHLを取った生徒がいました。その子は建築とか都市計画に興味があったのですが、イギリスと日本の大学両方に合格して、最終的にいろいろ検討して日本の大学に進んだのですが、そういう理系と文系両方からのアプローチとか選択の幅も広がるところはあるかなと思いました。
 最後に国内大学の入試は、まだまだ選択の幅は狭くなってしまいますと生徒たちに進路指導しております。難しいところは特に理系です。私立のIB入試は文系が多くて、理系が少ないです。国立は理系もあるのですが、IBの評価が大学によって違い、定員も少なく、年によって定員が3や5という運の部分もあります。ですから、国内の大学を考える場合には、IBだと選択の幅が狭まってしまうことがあると生徒たちには言っております。
 ただ、そういった中でも、国内の大学しか考えてないけれども、IBで学びたいという生徒は一定数います。そういう生徒たちのモチベーションは、進路の選択肢はもしかしたら狭まるかもしれないけれども、高校ではIBで学びたいというところが大きいかと思います。
 次に、少し進路概要についてお話ししたいと思いますが、1期生、2期生、3期生はこのような形になっております。傾向として、国内大学の生徒は文系の志向が強く、海外大学のほうは理系の志向が強いです。3年間の合計では、国内が21名、海外が20名と、ほぼ半々ですけれども、国内は文系が19、海外は理系が15と、特徴がかなり出ているところです。
 国内のIB入試総合型と指定校の内訳を入れてみましたが、このような形です。大体IB入試総合型と指定校とそれぞれ分かれているような形ですが、IB入試の合格の数が3年間の合計で22でした。総合型も合格は合計で22です。IB入試は最後にDPが来るまで合格が確定しないことで不安な面もあるのですが、結構使っている生徒も多い状況です。
 それから、進路指導についてですが、国内と海外の併願の生徒が結構多いです。1期生では13名中4名、2期生では12名中6名、3期生では16名中6名が、国内と海外両方の出願をしておりました。
 併願となりますとこのようなタイムラインで、日本の大学の出願が始まってきたり、海外も国によって異なったりするので、日本と海外の大学の指導のノウハウを別にしてもいいのかもしれないですけど、両方一緒のほうが三者面談とかでいろいろ作戦を考えるときに、「ここが駄目だったらこう出して」という形にできるので、両方知っている教員がいたほうがいいかなと思います。
 あと、担任が全てやる日本の学校の文化があり、担任がメンタルのカウンセリングから進路の指導から何から全部やるので、私も1期生の担任をやっていたのですが、そういう経過もあったので、今は私ともう1名の日本人教員の2名で主に日本と海外の大学両方を併せた進路指導を手分けしてやっているところです。
 実際に進路指導をやってみる中で、この上に「初めてを恐れない」「とにかくやってみる」というのが必要と書いたのですが、本当にやってみる中で、いろいろ情報とか経験を蓄積してきました。その例をここに挙げさせていただきましたが、例えばインドの大学を受けたいと言ってきた子がいて、インドのことをいろいろ調べた時期もあったのですが、そのように生徒が何か希望を出してきたところで、その都度一緒に調べたりして、それを情報や経験にしていったというところです。
 一例をざっとお話ししますが、国内では、総合型は「IBで受けています」というだけでは実績として全く強くなさそうだということが分かってきました。IB生は小論や面接で力をすごく発揮するかなと思ったのですが、そもそもそこまで行かなくて、書類ではねられてしまうことも結構ありました。あとは、国内のIBを受講していると、帰国生入試を受けさせてもらえるという配慮をしていただいている大学もありました。
 IB入試については、本当に大学によってIBの評価や捉え方が異なりまして、中には日本のカリキュラムだったらここの大学に受かるだろうなという子が、IBに来ると逆に不利になって受からなかったり、その逆もあって、日本のカリキュラムだったら受からなかったかなという子が、IBの学びが物すごくあって、力を発揮して、希望する大学に行けたというケースもあります。ですから、IB入試は運や不確定要素もあるかと思います。国公立も併願可能ですが、準備が大変というところがありますね。
 海外の大学のほうでは、各大学の出願の仕方が違ったりはしますが、受験料が安いので、たくさん出して、いろいろ合格が来た中から選ぶことができます。アメリカのリベラルアーツなんかは、結構大学の合格と一緒に奨学金のオファーが来ることがあるとか、そういったことも分かってきました。
 ということで、結構生徒と一緒に学んだりやってみたりして、中には留学の業者さんを頼んでいる生徒もいますが、そういったものを通さずとも、一緒にホームページで出願するだけなので、あまりやらなくても大丈夫かなと経験から感じてきているところです。
 奨学金は結構大変ですね。ヨーロッパとかだと、何かすると日本より安く行けるとか、年間の学費20万円とか、それで英語で学べるところもあるようなので、情報がかなり重要と感じております。
 次に、多様化のためにというところです。学びのデザインと選択というところで、IB生はどういう学びができるのかにすごく敏感だなと感じています。IB生の学びを活かしていくということで書いたのですが、先ほどの冒頭の資料でも、大学さんからの中でもあったと思いますが、IB生はまだマイノリティーだと思うのですが、彼らのニーズをいろいろ検討していただき、そこに応えていくことで、全体にもメリットが出てくるのかなとも感じております。
 それは高校でも一緒で、IB生のためにいろいろやったことが、IB生以外にも、非常に役に立っています。例えば海外大学なんかは、IB生以外の海外大希望者も本校では増えてきています。
 あと、ランキングにとらわれないとか、IB生は、自分なりの学び、どういう学びをしたいのかを本当によく考えます。アメリカの大学なんかは、かなりエッセイをすごくたくさん書いたりしますけど、合格のお手紙が来るんですね。「あなたは合格です」というお手紙が来て、そこがすごくパーソナライズされて、例えば「君のラグビーで培ったリーダーシップを本校でも生かしてほしい」とか、すごくパーソナライズされたものが来るんですね。それでそれぞれみんなが受かったところの学生に聞いたりして、どういう学びがそこでできるのかを本当によく調べています。中にはディプロマが取れて、学部から行けるというところを、海外が不安なので準備コースからやりたいといって準備コースから行く生徒もいたりします。
 また、国内大学に行く生徒たちも、各大学にどういう海外の提携先があるかを調べて、入学した当初からそこを狙って、スウェーデンとかオランダとかに日本の大学から留学した生徒たちがいて、この間も話をしてもらいましたが、どういう学びができるのかをすごく考えているかなと思います。
 IB生を評価していただくというところで、こちらは高校のほうの言い分もあるのですが、例えばIBを42点ぐらい取っても不合格になる等、IBのほうが不利になってしまうような大学とか、出願の準備が大変とか、いろいろあることはあるのですが、大学様のほうもいろいろな事情があると思います。定員のこととか、まだ分からないとか、そういうところを何か対話するような機会とか、お互いを知るような機会とか、何かそういうのがあって、お互いウィン・ウィンになるような制度とか、入試制度とか、解決策が出てくるとよいなと感じております。
 最後になりますが、IB生はそもそもIBで学びたいという強い意欲がある生徒でないと成り立たない学びですよね。私はIBのほうが優れているとは思ってなくて、そういう選択肢があることが大事で、日本のカリキュラムとIBの違いがあるだけで、優劣があるわけではないと思っています。生徒たちにもそう言っておりますし、学びを自分で選びなさいと言っております。
 IB生は学び方を学んでいると言えると思います。学習者像、学習の方法、言語化することによる理解――自分の言葉にしてみて理解していく。例えば「IB生の進路の多様化」の多様化とは何を意味するのかとか、それぞれ思っていることを持ち寄って、そこからより解像度を高めていくという言語化、多様な視点、概念を使う学習、教科横断型、そういう学び方を学んでいると思います。そういうことで、世界の大学も含めてどういう学びができるのか、すごく内容や方法を吟味して、選択をしていると思います。
 なので、IB生の学びをどうにか社会に生かしていけないかなと考えているのですが、IB生を見ていると、自分の選択することが自分の人生や社会を変えられると考えているかなと思っています。海外に行くというのを最初は想像もつかないみたいに思っていた生徒が、いろいろな学びをして、いろいろな情報を取り入れていく中で、自分で本当にこれをやりたいからここで学びたいと、どんどん選んでいくようになったりします。ということで、より多様な学びの選択ができるようにすることで、大学のほうもアドミッションポリシーがあると思いますので、お互い理想の学びがマッチングできるような形になってくると、IB生だけでなく、IB生以外にもいろいろなメリットが出てくるのかなと考えております。 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 松崎先生、ありがとうございました。意見交換は追って時間を取りますが、ここまでの発表で、送り出す高校側の先生方のお声を聞かせていただきました。非常に具体的なお話が多かったと思いますが、事実確認等はございますでしょうか。
 黒田委員、お願いします。
 
【黒田委員】  
どうも本当にありがとうございました。大変興味深いお話を伺いました。
 先ほど松崎先生から、IB生が国内において不利になったり有利になったりすることがあるというお話を伺ったのですが、IB生とIB生でない人の海外出願が多くなっているという話もあったのですが、海外の大学でIB生だから採られるといいますか、IBであることがどのくらい有利に働いているのか、感触がありましたら教えていただけますでしょうか。
 
【松崎(茗溪学園中学校高等学校)】 
 はい、ありがとうございます。
 一番分かりやすいところとしては、イギリスとかオーストラリアですと、IBの資格があると学部が3年で済むことがありますかね。日本の高卒の通知表もカウントはしてくれるのですが、基本はファンデーションからで4年間ということがあるかと思います。
 IB生以外の海外の出願はまだそれほど多くはないのですが、去年もアルバータ大学とか、今年もシドニーとか、幾つかIB生ではない生徒でも、日本の通知表で出して、合格が来ている生徒もいたりします。ただ、調べてみると、海外の大学も通知表が通用する大学と、しない大学があるようです。しない大学では、やはりSATとかが必要になるようで、IB生のほうがより多くの大学から評価されるというのはあると思います。オンラインで出願して、早い大学ですと、2日ぐらいで合格が来ることもありますので、IBのスコアのほうが大学にとっても分かりやすいところがあるのかなと思っております。
 よろしいでしょうか。
 
【黒田委員】 
 ありがとうございました。
 
【松崎(茗溪学園中学校高等学校)】 
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 
(質問無し)
 
【岩崎座長】
 また最後に荻野先生と松崎先生に御質問や御意見等をお願いしようと思います。
続いて、今度は受け入れるほうの大学側のお話をお聞きしたいと思います。
 東北大学の事例ということで、山口委員、お願いいたします。
 
【山口委員】
 東北大学の山口でございます。
 まず、本日高校側の御説明をいただきまして、大変ありがとうございました。非常に勉強になりました。ありがとうございます。また、課題になっていることも共有できて、大変うれしく思います。
 ここからは、東北大学で行っている国際バカロレアを活用した大学入学選抜について御説明いたしたいと思います。
 東北大学の場合には二種類のIBを活用した入学者選抜がございまして、一つは、①と書いてございますが、国際学士コースと呼んでいるものです。これは外国人の留学生を英語で受け入れるプログラムです。2011年から行っています。
 もう一つが、本学の場合は「国際バカロレア入試」というそのものの名前をつけているものですけれども、これは国内の大学を卒業した学生向けに行っているものになっています。これは2017年度に導入して、様々ある特別選抜の中の一つとして行っています。東北大学の場合は10学部のうち7学部で実施しています。
 実は私自身は、教育改革と国際戦略を所掌しておりまして、1番の国際学士コースの部分について主に所掌しております。2番の国際バカロレアについては、教育担当の理事が入試全般を見ているということで、そこで最終的に見ているということになっております。今日はその両方について私が知る限りで御説明したいと思います。
 まず、国際学士コースですが、これは英語によって学士の学位が取得できるプログラムです。現在、理学部、工学部、農学部の三つの学部で行っています。この入学選抜において出願資格、出願要件でIBを活用しているということです。
 ここにIBの出願要件がありますけれども、このAからDまでを出してくださいとしています。理由書、成績、TOEFL iBTの試験スコアに加えまして、何らかの成績が分かるもの――IB、SAT、ケンブリッジ国際、EJUその他、そのいずれかを出してくださいということでやっております。下のほうに、三つのコースでそれぞれどのレベルのものを要求するかを書いてございます。
 このIBを活用した出願の状況を下のほうにまとめております。過去3年をここに載せていますが、おおよそ百何十人かが出願する中で、全体として合格者は40名弱となります。実際に入学した学生は二十数名となります。年によってIBの提出者と合格者についてはばらつきがありますけれども、3年間でならしますと24名ですので、年間8名平均でIBの提出があって、そのうち合格者がこういう形になっているということです。
 実際にはこのIB、SAT等々の中では、SATやケンブリッジで出してくる学生のほうが多く、あるいは各国の統一試験のスコアも受け入れて行っています。
 続きまして、国際バカロレア入試のほうです。こちらの導入の経緯は、本学の場合にはグローバルリーダープログラムというのを2013年度から進めておりまして、学部段階でのグローバルリーダーの育成が非常に重要な目標となっています。その中でIBの学生を受け入れていきたいということで、導入を進めたというのが経緯でございます。
 2017年度に入試を行うということで、2014年度に全学的なワーキンググループをつくって、2年前に導入の方針を固めて、募集をしたという状況でございます。
 入学時期は4月入学で、今、4月入学と10月入学の二つを設けてございます。10月入学は、先ほど申しました英語で受け入れるプログラムですけれども、こちらの国際バカロレア入試のほうは4月入学で、日本語での教育を行うものになっています。
 全10学部のうち7学部が実際に行っているところです。
 IBのスコアを要請しています。学部によるのですが、総合成績で35点、あるいは一番高いところでは38点以上を要求することになっています。
 その他ですが、学部によってどれを選択して、それはどういったレベルでないといけないということを、理系と文系に分けて、各学部で設定している状況です。
 募集人数については、各学部若干名としております。医学部医学科については少し複雑で特別選抜を合わせて3名ということにしております。医学系は厳密な定員管理が要求されることがあって、そういった形で行っています。
 実施している時期について書いてございませんが、七つの学部のうち五つは10月に行っていて、あと二つは2月ということになっております。
 実績については、ここに挙げていますが、まだまだ多くはないのですけれども、これまでの5年間で、志願者18名、合格者が8名、うち入学者が6名ということになっております。
 ここまでが提出した資料ですけれども、ここからはより詳細な部分について別の資料を用いて説明いたします。国際学士コースについては、IBは、先ほど申し上げましたように、一つの選択肢になっていて、書類選考に活用しています。したがって、ほかの種類の成績――ケンブリッジとかSATとか統一テストとの比較が課題になっております。これについては、例えば世界的に標準になっているところも参照しつつやっているつもりですけれども、なかなか実際問題として難しいところがあるなと感じております。
 それから、当然海外の学生ですと、いろいろな大学を併願しております。したがって、合格者に比べて、入学者はかなり減ります。これは国際的な競争の中で獲得していくということなので、それは当然だと思うのですけれども、こういう試験は国際的な競争にさらされているわけで、ここで優秀な学生の獲得を行うことが重要だと思っています。
 入学後成績は、実はIBを用いた入学者は国際学士コースでは全体と比べて若干低いという傾向があります。したがって、留学後にしっかりとしたケアが課題になっています。
 一方、IB入試は国内の学生を受け入れているものですけれども、上の二つは先ほど説明しましたが、数ある特別選抜のうちの一つとして行っています。本学の場合には、AO入試を国立大学の中ではかなり進めていて、3割強の学生を今AO入試で受け入れている形になっています。そのノウハウを使うという意味でも、そこに準拠した形で実施しているというのが実態です。学部によって、筆記試験とか面接試験を課しているというところがございます。
 実はIB入試で受け入れた学生については、入学後の成績が全体としては良好だということが分かっていて、特に問題になる事例は今のところ生じていません。全体としてまだ少ないので、そういう傾向があるという事にとどめます。
 国際学士コースでは若干低く、国内のIB入試では高めである理由については、正直まだよく分かってないところがございます。これが、バックグラウンドが全然違うところから入ってきた留学生が日本の大学に来て問題を抱えるということなのか、一方でIB入試で入ってくる学生はある程度日本の土壌に慣れていて問題が生じないのかなど、その辺りの分析はまだできておりません。今のところそういう傾向があるということです。
 今後に向けてということでは、これはあくまで個人的な見解ですけれども、国際的な獲得競争が起こっていて、それは学部に留学生を受け入れるということだけではなくて、先ほどの高校側のお話でも、海外に相当目が向いているという中で、優秀な学生をどうリクルートしてくるかということが非常に重要になってくるし、そういった環境の中でやっていくということは、多分日本の学生と大学の双方にとって競争力を増していくということなので、非常に重要だと思っています。これはむしろ歓迎すべき方向だと思います。
 ダイバーシティ、イクイティー、インクルージョンの視点が重要だということは、申すまでもないと思っています。IBの学生を受け入れるというのは、ある意味で多様性を大学にもたらしますし、その中でそういった学生がしっかりと活躍できる場を提供していくこと、そういうケアをしていくことが我々は非常に重要だと考えております。
 そして、IBも含めてですけれども、世界的なあるいは国内でのマーケティングも含めて、大学の戦略の中でどう位置づけるかが非常に重要だなと感じているところでございます。
 私がこういったことを考える上で非常に参考になる大学の例がございまして、これが岡山大学の事例でございます。ここに挙げていますサビナ・マハムド先生を、実は坪谷委員から御紹介いただきまして、いろいろヒアリングをさせてもらったりしています。岡山大学では入学後に専任教員がIBで入学した学生のキャンパスライフを支援するような体制がしっかりと組めています。もちろんそれはIBで受け入れた学生が非常に優秀で、大学にとっても非常によいという実績があるからだとは思うのですけれども、そういった形で進めています。
 先ほど挙げました我々の課題も、この岡山大学の中では既にいろいろ進められていると分かって、勉強させていただいておりまして、こういったことを参考にしながら大学でどういうふうに進めるかを考えていきたいと思っております。
 私からの報告は以上になります。よろしくお願いします。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
東北大の例は、IB生を海外から優秀な人材をプールし、リクルートするというお話でした。IBフレンドリーな大学へと東北大も歩を進められていると思いますが、何か御質問等ございますでしょうか。
 
(質問無し)
 
【岩崎座長】
 次は、もう一つの大学、私立大学の上智大学です。
 先ほど文科省から提示していただいた基礎的データの最後のページを御覧いただきますと、上智大学は私立大学の中で最も申請書を送付する先として挙がっているところです。次が早稲田大学になっていたかと思います。
 申請書送付先が多いと言う点も含めて、上智大学の例を西澤副学長と高谷様よりお願いしたく思います。よろしくお願いいたします。
 
【西澤(上智大学)】 
 よろしくお願いいたします。私は西澤と申します。上智大学の高大連携担当副学長を仰せつかっております。よろしくお願いいたします。
 これから「IBの入試活用とIB生に期待すること」ということで、私が大学の概要について簡単に説明させていただいた上で、IB入試に関する詳細については、入学センターの高谷チームリーダーから説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、最初に、上智大学の特徴を簡単に御説明させていただきたいと思います。
 我々は上智大学の四谷キャンパスのことをソフィア・グローバルワンキャンパスと呼んでおります。具体的にこのグローバルワンキャンパスという意味合いはどのような特徴があるかというと、三つ考えております。
 一つ目は、まず大学のロケーションが東京都心の四ツ谷にあるということでございます。その四ツ谷のワンキャンパスの中で、理系・文系の総合大学として大学運営をしているということで、コンパクトな規模ながら、人文科学、社会科学、自然科学系の9学部29学科で構成している小さな総合大学というニュアンスで捉えていただければ、大変うれしく思います。
 二つ目は、国、地域、国籍を越えた学習環境を整えているところに最大の特徴がございます。世界各国から招聘した外国人教員や来日した留学生とともに学ぶ国際性豊かな環境で、様々な価値観や複眼的な思考を学ぶことを大きな目標として掲げております。上智大学は、グローバルなカトリックネットワークを通じて世界に約400校の協定校を持つとともに、アジア圏内だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど、世界の様々な地域から非常に多くの留学生を受け入れています。
 三つ目としては、世界に直面する課題に向き合う姿勢として、「他者のために、他者とともに」――For Others, With Othersというイエズス会教育がベースにある教育精神に基づき、貧困問題や環境問題など、様々な現代社会の課題に立ち向かい、最近ではSDGsに関わる様々な取組を積極的に行っているところに特徴がございます。
 今申し上げた9学部29学科の構成はこのようになっております。ほかの大学にはなかなかない神学部、文系では文学部、総合人間科学部、法学部、経済学部、外国語学部、総合グローバル学部という形で、7学部が日本語学位プログラムとして運営しています。さらに国際教養学部は、全て英語で授業を行う英語学位プログラムとしての学部です。また、理系として理工学部があり、物質生命理工、機能創造理工、情報理工の3学科で構成しています。
 その中で、特徴的なものとして御紹介させていただきたいのは、本学の英語学位プログラムでございます。主に三つのコースがございます。
 一つ目は国際教養学部です。これは従来から伝統的にある学部でございますが、リベラルアーツによる教養教育と専門教育を行う学部です。国際教養学部は全て英語で授業を行っており、自身の専門分野は3専攻の中から選択し、2年次の後期から選択した専攻での学びを中心に学位を取得するという流れで構成されています。Faculty of Liberal Artsとい英語名称の国際教養学部がまず一つ目でございます。
 近年新たに立ち上げたのが、右側        のSPSF―Sophia Program for Sustainable Futuresという、学部としては4学部、学科としては6学科から構成されている学位プログラムでございます。持続可能な未来に向けアプローチするプログラムとしてカリキュラムを組んでおり、それぞれの専門分野を学びながら、各学科の相互協力によって学際的な学びが可能にするプログラムでございます。
 所属学科としては、新聞学科が文学部、教育学科と社会学科が総合人間科学部、経済学科と経営学科が経済学部、最後の総合グローバル学科が総合グローバル学部になります。この6学科から構成されているプログラムでございまして、SPSF共通の科目と各学科の専門科目、さらには他学科の授業履修を行った上で、横断的な学びを習得できるプログラムとなっております。
 SPSFプログラムにおいては、それぞれ所属する学科によって取得できる学位が異なります。新聞学科の場合には新聞学、教育学科の場合には教育学、社会学科の場合には社会学、経済学科の場合には経済学、経営学科の場合には経営学、総合グローバル学科の場合には国際関係論または地域研究という学位が取得できるところに特徴がございます。
 さらに、理系として理工学部英語コースもございまして、地球環境問題というグローバルな視点と思考が求められる分野にアプローチしたプログラムもございます。こちらはグリーンサイエンスとグリーンエンジニアリングの二つのコースから構成されております。
 このような英語学位プログラムを本学は用意させていただきまして、優秀な学生を受け入れています。
 では、これから先、IBに関する具体的な内容については、入学センターの高谷から説明いたします。
 
【高谷(上智大学)】
 ありがとうございます。上智大学入学センターチームリーダーの高谷と申します。ここからIB入試に関して詳しく私から御説明させていただきます。
 まず、上のほうのタイトルにございます「IB Diploma取得者を対象とした入試制度」ということで、先に英語学位プログラムに関する入学試験制度について御説明させていただきます。
 まず、先ほどのお話にあった国際教養学部ですが、こちらで行っている入試として、国際教養学部入学試験がございます。国際教養学部は4月入学と9月入学の年2回入学時期が用意されておりまして、それぞれの入学時期に合わせて、各年2回入試を行っています。
 この入試の大きな特徴といたしましては、選考方法のところを御覧ください。出願書類に基づく書類選考型入試ということで、試験日を設けて、上智大学に来て、筆記試験もしくは面接を受けるといったことを一切行わない、オール書類選考型の入試というところが大きな特徴かと思います。
 具体的に、ではどういう書類で選考するかですが、下のほうにあります①から⑦までの大きく七つの書類を出願時に御提出いただきまして、その内容をもって選考いたします。
 本日はIBに関するお話ですので、この出願書類の中の⑤番、以下のaからdのうちいずれか一つ以上というところを御覧いただければと思います。具体的には、SAT、ACT、IBのディプロマ、GCEのAレベル、以上の四つのうちから一つ以上、必ずスコアを提出いただくことになっております。
 国際教養学部の入学試験自体は以前から行っていますが、2012年度入試からIBディプロマを要件に追加しています。IBを追加導入した目的は右下に記載させていただいておりますけれども、キャンパスのグローバル化推進を目的として、国籍を問わず、より世界中から多様な教育制度で学んだ入学者を受け入れたいという意図から、IBディプロマを追加しています。
 同様に、dに当たるGCEのAレベルも、こういった同じ目的から追加しています。
 受験生自体は世界中から御受験いただいている状況ですが、この大きく四つの選択肢の中でどれを使って出願してくる子たちが多いかというと、細かい割合はお伝えできないですが、一番多いのはSATを使って出願してくる受験生で、他の3つに比べて圧倒的に多い状況です。IBのディプロマを使って出願する受験生は、国際教養学部入試の出願者の中の大体20%から25%ぐらいですので、こちらも非常に多くのIB生に受けていただいている状況になっております。
 同じく英語学位プログラムの入試といたしまして、先ほど御紹介しました理工学部の英語コースやSPSFの入学試験においても、基本的な入試の立てつけは国際教養学部と同じように出願書類のみで選考するという入試の形態を取っております。
 先ほどの国際教養学部と少し違うところは、一番下に※印で書いてあります。国際教養学部の場合はIBの必履修科目の設定を一切行っていないのですが、SPSFの経済学科と理工学部の英語コースの二つに関してはIBの必履修科目の設定をしているという違いがあります。
 本日のメインのお話になりますが、日本語の学位プログラムにおけるIB活用ですが、本学は2017年度入試から国際バカロレア(IB)入学試験というものを新たに立ち上げております。
 こちらに関しては、国内外問わず、多様な人材を受け入れるためという目的を持って、IB生の中の、特に主体的に学ぶための知識や思考力、明確的な目的を持って学ぶ意欲、語学力を含むコミュニケーション能力を重視して選抜したいということで、新たに入試を立ち上げております。
 このIB入試は、第1期募集、第2期募集ということで、年2回募集をしておりまして、それぞれで対象となる学生が変わってきます。
 まず、第1期募集に関しては、国内外のインターナショナルスクールもしくは海外のIB認定校の出身者または卒業見込みの者ということで、基本的には海外からの受験生を対象としております。
 同様に、第2期募集に関しては、日本におけるIB認定校で、学校教育法第1条に規定されている高等学校、つまり1条校でIBを取得している学生を対象としております。
 こちらのIB入試の選考方法ですが、基本的には先ほどの英語学位プログラム同様に出願書類のみで行う書類選考型としておりますが、かっこ書きにあるように、第1期募集の一部学科のみ面接試験を実施しています。大学入学後、日本語をベースとして学んでいく学部・学科での募集となりまして、海外の場合は日本語以外の言語を使ってIBを取得している受験生もいますので、一定の日本語能力の担保が必要となってきます。学科適性だけでなく、そういった観点で面接試験を行っている学部、学科が一部あるということになります。
 こちらのIB入試における出願書類ですが、左側にある①から⑧の八つの出願書類を求めております。赤字で書いてある箇所にあるように、③番から⑦番の出願書類を求めている理由ですが、IBのFinal Gradesだけではなく、IB教育プログラムを通じて培った主体性、思考力、学ぶ意欲、コミュニケーション能力など、教科学力以外の要素も重視して選考したいという意図で、これらの書類を求めています。
 本日のお話の中でもあったように、こういった出願書類が受験生にとって負担になっているという考え方も重々承知をしている部分ではあります。私たちもいろいろ検討する流れの中で、特に立ち上げ時に考えていたことで、一つは合否判定基準をどうすべきかという観点にひもづく内容になってまいりますが、例えばIB Final Gradesを合格の目安としては何点ぐらいを設定すべきなのか、もしくは、IB教育はスコアだけでは表れない部分も往々にしてあると考えていますので、そういったものを入試でしっかり評価するために何をすればいいのか、大きくこの二つで立ち上げ時に検討を行ってまいりました。
 IBのFinal Gradesの合格目安に関しては、既にIBDPを利用した入試を行っていた国際教養学部での実績をベースとしまして、国内外の他大学の基準も調査した上で、各学部・学科で目線合わせをしながら検討を進めました。
 また、本学ではTOK、CASなどのレポートを出願書類として求めておりますが、少しでも負担を小さくということで、細かいレポートの記載の指定はせず自由書式にして、受験生が教科学力以外の要素をアピールできるようにいたしました。
 2017年度入試から立ち上げていて、昨年度2022年度入試までのそれぞれの志願者の状況をまとめております。志願、合格者ということでまとめておりますが、2017年の立ち上げ以降、2020年度までは右肩上がりでそれぞれ受験生が増えている状況でしたが、直近の新型コロナウイルスの影響なのか、近年では若干の減少傾向にあります。
 また、第1期募集と第2期募集それぞれのIB入試を受験していただいた方々の志願した学部を整理した資料となります。どういった学部系統に人気が集中しているかというと、下に書いてあるとおり、国内外のIB認定校出身者については法学もしくは経済学系統が非常に人気で、1条校の出身者に関しては国際関係学、社会学、経済学系統が人気です。多少海外と1条校の出身者で、志望する学部系統に差があるのかなという気がしております。
 最後に、IB生に期待することといたしまして、IB教育プログラムは非常に特徴のあるプログラムだと思っておりますし、また、上智大学での学びも同様に海外志向が強い、特徴あるプログラムです。この二つの特徴あるカリキュラムで学ぶことで、多角的な視座、国際通用性、創造性を身につけていただく、そして世界の福祉、創造的進歩に奉仕する変革の担い手になっていただきたいということをIB生に期待をしておりますし、大学としてはこういった学生たちを世界中に輩出していきたいと考えております。
 これらを考えたときに、より大学として今後このIB活用を広げていきたい、もしくはIB生にもっと入ってきてほしいと考える上で、最後2点ほどお話をしたいと思います。今後のIB入試を広めるために必要と考える点ですが、実際このIB入試立ち上げの際、私がすごく苦労した部分がございまして、国内外のIB認定校で開講されているIB科目の開講状況や、それぞれの科目をどれぐらいの生徒たちが履修しているかというような情報を把握するのが難しく、学科ごとにこの科目はIB科目として履修してきてほしいというような必履修科目の設定をするときに、その設定が適正かどうかという判断に非常に悩みました。実際ここでミスマッチを起こしていると、思うように志願者が集まらないとか、受験したいのに受けられないというような双方にとってのデメリットになってくるかと思います。
 実際に本学もこのIB入試を立ち上げたときには、例えば社会学系統の学部・学科であれば、経済とか地理、歴史のいずれかをIBの必履修科目として必ず取っていてくださいというような設定をしておりましたが、実態を見ていくと、その選択ではなく、ビジネスと経営を科目として選択している学生が世界中に多かったということで、そういった対象の学生から、ビジネスと経営も科目に含めてほしいという要望を多くいただくなど、どうしてもこちらで把握し切れないミスマッチが生じてしまいます。そういった点を双方の情報開示によって改善していくと、よりIB入試が広がっていくのかなと思っております。
 また、IB入試の導入を検討する大学の皆様へ向けて、実際に私たちが立ち上げて感じていることなんですが、やはり現状日本の大学はいろいろな入試を既に行っておりますので、そこからプラスアルファとして新たに入試を立ち上げるということは非常にハードルが高いことだと感じております。
 ただ、実際、上智大学ではこのIB入試を立ち上げてみて、入学したIB生が大学入学後にゼミ等でほかの学生を引っ張る、そういったリーダーシップを発揮しているという声も先生方から伺いますし、そういった状況からIB生にもっと入ってきてほしいんだという声も多くいただいております。ですので、まずは賛同いただける一部の学部・学科からでもよいので、スモールステップで導入して、その学内の声を積み上げていって全学展開をしていくといったことが良いのではと思います。本学のこういった事例も踏まえて、ぜひIB生をいろいろな大学が受けられるような環境になっていくとうれしく思います。
上智大学の発表は以上となります。ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 この後、休憩を挟みまして、質疑応答、御意見を交え、高校、大学の方もいらっしゃるせっかくの機会でもありますので対話の場を設けたいと思います。まずはここまでのところで事実に関する質問に限定して何か御質問等おありの方がいらっしゃいましたら、チャットか挙手のサインをしていただけると幸いです。いかがでしょうか。
 
(質問無し)
 
【岩崎座長】
 それでは、盛りだくさんの情報だったので、皆さん整理をするお時間も必要かと思いますので、14時40分まで休憩を挟みます。40分から会議を再開しますので、それまではズームの画面と音声をオフにしてください。よろしくお願いします。
 
(休憩)
 
【岩崎座長】
 時間となりましたので、再開させていただきたく思います。
 まずは、非常に貴重なお話を高校と大学の立場からお話しいただきました。この中で、議題3に移るわけですけれども、事務局より補足説明をお願いしたいと思います。
 質疑応答、あるいは意見の交換に際しましては、大変恐縮ですが、茗溪学園と上智大学の関係者の方には委員のほうから質問、意見があるかもしれませんので、引き続き御参加いただけると幸いです。
 それでは、事務局から、よろしくお願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 文科省より少し補足説明をさせていただきます。
 その前に1点だけ、資料1にございますけれども、この後議論に移っていただきますが、。検討事項3、大学入試へのIBの活用促進、こちらは本日もいろいろお話しいただきましたけれども、国内進学、海外進学それぞれについて御意見いただければと思っております。
 また、検討事項の4、IBの教育効果等の把握・検証にについて、本日事務局からは、コンソーシアムのほうで実施いたしました大学入試に関する調査を紹介させていただきましたけれども、今後さらにIBを普及していくためには、幅広く御意見をいただければと思ってございますので、高校段階までのIBであったり、児童生徒の変容、また、IB生の卒業後の進路など、大学入試に限らず幅広い視点で御意見をいただければと思っておりますのが検討事項4でございます。
 そして、ここから事務局として事例を少し御紹介させていただければと思います。先ほど山口委員のプレゼンの中でも御紹介ございましたけれども、国立大でのIB生の受入れということで岡山大学の事例でございます。岡山大学では、2012年から10年間 IB生を受け入れていらっしゃって、しかも全学部を対象としてやっていらっしゃいます。そして、医学部の学生さんの人数も割合としても多いというような特徴もあると伺っております。
 また、その中では、全学一括で募集をされるように国際プログラムとしてグローバルディスカバリープログラムというプログラムもお持ちでいらっしゃると伺っておりまして、そちらではフルディプロマ、また、フルディプルマではなく一部の科目だけというような方々も入れるような工夫をされていると伺っております。
 また、1点、インターナショナルスクールの方にも事務局のほうで少しお話を伺う機会がございましたので、簡単ではございますけれども紹介をさせていただきます。本日の発表の中でもございましたけれども、例えばIBについての海外大学の受け止めといたしますと、例えば特に欧州、イギリスの大学では、高校の卒業証明書だけではなかなか評価をしてもらえない。そういう意味では、IBは標準的な大学入学資格となっているというのは今日の御説明の中でもあったと思います。また、欧米の一部の大学ではIBが大学入学後に単位認定をされるということ、また、IBは国際通用性が高いため、多くの国でその学びを理解してもらいやすい、どういうカリキュラムを経てきたかというような点が理解されやすいとおっしゃっていらっしゃいました。
 また、進路指導という点で各大学、各高校でも御苦労されていらっしゃるというお話もございましたけれども、やはりインターナショナルスクールのほうでも、カウンセリング、カウンセラーというところには工夫をされていらっしゃって、なかなか難しいところもあるともおっしゃっていました。複数といっても2名程度のカウンセラーの方が七、八十人の生徒さんを見るとのことでした。そういう意味では、1人当たり三、四十人程度ということになりますけれども、進路指導に限らず、社会的、精神的なメンタルサポートも少しされているというようなことも伺っております。
 そして、進路指導についてですけれども、高校1年生ぐらいの段階から進路に関するセミナーや面談を行い、生徒の話を聞いて、どういうことをやりたいのか、そして、進学希望先の国や大学に応じて高校での履修科目などを決めていくというようなお話もされていると伺いました。
 また、今日も奨学金等、大学進学への授業料の話もございましたけれども、やはりその点、ほぼ全ての御家庭にとって大学選択のときの重要な要因になってくると。そういう意味で、授業料が幾らなのかというようなことは非常にポイントだと。また、IBの見込みスコア、こういうものも重要だということも伺っております。その際、学校が作成する推薦書も併せて御覧になるということでした。
 非常に授業料が高い大学などもあるわけですけれども、大学への奨学金を獲得するということ、そのための情報収集というのが重要であり難しいというところは本日のお話にもあったかと思います。アメリカに比べると欧州の大学のほうが、比較的という意味ではございますけれども、授業料が低いと。そういう意味で、欧州の大学を希望されるような生徒さんが多いと伺っております。
 そして、インターナショナルスクールからもIBを使って日本の大学へ進学をされる生徒さんもいらっしゃいますけれども、日本の大学に行かれる方ほぼ皆さんがIBを利用して進学されるというようなケース、また、英語コースに申請されるような生徒さんもいらっしゃることと聞いております。以上となります。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。追加の情報でした。
 今室長から最初に御説明ありましたが、検討事項3の大学入試でのIBの活用促進、それから、④としてのIBの教育の効果等の把握・検証、例えば高校段階までのIBの学びによる児童生徒の変容のプロセスの検討、IB生の卒業後進路の追跡調査などの効果検証のためのアイデアも出していただきたいということでした。
 それでは髙野委員、もしよろしかったら口火を切っていただきたく思いますが、いかがでしょうか。
 
【髙野委員】
 はい、承知しました。
 
【岩崎座長】
 高校の立場でもどのようなことでも結構ですので、3分程度でお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
 
【髙野委員】
 はい。荻野委員のお話とかをお伺いして、これから来年本校も卒業生をやっと出しますので、そういった御苦労があるんだということがよく分かりました。ありがとうございます。
 私の意見としては、実は、四国内では、香川大学、それから高知大学もIB入試の実施について発表されました。まだ高知大学は詳細は発表されてないんですけれども、今山口委員のお話等々をお伺いする中で、やはり受ける生徒の側からすると、残念ながら高校も格付されるんですが、大学側も同じようにある種の受験産業の中で格付もあって、でも、やっぱりどこの大学も、ある種右へ倣えで非常に高いスコアを要求されるケースが続いているのではないかなというようなところを感じております。
 やはり地元の大学にぜひ進学してほしいのですが、具体に言えば、例えばスコアが38を要求されたときに、ほかの大学も38があって、じゃあ、そのときに地元の大学を選ぶのかなと。もちろん選ぶ生徒もいると思うのですが、何かしら、もっと具体に言えば、例えばフルディプロマが取れる24点から、例えば20点台ですよね、20点台後半の生徒さんの学力といったものを大学側としてどのように受け止められていくのかというところが明らかになってくると、後発の大学様もどういう基準でやればいいのかということを判断しやすくなると思います。今ちょっとそれぞれが手探りなので、なかなか難しくて、今もう出されているものに右へ倣えで、あそこの大学が38だから38、35だから35というような傾向があるのではないかというところで、ぜひ改善していただきたいなという意見でございます。以上です。
 
【岩崎座長】
 はい、ありがとうございました。
 東北大学、上智大学で何かコメントございますでしょうか。
 山口委員お願いします。
 
【山口委員】 
じゃあ、山口からお話しします。
 確かに最初の点数のところ、スコアの事ですが、、本学でまず2014年度に導入するワーキンググループの中では、海外の状況も調査した上で、35点を大学全体のガイドラインとして示したのですが、実際にどこに設定するかという判断は実は各学部によって行われています。これは公開情報ですので見ていただければ分かるのですが、例えば医学部医学科ですと38点に設定しています。
 そこに対して、やはり高いのではないかというような、東北大学はかなり地元の高校とかあるいはいろいろな高校と対話をしている中で、そういった話は出てきている中でどういうふうにするかということについては検討しているところです。
 それから、本学の場合には、先ほどちょっと申し上げましたけれども、AO入試をかなり進めている中で、IB生ではあっても、AO入試のパスで来られているような学生さんもいます。そこはまだ先ほどの統計の中に入っていないのですが、そうした形でもIB生の受入れをしています。
 正直まだ実施して数年で、データがそれほどたまっていないというのがあって、どうしても高めに設定したがるという傾向はあるのかなと思っていて、学内でそのあたりをどこまで説得できるかといいますか、話が進むかというところかなと思っています。
 以上でございます。
 
【岩崎座長】
 はい、ありがとうございました。
 上智大学高谷様、何かコメントございますでしょうか。
 
【高谷(上智大学)】
 はい、ありがとうございます。
現状、上智大学の入試において、出願段階でIBのファイナル何点以上というような総合点の基準というのを一切今設けていない状況でして、その背景といたしましては、先ほどの御説明にあったスコアだけでは見えないIB生の良さを最大限評価したいということで、入り口からそこを縛ってしまうということはしないという考え方から行っております。今後においても、総合点何点以上と設ける予定は現状ではありません。
 ただ、科目単位で見ると、IBの必履修科目設定をする上で、例えば理工学部であれば、数学HLの5点以上とか、入学後の学力担保ということも踏まえて科目単位で一部制限をかけていたりはしますけども、総合点ではかけないということで本学の今の状況としては御理解いただければと思います。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 はい、ありがとうございます。
 髙野先生、髙野委員よろしいでしょうか。
 
【髙野委員】
 ありがとうございます。できれば上智大学様がおっしゃったような、特に必要な科目については成績の縛りがあるけれどもというような形が進んでいけば、より多くの生徒がいろいろな大学に挑戦しやすいのではないかなと思います。特にうちはいわゆる受験エリート校ではないので、様々な学力の生徒がIB教育を通して自分の力を伸ばしていますので、やはりそういった努力が評価されるというのが一つあれば非常にうれしく思います。ありがとうございます。
 
【岩崎座長】 
はい、ありがとうございました。
 高校の方々をまとめてお話しいただいたほうがスムーズかと思うので、宮田委員お願いできますでしょうか。
 
【宮田委員】 
はい、宮田です。今日の4名の発表を聞かせていただいて大変勉強になりました。どうもありがとうございました。
 私どもの学校も、2つの学年が6年間の学びを終えて卒業したところです。それで、DPを取得した生徒が例えば昨年は10名いましたけれども、結局DPを使わないで進学した生徒が3名おりました。それから、今年もDP取得見込みの者が6名いますけれども、現在のところDPを使わないという生徒が1名いるところです。
 なかなか日本の大学、希望する大学等に制度がないというところもありますけれども、なかなか海外のスコアと比べると、髙野委員がおっしゃったように、日本の大学のスコアに若干違和感を覚えるところがあるかなと思っているところです。DPを使わない生徒は通常入試を受けてという形になります。
 それから、札幌という土地柄かもしれないのですが、海外の大学に進学する生活費とか、学費とか、そういうところのお話が先ほどありましたけれども、奨学金を取らないとなかなか進学ができないと。札幌は北海道の中でも人々が集中して、地価だとかいろいろな物価だとか高い部分もあるのですが、それでも首都圏、東京とか関東から比べれば、やはり家庭の経済状況は高収入という家庭が多くはないという現状があります。また、私たちの学校は公立の学校ですので、私立と違って、なかなか高い学費を払って私立の中学校や高校に通わせることができないという状況を踏まえながら通っている生徒がいる中で、IB、DPを取得しても、海外の大学へ進学を希望したいと思っている生徒の中にも、家庭の経済状況を考えて国内の大学にお考えをシフトしていくというような生徒も中にはたくさんいるような状況です。
 大学の奨学金等が取れれば行ける可能性はあるかもしれないのですが、なかなかその奨学金を取るのが難しいというようなお話も聞きますので、そこの部分は大学の今日お話しされた東北大学さん、上智大学さんあたりは奨学金の部分については何らかの配慮等あるのでしょうか、ちょっとお聞きしたいです。よろしくお願いいたします。
 
【岩崎座長】
 一通り高校の先生方のお話を聞いて、恐縮ですが、東北大学と上智大学の関係の先生方にお願いしようと思います。
 それでは、荻野先生いかがでしょうか。
 
【荻野委員(東京学芸大学附属国際中等教育学校)】
 ありがとうございます。先ほど私どもの学校の取組について説明をさせていただいたわけですけども、実は、私、よく分からない点が2点ありまして、この機会に大学の先生方にお答えをいただければなと思っております。一つは、生徒がIB入試を受けましたときに、指定科目について基準点のようなものがある。これは非常に合理的だと思うんです。ファイナルにおいてその基準点を下回ったときにどのようなことが起こるのかについては、実は明確にはどこにも書いてないような気が私はするんですね。ファイナルの点を先ほど申しましたように遅くても2月下旬までには大学のほうに出すようになっていますので、これは当然IB入試ですから、ディプロマが取れないという事態になったら、これは一種の契約違反というんですかね、IB入試を受ける資格がなかったということで、これはやむを得ないとは思っているんです。ただ、いわゆる幾つかの科目について基準点があって、基準点を下回ったときにはどうなるのかというのは実は私らも分かってないんです。
 つまりファイナルまで出せよということは、これは当然基準点を下回っていたら駄目だろうと非常にネガティブに考えるわけです。そういう指導をしないと、万が一のときに生徒が行き先を失うということがあるからで、学校とすれば非常に合理的な指導だと思うんですけれども、そこのところが何ともいつもスカッとしないところでして、とは言いましても、私、先ほど5年見てまいりましたという話をしたんですけども、初期の頃はかなりトータルでそれこそ38点とか9点とかといったところが結構多かったです。ところが、ここ数年、幾つかの科目に絞って基準点を出すということで、私はかなり改善されてきたんだとは思っているんです、この5年のスパンで見ると。それでもやはり釈然としないのは、その基準点の扱いがどうなるのかというところが明確に伝わってこないというところで、少し心配になっちゃうというところが1点目。
 2点目は、先ほどもちょっとお話ししたんですけども、何でDPのプレディクティッドグレードはそんなに日本の大学では信用されないんだろうというところです。そもそも、何度も言いますように、1学期の各学校が各学校の任意で出す成績については、それを認定してそれを基に合否を決定しているわけですよね。それなのに、世界基準で非常に厳密に策定されたプレディクティッドグレードが何でそんなに軽いんだろうというところが2つ目の釈然としない点です。結局私だけが釈然としないのではなくて、これはDP生、それからDP生の保護者もこの辺のところが釈然としないところではないかなと思っております。ですから、いまいちこのIB入試というものに対して大きくかじを切れないというところがあります。
この2点について、お答えできる範囲でお答えいただければなと思います。
 
【岩崎座長】
 はい、ありがとうございました。せっかくの機会なので、茗渓学園の松崎先生も何かございましたらお願いいたします。
 
【松崎(茗溪学園中学校高等学校)】
 今の荻野先生のお話を伺っていて、予測スコアですね。確かに世界の大学でも予測スコアで最終の合格が来るというのは結構ありましたね。イギリスの大学のニューキャッスルとか、トロント大学でも12月終わりにファイナルのアンコンディショナルオファーが来るようなこともありました。
 あと、IB入試の基準点の予測スコアが下回ったとき、ある一定の基準を課しますと書いている大学もあれば、ディプロマなしでも大丈夫な大学も実はあったりして、これは過去に日本の大学で私の生徒でも、一応条件付合格というような形で合格をして、その後ディプロマ、その大学はディプロマを取れなくても合格を取り消しませんという大学もあったり、大学さんによっては、例えば予測スコアが44とかだったら、42を取ってないと駄目というような大学さんもあったり、そのあたりはまだまだいろいろ情報収集されながらも御苦労されているところではあるのかなと思いました。
 私のほうから、あとはEEについて、日本の大学ですと、いろいろ準備するのが大変というのがありまして、準備がやっぱり高3の8月ぐらいになります。その頃は、恐らく結構多くの高校が、いわゆるMOCK Examという、IBの最終試験とほぼ同じような模擬試験を学校内で課すんです。それが大体7割から8割ぐらい。あとは各科目の論文を書くというのがあるります。それぞれ自分でテーマを決めてリサーチクエスチョンを考えて、それぞれのアカデミックな方法に従って論文を書いていくというのが数学・理科・社会とあります。それの締切りも、学校さんによっては、本校もそうなんですけど、恐らく7月だったり8月に設定されています。、あと、TOKという知の理論の締切が8月の終わりなので、それと時期がかぶって準備がちょっと大変なので、この大学を考えていたけど出願をやめるということも結構あったりするんです。
 ただ、やっぱりスコアだけで見るのではなくて総合的に見たいといったお考えも本当によく理解できたりはするんです。だから、どこか妥協点はないかなと考えていたんですけど、課題論文が、これはIB機構に問い合わせたんですけど、IB機構への提出前に例えば大学に提出したりすることはオーケーだそうなんです。ただし、それは大学から何かフィードバックをもらったときに、それをEEのほうに反映させてはいけないと。校内の締切りというのがIBでは非常に重視されて、校内の締切りを過ぎたときにはディプロマは来ないと学校のほうで判断できるぐらい校内の締切りというのが物すごく重要視されるんです。その課題論文も、校内の締切り以降は、DPコーディネーターに提出した後は絶対直しちゃ駄目というのがあるんです。
 なので、例えばEEをそのまま提出できると要約を作る必要がなくなるのではないかと思いました。あと、TOKのエッセイですが、IB機構のほうに大学側にそのまま提出できないか問い合わせたり、あと、10月15日とかが最終のアップロードの期限なんで、それ以降であれば直しようもないので、例えばそのあたりで、TOK、EEのエッセイとかをそのまま提出することはあり得たりしないのかなとも思ったり、何かそういういい方法を探れるといいなと考えております。以上です。
 
【岩崎座長】
 はい、ありがとうございました。
 それでは、申し訳ありませんが東北大学と上智大学の先生に、まずは宮田委員から奨学金に関する質問、荻野委員から国内のIB入試の基準点の扱い、特に下回る場合と、それからと予測スコアに関して信用されていないという現状に対する御認識に対する質問、それから、松崎委員から、上智の高谷さん宛てだと思いますが、入試選抜のためにIBに提出したTOK・EEをそのまま提出することが可能かどうかという点の御質問にお答えいただきたく思います。
 まずは山口委員からお願いします。
 
【山口委員】
 はい、ありがとうございます。
 まず、奨学金についてなんですけれども、残念ながら学部の学生に対しては、ふだんの奨学金という形では、授業料免除とか、あるいはJASSOとか、そういったところ以外には特に設けてはおりません。ただ、このIBを進めるに当たって一つ重要だというのは、グローバル人材の育成ということを申し上げました。その中で、実際に留学をするということになると、費用が相当発生します。そこに関しては大学で、これもできる限りになるんですけれども、その手当をサポートするという形での奨学金というものを出しています。それがまず奨学金についてで、特段IBの学生について取り立てて奨学金を出しているわけではないけれども、留学のサポート等については行っているということです。
 それから、プレディクティッドグレードをどう見ているかということなんですけれども、私が所掌している国際学士コースの話をさせていただきますと、これはIBだけではなくて、様々なものについてプレディクティッドグレード、入試の時期とアドミッションのデッドラインといろいろ違いますので、かなりプレディクティッドグレードをIBに限らず認めているというところがあります。
 最終的には、これをどういうふうに進めるかというのは、世界のいろいろな大学のケースとか調べた上で考えていったんですけれども、本学の場合には最終的なものは出してもらうと。では、その間に大きな違いがあった場合どう判断するかというのは、実はこれ、どこまで言っていいかあれなんですけど、なかなかグレーなところがございまして、考え方として、大きく違った場合には入学を取り消すことがあるというような文言をつけていると。なかなか本学の場合にはそれ以上のことを今の段階では踏み込んで議論はできていません。確かに心配になるということはあると思うんですけれども、現状としてはそういった形で、私たちが調べている中では割とそういった扱いをしている世界の大学が多いのかなと受け取っています。そういったことでもないというような御意見がございましたので、また勉強する必要はあると思いますけども、今そういう形で進めています。
 以上でございます。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。
 続きまして、特にTOK、EEをそのまま提出できるかという観点について、即答は難しいかと思いますが、上智大学の高谷さん、何か御意見等ございましたらお願いいたします。
 
【高谷(上智大学)】 
 本学も三つの質問それぞれお答えしたいと思うんですが。
 
【岩崎座長】
 はい、お願いします。
 
【高谷(上智大学)】
 まず奨学金に関しては、IB生に特化したというものは設けていませんが、学費免除の新入生奨学金や修学奨励奨学金というのが適用されますし、その他にも、入学した後のことを考えたときに、それこそ金銭的な理由で、本当は海外の大学に留学したかったけれども国内の大学に進学するといった学生もいると思います。そういった学生たちに向けた留学支援という位置づけでの奨学金も多く設けておりますので、入学後にそれらを活用いただければ、お金が理由で様々な進路選択に制限がかかることはあまりないというか、極力ないように大学としては対応しております。これはIB生に限ったというお話ではありません。
 二つ目のところ、Predicted Gradesの扱いなんですが、ちょっとこのあたりも、上智大学がIB入試を立ち上げるときの、第2期募集にあたる一条校の生徒たちの入試時期をどこに持っていくかというところに結構影響しているお話でして、実際に私も立ち上げの際、通常の日本の大学の一般入試以外であれば、高校3年生の秋が一番ポピュラーな時期だと思いますが、逆にこの時期にあててしまうと、ファイナルの試験の直前もしくはそのど真ん中にはまってくる、もしくは9月にしてしまうと、先ほどのお話にあったような、TOK、CASに関する事前提出物の提出時期に重なってしまうということで、生徒、高校側共に非常に負担が大きいというのが、一条校の立ち上げ時期に各校を回らせていただいたときにお話を伺いました。
 加えて、Predicted Gradesの正しさというか、精度に関しても、正直立ち上げたばかりの一条校の先生方からは、Predicted Gradesでの提出はむしろやめてほしいという要望が結構多かったんです。このように、スコア精度を高校側もなかなか担保し切れないというお話があったりもしましたので、そういった状況も踏まえて、2期募集に当たる一条校に関しては、もちろん以前からIB教育を行っている伝統校もありますが、そうじゃない高校側の配慮も兼ねて、ファイナルの結果が出てからの1月の募集ということに振り切ったのはそういった背景だったりします。
 ですので、結果的に一条校対象のIB入試においてはPredicted Gradesでの出願ということはないのですが、英語系の学位プログラムの国際教養学部などでは出願の時期によってはPredicted Gradesでの出願も認めております。その場合には、合格通知のタイミングでは条件付合格として、例えば38点というPredicted Gradesで提出した学生に対して、35点を下回ったら合格を取り消すというような条件を設けさせていただいております。
 ただ、ここに関して、出願要件として求めている一部科目での点数基準、例えば数学のHLで5点以上といった科目別の点数基準を条件付合格の要素に入れてしまうと、7点満点の1科目の得点だけで合否が変わってしまうため、出願時の要件として求めている科目ごとの基準はあくまでも出願基準としてのみ利用しています。ただ、条件付合格においては、総合点という全体のところは見させていただくということで、大学としては切り分けて考えさせていただいております。
 最後に、TOK、EE、CASのレポートをそのまま提出してよいかということなんですが、まず一条校を対象としたIBの2期募集に関しては、今お話ししたとおり、ファイナルの結果が出てからの出願になりますので、時期的な問題で、まだ外部に出してはいけないということには該当しないかなと思っております。
 また、私も毎年出願書類を見ていますが、特にCASのところは、学内で多分使ったんだろうなというレポートをそのまま出している受験生ももちろんいらっしゃいます。大学として、高校の中で学びの中で作ったレポートをそのまま出していいか悪いかというところは一切線引きをしていなくて、そういった提出物の内容を踏まえて総合的に評価をするという考え方ですので、負担のバランスと、あとは、そこで出願書類としてどれだけ熱心に大学宛に作ってくるかという点は志望度の高さを見る要素ではあると思いますので、そのあたりのバランスを見ながら選考させていただいております。
 以上です。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。
 高校の委員の先生方、よろしいでしょうか。もし追加で何かありましたら、後でまたお手を挙げていただければと思います。
 それでは、今度は逆に大学の側から高校に対してということになろうかと思いますが、長谷川先生いかがでしょうか。高所からぜひお願いいたします。
 
【長谷川委員】 
 長谷川です。聞こえていますでしょうか。
 本日は、荻野先生、それから松崎先生のお話、現場の状況がよく分かりました。ありがとうございました。とりわけ荻野先生のお話の中で、生徒にとってはIB入試が不利、あるいは生徒にとって受験しやすい入試となっていないという御指摘があったのは、衝撃的な印象を受けました。
 ただ、いろいろな大学で随分状況が変わりつつあるということもあるので、やはり今は移行期なのかなという印象を受けました。IBがほとんど理解されない大学から、何回か出たキーワードでIBフレンドリーな大学まで、大学側の受入れに大きな幅があるのかなと感じております。
 私は、東大で入試担当ではなかったのですが、理事として入試担当の理事や教員とよく話をしました。当時、私は文科省でIB推進委員会に出席していたので、IBをなるべく東大入試でも後押ししてほしいとお願いしました。東大の場合には、2016年から一般入試に加えて推薦入試(AO的入試)を始めたので、幾つかの学部ではIBという文言が書き込まれています。しかし、IBだからといってそれが特典になるような、あるいは有利になるような学部はありません。むしろ東大の推薦入試ではセンター試験を受験することが必須要件です。IBとセンター入試受験というのは現実には両立しないと思うので、東大にとってIBというのは、書き込まれてはいるものの、実質的には選抜対象になっていないと思います。
 東北大の山口先生のお話の中に、数ある入試のうちの一つというお言葉がありました。東大の場合も、従来の一般入試に加えて、推薦入試を導入したのですが、推薦入試の制度設計だけで手いっぱいで、IBだけを特別扱いするわけにはいかなかったと思われます。入試の種類を増やしていくと、入試にかけるコストがどうしても高くなってしまいますから、その中でIBまでじっくり考えられなかったというのが、東大の実情だったと推測しています。
 今後について、感想になるのですが、やはりIBの制度も特徴もまだまだ大学人に浸透しておらず、IBにはどういう教育効果があるのか、これは論点4に関わることですけれども、そこのところが共有されていないのが現状です。IB生をぜひ欲しい、という空気をつくり上げていくことがすごく大事だと思っています。
 関連して、論点4のIBの教育効果に関してです。大学評価には、大きく研究成果と教育成果と二つの側面があるのですが、教育成果の測定というのは極めて難しく、短期間のうちにできるものではありません。研究成果の場合には、論文数だとか、獲得資金額とか、引用論文数などで測れます。他方、教育成果を知るには、その教育を受けた学生が何年か後にどういう人材になっているか、どういうアウトカムを出しているかということを追跡しなくてはいけない、非常に息の長い、時間のかかる作業です。しかしそれをやっていかなくてはなりませんから、IB生が大学入学後の追跡調査、さらに卒業後の調査ということを、専門家の研究でもいいですし、コンソーシアムの課題でもいいのですが、きちんとしていただければと思います。
 本日の発表の中で、日本人IB生の大学での成績は概して高いというお話を伺った、あるいは、ゼミの中で非常に中心的な役割を果たしているということも伺っていますので、そういうものが客観的に示せると、IB生を大学で積極的に採るべきだという認識がじんわりと大学側にも伝わっていくのではないかと思いました。
 少し散漫になりましたけれども、特に質問ということではなく、感想を申し上げました。以上です。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。非常に貴重な論点でお話しいただきました。
 先ほどは質問に答えるお立場にいらっしゃいましたけれども、山口委員、御意見等お願いいたします。
 
【山口委員】 
 どうもありがとうございます。
 実は、高校の先生方の今日のプレゼンテーションを聞いていて、高校側の努力といいますか、様々なリソースもかけてやっていること、その情熱、御尽力ということに対して、必ずしも今大学側がそこをしっかりと見て、日本の大学が見ているというふうになっていないんじゃないかなという、そのギャップが相当大きいなというのが思ったところです。
 当然IBというのは世界的に通用しているものですので、私の場合には留学生を受け入れるというところから入っていて、IBがいかに国際通用性があるかということが、そこは感じている中で進めているので、割と親和性を持って考えられると思うんですけれども、そうでもない大学人にとって相当まだまだ遠い存在というか、ギャップがあるんじゃないのかなと正直なところ感じます。それは、そこをちゃんと埋めていくというのは大学側にも求められている、私どものような立場に、私のような立場にある人間にとっても本当に求められていることなんだろうなと思うんですけども、そこが最も強く感じたところです。
 先ほど、私、数ある入試のという言い方をしましたけれども、大学の中では本当に入試の数というのは非常に多くなっていて、それによって日本の大学の場合には、特に国立大学の場合はアドミッションセンターが全然強くないので、相当大学の現場の教員に負担がかかるという状況になっている中で、これをどういうふうに進めるかというのは頭の痛い問題です。
 ただ、IBの学生を採らないと損だよといいますか、本当にいい学生が出ているんだから、ここから獲得していかないのは大学の戦略的にも損だよねというようなことが言えるように、情報発信とか、あるいは情報を提供する、これは文科省にもぜひお願いしたいところだと思うのですが、そういうことを進めて大学の受入れ側の受け入れたいという土壌をつくっていく必要があると思いました。多分そのあたりは高校の先生方は非常にモデストに話をされているのかなと思うんですけども、内心はもっと積極的に受け入れてほしいと考えられているんじゃないのかなと推察しながら見ていたところです。
 具体的な質問ということではないんですけれども、そういった感想を持ちました。もし何か高校の先生方で御発言がありましたらお願いしたいと思います。以上です。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。
 それでは、このことに関しお話を聞く前に、上智大学の高谷さんからも一言いただいて、まとめて高校の先生でお答えいただける方がいればと思います。高谷さんいかがでしょう。
 
【高谷(上智大学)】  
ありがとうございます。すいません。私のほうからは、御質問というよりは、今日の会を通じての気づきとお願いみたいなものになるんですが、気づきの部分では、IB入試の立ち上げ時期のときには、日本の一条校のIB校を多く回らせていただいていろいろ情報交換をさせていただいていたのですが、その後国内系の入試が大きく変わったり、いろいろな変化の中で、私個人としても結構疎遠になっていたなというのを今日の話を聞いて痛感しております。
 というのも、荻野先生や松崎先生にお話しいただいた今の高校の現状だったり、生徒の進路状況みたいなところを、その変化をタイムリーにキャッチアップして大学側の入試も変えていかないといけないんだなというのを今日のお話を伺って強く感じましたので、そこは今後検討していきたいと考えております。
 また、併せて、通常の日本の高校のカリキュラムの生徒たちとは違う、どうしてもマイノリティーな生徒たちになってしまうので、大学側から何かその生徒たちに適切な情報発信をしようと思っても、そういった場がなかなかないとか、ツールがないというのが現状でして、かつ、実施をしている大学も少なく、その入試の仕方もばらばらだという高校生にとっても非常に情報収集がしづらい環境ですので、何か国全体として高校生とIB入試を行っている大学とをつなぐかけ橋的なものを一緒に考えていけると、双方にとってメリットが大きいんじゃないかなと感じました。そこに関してぜひ大学、高校、文科省の三者で一緒に考えていきたいということでお願いになります。
 以上です。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。黒田先生、お願いします。
 
【黒田委員】 
 申し訳ありません。先ほど、荻野先生、松崎先生のお話まで伺えて、山口先生の御発表の途中でどうしても出なくてはいけなかったものですから、申し訳ありません。高谷さんのお話も伺えてないんですけれど、一言コメントさせていただきます。
 私は、今日伺いたかったのは、先ほどの松崎先生にちょっと質問をさせていただいたんですけれど、IBに行くメリットといいますか、学生個人から見てみると、海外の大学での通用性が高くなるということをよく言われるわけですけれど、実際に本当にそうなのか。今、IB校からでなくてもどんどん海外に出願をされて行っている方もたくさんいらっしゃいますので、実際にIBを修了していることがどのくらいの学生個人にとっての意味があるのかというところが気になっていたものですから、先ほど質問させていただきました。イギリスの大学ではファンデーションコースの免除があるとかいう非常に具体的な御回答をいただいて大変ありがたかったです。
 ただ、例えばアメリカとかほかのところでどうなのかということを、もう少し見ていく必要があるのかなと思いました。それが1点です。
 今日お話を伺えなかったんですけど、大学側のところで、早稲田もたくさんのIBの学生の方々が受験していただいているということだったので、先ほどの最初の御発表のところで、IB学生が入ってからどのくらいパフォーマンス、どのような感じでパフォーマンスされているのか、先ほどの長谷川先生のコメントの中に、ある程度の成績とか、それからイニシアチブを取られるであるとかいったことが確認されているというようなお話があったので、そういう御発表があったのかなとは思うんですけれど、ここについてはやっぱりある程度データを積み上げていく必要があるのかなと思います。
 私ども、例えば早稲田の場合には、附属・系属校というのがありまして、そこからの進学をどのくらいやるかというか、枠を与えるかというようなことを考えるときに、必ず学生の追跡調査といいますか、どうしてもGPAになってしまうんですけれど、それ以外のところというのも一応例えば学生調査、アンケート調査なんかもやっておりますので、そういったところからも見てみて、どのような形でパフォーマンスがあったか、採るに足りたかというところを見ております。同じようにIBを各大学にお願いして枠をつくってもらったり入試をやっていただくというようなことを考えていくためには、本当にそのIBの学生の大学でのパフォーマンスが良いということについてのエビデンスが必要かなと思いますので、こういったもちろん各大学でもそれを考えるべきだと思いますが、政策としてもそうしたエビデンスを積み上げていくための方向性というのを持つべきなのではないかなと思いました。
 以上です。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。
 それでは、山口先生の御質問と、黒田先生の御質問、IBの海外通用性とかを含めて、高校の先生でお答えいただける方お願いできませんでしょうか。
 
【松崎(茗溪学園中学校高等学校)】 
 じゃあ、それでは。
 
【岩崎座長】 
 はい。
 
【松崎(茗溪学園中学校高等学校)】 
 そうですね、メリットというか、もちろん制度的なものもあるんですが、やはり一番大きいのは学び方なのかなと思います。例えば、単純なところから言えば、新しい知識というのは今自分が持っている知識と関連づけることで、それでようやく知識として定着していくとか、それをディスカッションでいろいろな視点があることを意識したり、何かそういうあれですね。あと、論文の書き方とかレポートの書き方とかいうところは大学に入った後も物すごく役立っていると生徒たちがよく言いますね。
 あとは、自分に何が興味があるのかって自分と本当に向き合わないといけないプログラムなんですね。なので、私のほうはIBは本当に本人に強くIBで学びたい意欲というものがないとその学びが成立しないと思っているんですけども、それというのは、各科目で論文を書きますので、自分が何に興味があるのか、どういうトピックで書きたいのかとか、例えば数学のIA――内部評価というんですけど、数学では、例えばバスケをやっている子はどの角度でボールを打つのが一番効率がいいかとか、あと、ティーバッグの拡散の仕方とかを統計的にやって、それをやったことで統計にひらめいて、統計を使って何か自然環境とかにアプローチしたいというので、そういった方向を選んだ生徒もいますし、自分が何に興味があるのかということにとことん向き合う必要があるというところも特徴的だと思うんですね。
 例えば今、学部の3年生ですけども、本校の卒業生で、ずっと日本国内で育って、アメリカのリベラルアーツの大学に行って、最初メディア系のことをやりたいと思っていて、東京オリンピックなんかもインターンシップでアメリカのテレビ局と一緒に日本に来てインターンシップしたりしたそうなんですけども、その後、グローバルヘルス、公衆衛生とコンピューターサイエンスに興味を持って、そこから専攻をそっちのほうに変えて、今その大学と提携しているオックスフォードに1タームだけ、1学期だけ留学をして、そこでの学び方も、教授と1週間に1回だけ会うらしいんですね。そこで、その1週間でIBの課題論文でやった論文を毎週1本書いていますと言っていましたけども、論文を1本書いて、そのディスカッションを教授と1日すごいじっくりとやるという学び方だということをあらかじめ調べていたそうです。オックスフォードという名前で選んだのではなくて、そういう学び方だからということで、選択をしたということでした。
 だから、学び方というものをすごく意識して、どういう学び方が自分にとっていいのか、というのを選択していくというような、何かそんなようなところがやはりすごく何か制度的な優位性以上にメリットといえばメリットなのかなと思っています。
 以上です。
 
【岩崎座長】 
 はい、ありがとうございました。
 全体を通じて坪谷先生から御見識をいただければと思います。
 
【坪谷委員】
 ありがとうございます。坪谷でございます。
 今日の御発表、御議論、本当にありがとうございました。2013年、IBの導入が閣議決定いたしまして、そのとき長谷川先生にも委員として御尽力をいただいたんですけども、その当時は、国際バカロレアといいましても、それは何だということで、日本の大学もほとんど存じ上げていただいていなかったというところから考えますと、10年経ってここまで進んだんだなと、私自身は感無量という気持ちで聞いておりました。長谷川先生には多分私のその気持ちを分かっていただけるんじゃないかと思います。
 その当時から、やはり国内の大学は国際バカロレアって文系の生徒ばかりだよねということをずっと言われておりまして、今回のお話の中にも、私立に限って言うと、文系の生徒を受け入れる大学が非常に多いというお話がございましたので、理系のほうももっと門を開けていただけたらと思ったりもいたします。
 それと、IB機構に対して、もっとこんなことやってほしいとか、こんなデータ出してほしいとか、何かそういったリクエストがあれば、ぜひいただきたいと思います。先方に伝えて、ぜひそれをやってくれというふうにお願いしたいと思います。
 例えば高谷さんがおっしゃっていらっしゃったIBの高校生へ自分たちの動きをもっとオンタイムで知らせたいというリクエストなども、IB機構に伝えて、IB認定校に対して各大学がどういう動きでどのようにやっているということをツールとして全部知らせることをやってもらうことも可能ですので、ご意見を寄せていただければと思う次第でございます。
 今日は本当に感激いたしました。どうもありがとうございます。
 
【岩崎座長】 
 ありがとうございました。坪谷先生が御尽力されて、ここまでマインドセットが変わってきたのだと思います。
 
【坪谷委員】 
 いえいえ、とんでもないです。
 
【岩崎座長】
 御貢献だと思います。そのような坪谷先生の思いも受けまして、本日は本当に生産的な議論をありがとうございました。このような議論の場を、オンラインという限界はありますけれども、設定くださった文科省の方々の御尽力にも感謝します。
 私からは印象に残ったことを手短にお話しします。茗渓学園の松崎先生から、IBの生徒さんたちが自分と向き合って、自分のアイデンティティーを理解し意欲を持って自発的に学びをデザインができるというご指摘がありました。自ら継続的に学習ができる姿勢やスキルを有している生徒は、個人的なキャリア形成においては、どんな社会でもサバイバルできる武器を備えているようなものだと思います。私は成人学習論を専門にしているので、このように社会の変化や必要に応じて自発的に学習を計画・実施できることは成人学習者としての理想なのです。そのような理想の素養を持つ生徒が茗渓学園で育っているという話に心惹かれました。今後、日本でこのような自発的に生涯にわたって学習をデザインし実行できる日本人をどう育てるかということ、そしてそういった前途有能な有為の高校生を国内外の大学に適切な評価をもって円滑に接続させるにはどうしたらいいかということが大きなテーマだと感じました。
 その上では、上智大学の関係者の方々からは、高校でのIB開講科目の情報がなかなかないという御指摘もあったように、方向性を見極めたり戦略を打ったり判断するにはデータが必要であって、日本国内のIB生の概数の把握、受皿として日本国内の大学のIB入学試験としての定員枠、あるいは進学者数などに基づき、確実な数字は難しいとしても、ある程度の需給シミュレーションをすることも必要かと思いました。
 東北大学の例では、海外でIBを取得した優秀な学生や海外で学んだ日本人を日本の大学にどのように呼び込むかという視点がこれまでこの場ではあまり論じられてこなかったと思いました。IBという国際的な物差しによって、海外にいる学生、優秀な学生をリクルートする、日本の国内に呼び込むという論点も今後必要になるであろうと感じた次第です。
 最後に、先ほど上智大学の方がおっしゃっていたように、IBの取得者は小数ではあるけれども、ある一定の共通の集団としてイギリスのUCASのように窓口を統一して出願可能とし合格を出すなど、入試情報をプラットフォーム化といった国としての制度設計への御提案は傾聴に値するものがありました。
 私からは以上です。
 本日いろいろなお話があったので、さらに質問や御意見がある方、恐縮ですが挙手をいただきたく思います。
 
(質問等無し)
 
 それでは、どこかの段階でいろいろな御意見をいただける対面の会議とかがありますとよろしいかと思いますが、まずは、本日はオンラインという限界の中、積極的に御意見をいただき本当にありがとうございました。
 最後に、国際課の村上課長から一言お願いできればと思います。村上課長、よろしくお願いします。
 
【村上国際課長】
 岩崎座長、それから有識者の先生方、本日は長時間にわたりありがとうございました。こういった形で、高校と大学、送り出し側と受入れ側の双方の皆様方の問題意識を同じ場所でお聞かせいただき、また大変有意義なお話を伺わせていただきまして、ありがとうございました。
 1点だけ、これから本会議でさらに御議論を深めていただく、あるいは実際に議論の取りまとめをしていく中で一つ恐らくポイントになるかと思いましたのが、高校段階でバカロレアをもっと普及するといったときの出口を海外へ進学する方に比重を置くのか、それとも日本国内の、先ほどの御議論の中でも山口先生のほうから、多様な入試の一つの在り方という表現、あるいは松崎先生のほうから多様な学びの一つの在り方という表現がございましたけれども、そういう後期中等教育の多様な在り方の一つの表れとして、これは例えば地方の公立高等学校であると、かなり落ち着いてはまいりましたけれども、生徒数の減少に伴って再編統合の過程の中でいわゆる国際コースをつくる動きはこれまでもあったわけでございますけれども、そういうものの延長線上のようなものを一つ見据えるのか。
 そうすると、当然のことながら日本の大学の総合型選抜なり、IB入試をやっておられるところ、あるいはそれに伴う特別なカリキュラムコースを展開されている大学へ進学することを一番最初のターゲットとして置くということであれば、恐らく全国47都道府県同じような形で導入するんでしょうし、先ほどこれも話題に上っておりましたけれども、いわゆる学費の面ですね、学費の面について恐らく大きな話にならない。
 他方、海外の大学への進学ということを考えると、いろいろハードルが出てきて、一つは授業料の話がございます。もちろん、奨学金という話がございますけれども、例えばアメリカですと、外国人留学生には連邦のPell Grantも使えませんし、学生ローンも使えないと。あるいは、確か柳井正財団さん、それからJASSOもそうです。今度新しく笹川財団さんのほうも新たに手厚い奨学金のプログラムを始められますけども、人数から言えば、全部足してもフルカバーされるようなものは毎年50人いるかいないか、しかも大学もアメリカを中心としたトップ20に限られるということであれば、そこに応募して、採択されるような生徒さんというのはどうしたって非常に少ない数になってしまうという問題があります。
 あるいは、事務局からお示しさせていただきました、過去10年間のIB履修生の成績送付先、海外大学でございますと、どうしてもヨーロッパのほうが多い。要するに、よりそちらのほうが有利だろうということだと思いますけども。あるいは、ヨーロッパに限らず、アメリカあるいはオーストラリア、オセアニア、こういったところに進学していったときに、日本国内のIB入試をやっておられる大学への進路指導という枠をはるかに超えて、結局、各国のいろいろなアドミッションの仕組みなどに精通した形での進路指導というものが必要となっていく。そうすると、そういった進路指導の体制を、全国的に同じようなものを、しかも公立学校を想定したときに果たしてできるだろうかと。
 今後、特に高等学校段階のIBの普及と、その出口を議論していくときに、もちろんバックツーバックで関連はしてくるわけですけども、多少区別してツートラックのような形で議論を深めていただく必要があるのかなと。これは議論をというよりも、私どもが今後施策としてこのIBをどのように展開していくかを考える上でも、そのあたりは多少ミシン目を入れた形で考えていく必要もあるのかと本日お話を伺いながら思った次第でございます。
 また引き続きどうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
 
【岩崎座長】
 村上課長、ありがとうございました。
 続いて、議題4、その他について事務局より御説明お願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 事務局でございます。本日は長い時間にわたりまして御議論いただきまして、ありがとうございます。
 最後に、資料7、今後のスケジュール(案)ということでお配りさせていただいております。次回は12月19日月曜日9時半から12時半で予定してございます。
 また、本日の議事録については、追って御確認の連絡をさせていただければと思います。
  
【岩崎座長】
 それでは、本日の会議は以上といたします。活発な御意見を聞かせていただきまして、また、今回有識者として御参加いただきました茗溪学園中学校高等学校松崎先生、上智大学副学長西澤先生、高谷さん、どうもありがとうございました。
 それでは、これで閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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